──都田沙絢は《オリジネーター》を《親》に持つ第2世代のバーストリンカーだ。
サアヤの親はブレイン・バースト最初期の段階で全損しすでに加速世界には存在しない。
その全損の事情は今ではほぼあり得ない、最初期だったから起きた悲劇が関係している。
当時、ブレイン・バーストを渡された最初の100人の小学1年生は、手探りの中で互いに対戦を繰り返し、蹴落としてレベル2へと上がり、無制限のコピーインストール権を獲得した。
サアヤの親もその激戦を勝ち抜いてレベル2へと上がった1人で、コピーインストール権を最大限に活用するため、ほとんど手当たり次第に友人や同じ学校の同級生などを巻き込んでインストールを試行していた。
そして同時にそうして出来た《子》の中で有能そうな人材を育てて自らの輪の中へと入れ、生き残れそうもない人材は早々に見捨てて『初期バーストポイントを奪い取る』略奪行為にも及んでいた。
ブレイン・バーストは時に現実の性格をも歪めてしまうとはよく言うが、サアヤの親もそれに当てはまっていただろうことは間違いない。
そうして同級生を巻き込んだインストール騒動は入学してわずかふた月の間にピークを迎え、サアヤはその中でもかなり最後の方のインストールに成功したバーストリンカーとなった。
そのせいか、その時点ですでに親のコミュニティーは形成されてしまっていて、淘汰される速度も恐ろしく、親が赤系で遠隔最強理論みたいなものを勝手に作り上げて、赤系以外のデュエルアバターが出来上がった人はその時点でただの餌になり果てていた。
当然、ガッツリと緑系のサアヤもその淘汰の対象となり、インストールした翌日にレクチャーなしでいきなり直結による無慈悲な対戦を強いられた。
親はこの時すでにレベル3へと上がるだけのポイントを奪って、新人の育成とかで子にポイントを分け与えていたので、サアヤは訳もわからないまま3度、同じ子に完敗を喫してポイントを奪われた。
──何なのこのゲーム。おかしいんじゃないの……
みんなでやって楽しめるゲームだと言われてインストールしてみたサアヤにとって、初めて相対した相手は何の遠慮もなしに自分を痛めつけてくる悪魔以外の何物でもなく、同じような思いをして全損していく子達の悲痛の声は『ここは地獄だ』と叫んでいるようにさえ聞こえてきた。
たった10回の敗北でこの世界からは消えることが出来る。地獄から抜けられる。
敗北を重ねていく中でサアヤは、ギャラリーの「あと何回だ?」「4回。次は俺な」といったこの地獄を楽しむ声を聞いた時に、悔しさと共に激しい怒りが湧いてきた。
──何でアンタ達はこれを見てヘラヘラしてられるんだ。
サアヤには8つも歳の離れた兄がいて、その兄の影響かかなり男勝りな性格が形成されてしまい、小学1年生の時点で男子に物怖じしない姉御肌全開の活発少女だった。
それを更正させ少しでもおしとやかな女の子にしようと母親が強引に取り組んだ日本舞踊の稽古は、小学校に上がる2ヶ月前から嫌々で続けていた。
それらのストレスとデュエルアバターが持つ巨大扇子型強化外装《ブレード・ファン》がサアヤの魂に火を点けて、このまま何もせずに敗北するくらいなら、向かってくるやつらを全員ぶっ飛ばしてから消えてやる。
そんな覚悟と共に7度目の対戦で反撃ひとつしてこなかったサアヤが突如として牙を向いて強襲してきたから、相手も作業と思っていた油断から速攻で潰されてサアヤが勝利。
ここまでで加速コマンドも対戦の挑み方も理解したサアヤは、そこから怒涛の反撃で直列で直結していた相手を全損に追い込んで、勢いそのままに本丸となる親に直結対戦を仕掛けていった。
