アクセル・ワールド~蒼き閃光Ⅱ~   作:ダブルマジック

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原作16巻辺り
Acceleration Second56-A


 

 ──ゴゴン!

 凄まじい轟音と共に中庭全体を揺らす微震が発生してすぐ。

 《ウルフラム・サーベラス》の体を依代に出現した能美の周囲に紫色の装甲板に覆われた武装オブジェクト群が実体化する。

 細長いコクピットブロックが後ろから能美を包み込んで姿が見えなくなり、そのコクピットブロックの左右に長大なレーザー砲を備えた腕が接続される。

 背面には4つの大型バーニアを備えるスラスターブロックが貼り付き、下からたくましい2本の足が飛び出てきた。

 強化外装はその持ち主によって同じものでも姿形が微妙に変化するのはよくあることと知ってはいたテルヨシだが、能美が装備した《インビンシブル》はユニコが装備した時とは全く異なる人型をしていて、唯一あるべき頭のパーツがない様は不気味さを増している。

 もちろんその合体が完了するのを悠長に待っていたわけではなかったが、ハルユキとユニコが遠距離攻撃を仕掛けるのを後ろの《ブラック・バイス》と《アルゴン・アレイ》が牽制して阻止していた。

 そうして悠々と合体を完了させたインビンシブルは校舎の高さに迫るほど大きいが、その分で細身なフォルムとボリューム感──全てのパーツがあるわけでもないからか──だ。

 しかし能美が遠隔の赤と近接の青の中間色である紫だからか、主砲のレーザー砲はスケールダウンしつつ4本の鉤爪を備えた凶悪な両手と、2本の爪を飛び出させた両足に、肩と膝にも巨大なスパイクが装着されていた。

 

『どうだ……これが、力! これが、支配するということだッ!! 略奪による支配!! それこそが、唯一、絶対的な力なんだッ!! 誰がなんと言おうとなッ!! はははは……、ははははははははは!!』

 

 すでにコクピットの中で姿が見えない能美は、着装を終えたインビンシブルの力に酔いしれて、直前のテルヨシの言葉を振り払うかのように高らかな笑い声をスピーカー越しに響かせる。

 その笑い声を聞いても能美という存在がただ悲しいと思うテルヨシは、人から奪うことでしか自己を主張できない歪んだ在り方と、ギブ&テイクにも思えるが実際には加速研究会にただ利用されていることにさえ気づけていない哀れな現実から、せめて解放してやろうと心に決める。

 

「もうちょっと回復するのに時間がかかりそうだから、オレとタクム君でチユチユを守ろうか」

 

「じゃあ僕とニコ、パドさんであいつから隙を作り出します。ニコ、パドさん。インビンシブルと戦うことになるけど、大丈夫だよね」

 

「構わねぇ。思いっきりやってくれ」

 

「K」

 

 そのためには能美が受け持っていた役割であるインビンシブルを強奪するという行為自体を『なかったことにする』のが最善なのはテルヨシ達全員での共通認識。

 それを可能にするのがチユリのアバターが持つ必殺技《シトロン・コール》であることも先の能美との決戦で理解があるため、チユリが如何にインビンシブルに近づきシトロン・コールを使えるかが勝負の鍵となる。

 だからチユリを生かしながら能美に隙を作り出し、インビンシブルのパーツを取り戻すためにためらいなどがないかと小声でユニコとパドに確認をするハルユキに、ユニコとパドも力強く返事をして目の前の首なし巨人と向き合う。

 

『作戦会議は終わりましたかぁ、《勇者とその手下》の人たちぃぃ。ボクをがっかりさせないで下さいよ……最低5分は楽しませて貰わないとねぇ!』

 

 不意打ちで呆気なく倒しても面白くないとでも言うようにテルヨシ達の作戦会議が終わるのを待っていた能美が、そろそろ始めてもいいかといった意味で左腕の主砲をテルヨシ達へと向けてくる。

