アクセル・ワールド~蒼き閃光Ⅱ~   作:ダブルマジック

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間章
Acceleration Second64


「あー、落ち着かん」

 

 文化祭から一夜明け、その後片付けに奔走した学校での作業も終えていつも通りにバイトに勤しむ時間帯。

 客足のない時間を見計らって店内の簡単な掃除をしながら、レジ前に立つパドのあえて聞こえるように独り言してみせると、凄く、すっごく面倒臭そうに「どうしたの?」と尋ねてきたパドの優しさに甘えて落ち着かない理由についてを話す。

 

「いやさ、明日バイトのあとにサアヤの家に行くんだけど、お母さんが会いたがってるなんて言われると色々と考えちゃってね……」

 

「テルが色気を出さなきゃ問題ない。サアヤの親に気に入られようとかそういうの」

 

「ええ……サアヤの親にはサアヤとの関係を認めてもらいたいし、そのくらいはしてもいいのでは?」

 

「そういうことは言葉でどうこうよりも、本人達の在り方で伝わる。上辺だけで語る方が失礼」

 

「おうふ……悩んでたのがバカらしいほどの正論がクリティカルヒットぉ……」

 

 どうせ話したいんだろうからさっさと話せといった表情のパドに昨日に決まったサアヤの自宅来訪の件を少しウザい感じで話してみると、変なことしなくてもいいとのご指摘を受けて、昨夜から色々と考えていたことが吹っ飛んでしまった。

 まぁテルヨシ的にはそこに至るまでの過程を楽しみたいという、遠足前夜のウキウキに近い感覚で思考していたのでこの会話自体に特に意味はなく、あくまで会話の前戯といったところ。

 

「……ユリさんがレギオンから抜けて寂しい?」

 

「それは当たり前。旧プロミに誘ってくれたのもユリだったし、今のプロミの再建に尽力もしてくれたから、私にとってアキとニコと同じくらい大事な親友」

 

「引き止めたいって思わなかった?」

 

「ユリは昔からこうと決めたら動こうとしない。私が嫌だって言ったら揺らいだかもしれないけど、それはユリの決意に応えるってことにはならない」

 

 本題自体が少し明るくないこともあったのでそういった切り出しになったが、やはり気になることは聞いておかなきゃと真面目な雰囲気で話を聞く。

 親友のユリがプロミから抜けるというのはパドにとっても、レギオンにとっても大きな意味を持つのは間違いない。

 

「ユリの脱退は昨日のうちにレギオンメンバーに通達したから、今頃はポッキーとカッシーを中心にみんなから詰め寄られてると思うけど、レベル8になって対戦拒否の権利を破棄したユリが、今よりも強くなろうとしてる決意は、きっとみんなにも伝わる」

 

「そういやレベル8で領土なしなんてリスクが大きいよねぇ」

 

「……それは自分に言ってる?」

 

「……あっ! オレもレベル8じゃん! アホやんオレ!」

 

 パドと一緒にそのレベルを8にしたユリだからこそ、それが抜ける穴は大きいが、ネガティブな理由で抜けたわけではないユリをパドが言うようにみんなはちゃんと認めてくれるはず。

 そこはテルヨシも心配していないが、レベル8が無所属になることの意味について今さらに気づいて他人事のようなことを言ってしまい、自分もまたその状況にいることを指摘されてアホなことを言ったことを自覚。

 それにはツッコんだパドも呆れ気味だったものの、狙ったのかなんなのかわからないその様子に自然と笑顔が漏れてしまっていた。

 

 翌日。文化祭の振り替え休日となった今日は、夕方頃にサアヤの家へお邪魔することになる。

 平日ということもあってパドという同世代の話し相手がいなく、開店準備からバイトが始まったことで店長の薫さんが「普段はミャアと一緒に面倒を見るのは大変だから、今日はマンツーマンでしごいてあげる」と大変ありがたいご教授をくださったおかげで、ほとんど厨房から出ることさえできない時間を過ごした。

 まぁテルヨシとの会話目的の客は学生を中心に放課後の時間帯に集中するし、平日の昼間は店頭に出てもイートイン・コーナーはあまり使われない。

 暇をもて余してサアヤが来るのをあれこれ考えながら待つよりも、薫さんに怒られながらしごかれる方が有意義だったのは間違いないので、結果としては良かったのだが、放課後の時間帯になってサアヤが来ても15分ほど解放してもらえなかったのは泣きたくなった。

 

「アキのお母さんって厳しいんだね」

 

「妥協を許さないって意味ではあの人はプロフェッショナルだからねぇ。働くみんながそうだけど、オレとミャアは特に厳しく育てられてるよ」

 

「それだけ期待してるってことなんでしょ。アンタなんて来年からは正規採用だもんね」

 

