アクセル・ワールド~蒼き閃光Ⅱ~   作:ダブルマジック

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Acceleration Second54-B

「──やるべきことは変わらない。持てる力の限りを尽くして、ISSキット本体を破壊する」

 

 ISSキット本体を依代にサルベージされた《レッド・ライダー》との会話を経て、まだ各々で整理すべきことも多い中、これから始まるキット本体との戦いに意識を向けなければいけない場面で、リーダーとして黒雪姫が決断を口にする。

 

「ルーレット。どう言おうと結局はまたライダーを倒し、この世界から消すことになるが、構わんか?」

 

「……何でアタシにだけ確認するんだ。アタシはもうここでやることはした。あれをどうするかなんて知ったことじゃない」

 

「そんな言い方はないでしょ。仮にもアンタの《親》がまだあの中にいるわけだし、ソーンのやつだって……」

 

「アタシの親はお姉だけだ。それにお姉にはあれと《交差する拳銃》の関係は話してない。ここでのことも報告するつもりはない。もうお姉の悲しい顔は見たくないから」

 

 しかしそうなるとここで判明したライダーの《子》である《ボッシュ・ルーレット》から親を再び奪ってしまうことになるので、その辺でルーレットに了承をと思ったが、やはりこちらでのライダーとの関係が皆無だったこともあって未練みたいなものはないらしい。

 むしろ今の親代わりをしている《パープル・ソーン》が傷つくことの方を心配してライダーのことも話してないことがわかると、その親思いなルーレットに母性でも出たか、フーコがその頭を抱き寄せていい子いい子し始めてしまう。

 

「ライダーは《オリジネーター》だから、リアルで妹のこの子は100%わたしよりも年下よね。そんな子が優しさに溢れたことを言うから可愛く見えて仕方ないわ」

 

「やーめーろー! デカ乳に顔を押し付けるなー!」

 

「完全に妹キャラになってしまったの」

 

「み、身代わりができたのです……」

 

「メイちゃん、本音が漏れてるよ」

 

「あの高飛車なソーンには勿体ない優しい子じゃの」

 

「みんな気を緩めすぎよ……」

 

 そのせいでなんだか引き締まった空気作りをしていた黒雪姫がどんよりとした雰囲気を纏ってしまって、見かねたサアヤがちゃんとしようと声かけだけはしてみると、フーコも猫みたいに暴れるルーレットを解放してあげて、フーコへの警戒心が上がったルーレットは露骨にフーコから距離を取る。

 それにまたちょっとした笑いが起きたものの、立ち直った黒雪姫が大きな咳払いをすれば改めて集中した一同も黒雪姫をまっすぐ見る。

 

「クロウ達の状況もわからん以上、私達がここで足止めをされている場合ではない。あれがデュエルアバターであろうとなかろうと、撃破しポータルを潜り捕らわれたレインを救出する。異論はないな」

 

 ずいぶんと長い話にはなってしまったが、これでようやくISSキット本体を破壊する段階に進み、各々がらしい返事で気合いを入れてキット本体と対峙。

 するとキットの方も回復が済んだのか、ポータルの青い光に染まっていた瞳孔が暗赤色へと変わり、キット全体から悪意の可視化と呼べる黒い過剰光が放出されて、20mも離れたサアヤ達にすら突き刺さるようなオーラを届かせる。

 

「これが……全部、心意の過剰光だというの……!?」

 

 ライダーが去り際に言った「とんでもなく強い」というのを実感するような冷たい負の心意に対して、フーコが驚愕しながらも心意の使えないマリアとルーレットを守るように過剰光を纏い、サアヤ達も同様に過剰光を纏いつつ仕掛けるタイミングを黒雪姫へと託す。

 

「あの図体なら小回りは利かないはずだ! 一気に接近し、後方に回り込んで叩く!」

 

『了解!』

 

 そもそも動けるかもわからないものだが、数の有利を活かすならそれが最善とルーレット以外の全員が即応し突撃のタイミングを図ろうとした瞬間。

 キット本体を包んでいたオーラが瞳孔へと集束し、遠隔心意技《ダーク・ショット》がサアヤ達へと放たれる。

 しかもそのダーク・ショットは今まで端末を使って放ってきたキットユーザーの数十倍にもなる規模と威力で迫ってきて、防御すら不可能と確信するよりも早く全員が左右へと回避に動く。

