アクセル・ワールド~蒼き閃光Ⅱ~   作:ダブルマジック

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Acceleration Second62

 ミーティングの最中にギャラリーながらも乱入してきた加速研究会会長にして《オシラトリ・ユニヴァース》のレギオンマスター、白の王《ホワイト・コスモス》に臆することなく宣戦布告し、コスモスが去ったところで通常対戦の30分が経過して現実世界へと戻されてしまった。

 その後すぐに再加速してマッチングリストを確認した黒雪姫やユニコだったが、そこにはもうコスモスの名前はなかったらしく首を横に振ってみせる。

 

「対戦は学内ローカルネットでやってたし、この学校内にコスモスがいたってこと、ではなさそうだな」

 

「ああ、おそらくは文化祭でセキュリティーレベルを下げざるを得ないこの機を狙って、外部から抜け道を作ってリモート接続していたのだろう。あれはそれくらいのことはできる」

 

 そんな迅速な行動が可能なのは、校門前に待機して離脱後にすぐ校門を出るくらいのことでしか不可能な早業だが、予言者でもなければそんなことはできないので別の線だと勘繰ると、黒雪姫も自らの《親》のスキルは理解しているので外部から接続していたと判断。

 話が最終的にまとまらない形だったので、もう1度フィールドを作って話をするのも考えたが、年少組2人による腹の虫が可愛く生徒会室に響いて、残した話は昼食を摂りながらにしようとみんなで生徒会室を出て、とりあえず保健室にいるハルユキ達とも合流を図った。

 

「それにしてもあのコスモスが『イレギュラー』と称して負ける可能性を見せたのは驚いた」

 

「だな。何したんだよ、テル」

 

「明らかにアンタを見ながら言ってたしね」

 

「んー、見当は一応ついてるんだけど、オレにもそこに秘められてる重要性に理解がなくて、いまいちよくわからん」

 

 その道中にあの超然としたコスモスが自らバトルロイヤル・モードへの移行を了承する素振りをしながら、それを撤回する発言をしたことについて言及。

 あの時にコスモスが言った『イレギュラー』は明らかにテルヨシを指していたのだが、テルヨシもそれほど警戒されることなのかといった理解でしかないため、説明しようにも困ってしまう。

 おそらくはあのプレイヤーホームで使った《八面断絶》を打ち破るまでに高めた心意技。

 あの《ブラック・バイス》と《アルゴン・アレイ》が珍しく本気で驚き、レアな現象を間近で見てどこか歓喜するかのような雰囲気になったからには、あの心意技には何かしらの脅威があるのだ。

 だが今のテルヨシにまた同じことをしろと言われても、たぶんほぼ100%で発動すら出来ないはず。

 バイスも言っていたが、あの心意技を使えたのは様々な状況が複雑に絡み合って偶発的にスポーツなどで間々起きる、極限の中での集中状態『ゾーン』に入ったから。

 それでもその事実がコスモスに二の足を踏ませたのならば、迷いのあったあの段階でそうならなかったのは幸いだったと考えていいが、フーコ達もまた戦う覚悟を決めながらその選択はすべきではないと黒雪姫を止めたかもしれない。

 

「その辺のことも《オリジネーター》のグラちんとかナイトがわかるかもしれないし、次の会議の時にこっそり聞いてみるか」

 

「何かわかったら教えてくれ。コスモスが危惧するものならば、我々も知るべき案件だと思うからな」

 

 どうあれあの段階でコスモスと戦っていたら、全滅の上で黒雪姫とユニコを失うという惨劇を生んでいたかもしれない現実を回避したのは幸い。

 次は回避などという生易しい状況は訪れないことも考え、今後コスモスがイレギュラーと恐れた力についてはテルヨシなりに情報を集めて伝える旨を決めて話は終了。

 

 再び合流したハルユキ達と少し話をしてから、集合場所を決めて3つのグループで分担して食料の調達に回っていく。

 テルヨシ、マリア、サアヤ、ユリの4人は食後のデザート担当ということで、テルヨシのクラスのケーキを店長特権でやってないサービスのテイクアウト。

 もちろん代金は払った上でだが、チユリの分のイチゴのショートケーキには苺3つ乗せの特別仕様──約束していたので──にして、それらの入った箱を持って指定された第2校舎の屋上に一番乗り。

