「……お兄ちゃん……だと……?」
《加速研究会》に捕らわれたユニコを救うため、一刻も早く離脱用のポータルを潜らないといけない場面だったが、最も近い《東京ミッドタウン・タワー》のポータルは《ISSキット》の本体が取り込んでしまっていて潜れず、さらにはそれが生み出したのか《レッド・ライダー》までもが現れて状況は混乱。
それを整理すべくライダーの言う通りに1度コテンパンにやっつけてみれば、また平然と姿を現したライダーがゆっくり話せる雰囲気になったところ。
今度は《ボッシュ・ルーレット》がずっと言いあぐねていた事をぶちまけて余計に混乱を招いていた。
「お兄って、ライダー?」
「いやいやいや! 俺は見ず知らずの女の子にお兄ちゃんなんて呼ばせる趣味はねえよ! 大体その子とは初対面……」
それには黒雪姫も驚きを隠せず声を漏らし、そういう趣味があったのかとジト目になったサアヤがライダーの反応をうかがうと、完全なる否定から入ってルーレットとも初対面だと話す。
しかしじっと見てくるルーレットを見て何か思い当たる節があったのか、断言するよりも前に言葉を切って記憶を辿るように顎に指を添える。
「……もしかしてお前……しず……っと、あー、現実の俺の妹?」
「そうだよ! 無責任なバカ《親》に放置された、哀れな《子》だよ!」
そこからもしかしてとルーレットに尋ねたこともまた度肝を抜かれる事実だが、それを肯定したルーレットは途端に怒りを露にして《ホーライ》の銃口をライダーへと向ける。
撃ったとしても弾丸は《エウノミアー》なので即時効果はないが、一応は話をちゃんとすべきと咄嗟に判断してその射線に割り込んだサアヤは、山盛りの疑問にさらに上積みされた疑問を解決すべく、どういう事情があるのか2人の話を聞こうとする。
「いや、そのな、えっと、ルーレットってのか? お前が怒るのも無理はないんだが、俺だって好きで放任したわけじゃなくてだな……」
「だったら何で『大事な会議の日』にアタシにインストールしたんだ! そんなことをしなきゃアタシだってこんな……」
たったそれだけの話でも見えてきた事情があり、ルーレットが口にした大事な会議という部分では無意識にだろうが黒雪姫がピクリと反応してルーレットを見てしまう。
どうやらライダーのリアルの妹らしいルーレットは3年前の《七王会議》の当日にライダーからコピーインストールされて、その日に全損しブレイン・バーストの記憶をなくしたライダーから何の説明もなしに加速世界へと誘われて今日に至ったのだとわかる。
よくよく見ればルーレットの頭のテンガロンハットを思わせる装甲も、多彩な強化外装群──名前がギリシア神話の神の固有名なのだ──もライダーと似通った部分が見られる。
これは実の兄妹だから心の傷が似てしまったことが要因と思われるが、まさかライダーの子などと夢にも思うはずがない。
ライダーはおそらく1度きりになってしまったコピーインストール権を大事に取っておいたのだろうが、それを会議の日に使っていたとは。
「会議のことを知ってて今もバーストリンカーでいられてるってことは、お前はソーンから聞いたんだな。今の親代わりもあいつか?」
「そうだ! バカなお兄のせいでお姉がいっぱい悲しい思いをしたのに、それでも残されたアタシに色々教えてくれたんだぞ! それなのにリアルのお兄は……」
「……それは本当に悪いと思う」
「ルーレット。そうライダーを責めてやるな。真に責められるべきはライダーではなく、その原因を作った私にあるのだからな」
それならばルーレットの親が影も形もないのに納得がいくし、今日この場所へとやって来られたのも紫の王《パープル・ソーン》から話を聞いたからと理解が及ぶ。
ライダーと恋仲……今もそうかはわからないが……いや、ルーレットの口ぶりからして今はもうそうではないのかもしれないが、ライダーなき加速世界でレクチャーすら受けずに放り出されたルーレットが生き残れる確率などゼロに等しい。
そのルーレットの最も近しい存在がライダーに次いでソーンであるのは必然であり、彼女の存在なしには今のルーレットが存在し得なかっただろうことも明白。
