ようやくの思いで《無制限中立フィールド》から離脱して、今回の目的を全て達成したあとの通常対戦フィールド内でのミーティングが開始され、元気になった日下部綸こと《アッシュ・ローラー》の姿もある中、黒雪姫の話の最後に付け足された情報の衝撃にテルヨシ含めた初耳組が飛び上がっていた。
「あのアホ娘が《レッド・ライダー》の《子》だって? 冗談だろ」
「ニコ、それはルーレットに失礼」
「どうりで《親》が名乗り出てこないわけだ。加速世界にもういないんだもんなぁ。でも《七王会議》の当日にインストールしたってことは、ルールーはレクチャーとか受けられなかったんじゃないの?」
黒雪姫は忘れかけていたくらいに流し気味の話題だったが、こっちは《ISSキット》本体の破壊よりも驚く事実なだけに《ボッシュ・ルーレット》がライダーの子だと半信半疑になるのも仕方ない。
しかし実際にルーレット本人がそう話して、ライダーのゴーストもその事実を認めて受け入れていたと聞けば信じるしかない。
だがそれならとテルヨシがもっともな疑問を口にすれば、察しが良いなとサアヤが答える。
「まぁその辺はリアルでライダーと恋仲だったソーンが親代わりになってたみたいよ。ルー子も『お姉』って呼んでたしね」
「赤の王の子であの紫の王《パープル・ソーン》が親代わりって……なんと言いますか、経歴だけ見れば凄いですね……」
「そんなこと言ったらハルだって黒の王の子でフーコ姉さんの弟子じゃん。自分が恵まれてるってことに気づかない鈍感さはどうかと思うけどぉ」
「あらチーコ、嬉しいことを言ってくれますね。それと鴉さんはサッちゃんと一緒に後日、たっぷり『可愛がってあげます』ね」
「は、はひ……お、お手柔らかにお願いします……」
よく考えればリアルではそういう関係にもなってたんだっけなと、ライダーとソーンのカップリングを今さらに思い出して納得したテルヨシを他所に、ハルユキとチユリとフーコが和むコントを披露してひと笑いが起きる。
その笑いだけでも皆の中で心に余裕が出てきたことがうかがえるが、いつまでも脱線していたら30分などすぐなので黒雪姫が仕切り直すように両手の剣を打ち付けて自分の話は終わりだと告げる。
「あ、ごめんロータス。最後に1つだけ。テル、一応ルー子にも声はかけといたんだけど、レギオンに入ってくれるかどうかは微妙なところだったわ。とりあえず返事は後日ってことにしてあるから、接触とかあったら聞いといて」
「抜け目ないねサアヤ。了解でーす。姫、続きをどうぞ」
「ン、では次は順序でいくとハルユキ君がいいかな? ハルユキ君、お願いしてもいいか?」
「あ、はい。えっと、話すとなるとバイスを追っていったところからですね──」
最後にサアヤがちゃっかりルーレットをレギオンに勧誘したことも告げられたが、これはテルヨシとサアヤと、場合によってはユリにしか関係ない話なので、この場ではあっさりと終わらせてハルユキに話の主導権が移っていった。
バイスを追っていったハルユキは、その先にあったあのプレイヤーホームまで直通の影の道──バイスが作ったと思われるものだ──を通って食らいつき、そこにいたテイムされた衛兵エネミーに阻まれて1度はバイスを見失ったらしい。
その時にハルユキが出現させていた4枚の光翼。《災禍の鎧マークⅡ》を倒した時には失われていたが、あれを貸し与えたという《神獣級》エネミー《大天使メタトロン》。その第2形態が翼を介して助力し、別の影の道を通ってきたタクムとチユリ──テルヨシとパドもこの道を通ってきたはずだが出た場所は違ったみたいだ──と合流してあの中庭に到達したのだとか。
あとはテルヨシも知るところの出来事が中庭で起こり、マークⅡと一緒に空の上まで飛んでいったところに差し掛かって改めて話に集中。
上空500m付近にまで引っ張ったマークⅡは突如としてその手を放して人型形態に戻り、落ちながらハルユキとユニコに2門の主砲を発射。
これがテルヨシが見た衝突の正体らしいが、衝突の直前にハルユキは《無制限中立フィールド》でさらに思考を加速させたような空間。メタトロンが導いた《ハイエスト・レベル》なる領域に足を踏み込み、無制限中立フィールドで流れる時間をほぼ止まったような状態で、さらに大きく認識を広げ俯瞰で世界を見ることができ、それによってテルヨシ達や黒雪姫達が今、どこにいて何をしているかを知ったのだとか。