 13時までに調達を完了せよとの通達もあったので、その後は割とすぐに全員が屋上へとやって来て、黒雪姫が特等席と称した場所は確かに人もいないし見晴らしは良いが、日差しが少し強いので女子には美容の敵も多い。

 それでもこの場所を選んだのは、昨年のバーストリンカーになる前までハルユキがこの場所のソーシャル・カメラの死角でいじめを受けていた現実があって、そんなことが2度と起きないようにと黒雪姫がその死角すらもなくすためにソーシャル・カメラを設置した旨をハルユキに伝えるためだったようだ。

 焼きそばやお好み焼き、じゃがバターやたこ焼きといった定番メニュー。タコス、ファラフェル、サモサといった外国の食文化も交えて用意されたレジャーシート上の昼食は、飲み物含めて30分程度で全てが消化され、最後に残ったデザートのケーキをのんびり食べながら雑談に時間を費やす。

 ようやく戻った日常に笑顔を見せていた一同だが、その中でひっそりと浮かない顔をしたハルユキに気づいた黒雪姫やあきらが気がかりがあるなら話しておけと促す。

 

「えっと……僕、どうしても、気になっちゃって……ニコの強化外装を1つ取り戻せなかったことが……プロミネンスも領土戦があるだろうし……スラスターがないと《インビンシブル》は召喚できないんじゃ……」

 

 と、ずっと気になっていたのかユニコの今後の心配を口にしたハルユキだったが、ことここに至ってそんな誤解をしてるのかと小さく笑ってしまったテルヨシの腹に拳を1発ぶち込んだユニコは、割とケロッとした反応で「普通に召喚できる」と返す。

 そもそもあのマークⅡがミサイルポットなしでインビンシブルを召喚していたのだから、コクピット・ブロックさえあれば召喚できることに気づくだろと苦笑。

 ついでに言えば《ウルフラム・サーベラス》がそうだったように、たとえスラスターだけとかになっても、その体のサイズに合わせた装備になることも明らかなので、コクピット・ブロックがなくても各パーツ単独で着装くらいはできそうなもの──ただ総称でインビンシブルである以上、個別の着装は面倒臭そう──だ。

 しかしそうやって自分の心配をしてくれていたハルユキにお礼は言いつつ、これについては自分でどうにかするべき問題だと考えていたことを吐露。

 それに水臭いと返したハルユキの言い分はもっともだが、少し雲が出てきて日差しが弱まった空を見上げて、バイスに拘束されていた時にぼんやりとあった意識で考えていたことを話し出す。

 

「強化外装が次々に奪われてく瞬間、いろいろ考えた。これでプロミのレギマスは返上だな、とか……パドがちゃんと次のレギマス引き受けてくれっかな、とか……。でも、それだけじゃなかった。自分でも意外だったけど、諦めとは反対の気持ちも、ちゃんとあった」

 

 雑談から一転して真面目な話になってしまったものの、話した以上は全て吐き出そうとケーキを食べる手を止めて拳を握ったユニコは、その拳に視線を落として話を続ける。

 

「あたしは、レベルだけ見りゃ9だけど、力は他の王連中に遠く及ばねぇ。戦闘力も、統率力も、精神力もな。プロミのレギマスを引き受けたのも半分は成り行きだったし……いつも、本当は2代目赤の王を名乗る資格なんかねぇって思ってた。メッキが剥がれて無様晒す前に、何もかも投げ出しちまった方がいいんじゃないかって、心のどこかで思ってた。でも、強化外装が奪われて、それどころかポイント全損も覚悟しなきゃなんねえ状況に追い込まれて、いざ投げ出す理由ができたら、諦めよりも悔しさを感じたんだ。こんなとこで終わりにしたくねえ……3年前の大混乱からどうにかここまで立ち直ったプロミと、今まであたしについてきてくれたレギメンを裏切りたくねえ、ってさ」

 