だからこそ加速世界で顔を合わせることもなくいなくなったライダーを許せなかったルーレットは、今まで溜まりに溜まっていたものをライダーへとぶつけていた。
しかしそれを止めるように黒雪姫がライダーを庇う立場でルーレットを宥め、ライダーがそうなってしまった原因は自分で、責められるのも自分であると謝罪の雰囲気も出てくる。
「うるさい! 黒の王は黙ってろ! お姉も悪いのはお前だって言ってたけど、そもそもお兄が不用意にバトロワで話なんてするからそんなことになったんだろ! 万全を期せないバカは死んで当然だ!」
「ぐっ……返す言葉もねぇ……」
しかしルーレットはそんな黒雪姫すら越えるバカはライダーだと断言し、謝罪する気満々だった黒雪姫も呆然。
捲し立てるようにライダーが糾弾され続けてついにはライダーも精神的ダメージで膝をついて四つん這いポーズで落ち込み始め、かつての自分の王が妹に言い返せないでいる情けない状況にため息が漏れる。
「はぁ……それでルーレットはそういう愚痴をライダーに言いにここまで来たわけ? 何か他に理由はなかった?」
「…………ない。現実のお兄に怒りをぶつけても意味がなかったから、吐き出す場所がなくてずっとモヤモヤしてた。だから今ので大分スッキリした。そしてアタシはお兄みたいなバカなことにならないように、お姉以外の人は信用せずに、近寄らせずにここまで来た。お前らお人好し集団は本当に例外だ」
「それでアンタ、アホなくらい好戦的だったのね」
「アホって言う方がアホなんだぞ!」
あまりに愚痴が飛び出てくるから助け船もして話を進めるために大人な対応をしたサアヤに対して、さっきまでの怒りを少し落ち着かせてこれ以上ライダーに言うことも特にないと返すルーレット。
さらにそうしたライダーの不意打ちを自分も受けないために今まで必要以上に人を遠ざけてソロプレイまがいのことをしていたことも吐露した。
それらのことを聞いて項垂れていたライダーも顔を上げて立ち上がり、まっすぐにルーレットを見て口を開く。
「ルーレット。本当にお前には悪いことをした。今の俺は現実で生きてる俺とは違うがよ、お前を子にしようと考えて実行した記憶はこっちに確かにある。親としてお前にはBBをインストールしてやることしかできなかったけど、ソーンのやつがちゃんとお前を導いてくれた。そうじゃなきゃ今日のこの出会いもなかったもんな」
「なに喜んでんだバカお兄。アタシは文句だけを言いに来た親不孝だぞ」
「それを言ったらお前に何も教えられなかった俺は子不孝? ってやつだろ。そんな親不孝なんて子が今もバーストリンカーでいてくれてる方がどうでもよくなるくらいに嬉しいもんさ。よく生き残ってくれたな。さすが俺の子だよ」
「あっ……くっ! なに親ヅラしてんだバカお兄! アタシの親はお姉だけだ! 良いとこだけ持っていこうとすんなバーカ!!」
「……3年前のお前はもっと懐いてくれてたはずなのに、時の流れってのは残酷だよなぁ……」
なんだかんだで仲は良さそうな兄妹だなぁ、と喧嘩みたいな会話を聞いていて思ったのはサアヤだけではなく、いつの間にか黒雪姫達も2人の会話を穏やかな気持ちで見守っている雰囲気が見て取れる。
ルーレットだって本当は加速世界で王にまでなっていた自分の親をこの目で見たいと思っていたに違いないし、ライダーの武勇伝をどこかしらで聞いて自慢に思うこともあったはずなのだ。
本当ならもっともっと話したいことがあったのかもしれないが、さっきのライダーの変化も気になるし、そろそろ本題に入らないとまたライダーと戦うことになりかねないので、またライダーが落ち込んだタイミングでサアヤが前のめりになっていたルーレットを引っ込めて本題を切り出す。
「ルー子も落ち着いたところで本題よライダー。時間もないんだろうし脱線はなしだからね」
「お、おう。相変わらず姉御肌なのな、お前」
そんなサアヤに昔から押しきられるところもあったライダーは、それに何度も助けられてきた過去を振り返りつつ和やかになりかけていた空気に緊張感を持たせて本題に入る。