 他人を気遣う余裕すらなかったものの、なんとかギリギリで全員が直撃を避けたようだったが、あまりに太いダーク・ショットの力の奔流はサアヤ達の装甲に突き刺さるような余波を浴びせて削りダメージを与えてくる。

 しかし削り、と呼ぶのもバカバカしいほどのダメージに戦慄しつつ、避けてこれでは掠めるだけでも即死するかもしれないあんな攻撃を至近距離で受けるリスクを負って戦えるものか。

 避けたダーク・ショットは後ろの壁に大穴を開けて突き抜けて《黄昏》ステージの夕空へと飛び去っていったが、何かに当たれば破壊的な惨劇を生んだだろうダーク・ショットにあきらも「何度も撃たれたら建物がなくなる」と危惧。

 

「アンブッシュ、手伝え」

 

「えっ、何をするんですか、ルーレットさん」

 

 そうなるとユリが困るだろうと言っていた足場すらなくなってしまい、ポータルが固定座標でそれを取り込んでるキット本体ならそこに留まってしまうかもという新たな危惧が生まれ、やはり危険は承知で接近戦で短期決着を狙うしかないとなる。

 その中で後ろのルーレットがマリアへと声をかけて何かしようとしていたので様子をチラッと見ると、大穴が開いた壁から顔を覗かせて下の方を見ながら指示を出していた。

 

「《バースト・ショット》」

 

 そして確認が取れたのかルーレットが外の地面へと向けて《ホーライ》の弾丸《エウノミアー》を必殺技で撃ってみせ、遥か下の地面に地雷となって設置されただろうエウノミアーが発動しないと新たな強化外装も出せないからか、そのエウノミアーをマリアが《シャープネス》で狙撃し起動する策に出たらしい。

 このタイミングでやるということは戦闘参加の意思表示であり、役に立てない強化外装が出ても今よりはマシだと考えたからか。

 

「ルー子の戦力アップは半々としておいて、接近戦だと《ダーク・ブロウ》とかいうのもあるんでしょ。手もないのにブロウをどうやって出すかはさておいて、それも即死級よね」

 

「あの目玉に手足が生えるところは見たくないが、今更ながら遠近両方の心意技を無制限に使えるなど無茶苦茶もいいところだ!」

 

 愚痴りたくなる気持ちもわかるが、それを言ったところで状況が好転するわけでもないので、割とスパッと切り替えて、そんなものはなおさら破壊すべきとする。

 キット本体は依然としてサアヤ達を照準して、こっちが動けば即座にダーク・ショットを撃ってくるだろう雰囲気を纏っているので、無意味に仕掛けてピンチになるのは避けるべき……

 ──ズギャァァアアアアン!!

 とかなんとか思ってた矢先に後ろの、それこそ遥か下の方から何やら壮絶な炸裂音が木霊してきて、ルーレットのエウノミアーが起動したことを知らせてくる。

 それと同時に必殺技の使用で強制的にホーライをストレージへと戻されたルーレットの手元に新たな強化外装が出現した。

 

「のわぁぁああ!!」

 

 が、一瞬見えただけで電磁投射砲の《エリーニュス》だったとわかった時には、すでにルーレットと共に重量だけで床を踏み抜いて階下へと転落してしまった。

 その転落に巻き込まれないようにマリア達が飛び去った瞬間、キット本体がこちらの動揺を狙うように再びダーク・ショットを放ってきて、左右で割れていた内の黒雪姫、フーコ、あきら、謡の4人が範囲に捉えられた。

 

「あのアホ娘は!」

 

「事故よロータス」

 

「カリカリしたらダメなの」

 

「集中なのです」

 

 ルーレットなりに戦力になろうとしてやった結果ならとイラつきながら回避していた黒雪姫をなだめる《四元素》の3人の保護者具合がネガビュらしいが、その問題児は段階的に5階層くらいも落ちたらしく、仕方ないがルーレットの復帰はないと見てよさそうだ。