 そんなユニコの話に、隣にいたパドとユリが何かを言いたそうに視線を向けながら見守る姿は、ユニコが2代目赤の王としてやってきたことは間違ってないと口にしたかったのだとわかるが、ここに来てまだ足りないと自分に発破をかけるユニコを前にしてその言葉を口から出さないと決めたようだった。

 まだまだ赤の王としてやっていく決意を語ったユニコが名実ともに赤の王と呼ぶに相応しいことなどこの場の誰もが認めることだが、ユニコ自身がまだ赤の王を胸を張って名乗れないと言うなら、黙って支えてやればいい。

 それがたとえレギオンと関係ない人であっても、ユニコをリアルで知るテルヨシ達が支えちゃいけない理由もないのだから。

 皆がユニコの決意に無言で頷く中で、黒雪姫だけは何か言うべきと思ったかユニコと向き合って話をする。

 

「ニコ……いや、2代目赤の王《スカーレット・レイン》。お前に伝えるべき言葉を、私はとある友人から預かっている。我々がキット本体と戦った時、内部から出現したライダーとも戦ったと話したな。もちろん、かつて私が全損させた当人ではなく、コスモスが復活させた複製記憶ではあるが……紛れもなく彼こそが本物の《BBK》だった。そのライダーが消える間際に言った。プロミを継いでくれた2代目に伝えてくれと。彼の最後の言葉だ……」

 

 テルヨシ達も《ダスク・テイカー》の複製記憶と対峙したからわかるが、あれを偽物と断言することはまず出来ないものであるのは疑う余地がなかった。

 しかしすでに全損したバーストリンカーのデータをサルベージした存在が100%本物であるとも言えないこともわかった上で、そのライダーの複製記憶から預かった伝言をユニコへと伝える。

 

「『あんがとよ、あとは任せた』」

 

 それは初代赤の王から2代目へと繋がる正統な継承の言葉。

 それを聞いたユニコは何を言うでもなく沈黙してしまったが、その大きな瞳からはポロリと大きな滴が流れ落ちる。

 その涙はユニコの意思とは無関係に止めどなく溢れ出し、どうしようもないそれをせめて見られないようにと隣のパドの胸に顔を押しつけて静かに泣き崩れた。

 そのユニコを優しく抱き締めたパドもまたもらい泣きしそうになりながらあやし、ハルユキ達は堪えることができなくなったか、その瞳からいくらか涙をこぼしていた。

 そしてそのユニコの親、《チェリー・ルーク》の親であるユリは、成長した我が子を喜ぶ親のような優しい笑顔を向ける一方で、その視線をテルヨシとサアヤへと向けて小声で「もう、心配いらないみたいだから」と、何かを決めたことを告げてきた。

 それが意味するところはすぐにわかった2人だが、そのことをこの場で喜ぶのは完全なる空気読めないおバカさんなので、それについてはまた落ち着いてからと顔を見合って決めるのだった。

 たっぷりと3分ほども泣き続けたユニコが、ようやくその小さな嗚咽の声を止めたところで、時刻は14時にさしかかる。

 その前に声高々に黒雪姫が何かが始まる合図をするが、それについて理解あるのはこの場にほとんどいなく首を傾げるばかりだが、なんとなく黒雪姫と恵から漏れ聞いていたのと、文化祭のスケジュールを恵に叩き込まれたのもあって記憶の片隅から引っ張り出すことに成功。

 たしか14時からは生徒会による大規模な展示が行われる、かもしれないのかもしれないなことがあったと思い出して、14時を告げる鐘の音が響いたあとに校内アナウンスから恵の声でこれから生徒会による展示が始まる旨が伝えられる。

 生徒会が何をするのかまではさっぱりなテルヨシは、横から「何が始まるの?」といった顔で見てきたサアヤやマリアに困り顔でわからないと答えて呆れられて落ち込むが、恵による校内ローカルネットに接続しているかの注意事項と展示エリアが本校敷地外とかいうとんでもなアナウンスがされれば、ARを使った何かかもと予測することはできる。

 そのアナウンスから少しの間を置いているうちに黒雪姫が第1校舎寄りの屋上よりも市街地側の方が眺めが良いと助言するので、みんなしてそちらの手すりに近づき敷地の外に目を向ける。