 スケールダウンしたと言ってもその主砲の直径は15cmはあるので、まともに当たれば体に大穴が開くか即死する威力は十分に秘めている。

 さらにその能美の後方には物静かに見守るバイスとアルゴンが控えているが、この2人が攻撃してこないことなどあり得ないのでそちらにも警戒をしなければ……

 主に能美に意識を集中しなきゃならないハルユキ、ユニコ、パドをサポートする立場にあるテルヨシは、2人が動くのを牽制する役目も密かに受け持つ覚悟をしたが、いざ戦闘開始となる直前。

 突如として近くのユニコやバイス、アルゴンが何かの気配を察知したのか、その顔を北の空へと向けてしまう。

 まだ感覚的な機能が鈍っているテルヨシもそれに倣って北の空を見れば《黄昏》ステージの夕空の中に一筋の赤いラインが音もなく伸びてくるのが見える。

 速度的には大したこともなく、攻撃力というのもおそらくは皆無とわかるそれは、そのままの軌道ならこの学校の上空を素通りするもので警戒するほどのものではない。

 しかしテルヨシは……いや、この場にいるハルユキやユニコ達すらも、その赤い光に対して凄まじいまでの怖気を覚えて、あまりに冷たい恐怖の感覚にアバターを動かす気力が一時的に麻痺してしまう。

 ここで能美に攻撃されたら成す術なくやられると確信し必死に体を動かそうとしたのだが、その能美すらも赤い光に注目して主砲も発射体勢で止まっていた。

 そして赤い光はこの学校の真上で急激な挙動の変化を見せて真下へと曲がり、この中庭めがけて降ってくる。

 その光が放つ音はさらに不気味で、ひいぃぃぃん、ぎえぁぁぁぁ、という何かの悲鳴にさえ聞こえ、始めからそこが到達地点だったかのように光は能美が乗り込むインビンシブルのコクピットブロックにうねりながら命中。

 爆発などの物理的な現象は起こらなかったが、装甲表面にへばりついた光はスルスルと隙間から内部へと入り込み、直後。

 

『う……うわあっ! やめろっ……! 聞いてないぞ、こんな……バイス! アルゴン! さっさとこれを止めろ──ッ!!』

 

 能美の悲鳴のような絶叫がこだまし、インビンシブルの両腕がもがくように滅茶苦茶に振り回され、両足が大理石のタイルを踏み荒らす。

 その様は外からは把握できないが、内部へと入り込んだ光はどうやら能美におぞましい現象をもたらしているようで、その悲鳴だけで想像を絶する何かが起こっていると漠然とわかる。

 

「嘘やろッ……早すぎるやろ、幾らなんでも! まさか……連中、アレをやりよったんか……さすがにこれは、会長はんも想定外やろ…………」

 

 赤い光の正体は判然としないが、最初の反応からしてそれには理解があったアルゴンは、能美に起こっている現象を止める様子もなく考察に回りつつで言葉を漏らす。

 その口振りからして加速研究会側でもこの現象はイレギュラーなのは間違いなく、足掻きながら校舎を殴打し始めた能美が起こす余波の震動によって硬直から回復することができた。

 早すぎる、ということはこの現象を加速研究会側として『いずれは』起こす予定だったことを意味し、アルゴンが指したアレというのはおそらく、別行動の黒雪姫達が破壊を目指したはずのISSキット本体。

 ならばあの赤い光はISSキット本体という依代を失った、数多のキットユーザーから集めた心意のエネルギーということになる。

 つまり黒雪姫達が無事にキット本体の破壊に成功したことにはなるが、加速研究会が欲していたのがこの赤い光。心意のエネルギーであることは間違いので、まだ解決とはならないか。

 それらを高速で思考している間にチャンスだと直感したユニコが「よくわかんねーけどぶちかます!」とハルユキと一緒に遠距離心意技で足掻く巨人に攻撃を仕掛け、左肩辺りに全弾命中した攻撃によって巨体がぐらつき、ジョイント部が破壊されたか左腕がスパークを迸らせながら地面へと落ちた。