「まずはそうだな。俺はさっき表現されたように幽霊みたいなもんだが、自分の意思で化けて出てきたわけじゃない。ロータスに首を落とされて全損した俺を、あるバーストリンカーが『限定的に生き返らせたんだ。自分の目的を実現するためのパーツとして』な」
「い……生き返らせた……だと……? 体力ゲージがゼロになって死んだのではなく……ポイント全損して、加速世界から消滅したバーストリンカーを、か……?」
そうやって口にしたライダーの話に、思わず黒雪姫が聞き返してしまったが、サアヤ達もまさかそんなことが可能なのかと驚愕で言葉を失ってしまう。
「限定的に、つったろ? 今の俺は、3年前にお前と戦って消えたレッド・ライダーの《影》……有り体に言やぁゾンビだ。現実世界の本物は、ルーレットが知ってるだろうが、加速世界の記憶を全部失ったまま、今頃は平和な学生生活を送っているんだろうさ。……問題のシーンの記憶がないから断言はできねぇけど、おそらく誰かが必殺技、あるいは心意技で、俺の魂みてえなモンのコピーを作り出して、あいつに……後ろに転がってるでっけぇ目玉に憑依させたんだ」
憶測も交えながらに今の自分の状態を説明するライダーは、嘘のようなそんな話にも真剣さだけを全面に押し出してみせ、それに謡とフーコが反応する。
「それが本当なら……生き返らせた、とは言えないのです。加速世界から去った者の魂を複製し、己の目的のために利用する……そんな力は《蘇生術》ではなく《
「ほんとうにそうね……でも、どうして? その誰かは、なぜそんなことを……?」
「もちろん、レッド・ライダーの能力を利用するためだ。アビリティ《銃器創造》で、自分の望む強化外装を作らせるために、そいつはライダーのゾンビである俺を作り、依代であるあの目玉に寄生させたんだ」
「なるほどの。それがISSキットというわけじゃな。じゃからキットの端末にはお主の紋章が刻まれておったと」
「言っとくが、デザインもスペックも俺が決めたわけじゃねぇぜ。そもそも、デカ目玉に呑み込まれてる時の俺は、なんつうかメインスイッチが切られてて、見たり聞いたり考えたりできねえんだ。こうして出てこられるのは、デカ目玉がエネルギーを大量に消費して、回復モードになってる時だけだ。今がまさにそうなんだけどな」
話がとんでもなく非常識というかで理解するのだけで大変だが、その中でも見えてきたものはある。
今のライダーがこうして意思を持って話せているのは、キット本体がサアヤ達を攻撃するために出してきた端末やライダーを撃破し、その回復にリソースを割いてライダーを拘束する力が弱まっているから。
だからコテンパンに倒せなどと指示していたことにも納得がいき、その回復が済むとまたライダーは攻撃的になってしまうということ。
そう考えれば時間がないということにも理解が及び、出来る限りの情報を引き出したいところだが、黒雪姫も何から聞き出せばいいか頭が整理できていないようで沈黙してしまう。
その辺で回転の早いあきらがフォローするようにライダーへと核心に迫る質問をする。
「そもそも、あれは何なの」
言いながらにあきらの視線はライダーのすぐ後ろのキット本体に向けられて、質問が指すものを理解したライダーも推測からの答えを述べる。
「どうやらエネミーでも、強化外装でもねえ。あれはおそらくデュエルアバターだ」
「えっ、でもそれってメタトロンが確認された時にはもうここにあったんです、よね?」
その答えが今までで一番あり得ないと驚いた一同が本当に言葉を失った中、加速世界の事柄にみんなほど知識がなく驚き具合でわずかに小さかったマリアがふと湧いた疑問を口にする。
確かにあれがデュエルアバターだとしても、サアヤ達がメタトロンを確認したのは今から1週間以上も前の話。
いや、そもそもISSキットの存在を確認したのはそれよりも前の2週間前になるから、ことによってはその時からすでにここに鎮座していたことになるのではないか。
「良いところに気づいたな嬢ちゃん。えっと、ロータスのとこの新人か? ここにいるなら新人ってほどじゃないのかもだが」
「彼女はテイル……《複合兵器》の子のそのまた子だ。まだレギオンには加入していない」
「へぇ……どええ!? モビールの子の子!? マジで時間の流れって怖いのね……」