ブレード・ファンの防御性能は当時からかなり優秀で、レベル2の親の攻撃でも簡単には壊れず、ブレード・ファンを盾にした急接近──直結対戦ゆえに開始位置が近い──からの防御の緑の硬さを生かした肉弾戦は、遠隔型の親からすれば悪魔的なコンボで、全損の直前にはこれまで全損させてきた子達と同じようにプライドも己のしてきた過ちも忘れて泣きじゃくっていたが、そんな声はサアヤの耳に届きはしなかった。
親とその仲間グループをまとめて全損させたサアヤは、わずかに残った淘汰されていた子達をどうこうすることはなく完全に放置──どうせトラウマでアンインストールすると思ってもいた──して放課後には脱力気味に帰路についていた。
帰ったらブレイン・バーストをアンインストールして元の日常に戻ろう──全損した子達が軒並みブレイン・バーストのことを忘れていたのも確認した──と考えていたサアヤは、マッチングリストの仕組みをちゃんと理解していなく、ニューロリンカーが学校を出てからグローバル接続されて対戦待ち受け状態になっていることに気づいていなかった。
だからそのせいで下校途中に他のバーストリンカーからの乱入があり、まだ自分を痛めつけてくる輩がいるのかと反射的に戦闘モードになってガイドカーソルが示す方を警戒していた。
そしてその方向から現れたのは、なんか安っぽい段ボールで各パーツを人型に繋ぎ合わせたかのような濃い紫色の装甲色のM型デュエルアバターだった。
「はじめましてだね! 僕は《レイズン・モビール》! 君のアバターは……エピ……エピナー……グスト?」
「……そんなの知らない。英語わかんないし。それよりアンタ、なに呑気に自己紹介とかしてんのよ」
「ええっ!? 初対面の人に挨拶するのは普通なのでは!?」
「……このゲームはそんな必要ないでしょ。アンタだってポイント欲しさに挑んできたわけで、私はカモってことでしょ」
なんだか無駄に明るい奴だなと、当時のサアヤは思ったものだが、学校であんなことがあった直後の対戦だっただけにサアヤの心は荒んでいて、この時は純粋に対戦を楽しもうとしていたはずのモビールに悪いことをしたと今は反省している。
そんなサアヤだったからか、簡単に狩られてたまるかと鬼気迫る感じだったのを敏感に察したモビールは、当時すでにレベル2だったことも加味しても相当に腹の立つ作戦でサアヤを追い詰めてきた。
今にも飛びかかってきそうなサアヤの雰囲気に少しだけ考える素振りをしてから、その手にハンドガンタイプの強化外装《フォックス・ファイア》を取り出したモビールは、反射的に前に出たサアヤにブレード・ファンを広げさせて、唯一本体に当たるであろう持ち手の部分にフォックス・ファイアを撃ち込んでくる。
その炎には謎の粘着性があって振り払ってもなかなか消えてくれない嫌らしさがあり、その対応に足が止まったサアヤだが、炎はものの数秒で勝手に鎮火しHPゲージを微減させた程度に留まった。
「なっはっはっ!! これで僕の勝ち確定だぁ!!」
攻撃としては手に焦げ目がついた程度のものだが、それだけでもモビールにとっては勝利を確信するだけのものだったようで、足を止めていたサアヤはふざけるなと再びモビールに接近しようとしたものの、その時にはモビールの両足の裏にローラースケートのような強化外装《ドンキー・ライダー》が装備されていて、謎の敬礼をしてからそのドンキー・ライダーによる機動力で逃走を開始してしまう。
速度的にはサアヤが全力で走っても追いつけないほどの加速を得たモビールは、みるみるうちに遠くへと行ってしまい、ガイドカーソルはあっても速度差でどうすることもできず、残りの時間をひたすらモビールを追いかけ回すことしかできずにタイムアップで敗北したサアヤは、この時ばかりは全損させようとしてきた親とその仲間以上に別のベクトルでモビールに対して憤慨し、すぐにマッチングリストを確認するも、すでに名前はなくその日は終了。