 それを受けて足掻いていた能美が動きを止めて、こうなった原因が加速研究会にあるということはわかったか、その視線をバイスとアルゴンへと向けて「騙したな」と吠える。

 それに対しての2人の返答はあまりにも薄情なもので、なってしまったものは仕方ないと、計画の若干の狂いは許せと宥める。

 そんな残酷な言葉に自己中心的な思考の能美は苦しみながらも残った右腕の主砲をギチギチと見捨てる風のバイスとアルゴンへと向けて助けろと迫るが、それさえもどこ吹く風な感じで肩をすくめるだけで無理だとバッサリ。

 こちら以上に今の状況に理解があるのは間違いない2人は、すでに撤退の雰囲気を醸し出していて、それがどんな意図を持つのかはわからないがテルヨシ達の陣営に顔を向けたバイスが言葉をかけてくる。

 

「最後に、諸君らにも1つ忠告しておこう。強化外装を取り戻そうなどとは思わず、今すぐ離脱することをお勧めするよ。融合が早すぎたとはいえ、アレはもう君たちの手に負える存在ではない」

 

 こっちの意図をわかった上で離脱を勧めるバイスは、逃げる気満々で今回の達成度が4割程度だのとボヤくが、その4割を2割くらいにまだしてやれる可能性が残されているので、向こうが減ってくれる分にはありがたいと喧嘩腰のユニコの前にサッと腕を割り込ませて止める。

 

「悪いがその忠告の中に含まれてる『強化外装を取り返されたくない』ってやつは砕かせてもらうぞ」

 

「ふむ、聞こえ方によってはそうとも取れてしまうか。私としては純粋にそう思っただけなのだがね」

 

「そうやでテイルちゃん。ウチらにも人の血。良心ってもんがまだあるっちゅうこっちゃ」

 

「ケッ。バーストリンカーを道具としか思ってねぇようなやつらがよく言うぜ」

 

 撤退するなら好きにしろといった意味合いで返したテルヨシにも動じなかった2人は、それが不可能だとでも思っているのか意思は変えずに戦意を引っ込めて、いよいよ能美も我慢の限界といった具合にバイスとアルゴンを撃つ段階に踏み込む。

 しかしその動向に注意は払っていたバイスがいち早くその体を崩して2枚の板へと変化すると、呑気に手を振るアルゴンをその板で挟み込んで校舎が作り出す影の中へと沈降しあっという間に姿を消してしまう。

 それとほぼ同時に放たれたインビンシブルの右腕の主砲が2人がいた地点に突き刺さったが、収まった余波のあとには粉々にされた大理石のタイルと抉られた地面の破壊の跡しか残っていなかった。

 影の中に入られてしまえばもうバイス達は追えないので、春先の全損する直前のようにとにかく何でもいいからすがろうとする能美が絶叫する様を静かに見たテルヨシは、能美にではなく逃げたバイス達に少しだけ意識を持っていって思考するも、すぐに今はいいかと切り替える。

 徐々に能美という存在が薄れていくような感覚が強くなる中で、それに反比例するようにインビンシブルの装甲板からは黒いモヤのようなオーラが漏れ出てきて、それにざわつく感覚に抗ってハルユキがユニコの掛け声と共に再び巨人へと心意攻撃を放つ。

 だが2人の心意攻撃は巨人の背中に直撃したにも関わらず全くのノーダメージ。

 観察した限りでは漏れ出ているオーラが2人の心意攻撃と装甲の間に集中して割り込んで阻んだようで、結果としてそのオーラが尋常ではない心意のエネルギーを含んでいることを証明していた。

 しかも攻撃されたことにさえ気づいていない様子の能美が、とうとう呻き声も掠れてしまい、それが消え行く最中で突如として『別の何か』に変質した気配と共に不気味な悲鳴が発せられた。

 

『きえて……キエテ……えて、て、テ、で、でで、デデデ、ディッ、ディッ、ディル、ディル、ディルディルディル、ディルディルディルディルディ──────』

 

 人の悲鳴とは一線を画すほどの不気味さを持った悲鳴は、しかし絶叫と呼べるものになる前にぜんまいのネジが切れたように途切れてしまい、巨人の動きも零化したようにピクリとも動かなくなる。