 ようやく解放されてバイトを終了させられたテルヨシは、サアヤと一緒にまっすぐにサアヤの家へと向かい始め、環七通りから中野駅に向かうバスに乗り込んでその移動中に他愛ない会話をする。

 サアヤの家は中野駅の北口から少し北上した先にあるらしく、加速世界においては中央本線を境に分かれてる中野第1戦域内ということになる。

 かつて旧プロミに所属していたのだから、自宅が領土内にあるのは普通なことだが、テルヨシの家と直線距離で1kmちょっと離れてる程度なのは少し嬉しいものだ。

 

「それより家にはお母さんだけ?」

 

「そうね。お父さんは確実に夜の8時以降に帰ってくるし、歳の離れたお兄ちゃんもいるんだけど、今は独り暮らしで浦安にいるから、まぁいないようなものよ」

 

「浦安って、千葉か」

 

「ほとんど東京みたいなもんよ。江戸川区が目と鼻の先にあるんだもの」

 

「そのお兄さんに会えるチャンスは?」

 

「それはちょっと待ってほしいかも……私が言うのもあれだけど、お兄ちゃんって割とシスコンで、私に彼氏がいるって知ったら『俺の妹をたぶらかしたのはどこのどいつだー!』ってマジで家に乗り込んでくるかもしれないし」

 

「愛されてるのね」

 

「8つも離れてるとお兄ちゃんの中ではまだ私はこんな小さい妹って感覚なのよ。もう15歳なんだけどねぇ……」

 

 変に緊張するとサアヤまで緊張させてしまうので会話の流れで自然と家族構成についてを尋ねて、厄介そうなのがお兄さんなことを把握。

 テルヨシもマリアという妹的存在がいるから、サアヤなんていう可愛い妹がいたらシスコンになる気持ちは十分にわかるが、マリアとは5歳差なのに対して、サアヤとお兄さんは8歳差。

 血の繋がりがある分、お兄さんの中でサアヤが守るべき対象として強く根付いているのだろうし、シスコン呼ばわりしててもサアヤがお兄さんのことを嫌った様子がなく、話していても楽しそうにしてるのは、サアヤもまたブラコンなところがあるのかもしれない。

 どのみち今日のところはサアヤのお母さんだけのようなので、最低限で失礼のないように挨拶はしっかりしようと心に決めて、中野駅に到着したバスを降りて、そこから徒歩で向かおうとする。

 サアヤもなんだかんだでドキドキは止まらないのか、バスを降りたところで少し時間を使わないかと適当な店を勧めて寄り道を促すが、こういうのは引き延ばせば「やっぱり今日はやめよう」とか言い出すきっかけを与えかねないので、そこはきっぱりと断りを入れてあげる。

 

「うぅ……家に帰るだけなのに何でこんなに緊張するんだよぉ……」

 

「そんなガチガチになってるとお母さんに弄られるかもよ」

 

「それはもう色々と嫌すぎる……っと、ちょっと待って」

 

 それで腹は括ったか、寄り道は諦めてくれたサアヤが家への道を示しながら歩き始めたので、テルヨシもその隣を歩いてついていくが、バスの運賃を払う都合でグローバル接続していたサアヤがメールを受け取ったようで反応を待ってみる。

 

「誰からのメール?」

 

「ア……違う違う。イーターからよ。なんか今どこにいる? ってのと、伝言を頼まれたって」

 

「伝言?」

 

「うーん……テル、イーターとリアルで会ってみる?」

 

「はい? 今から? 家には?」

 

「30分程度なら遅れても問題ないわよ。そもそも何時に帰るなんて言ってないし」

 

「結局、寄り道することになるのか……」

 

 そのメールの送り主は《アイス・イーター》だったようで、あまりに自然に尋ねられてうっかりリアルネームが出かけていたが、ギリギリで言い直してそのメールの内容を簡潔に説明。

 その説明からでも加速世界のことなのはなんとなくわかるし、テルヨシにも話すということはサアヤ個人に対するものでない可能性も考えられる。

 そこから何故かイーターとリアルで会おうという話に発展して、動きの早いサアヤはイーターにメールを返して合流を図るようで、家に向いていた足を反転させて中野駅に戻る進路に変更。

 

「イーターは中2戦域にいるみたいだし、『せせらぎ』は今日は休みだから南口の先のファミレスに入るわね」

 

「ちゃんとイーターに許可とってよ?」

 

「イーターもテルとはリアルで会ってみたいって言ってたし、たぶん問題ないわ」

 

「たぶんじゃダメでしょ……」

 

 まだイーター本人にテルヨシと会うことは知らせてないっぽいサアヤの勢いには呆れてしまうが、すでにグローバル接続を切ってしまったサアヤがズカズカ歩いていってしまったので、イーターに同情しつつもそれについていくのだった。

 