あのクソ野郎にリベンジするまではアンインストールはしないと心に決めたサアヤは、翌日に対モビール戦の作戦を練るために登校中、まずは自分のアバターについて色々と調べていき、そこでようやくアビリティや必殺技の存在と使い方を知ることになった。
逆に言えばそれなしで親達を全損させたのは完全にパワープレイ極まりなかったが、これが後に《猪突猛進》だのという不名誉な2つ名をもたらす片鱗を見せていたのかもしれない。
そして放課後にリベンジ戦へと挑んだサアヤが同じ戦法で仕掛けてきたモビールに対して《ブラスト・ゲイル》で壁に激突させて昏倒を狙い、その隙にボッコボコにすることで勝利。
鮮やかとは見る者は思わないちょっとしたバイオレンスな様相でのリベンジだったものの、それでスッキリしたサアヤは心置きなくアンインストールできると思っていたが、その対戦のギャラリーに世にも酔狂な輩がいたようで、豪快な戦い方をしたサアヤを笑いながら称賛。
「いやぁ、清々しいほどにフルボッコだったなぁ。モビールも同じ戦法が通用するとか思うのが間違いだわな」
「……誰よアンタ」
「俺か? 俺は《レッド・ライダー》ってんだ。いいだろ、名前そのままの赤だぜ赤!」
「私、赤色のデュエルアバターが大嫌いなんだけど」
「おいおい、初対面のやつに色だけで嫌いとかずいぶんだな。まぁでもいいや。お前のその豪快なところが気に入ったんだ。これから観戦者登録させてもらうからよろしくな。えっと、エピ……」
「…………《エピナール・ガスト》。そういう読み方みたい」
「おう、じゃあガスト。また面白い対戦を見せてくれよな」
最初は何を言ってるんだこいつは。とさえ思ったサアヤは、この対戦を面白いなどと評価されて困惑。
サアヤはただ自分に何もさせずに勝ちを取ったモビールにムカついてリベンジしたに過ぎなく、そこには面白さなど求めてはいなかった。
だがライダーに去り際でそう言われて、その夜に物思いに更けたサアヤは、翌日になってもアンインストールはせず結局はのらりくらりとブレイン・バーストを続けていった。
おそらくサアヤにとってモビールとの対戦とライダーとの出会いは、当時のブレイン・バーストを続ける1つのターニングポイントになっていたことは間違いない。
それからのサアヤは徐々に対戦の楽しさを覚えていったし、ライダーに誘われるままにライバル関係ではあるも時にはタッグなどを組んで、レベル4になってすぐにレギオン《プロミネンス》を結成した。
その後にも色々とあったが、2047年6月末となった現在においてサアヤが思うことは、辛いこと以上にそれら1つ1つの『思い出』はかけがえのないものとなっていたこと。そして何よりも……
──皇照良というどうしようもない
その思い出と出会いをくれたブレイン・バースト。加速世界を加速研究会などというくだらない企てをする組織に壊されていくのは何よりも許しがたいと考えたサアヤが『大切な加速世界を守るため』の心意を扱えるようになるのは当然と言えたのかもしれない。
そして今、その加速研究会が生み出した巨悪の根源、ISSキット本体がダメージを負いながらも攻勢に出て《ダーク・ショット》をフーコへと向けて放とうと……いや、そのさらに後方でイマジネーションを練り上げるために舞い続ける謡を狙っているのがわかる。
それはフーコにもすぐにわかったか、回避に動くこともギリギリで出来たはずの行動をキャンセルして、後ろの謡を守るように両手を左右に広げる。
「無茶だ、レイカー!」
単純に考えてもキット本体のダーク・ショットは直撃など耐えることすら不可能な威力を持っていることはこれまでの戦闘で十分にわかるし、フーコもそれは理解しているはず。