 

「……ルーレットは放置する。次のダーク・ショットを回避後に仕掛けるぞ。私とガスト、メイデン、アンは心意技込みの遠隔攻撃。レイカーとカレン、ボンバーは心意防御を……」

 

 さすがにサアヤ達が足場を気にしてるのに、その足場ごとブッ壊して攻撃はしてこないと思いたいが、なくもないので小声でルーレットの開けた穴から様子を見ておくようにユリに言っておきつつ、北側の壁に2つ目の大穴が開いてから、刺激しないようにサアヤ達に近寄ってきた黒雪姫が分担を割り当てる。

 しかし言い終えるよりも早く意見を割り込ませたのは、意外にも最年少組の1人の謡。

 

「攻撃は、私に任せてほしいのです」

 

「だがメイデン、いくらお前でも1人では……」

 

 四元素でも一番の新参である謡だが、心配する黒雪姫の言葉を切る形である種の覚悟を決めた声色で堂々と言い切ってみせる。

 

「私には、ああいう《大きくて動きの鈍い敵》専用に開発した技があるのです。1度発動できれば、体力ゲージがどれ程あろうと削り切ってみせます。でも、発動準備に3……いえ2分かかるので、その間、ローねえ達で何とか凌いで欲しいのです」

 

 その技が誰を想定して編み出したかはサアヤには推測でしかわからなかったが、ほとんど確信に近いものを感じたフーコがそれを確認しかけてやめ、自分から役割を買って出る謡はそうそうないのか、フーコの了承を皮切りにその決意を汲み取った全員が了承。

 攻撃を謡が全て担うならば、サアヤ達がやることはその準備時間中、謡を守りつつ建物の破壊の被害を最小に留めることだけだ。

 

「それでは、始めるのです」

 

 全員からの了承をもらった謡は《フレイム・コーラー》を頭上へと掲げて心意によってその形を変化させ、1つの扇子を作り出し開いてみせると、フェイスマスクにもアイレンズの部分が能面のように細く切られる。

 日本の伝統芸能である能とは違うものの、サアヤも日本舞踊の心得がある──その顕現したものがブレード・ファンなのだが──ため、謡が扇子と能面を纏った瞬間から、見る者を魅了するカリスマに呆然としかけてしまった。

 多くの伝統芸能は女には才はあっても資格がないだのと言われてしまうが、その才だけで見るなら謡はおそらくサアヤよりも格上。

 謡についてはまだよく知らないが、ゆらりと揺らぐ綺麗な過剰光を身に纏って舞い始めた謡の動作1つ1つは一朝一夕で身につくものではないとわかる。

 出来るならその一部始終を見ていたいとさえ思うものの、謡が放つ過剰光に反応したキット本体がその瞳孔を見開いてこちらを照準してきたために動かざるを得なくなる。

 

「こっちだ、化け目玉!」

 

 謡とマリアの守りはユリに任せて左右へと散ったサアヤ達によって、その狙いに迷いを生じさせたキット本体の瞳孔がキョロキョロと動き、走りながらより強烈な過剰光を纏った黒雪姫に照準し謡から狙いを外させることには成功。

 しかし心意技はその発動に集中しなければならない都合、それに必要ない動作を並行して行うのは困難を極める。

 黒雪姫の遠隔心意技は移動を必要としないために回避しながらの発動は難しそうなのは、狙いの分散のために別のところで立ち止まったサアヤにもわかり、それでもダーク・ショットを撃とうとするキット本体をターゲットし続けるために攻撃を強行しようとする。

 

「ったくもう!」

 

 それを見るや否や、1人で戦ってんじゃないわよ! といった怒りと共にサアヤも赤い過剰光をブレード・ファンの展開剣に纏わせて刺突の構えを取りキットの瞳孔を狙う。

 

「──《奪命撃》!!」

 

「──《突風塵》!!」

 