 いや、動いてはいないが、今や全身に広がったオーラがジワジワと左肩のジョイント部に集中していき、そこから血のように尾を引きながら地面へと垂れ落ち、オーラが意思を持つように地面を這ってうごめき、目指す先にあった左腕にまとわりつくと、それを引き上げるようにしてオーラが集束して左腕が肩のジョイント部に再接続されてしまう。

 強化外装のリフレッシュは持ち主のフィールドからの離脱を経なければできないが、そんな常識すらも覆してきた目の前の巨人は、首なしのはずその姿で明確にテルヨシ達を見ている気配を出しながら低く唸る。

 そして左腕を戻したオーラは再び全身へと広がってその密度を上げると、今度はインビンシブルの装甲をより禍々しく、凶悪で鋭利なフォルムへと変化させ、最後にはずっと違和感を残していた頭があるべき部分に半球形の頭が出現。

 その頭の正面はすぐにまぶたのように開いてその奥から血のような虹彩の眼球が現れてテルヨシ達を射抜く。

 

『ディルル……ルルロロロオオオオ──────ッ!!』

 

 大鎌のような鉤爪に変化した両手を高々と振り上げた巨人は、意思というよりも闘争本能のようなものを全面に放出させるように咆哮。

 ビリビリと刺すようなプレッシャーを受けながら目の前の巨人に抱いたテルヨシの結論は、最も表現するに相応しい名前をハルユキが呼称する。

 

「……災禍の鎧……マークⅡ…………」

 

 アルゴンの早すぎるの発言からもそういう認識で間違いはないと思ったテルヨシは、咆哮を終えて両手を下ろし再び沈黙したマークⅡがまだ誕生して間もないことを考え、同時に撤退していったバイスとアルゴンを頭の片隅におきつつハルユキ達に話しかける。

 

「バイス達に啖呵を切っておいて、ここで撤退はないわな、ニコたん」

 

「ったりめーだろ。ここまで来たら行くっきゃねーよ。いいぜ、今日のシメにあのデカブツをぶっ飛ばして、でっけー花火打ち上げようぜ」

 

「K」

 

 倒す対象が能美からマークⅡになってしまったが、その目的自体が変わったわけではないので、ユニコもパドも交戦する意思は変えずに気合いを入れ、その2人が戦うならとハルユキ、タクム、チユリも気合いを入れる。

 

「みんなであいつと戦って勝って、それでインビンシブルを取り戻しましょう!」

 

「だね。あれが災禍の鎧と似たものなら、時間が経つほどに強くなるのかもしれないし、戦うなら今だ」

 

「よぉーし! そうと決まったらガツーンといきますか!」

 

「よし、そのチユチユの気合いはオレが預かってぶつけてくるから、チユチユはチユチユにしかできない役目に集中してね」

 

「……先輩、あたしって基本的にサアヤ姉さんタイプなのに、こんなんばっかでいい加減フラストレーションが……」

 

「んじゃ帰ったらオレのクラスのケーキを奢ってあげようではないか」

 

「もちろんあたしとパドとユリさんの分もだよな?」

 

「ここぞとばかりにたからないでくださいますかね……」

 

 行動開始前としては緊張感に欠けるやり取りをしてしまいはしたが、マークⅡを前にして1度はガチガチに硬直してしまった体をほぐすには丁度良いものとなったか、テルヨシの困った声色に小さく笑ってから一同が集中力を上げてマークⅡを睨む。

 その闘志がマークⅡにも伝わったのか、出現した頭の単眼をぎょろりとテルヨシ達にフォーカスし、その眼に続く形で体も向きを変えて正面を向けてくる。

 マークⅡが内包するエネルギーは底知れないほどに強大なのは間違いないが、この破壊不可の校舎に囲まれた中庭の広さに対してマークⅡの大きさは少々窮屈なことも事実で、やりようによっては校舎内からほぼ一方的に攻撃することも可能かもしれない。