それでも謡を守るために立ち塞がる選択をしたフーコに黒雪姫も叫び駆けつけようとするが、サアヤが力一杯に飛ばしたせいでひと息で駆けつけられる距離ではなく、無情な虚無属性の光はキット本体の瞳孔から発射されてしまった。
「──今できなくてどうするの、都田沙絢!」
それを一番近くで見ていたサアヤが何もせずに棒立ちなど情けないにもほどがある。
そうして自分を奮い立たせてダーク・ショットを受けたフーコへと駆け、防御ではなく虚無属性の心意に正の心意をぶつけて中和しているようなフーコの必死な様子を確認。
過剰光を生み出して纏っているはずの両手は中和のスピードに追いつかず視覚化する前に消えてしまってる感じだが、それほどにギリギリな状態ならフーコも長くは持たないだろう。
フーコが受け止めるダーク・ショットの余波は周囲に拡散して床や天井の崩壊を助長していて、いつ崩れてもおかしくないそれを食い止める意味でもサアヤはブレード・ファンの展開剣に緑色の過剰光を纏ってフーコの隣につく。
「半分くらいは削ってやるから、ちゃんと守りきるわよ!!」
「──ええ。必ず!」
そこからブレード・ファンの両端に持ち替えて、18本の展開剣を後方から一気に前面へと展開し、
「《ブラスト・ゲイル》!!」
横倒しのミキサーの刃のように高速回転を始めた展開剣がダーク・ショットの虚無エネルギーを削り出す。
しかしあくまで必殺技であり、そこに過剰光を纏わせているだけの防御技はまだ大部分のエネルギーを削るには至らず、むしろ展開剣ごとサアヤとフーコを押し込みに来る。
だからこそサアヤはここからさらにイマジネーションを練り上げて、ずっと名前もなかった心意に明確なイメージを作り出す。
ブラスト・ゲイルの生み出す小さな竜巻。これをより強固にした、攻防一体の心意。
「──《
そのサアヤの強いイマジネーションによって高速回転する展開剣はより強烈な緑色の過剰光を纏って勢いを増し、削り取った虚無属性のエネルギーは床や天井に突き刺さることなく霧のように霧散し無力化。
しかしやはり規格外の心意のエネルギーの全てを削ることはできずに半分以上は突破してフーコとサアヤに殺到するが、それをフーコが中和することでダメージはそこまで酷いものでもないが、無視できるほどでもない。
「頑張れレイカー! ガスト!」
「加勢するの!」
キット本体のエネルギーが尽きるのが先か、こっちのHPゲージが吹き飛ぶのが先かの勝負になったところで、駆けつけていた黒雪姫とあきらも加わって中和するフーコの心意に同調するように手をかざして虚無属性のエネルギーを押し退けてくれ、HPゲージの減少も微々たるものになってくれる。
その4人分の振り絞られた心意がキット本体の心意を遠ざけ、サアヤのブラスト・ゲイルが終わり扇子に戻ろうとして戻れず粉々に砕け散ったところで、キット本体からのダーク・ショットも終わりを迎えて、膝から崩れ落ちたサアヤ達。
だがこれでいい。これで約束の2分は稼ぐことが出来た。
そんな思いと共に後方の謡にあとは任せたとばかりに脱力すれば、その期待に応えるように準備を整えた謡が言葉を紡ぐ。
「《あわれくるしき
見れば謡を包み込む紅蓮の過剰光は炎となって天井にまで立ち上ぼり、その中で舞う謡の神々しさは状況を忘れさせるまでに美しい。
「……《土中の塵とぞなりにける》」
その舞の中で持っていた扇子を掲げて歌が響いた直後、ごうっ! というとてつもない轟音が起こり、その音の発生源はISSキット本体がある場所辺り。
反射的にそちらを見れば、その下の大理石の床が直径10mほどの範囲を真っ赤に染めあげ、キット本体を範囲の中心に捉えていた。