「は、はじめまして《ソレイユ・アンブッシュ》です。アンで構いません」
こんなタイミングでマリアの自己紹介が挟まれて話の腰が折られてしまったものの、ルーレットの件でも色々と話した影響か、そろそろヤバイと感じてるのか自分から話を戻しにいった。
「アンが言うように、こいつが出現してから、こっちじゃ少なくとも50年は経っちまってる。だからエネミーならテイムもされてねえのにああもじっとしてるわけがねえし、強化外装なら《変遷》の時に消滅してるはずだ。それにあの目玉には、確かに感情や意思みてえなもんがある」
「だからデュエルアバターって推測になるわけね。納得しがたい事ではあるけど、筋を通すなら間違った考察じゃないか」
「でも50年だなんて……あまりに非常識な事態よ。それをさせてるとすれば、加速研究会は非道なんてものでは済まないわ」
「人を人とも思わぬ悪魔といったところかの」
もはやキット本体の一部となっているライダーの考察ならと納得するサアヤ達だが、それが事実としてもこんな拷問に等しい行いをさせている加速研究会は許しがたい。
そうした怒りを露にする一同を見ながらに、ようやくリーダーらしく頭を整理し決断を下した黒雪姫が、これからのことについてをライダーに話す。
「私は……我々は、あの巨大な目玉を完全に破壊しなくてはならん。デュエルアバターであろうと、なかろうと、そして……その結果、今ここに存在するお前が消滅するのだとしても」
と、黒雪姫が当然のことを述べたのに対して、わずかに反応したのはライダーではなくルーレット。
具体的にはライダーをまた消滅させると聞いた瞬間に、ルーレットの肩がピクリと跳ねたのだが、それを見逃さなかったライダーは、それをわかった上で黒雪姫への返答をする。
「やめてくれ、なんて言うはずねぇだろ。今の俺は、ぼんやりした意識の中で、ひたすら糞みてえな強化外装を作らされるだけのゾンビだ。俺はずーっと待ってたんだよ、終わらせてくれる奴をな。それが、ロータス、お前だったのは……」
話しながらルーレットの反応を観察していたライダーは、自分が消滅することを望んでいると伝える中でルーレットにかける言葉を考えているようだった。
「でもな、いざ戦うとなったら、アイツは強えぜ。どんな攻撃をしてくるかは俺にも解らねぇが、とんでもなく強えのだけは間違いねぇ。ただの置物だと思わねえで、最初っから全力で行けよ」
「……解った」
何の因果か影である自分を終わらせるのもまた黒雪姫であったことを皮肉に思ったか、皆まで言うことなく次には警告して容赦なくやれと言い切り、それに了承した黒雪姫。
これでもう言うことはないかと黒雪姫から視線を外したライダーだったが、やはりあきらがそもそもの疑問をライダーへと尋ね、キット本体を破壊すれば端末も一緒に死ぬのかと。
それに対してのライダーの返答は残酷なもので、本体の破壊をしても端末との相互リンクが切れるだけで端末自体は死なないと言う。
それでは今回の作戦の目的であった日下部綸を救うということが不可能ということになるが、精神干渉が止まるということにはなるので分離の方法はまだあると希望も湧いてくる。
しかしそんな面倒は残さないと、浄化能力を持つ謡が張り切ったのを見て返したライダーは、そうならないように本体の破壊と一緒にアビリティに備わる《遠隔セーフティ》で端末も無力化してくれると言う。
その辺のタイミングは意識のあるなしでシビアになるとかでも、バーストリンカーとしてのプライドでどうにかしてやると静かに宣言したライダーは、これでいいかと問いに対しての答えを終了。
いよいよライダーの残された時間もないのか、ようやくルーレットと向き合って親らしく子へと伝えるべきことを伝えようとする。
「ルーレット。せっかく会えたのにこんなすぐに別れることになって悪いな。だが俺はもう本来ならこの世界にいない存在だ。その俺がお前に残せるものなんてねえのかもしれねえけど、お前は言ったな。俺のようになりたくないから人を信用しないんだって」
「……そうだ。それは今も変わらない」