 するとこの梅郷中学校の敷地だけを残してその外の景色が一変。

 現代的な建築の市街地は消え失せて、見える範囲いっぱいにあまりにも広大な草原が映し出される。遠くには横幅が1kmはあろう巨大な川も流れている。

 

『皆さんがいまご覧になっているのは、8000年前、縄文時代早期の光景です。この頃は、武蔵野台地の端が海岸線となっていて、現在の杉並は広大な湾に突き出した半島の中央部に位置しました』

 

 その景色をアナウンスによって恵が解説を始めて、映し出された映像がここ杉並の8000年前の姿だと理解させられる。

 もちろん、現実に敷地外が時を遡ったなどというタイムスリップをしたわけではなく、ARを用いてプロジェクションマッピングしているのだが、どういう技術を使えばこんなことが可能なのかは素人のテルヨシにはわかりかねる。

 清らかな恵の声による解説と共に時代は進んでいき、表示されている《-8000》という数字が減る毎に周囲の景色も様々な変化を遂げていく。

 縄文、弥生、飛鳥と、歴史で勉強した時代を進みながら、広大な草原だった景色も段々と人が築き上げてきた文化が形成されていき、普段はこういう勉強に含まれることには眠気が襲ってくるテルヨシも、ついついその光景と照らし合わせて恵の解説に聞き入り、時おり話される教科書には載っていない知識などにはハルユキ達も感嘆の声を上げていた。

 そして時代は早くもおよそ100年前まで進み、遠い昔の出来事と思っていた第二次世界対戦における空襲が杉並の地を大火で覆う。

 テルヨシでも知っている原爆が落とされた広島、長崎の大惨事は皆も知るところだが、ここ杉並でも戦争の痕跡があったことを知り、実際に燃え上がる杉並を見ると何か込み上げてくるものがある。

 知ろうとしなければ知らないままだっただろう、自分達が住む杉並の歴史に言葉にならない何かを得た感覚が残るうちに、時代はさらに進んで今の街並みに限りなく近い時代にまでなると、その街並みの至るところにソーシャル・カメラが見えるようになる。

 さらに15年前の光景からは徐々に人の手から携帯端末が減り、10年前ほどになれば人の首にはニューロリンカーが当たり前のように装着され、AR・VRが世間に浸透した世界が確立されたことを見て取れた。

 そんな人が紡いできた歴史を早巻きながらも見たテルヨシは、この展示が見た人に何を伝えようとしたのかをぼんやりと考える。

 テルヨシの講義もそうだが、展示や発表にはそれを見せ、聞かせる者のコンセプトが必ずあるものだ。

 それをここにいる黒雪姫に直接聞いたところで『それは受け取る側が各々で考えることだよ』と明確な答えをおそらく言うことはないだろう。

 だからテルヨシなりに何かを感じて、受け取ったものが答えであり、その答えは人によって違っていいと思う。

 

『長い歴史の旅も、そろそろ終わりに近づいています。最後に、どうぞ空をご覧下さい』

 

 歴史は人が歩んできた道のようなもの。

 それは後世に名を残した偉人だけが作り上げたものでは決してないし、名前も知らない幾万、幾億という人が作り上げてきた生きた証明。

 その歴史を紡いでいくのもまたテルヨシ達であり、どんなことにも未来に繋がる何かが存在し、意味がないことなどないのだと、そう考えることができた気がする。

 でも哲学みたいな話は柄じゃないかと割とすぐに自虐気味に笑って、恵の声でまだ昼下がりながらに夕日に染まった空には、キラキラと瞬く光の連なりが近づいてくるのが見える。

 時代は《0000》の現在から少し進み《+0005》で停止しているのを見れば、天空へと垂直に伸びる銀色の糸がヘルメス・コードであることに理解が及ぶ。

 もちろん、現実には上空150kmの軌道をマッハ10で飛翔するヘルメス・コードを視認できるわけもないので、生徒会による演出でボトムステーションの細部まで見える低空をゆっくりと移動して梅郷中学校の真上で停止。