そのハイエスト・レベルでずいぶん前から世界を見ていたメタトロンは、自分が生まれた頃はただ挑戦してくるバーストリンカーを倒すだけの思考しか持たなかったことを話し、加速世界誕生から今までただの1度も倒されずに生き続ける中で『自分という存在が何なのか』を考えるようになったのだと。
それはもう人間と同じような確かな意思がメタトロンにも存在することを意味していたが、そのメタトロンがハルユキから《帝城》内部の情報を教える代わりにマークⅡを倒す術を託され、その力でメタトロンと融合のような状態になって無制限中立フィールドへと戻り、メタトロン第2形態と同じだけのHPゲージと強度を持ったハルユキは主砲の一撃を直撃されながら耐え抜く。
それでもHPゲージを8割ほども削られて、これで自由落下に入ったマークⅡは地面に激突して終了、かと思われたが、スラスターを噴射したマークⅡがフーコのようにロケットのごとくハルユキに突撃して《ダーク・ブロウ》を放ってきたらしい。
その一撃にメタトロン第1形態も無敵状態で放っていた大出力レーザー《トリスアギオン》で迎え撃って、自らをトリスアギオンのエネルギーに変換したメタトロンの犠牲の末に攻撃をほぼ相殺しながら右腕を破壊。
そこから今度こそ落下に入ったマークⅡをユニコと協力して地面に叩きつけて沈黙させ、その後すぐにテルヨシ達が駆けつけて今に至るといった感じだったみたいだ。
それらを聞いてまるで夢の中での出来事のような感覚もある現実に言葉が出ない黒雪姫達。
テルヨシとて力を貸したというメタトロンの行動には驚かされたが、現実としてあのマークⅡを倒すまでに至れたのは、ハルユキとユニコの2人でも不可能に近い所業だったことは間違いない。
少しの沈黙のあとに黒雪姫が口を開いて、自分達がキット本体を破壊しなければマークⅡの誕生は防げていたかもと漏らすが、そこはユニコが《アルゴン・アレイ》の『早すぎるやろ』という発言から、取り返しがつかなくなるレベルに至るのを防げたと考える方が良いとフォロー。
それには同意だが、そのマークⅡの依代にされた《インビンシブル》のスラスターはユニコの物で、そのショックはまだ癒えることなく残っているはず。
それを押し殺してそう言えたユニコの気持ちを汲んでこれ以上の話は不要かと切り上げた黒雪姫は、全ての情報を揃えるために最後にテルヨシへと話の主導権を譲る。
「オレが加速研究会の拠点で見てきたものはハルユキ君とほとんど変わりないし、離脱前に別行動でしてきたことだけでK?」
「ああ、頼む。残り時間も半分を切ったからな」
ただここまでのハルユキの話でマークⅡ撃破までに話せることなどほぼなくなったので、そこはあえて省くと言うとみんなも了承してくれて、改めて再合流後に分かれてしてきたことを話し始めた。
加速研究会の拠点に《シーバ・カタストロフ》がいた理由と、そのいびつだった関係性について。
さらにカタフが担うはずだったと思われる『レベル10到達』の可能性と、プレイヤーホームの主にしてカタフの友人。加速研究会の会長の裏の顔を持つその人物が誰なのか。
その今後の明確な敵と定めるに値する人物が誰なのかを口にしようとしたところで、話に割り込みをかけた黒雪姫は、やはり話の中で確信したか有無を言わさない雰囲気でその口を開く。
「その名を告げるのは少し待ってくれ。我々もこの会議の最後に告げるつもりでいたのだが、よもやあれとカタフがリアルでも面識があろうとはな……」
「それからカタフから伝言。もう会えるかどうかわからないから黒の王にって。『3年前のあの事件のことは納得してなかったけど、今は納得してる』ってさ」
「今さらその事について誰かに理解され和解したいとも思わんが、わだかまりが1つ解消されたことを由とするか。しかし知らなかったとはいえ、加速研究会とリアルで面識があるとなると、やはりカタフの身を案じてしまうな……それこそお前達をポータル前で待ち伏せていたバイスの行動から察しても、2度と会えない可能性がある」