 中野駅の南口を出てすぐにあったファミレスのボックス席に入った2人は、とりあえずドリンク程度は持ってイーターの到着を待つ間、伝言とやらの中身を尋ねる。

 

「イーターの《親》が私だからってことでの伝言だったんだけど、タイミング的にはどっちかというとアンタへのって意味合いがあると思うわ」

 

「オレに?」

 

「《ゲーテ・スピン》が話があるから会いたいって。もちろんあっちでよ?」

 

「スピン……ってことは、キットの精神干渉は止まったんだな」

 

「そこはまぁ素直に喜ぶべきよね。私達の努力が実を結んだんだから」

 

 その伝言を預けたのが、先日まで《ISSキット》によって精神干渉を受けていたスピンだったとわかると、そうやってまたスピンが表舞台に出てきたことを素直に喜ぶ。

 伝言に関してもテルヨシの所属するレギオンのメンバーだからとサアヤとイーターに接触した節があるようで、サアヤの所在を尋ねたイーターのメールからして、おそらくまだ中2戦域に留まってる可能性が高い。

 それなら今すぐにグローバル接続してマッチングリストを開けばいい話だが、物事には順序というものがあるので、まずはこれから会うイーターとちゃんと挨拶をしてからでいいだろうとその到着を待つ。

 2人がファミレスに入ってからわずか5分程度でファミレスに新たな客が入ってきて、見た目でほぼ100%小学生な男の子1人が誰かを探す仕草で店内をゆっくり歩き始めた。

 その男の子を発見したサアヤが見えるように手を軽く振って呼び寄せると、気づいた男の子もまっすぐに近づいて空いていた向かいの席に座ってきた。

 マリアとほとんど歳の違わないだろう目の前の男の子は、くりっとした目が可愛らしく中性的な印象がある。

 黒い髪は襟首の辺りで綺麗に切り揃えてあり、青いジャージの上下はファッションに頓着のない男の子らしいものだ。

 その男の子がイーターであることは間違いないが、どういうメールが送られてきたのか、目の前のテルヨシを見る表情はちょっと呆然としている感じ。

 

「んじゃ改めて紹介するわ。この子は大喜多亮(オオキタアキラ)。私の従弟で家も近所よ。ほら挨拶」

 

「わっ、わっ、サアヤ姉がいつもお世話になってます」

 

「そういうんじゃないわよ……保護者かアンタは……」

 

 座ってからも一言を発しないイーターに代わってサアヤが自己紹介をして本人からも挨拶するように促したが、慌てたイーター、アキラは別の意味での挨拶を披露しサアヤを呆れさせる。

 これだけで普段のサアヤとアキラの関係性がよくわかり小さく笑ってしまったが、自己紹介なことを思い出して今度はテルヨシが名乗る。

 

「皇照良だ。よろしくな、アキラ。でもアキラかぁ……アキちゃんと同じだなぁ……」

 

「それね、アキと会って私も思ったのよ。リアルで顔を合わせることはないだろうけど、呼び方に変化はつけない方が賢明」

 

「えっ? えっ? 僕の他にもアキラさんと知り合いなんですか? なんかすみません」

 

 とりあえずの挨拶を済ませてはみたものの、アキラという名前はすでに《アクア・カレント》こと氷見あきらが使用してるというかだったので、呼び方に関しては今後もアキラに即決定。

 それは別にアキラが悪いわけでもないが、困る原因が自分だったことで反射的に謝る姿はやはりイーターだったので、ぺこぺこと頭を下げたアキラに対して2人ともが思わず笑ってしまったのだった。

 そのあとも少しだけ話を聞くとアキラはマリアと同い年の小学4年生である事実がわかり、勢いでマリアとも対面させてみようかと提案するが、何故かそれをサアヤが止めてしまう。

 

「ダメよテル。アンはアキラが一目惚れしかけないから会わせるのはリスクがあるわ」

 

「むむっ、それは見過ごせないのぅ。サアヤが言うからには、アキラの好みのタイプはズバリ……」

 

「あ、会ってもいないのにリスクとか好みとか何なんですか……そ、そんなに可愛いんですか、アンさんって」

 

「そりゃもうアキラが友達になったら学校の子に自慢したくなるくらいには可愛いわよ」

 

「それは否定しないけど、アンにも聞いてみて会いたいってことになったらオレは会わせるのはいいと思うし、アキラはどうよ?」

 

「でも僕、女の子と話すのはちょっと苦手で、友達になれてもどうしていいのか……」

 

「ちょっと待て。その理屈だと私も苦手なはずだけど、アンタその辺で遠慮とかしたことなくない?」

 

「サアヤ姉は従姉だし、姉御って感じだから例外なだけだもん」

 