 いつの間にかハルユキ達は皆が皆の手を取って大きな輪を作りヘルメス・コードを見上げていて、サアヤとマリアに手を取られたテルヨシもその輪の中へと入って同じように見上げる。

 

『5年後の2052年、世界初の有人火星探査のための国際プロジェクトが始動します。宇宙船の部品はヘルメス・コードのトップステーションまで運ばれ、軌道上で組み立てが行われる予定です。縄文時代、石槍を片手に草原を走っていた人類の足が、8000年の時を経て火星の地を踏むのです。しかしそこで歩みが止まるわけではありません。人はこれからも、何100年、何1000年と前に進み続けるでしょう。その歩みに、私たちの親の世代も、私たちも、私たちの子の世代も参加しているのです』

 

 何とも広大な話の締め括りながらも、今さっき自分がそんな答えを出していたのだから、生徒会のことをああだこうだと言えない。

 そんな恵の話の終わりにヘルメス・コードも再び動き出してあっという間に夕空へと消えて見えなくなってしまった。

 

『これで、生徒会執行部による展示企画《時》の上演を終了します。長らくのお付き合い、ありがとうございました』

 

 そのアナウンスを最後に夕空は展示が始まる前の色へと戻ったが、街並みはARと現実で同じだったため、終わったと聞かされても何やら不思議な感覚が残った。

 展示は30分程度で終わったので、15時まで開催されている文化祭はまだ残り時間が30分あることになる。

 近くではこの展示を加速も使って足りない時間を補って仕上げたなどと言ってる黒雪姫に、いつも加速を私的に使うなと注意してる側が使ってるとチユリに言及されていたのを聞いてクスリとし、これは有効活用だと言い張る黒雪姫をゲラゲラと笑ってやったら蹴られる始末。

 まぁ蹴られるのはわかった上で笑ってやったのでダメージは軽減したものの、それを見てみんなに笑われたのはちょっと嫌だったので、それはさておきと話題を切り替えて残りの文化祭を楽しもうと提案。

 それもそうだと黒雪姫がチユリから逃げるようにテルヨシの話題に乗っかってどうしようかと語り、ハルユキ達のクラス展示とかを見てこようとか話し出す。

 ただやはり人数が人数なのでいくつかのグループで行きたい場所を回る方がいいよなと思っていたら、横からサアヤがテルヨシの制服の袖を摘まんで軽く引っ張るので振り向くと、凄く恥ずかしそうに顔を赤くして何か言いかけて止まってしまう。

 

「あー、そうね。任せんしゃい」

 

 サアヤが何を言わんとしたのかそれだけでもちゃんと理解できたテルヨシは、自分からは言い出しづらいことなのだと表情から汲み取って、盛り上がる一同にひと声かけて振り向かせてから、横のサアヤを抱き寄せて宣言。

 

「オレとサアヤはこれからデートするから、邪魔しないでねぇ」

 

「お、お願いします……」

 

 こういうことを堂々と言えるテルヨシをサアヤが頼ったのは仕方ないが、こうもハッキリ言われるとむしろ恥ずかしさが増したか、いつもの姉御肌なサアヤはどこへやらな『お願いします』が出てきてしまう。

 そんな2人に呆然とした一同ではあったが、次には様々な反応で2人に対して了承の言葉を返してくれる。

 中にはテルヨシ達がデートするなら私もといった悪ノリまでかますフーコやらもいたが、それを皮切りにグループでの行動が選択肢に入ったか、マリアが謡とユニコの腕を引いて仲良し小学生グループを形成し元気良く屋上を出発していき、ユリもパドの腕に恋人のように抱きついて「じゃあ私は美早にエスコートしてもらおうかな」と誘えば、親友のお誘いに快く了承したパドも2人で屋上から消えていった。

 残された黒雪姫達も話をしながらどうするかと歩いていってしまい、最後に残ったテルヨシとサアヤも時間は限られるのでみんなのあとを追うように歩き始めるが、その前にテルヨシの左手を取って正面に回ったサアヤは、両手でその左手を包んで一言だけ。

 

「……ありがとね、テル」

 

 何に対してはかハッキリしないまでも、そんなお礼の言葉を述べてくれるのだった。

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