 狙うのはキットからダーク・ショットが放たれる瞬間に黒雪姫への狙いをわずかでも外すこと。

 そうすれば黒雪姫が直撃を受ける可能性を下げることもでき、ターゲットを自分に向けた隙にフーコ達がまた隙を狙える。

 そこまで考えてほぼ同時に放たれた2人の遠隔心意技は別方向からキット本体へと迫り、しかしダーク・ショットも同じタイミングで放たれてしまってサアヤの狙いが少し狂ってしまう。

 それでも黒雪姫も回避しながらの攻撃にギリギリ成功したようなので攻撃に集中したが、黒雪姫の奪命撃と交差したダーク・ショットが黒雪姫をホーミングするように捻れて曲がったのだ。

 さすがのそれには攻撃中のサアヤではどうしようもなかったが、サアヤの突風塵の軌道の上を煌めく青い軌跡が横切って黒雪姫へと迫り、ダーク・ショットのホーミングが直撃するルートから間一髪のところで横から叩いて救出。

 そしてサアヤと黒雪姫の攻撃もキット本体の瞳孔と白目の部分に命中し鮮血のようなエフェクトが周囲に撒き散らされ、いくらかのダメージを与えられたようだった。

 

 ダメージによる反動かキットの眼が何度か瞬きをして回復を促す素振りをした間に伸長させた展開剣を引き戻しつつ、黒雪姫を助けに《ゲイルスラスター》を使って突っ込んだフーコを見ると、黒雪姫に抱えられたその体の両足がダーク・ショットによって膝から消失してしまったらしい。

 痛覚2倍の《無制限中立フィールド》でそのダメージは洒落にならないほどの痛みを伴ったはずだが、零化することもなくストレージから車椅子の強化外装を出してそれに乗って戦闘を継続する意思をビシビシと伝えてくる。

 そしてすかさず前へと出た黒雪姫とフーコに続いてサアヤとあきらも別方向からキット本体へと殺到して打ち合わせなしで正面を避けつつのクロスする4方向から挟撃。

 さらにサアヤ達の動きに合わせてマリアも銃弾を選択し、シャープネスにその弾を込めて即座に発射。

 キット本体の瞳孔のど真ん中へと撃ち込まれた銃弾は着弾と同時に強烈な光を周囲へと放って視角を遮断しにかかる。

 《閃光弾》を撃つとマリアは全く言わなかったが、ここまでの戦闘で視界の遮断は有効と見ての無言のサポートにサアヤ達が気づかないわけもなく、着弾の寸前にちゃんと目を閉じてやり過ごし、目を開いた時にキット本体が瞬きを繰り返す姿を捉えれば好機と見るしかない。

 

「《相転移(フェイズ・トランス)》──《(キーン)》!」

 

「──《旋回風路(スワール・スウェイ)》!」

 

 近接戦用の明確な心意技は使えないサアヤ──射程拡張と防御拡張しか使えない──は始めから追い打ちに留めて挙動の観察の方にリソースを割いていたが、あきらとフーコは同じ直線上で同時に心意技を発動。

 技名発声のあとにあきらの水流装甲が瞬時に凍結し、青く透き通った鎧となると、両腕には長大な手甲剣(カタール)を出現させて、薄く鋭いその刃でキット本体の側面をメッタ切りにする。

 フーコも緑色の小型の竜巻を手の中から生み出し、それを防御目的ではなく攻撃目的でキット本体へと放ち、真空の刃がキット本体の装甲を次々と切り裂いていった。

 

 サアヤは元々が旧プロミのメンバーであることもあって、今回の作戦に参加したメンバーでは基本的にユリしかどんな心意技を使えるかを知らない。

 ユニコもそうだが、あの美早ですら旧プロミ時代のサアヤにとってはほぼ新人という括りに入ってしまうのがなんとも言えない。

 そもそもとして心意システム自体が秘匿され続けてきたものであるからには『他レギオンの誰々がこんな心意技を』なんていうアホ丸出しな情報が出てくるはずもなく、サアヤが今回の作戦で知り得ていたのは、前回の《スザク》戦で黒雪姫が使った奪命撃くらいなもの。

 実際に使ったのも歴代の《災禍の鎧》討伐時くらいのもので、そのくらい使用頻度も限られてくる心意技だからという言い訳にはしたくないが、サアヤはこの心意技に関してはそこまで研鑽し明確なイマジネーションを作り出せているわけでもない。