その光は謡が練り上げたイマジネーションが床を構成する大理石をオーバーライドして溶かし超高温に熱してマグマと化した溶岩沼。
溶岩沼はキット本体の出す虚無のエネルギーすらも焼き尽くして消滅させ、座標を固定されているのだろうキット本体をもやがては溶かし始める。
その謡の心意には如何なキット本体も苦しみを表現するように眼がしきりに開閉されて、苦し紛れの《ダーク・ブロウ》も溶岩沼に撃ち込まれたが、変化など熱エネルギーがわずかに減る程度の微々たるもので、容赦なく焼き続ける。
「すっご……でもあれは第4象限の……」
「ええ、メイデンはそれも覚悟して使っているはずよ」
しかし謡がいま使っている心意技は、先の《ヘルメス・コード縦走レース》において《ラスト・ジグソー》が使った心意技と同様の第4象限《範囲を対象とする破壊の心意》に分類されるもの。
確かに威力は高いものの、その分で心意の暗黒面に引きずられる力も増すため、フーコなどからすれば使ってほしくはない力。
それでも使うと決めた謡の覚悟を汲んでやめてと言わないフーコの気持ちは痛いくらいに伝わってくるが、自分達ではもうあのキット本体に攻撃するだけの力がないこともあって止めるわけにはいかない。
だから必ずキット本体の破壊を成し遂げてくれと願いを込めて謡を見守るサアヤ達は、ついにダーク・ブロウを放つための触手も残っていた装甲も焼け落として、眼球のみになったキット本体にもうひと息と思いながらも、直径2m半ほどになったそれが放つ不気味な存在感に戦慄。
もはやその眼球も溶岩沼に半ばまで沈み込んでしまっているのに衰え知らずの敵意に気持ち悪さを感じた瞬間。
突如としてキット本体の瞳孔が漆黒のオーラを纏って集束し、最後の足掻きとでもいうようにぐったりするサアヤ達を照準。
「ちょっと……マズ……」
「主ら! 衝撃に備えぃ!!」
もうしばらくはまともに動けないほどのイマジネーションを振り絞ったばかりのサアヤ達はダーク・ショットが来るとはわかっていても体が動いてくれなくて焦る。
だがそこに響いたユリの叫びに別の意味で驚いた一同は、言う通りに衝撃に備えて反射的に全員で掴み合って固まると、ダーク・ショットを放とうとしたキット本体が……いや、その下の溶岩沼ごと沸き上がってきた圧倒的な破壊の衝撃によって吹き飛び、ダーク・ショットは照準が上向きになってサアヤ達の頭上の天井を撃ち抜いていった。
その破壊によって落ちてきた破片がゴスゴスと体に当たる中で何が起きたのかを考察したサアヤは、キット本体のあった場所。ポータルの下にぽっかりと開いた大穴が垂直ではなくさらに奥の天井を貫通していることに気づく。
その軌道からして放たれたエネルギーはおそらくサアヤ達のいる場所より『後方の下』から放たれたことがわかり、そんな位置から攻撃してくるのは1人しかいない。
「あのアホ娘はまったく、良い仕事するじゃないのよ……」
「何とかとハサミは使いようとはよく言ったものだな……」
「それはもうほとんどバカって言ってるわね、ロータス」
「抜き撃ちはバカにはできないの」
崩落が止まってから、ダーク・ショットを止めてくれた《ボッシュ・ルーレット》に各々が感謝なのかよくわからない言葉を贈りつつ、今の攻撃がとどめとなったのか、座標固定されていたはずのキット本体もポータルから離れて後方に転がっていたが、その瞳孔は未だに光を放ったまま、明確にどこか。方角にして南側を向いているように見えた。
そして瞳孔に集束していた光は何の発射音もなく瞳孔から放たれて向いていた方向へと飛び出し、しかし行き止まりとなる壁を透過してしまう。
攻撃目的ではない何かとすぐに理解しつつ、サアヤ達はそれが何であったかも同時に理解する。
──あれは、キット本体がこれまで蓄積していた膨大な悪意そのものだ。