「そんな!? カタフさん、テル先輩との対戦を凄く、凄く楽しんでいたのに……サーベラスだって本当は……」
「納得いかないよね、そういうブレイン・バーストを心から楽しめる人をただの道具にしか見れないやつらが好き勝手にしてるのは」
「サアヤの言う通りね。カタフさんもサーベラスさんも、加速世界から失うには惜しい人達ですから、わたし達でなんとしても加速研究会の企みも組織自体も潰してあげなければ」
確かに話をまとめるなら今後の敵のことは今回浮上した疑問を出来る限り解消してからの方が締まりは良くなる。
そこに異論はなかったのでカタフから預かった伝言を無事に伝えてあげるが、やはりほとんど囚われの身に近い状態のカタフがどうなるか不安の声が上がる。
もちろんハルユキの言うように《ウルフラム・サーベラス》もまた加速研究会に囚われている1人なので、彼らを助け出す意味でもこの場の全員が加速研究会と最後まで戦う意思表示をしてみせる。
といったところで話は再び戻り、ハルユキがハイエスト・レベルで聞いたメタトロンの話の中で、この加速世界が存在する理由が最後の神器《
少し前にも《帝城》内でのあれこれをハルユキから聞いてはいたが、確かに四神よりも強いらしい《八神》が守るTFLは他の6つの神器と一線を画すほどの守られ方をしているのに引っ掛かりはあった。
さらに今回のハイエスト・レベルでハルユキは認識領域を広げたことで《ブレイン・バースト2039》と重なり合うようにかつて存在していた2つの世界。《アクセル・アサルト2038》と《コスモス・コラプト2040》にもまた等しく帝城が存在し、その最終目的がTFLに至ることであったこともメタトロンから聞いていた。
それが事実であるならと、当初のゲームクリアの条件と思われていたレベル10に至ることの意味についてを考察し始めた黒雪姫達は、やはりゲームの製作者と話をしてこのゲームの本当の目的とやらを聞くしかないのかもしれないと考える。
ただレベル10到達の難易度がずば抜けて高いことと、TFLに至る目的を天秤にかけた時に他のレベル9を5人も失わせてまでTFLを目指させる製作者側のちょっとした矛盾──事によってはレベル9が6人の方が強いかもしれないからだ──には黒雪姫も気づき、何かを恐れている節が見られると指摘。
それに関してはすでに終わってしまった2つの世界が関係あるかもとハルユキが口を開き、残ったブレイン・バーストにしか希望がないのだとして、レベル10になることでTFLに至るための止まれない、止まらない特別な何かが起きるのではと。
それでブレイン・バーストまでも消えてしまったら製作者側はもうどうしようもなくなるのかもと言いたかったハルユキの推測に付け足すように、フーコが初代の災禍の鎧の件でハルユキにその存在を示した《グリーン・グランデ》なら何か知っているかもと《グレート・ウォール》所属のアッシュに会談の申し出をお願いする。
さすがに緑の王を引っ張り出すなんて大役を任されてビビりまくりなアッシュだったが、怖いフーコに屈するように了承しかけた瞬間。
テルヨシ達が作る円座の外から、聞いたことはないがどこか浮世離れした落ち着きのある女性の声が会話に割り込んできた。
「それには及びません、バーストリンカーたち」
未だかつてこれほどの『上っ面なだけの優しさ』を含む声を聞いたことがなかったテルヨシは、その奥にある冷たい部分に戦慄しながら、黒雪姫以外の皆が立ち上がってその声がした第1校舎の屋上を見上げるのに続く。
そこにはデュエルアバターではない、華奢な体の純白サマードレスを着た金髪ロングの少女が仮面舞踏会のようにプラチナシルバーのマスクを着けてこちらを見下ろしていた。
所謂ダミーアバターながら、彼女が現れた瞬間にこの空間を満たす空気が彼女を中心にしたようなものへと変質したのがわかる。
それほどの存在感、絶対感といったものが彼女から放たれていることにこの場の何人が気づけたかはわからないが、これに呑まれてしまえばこの空間が丸ごと支配されかねないため、もしものことを考えながらギャラリーながらに『戦う準備』だけはしておく。
「誰だ、てめぇ!!」