 実際に旧プロミ時代のサアヤは射程拡張の心意だけを実戦で使えるくらいの練度でしかなかったし、防御拡張の心意も割と最近。今年に入ってからようやく実戦で使えるレベルに出来たほど。

 だから防御拡張の心意にはまだこれといった固有名も付けていなく、発動にわずかにもたつくが、この心意技だけは自分の納得する名前にしてあげたいと考えていた。何故ならこの心意はサアヤ自身の『守りたい』という意思そのものが形となって顕現しているから。

 

 謡の《フレイム・ボルテクス》から考えても、普通のデュエルアバターならこの時点ですでに3度ほどは死亡しているほどのダメージを負っているキット本体だが、そんな常識も覆してあきらとフーコの攻撃を受けて肉質な表面装甲を抉られても未だ消滅しない様は不気味すぎる。

 それでもISSキットなどという代物を野放しにするわけにはいかないと、その意思力を以て跳躍した黒雪姫は、キット本体の真上で宙返りし上下逆さまの状態で全身に白に近い青の過剰光を纏って錐揉み回転しながら技名発声。

 

「────《光環連旋撃(ジ・イクリプス)》!!」

 

 まるで小さな太陽のように発光する黒雪姫は、その超高速の錐揉み回転から壮絶な剣による連撃をキット本体へと撃ち込み始め、その苛烈さたるや1撃ごとにキット本体の装甲を爆発にも似た規模で千切れ飛ばす。

 2、3秒ほどで撃ち切って同時に攻撃をやめたフーコのそばに着地した黒雪姫は、秒間10連撃以上も放った強烈なイマジネーションを引き出した反動ですぐには動けないようだ。

 それはあきらとフーコも同様で距離を取って警戒しながら休む様子が見て取れ、キット本体も3人の攻撃によって両側面と上部の装甲が抉れて、眼球であろう滑らかな曲面が露出している。

 ここまででまだ1分ほど。謡が稼いでほしいといった時間まであと1分だが、このままいけるのか。

 そうした不安も拭いきれないまま、余力を残したサアヤが集中を上げ、黒雪姫達がチラッと舞を踊る謡に目を向けた瞬間。

 キット本体の瞳孔に鮮血の色が煌めき、再びダーク・ショットが放たれるのかと構えたサアヤは、いち早くそれに気づき展開剣を両腕に半分ずつで分割連動操作し長大剣を作り出す。

 キット本体からダーク・ショットは放たれることはなく、代わりに起こった現象は、後ろに残った肉質な装甲から出現した2本の長い触手だ。

 コブのように膨らんだ先端には漆黒のオーラがまとわりついていて、そこから放たれたダーク・ブロウが回避に動いた黒雪姫とあきらを射程に捉えてしまう。

 

「させない、わよ!!」

 

 その挙動を見てからでは間に合わなかっただろうが、ある種の勘でダーク・ブロウが放たれた瞬間に動いたサアヤの展開剣は、キット本体と黒雪姫、あきらの間に割り込んですぐ、その腹を2人にほぼぶつける勢いで当てて外側へと押し出し、ダーク・ブロウの10mはあっただろう長大な射程から1歩早く脱出させて左右の壁際まで後退させることに成功した。

 

「助かったガスト。だが、もう少し優しく出来なかったものか」

 

「助けてもらって文句を言わないで」

 

 助けられておいて文句を言う余力がある黒雪姫には呆れてしまうが、過剰光を纏う余裕もなかったブレード・ファンはダーク・ブロウの余波によってボロボロに刃こぼれを起こしていて、扇子の状態に戻すことが不可能だろうことが1発でわかる。

 こうなると必殺技を使ってしまえばブレード・ファンは扇子に戻るための形を形成できずに破壊判定を受けてしまうので、展開剣のまま戦い切らないといけなくなる。

 そう思いながら伸びきった触手を引き戻すキット本体を警戒していたサアヤは、直後に瞳孔へと漆黒のオーラを集束する様を見て焦りにも似た感情で判断が鈍ってしまった。

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