 実にズル賢い戦法だとは思うが、進んで危険を冒していい場面でもないのだから抜け道的な攻略は考えてもバチは当たらない。

 ハルユキもインビンシブル自体が遠隔型の強化外装なら足元は弱いはずと分析し、まずはチユリ以外がそこに飛び込んでみようと意見を出し、ユニコ達も了承。チユリも被弾しないために一旦校舎内へと退避することを決める。

 それらの初動を決定したところで、いよいよマークⅡもその両手の主砲をテルヨシ達へと向けて攻撃の意思を見せ、それが放たれる直前に足元へと全力疾走し回避するタイミングを図った。

 が、チャージを開始した主砲がおぞましいほどのエネルギーを蓄えていくのと同時に、それに比例して周囲の空間が歪んでいくのが目に見える。

 明らかに想像を絶する威力の攻撃が来る。

 それはマークⅡの足元へと飛び込むことで回避できるのか。

 ──否。

 本能が無理だと警告するようにその場に、中庭に留まることを拒んできて、その本能が正しいものだと瞬時に判断したテルヨシは、同様の本能が働いたらしいハルユキがみんなを抱き寄せようと声かけしたところへあえて行かずにユニコに頼み事をする。

 

「ニコたん、オレを校舎の屋上に打ち上げて!」

 

「1人で大丈夫なんだな! ならブッ飛べ!」

 

 そうした判断をしたのは、アビリティによる翼と一緒に見える4枚の光翼があるにしても、この人数を同時に飛んで運ぶのは不可能だと思ったからで、それならば瞬間的にでも速度を出せるテルヨシが自力で動いた方が負担を減らせると考えてだ。

 その意味を即座に汲み取ってくれたユニコが小ジャンプしたテルヨシの足裏に添えるようにして深紅の過剰光を纏った拳で押し出して校舎の南側の屋上に着地。

 その時点でもうマークⅡの主砲は発射される寸前で、ハルユキも残った全員を抱き込んで急いでその場から飛び立とうと翼を震わせる。

 

「《インビジブル・ステップ》」

 

 その様子を呑気に見ている余裕もなかったので、主砲が火を噴く前に両足の爪先をトントン、トントン、と床にタッチして予備動作を終えてから必殺技発声。

 心意は未だ使える気配すらなかったが、システムアシストで動ける必殺技は問題ないとわかっていたテルヨシは、そこから時速360kmの3mショートジャンプを5秒間、可能な限りで連続使用してマークⅡから離れるように全力ジャンプ。

 ほぼほぼ一直線に南へと進路を取っていたテルヨシだったが、その最中にマークⅡの主砲が中庭に着弾し大規模な破壊が巻き起こったようだが、後ろすら見る余裕がないほどの破壊の余波を背中に感じてかつてない恐怖がその身を襲った。

 

「ぐっ……っとと」

 

 気づけば5秒という必殺技発動時間を過ぎてショートジャンプが不発しバランスを崩して地面に倒れかけるが《テイル・ウィップ》を支えになんとか踏み留まることができた。

 マークⅡの主砲の破壊からはなんとか被害を受けずに回避はできて安堵の息を吐いたテルヨシだったが、同時に来た道を振り向いて絶句。

 距離的には約200mは離れたはずだが、辿ったはずの道の奥が隕石でも落ちてきたかのように何物も存在しない大きな穴を開けていた。

 その中心部は間違いなくマークⅡが主砲を撃った中庭のはずだが、その中庭を取り囲んでいたプレイヤーホームで破壊不可のはずの校舎すらも跡形もなく消失している。

 そしてそうとわからせるようにクレーターの中心にはその破壊をもたらしたマークⅡが自らの攻撃でもダメージを受けた様子もなく佇んでいる姿がハッキリと見えた。

 

「あれを倒すってか。ヤベぇな……」

 

 まさに規格外と呼べるほどのマークⅡの力に思わず弱音が出かけたものの、それで「やっぱ無理」と言える状況でもないことを認識して言葉を飲み込み、この破壊にハルユキ達が巻き込まれていないことを上空に浮かぶ姿から確認したテルヨシは、当たればそれで終わりの攻撃力を有するマークⅡを倒すために来た道を走って戻り始めた。

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