その戦う準備もしながらだろうが、沈黙する黒雪姫に代わってユニコが予期せぬ来訪者に疑問を飛ばすと、微風に髪とドレスを揺らせた彼女──どことなく黒雪姫の学内アバターに似ていることから《白雪姫》とでも仮称しよう──は、自分のペースを保ったまま口を開く。
「私の名前は、あとでロータスに聞いてください。いまは、もっと大切な話をしましょう」
自分から名乗ることはしなかった白雪姫だが、その回答が意味するところは黒雪姫が彼女についてもうわかっている前提であること。
事実、未だ微動だにしない黒雪姫からは色々な感情が絡み合っているのがわかるし、そうならざるを得ないほどの人物など、ここまでの話からの考察でわかりきっている。
ただ白雪姫に立ち向かう決断をし宣戦布告をすべきなのは他ならない黒雪姫と感じたので、それをやってくれると信じて今はこのタイミングで現れて何かを教えようとしている白雪姫の話に耳を傾ける。
「アクセル・アサルト2038、そしてコスモス・コラプト2040。2つの世界が死に絶えてしまった理由……それは、どちらの世界も、偏りすぎていたからです。AA世界では自分以外の全てのプレイヤーは常に敵であり、CC世界では常に味方だったのです」
その白雪姫の話によれば、AA世界はルーレットのような生き方が基本にある殺伐とした世界で、闘争のみのそこが滅びの道を辿ったのは自明の理である。
対してCC世界では他のプレイヤーは等しく皆が仲間である、一見すれば優しい世界だが、その実は穏やかな時間の流れの中で『闘争』が欠けてしまってプレイヤーからは遠からず『飽き』が来てしまい、それがウィルスのように徐々にゆっくりと広がってプレイヤーは減り、確実に死に行く世界だったことがわかる。
それを考えればこのBB世界ではその在り方次第でAA世界のようなこともでき、CC世界のような融和を作り出すこともできるが、そのどちらに偏るといったことには現状でなっていない。
《領土不可侵条約》のようなものはCC世界が陥った停滞を助長する要素なのかもしれないが、それでもBB世界だけが残っている理由はその偏りがないことにあるのだとわかる。
白雪姫はこの世界もまた淀み始めているかもしれないと指摘しつつ、それをあえて教えたからには彼女にもまた狙いがあると判断。
──そんな世界をどうにかしたい。自分達はそのために動いている……そう言いたいのだ。
それがわかったのか、ここで身動き1つ取らなかった黒雪姫が後方宙返りをして座っていた椅子の上に立ち、その手の剣を屋上の白雪姫へと向けて鋭い声を張り上げる。
「──それが理由だとでも言うつもりか! ISSキットなどという代物をばら撒いておきながら、そのふざけた言い草で正当化しようというのか! 答えろ!! 白の王……そして加速研究会会長《ホワイト・コスモス》!!」
やはり気づいていた黒雪姫が突如として現れた白雪姫の正体を高々と告げると、その事実に気づいていなかった一同から驚きの声が上がる。
どよめく一同が目の前にいる敵に対してどうすべきなのか判断に迷う中で、冷静にものを見ていたテルヨシは1歩前に出てコスモスに話しかける。
「《私立エテルナ女子学院》だったかな。アンタがプレイヤーホームにしてる学校は」
「……《レガッタ・テイル》。実際にお会いするのは初めてですが、やはりあなたはこちら側に欲しい逸材ですね。その身に纏う静かな闘気はとても純粋。まるでカタフを写し見ているようです」
このミーティングが始まる前にテルヨシは、直前まで自分達がいたコスモスのプレイヤーホームがどこの学校なのかを位置情報から調べて、そこに通っているのだろうコスモスを揺さぶりにいく。
しかしコスモスはそんな過ぎたことは気にしない。たとえそれがわかったところでテルヨシ達がPKなどという卑劣な手段に出てくるとは思っていないからか、意にも介さない様子でテルヨシに対しての物欲を見せる。
当然、そんな勧誘はもはや聞く耳持たないのはわかった上で言っていると思われるが、その言動からでもコスモスにとってカタフが特別な存在であることがうかがえる。
「……てめえか……てめえが全ての黒幕だったのか。ISSキットだけじゃねえ……災禍の鎧ザ・ディザスターを作って、何人ものバーストリンカーに次々寄生させたのは、てめえの仕業だったのか、ホワイト・コスモス!!」