「そりゃお前をそんな風にしちまった俺の責任だが、人ってのは結局のところ1人じゃ限界がある。ソーンだけでお前を支えてやれない時がいつか必ず来るだろう。ソーンだけを支えに生きるのが辛くなる時が必ず来るだろうよ。そうならないように、少なくてもいいから、今よりも信頼できる人を増やしておけ。人が増えりゃそれだけ裏切りとか企みとか、そういう面倒なもんも背負うことになるけどよ、その分、辛いことは分け合えるし、嬉しいことは共感して何倍にも膨らむ。目的もなくこの世界で1人強くなったところで、行き着く先は虚しいもんさ。だからもっと楽しめよ、この世界を。その楽しみをもっと大勢で分かち合え」
時間がないのにまぁ長々と話すライダーの意外な子思いな部分を見つつ、その話を黙って聞いていたルーレットは、何を言うでもなく顔を伏せてしまう。
何かしら言ってくれてもと思うライダーではあったが、してしまった罪の重さや埋められない溝を感じたかそれはそれでいいと視線をルーレットから外し、今度はかつての仲間だったサアヤとユリへと視線を向ける。
「ガスト、バーちゃん。凄い勝手なお願いで悪いんだが、ルーレットのこと、支えてやってくれとは言わないが、これから先は見守ってやってくれないか」
「本当に勝手じゃのう。ルーレットがそれを望まんじゃろうて」
「ホント親バカって見てて笑えるわね。そういうところもアイツに似てたなんて……」
「ん? 誰と比べられたかはわかんねえけど、まぁよろしく頼む」
そうやってこちらが了承してないのに決定したように話を進めてしまったライダーはあの頃のままだが、なんだかんだでそういうところに惹かれたところもある2人はやれやれといった雰囲気で了承することになった。
それでもう言うことも言ったと踵を返してキット本体の中へと戻ろうとしたライダーを見て、サアヤは言うべきかどうか少しだけ迷ってから、やっぱり過去との決別のためには言っておこうとライダーを引き止め振り向かせる。
「あのね、ライダー。アンタは気づいてなかったかもしれないけど、私はずっとアンタのことが好きだった。ソーンがいようと構わないくらいにはね」
「そりゃまた……嬉しいやら複雑やらだが……」
「でもね、今はアンタ以上に好きな人ができたわ。そいつはどうしようもなくバカでやること成すこといつもブッ飛んでて、一緒にいるとむしろ疲れるくらいだけど……アンタと同じかそれ以上にカッコ良い、私の太陽なのよ」
「すっげぇ言い様だな。でもお前が惚れた男なら、きっとこの世界で何かを成し遂げるでっかいやつになるだろうな」
「……それって、アンタもでっかいことしたって言いたいわけ?」
「お、そういう意味にもなっちまうか。はははっ」
そうしてずっと隠してきた想いを本人に告白し、今は別の人を好きなことも告げて、ちゃんと前を向いて進んでいると言ってみせると、ライダーも安心したのか笑ってサアヤを祝福してくれる。
「……じゃあね、ライダー」
「おう。そいつと仲良くしろよ。ガストは喧嘩っ早いからちょっとそいつに同情するわ」
「余計なお世話よ」
あとはそれだけ。それだけのやり取りで満足したように再び踵を返したライダーは、楽しかったとでも言うように機嫌良く歩き出していく。
「……リアルのお兄は元気だから……」
そんなライダーを引き止めるでもなく、張る声でもない呟きで送ったのは、ルーレット。
もはやリアルのライダーとは切り離された存在である目の前のライダーだが、それもまた子からの、妹からの言葉とあっては反応しないわけにもいかず、しかし振り返ることなく口を開いた。
「そうか。リアルの俺とは仲良くしろな」
それにルーレットが応えることはなかったが、ライダーは見なかったが確かに頷いたルーレットをサアヤは微笑ましく思うのだった。
「あばよ、ロータス。《四元素》の3人も。《矛盾存在》にもよろしく言っといてくれ。それと……プロミを継いでくれた2代目に、あんがとよ、あとは任せた、ってな」
そしてキットの瞳孔に足を踏み入れたライダーは、最後に振り返り黒雪姫達に別れの挨拶をすると、清々しいくらいにあっさりとキットの中へと入っていってしまい、取り込んだキットは緩慢な瞬きをしてしまえば、そこにはもう何も存在していなかった。