もう少し放置すれば色々と勝手に話してくれそうな雰囲気もあったが、それよりも散々、加速研究会のしてきたことに巻き込まれてきたユニコがその怒りを爆発させてコスモスに叫ぶと、少し恍惚とした雰囲気があったコスモスは理性的になったか叫んだユニコへと視線を向け口を開く。
「あなたには、何度も辛い役回りを強いてしまいましたね、新しい赤の王。ですがそれも、あなたの力を認めた証……などと言っても、もちろん許してはもらえないでしょうけれど」
「あっ……たりめえだ! 積もり積もった借りは100倍にして返してやるよ!!」
「あなたが、真にそれを望むのでしたら……私はたったいま、現状の通常対戦モードから、バトルロイヤル・モードへの変更に応じましょう」
その怒りはもっともだと話すコスモスには恐れ入るが、それよりもその怒りを受け止める覚悟もあると言ったコスモスは、この人数差を以てしても勝てる自信があるというのか、ここからバトルロイヤル・モードで戦ってもいいと挑発。
これにバカなのかといった言葉を投げたユニコも、実際にバトルロイヤル・モードへの移行を実行する手前まで操作した黒雪姫も目に移ったが、今の発言がハッタリではないとなんとなくわかったテルヨシは、戦うべきではないと黒雪姫に小言しようとする。
「────と、本来ならば言えたのですが、そうは言わせてくれない『イレギュラー』が生まれてしまっている以上、今回は潔く退くこととします」
が、その前に自らの発言を撤回したコスモスは、その視線をチラリとテルヨシへと向けてから、これ以上の長居は無用とばかりにこの場を去る素振りを見せる。
「最後にあの鎧は、私にとって大切な希望です。またしてもあなたたちに浄化、還元させられかけたところを危うく回収したと聞いて、どれほど安堵したことか」
その去り際に発したことには思わずハルユキが噛みつき、たくさんの犠牲の上に出来上がったものが希望などと認めないと叫び、さらに何かを言おうとしたのを黒雪姫が止め、その希望とやらがコスモス以外の人にとっては絶望でしかないと断言。
それを肯定したコスモスのヤバさは相当だが、もう完全に相容れないところにいるコスモスにようやく黒雪姫らしい言葉がぶつけられた。
「お前には取るに足りないことかもしれないが、我々にも希望はある。お前が名前も知らないたくさんのバーストリンカーたちが、それぞれの希望を抱いて懸命に戦っている。お前がいかに軽んじ、弄び、踏みにじろうとも、我々の……全バーストリンカーの希望は決して消えない。小さな火が集まり、巨大な炎となって、いつかお前たちが振りまく冷たい絶望を残さず焼き尽くす」
「……強くなったのね、ロータス。楽しみだわ……あなたが、あなたの意思によって、私の前に立つ時が……」
それが実質上の宣戦布告となってコスモスに届き、表情こそ変えることなく受けて立ったコスモスは、次に会った時が決着の時といったニュアンスの言葉で返してその体を謎の光で包み込む。
「コスモス。カタフとはもう会ったのか?」
「いえ。連絡は受けましたが、あなた方と同様、現実に戻ってまだ10分と経っていませんからね。平穏無事に話を終えられればいいと、心から思っています」
「……無理だろうな。アンタが大切に思ってきたカタフは、アンタのしてきたことを許せるほど自分に甘くはない」
「それはあなたもそうだから、きっとカタフの気持ちもわかるのでしょうね。ですが私もまた、カタフの理解者であると信じて疑いません。その結果は、次の会議の時にわかるかもしれませんね」
最後にカタフのことが気がかりだったテルヨシがそのことを尋ねてみると、謎の自信と共にまだカタフを味方にする術はあると断言してくる。
そんな手段は見当もつかないが、どのみち次の七王会議で会えるかもしれないカタフの態度次第でわかることなら信じるしかない。
「さようなら、バーストリンカーたち。お話できて、楽しかったですよ…………」
何故この場に現れたのか判然としないながらも、話すべきことは終わったと踵を返したコスモスは、立ち込めていた黒雲から落ちた雷と共にその姿を消してしまったのだった。