 あまりリアル割れを推奨するのも良くないことはわかってるが、マリアには同世代の友達がまだまだ少ないのも現実だったので、そうした意味でもアキラは別にいいかと思う。

 そこから話が従弟関係の闇が発生してしまい、サアヤがアキラを問い詰める状況が出来てしまったが、逃げることに関して無駄に磨かれてしまってるアキラは、話を切り替えるようにスピンのことを切り出す。

 

「そ、それよりもスピンさんが待っててくれてるので、サアヤ姉かテルさんが会った方がいいんじゃ……」

 

「サアヤの家にも行かないとなんないしね。パパッと済ませちゃおうよ」

 

「……仕方ないわね。それじゃ私がスピンに挑むから、2人は観戦者登録しといて」

 

「「了解」」

 

 話の逸らし方が強引すぎてイラッとした感じのサアヤも、このあとの予定を考えて冷静になってくれて、グローバル接続をしながら2人に指示を出し、それに従ってグローバル接続をしつつサアヤを観戦者登録して、確認を終えたサアヤが加速してスピンに対戦を申し込み、その対戦フィールドへと誘われていった。

 

 対戦目的ではないので降り立ったフィールドが《荒野》ステージであっても特にこれといった考察もなしに見晴らしの良い場所でスピンの到着を待つと、1分程度でガイドカーソルが消えてスピンが姿を現す。

 そのスピンには一昨日の段階で胸部装甲にあったISSキットの眼球の痕跡はなく、完全にキットの寄生は存在しない証明をしてくれて改めて安堵すると、ギャラリーに声をかけて抜けてもらってからテルヨシ達と正気に戻って初めての対面。

 

「テイルも来てるとはな。手間が省けたか。まずはそうだな……あれだ。色々と迷惑かけて悪かった」

 

「あんなことになるなんて思ってなかったんだから、スピンが謝ることもないって」

 

「むしろよくキットの支配に抗って他のやつらみたいにならなかったって感心してるくらいなんだけど」

 

「いや……俺も正直、限界だって何度も思ってたんだ。あれから学校も休んでニューロリンカーも外して必死だったんだが、一昨日の段階でそれも本当に限界だった。あの時はもうほとんど意識もなかったんだが、目を覚ました時にそばにいた《マゼンタ・シザー》が教えてくれたんだ。あのキットを使い物にならなくしたのは、お前らだって」

 

 対戦の時はやたらとテンションの高いスピンも、今回はそのナリを潜めて頭を下げてくる。

 そのスピンがずっと苦しんできたことはテルヨシとサアヤも十分にわかっているし、そうまでして自制して他人に迷惑をかけないようにしていたスピンの努力は立派だと思う。

 

「他にもネガビュとプロミもいたみたいだが、そっちとは接点もなくて話すに話せなくてな。お前らから機会があったら謝ってたことを伝えてくれ」

 

「それはいいけど、謝罪のためだけに私達を呼び出したってことはないわよね? それならイーターにでも伝言すれば済むもの。直接言いたかったって話なら筋は通ってるけど、頭を下げるだけで終わるなんて柄じゃないわ」

 

「参ったな……こんな謝罪のあとにどう切り出そうか悩んでたんだが……」

 

「それがガッちゃんの良いとこよね」

 

 その謝罪に関しては許すも何もないので、スピンがそれで満足したならそれでよしとして、性格的に謝罪してそれで用は終わりなんてことはないだろうと勘繰ったサアヤに対して、やはり何かあったらしいスピンがタイミングを見計らっていたことを吐露。

 そのタイミングが唐突にやって来て困った雰囲気はあったものの、察して促してくれたテルヨシ達に軽く頭を下げてから、持ってきた話を始める。

 

「昨日から復帰して色んな噂を聞いたんだが、お前ら先週辺りから《五芒星》と接触してたみたいだな。理由についてはわからなかったが、こうして当人達から聞けるならと思ってな。俺達に何かあるのか?」

 

「あら、こっちから切り出そうとしてたから手間が省けたわね。テイル、話してあげて」

 

「オレ達のレギオンに入ってくれ!」

 

「ほとんど省きすぎよ!」

 

「揺るぎないですね、テイルさん……」

 

 どこからどう巡ってそんな噂が聞こえてくるのか不思議だが、五芒星と接触していることが伝わっているならと、ここでスピンの話を聞いてから話そうと思っていたサアヤが時間短縮ができるとテルヨシに説明させる。

 だがテルヨシも坦々と話すだけではつまらないのでサアヤからのツッコミ必至な勧誘をして狙い通りにツッコませることに成功。

 その夫婦漫才にはスピンがやや引いていたが、咳払いをして改まったテルヨシが真面目に説明を開始。

 

「……なるほどな。《帝城》の攻略とはまた大きく出たもんだ」

 

「一応、今のところシンデレラ姫からは条件付きでの了承をもらってて、リリースは論外って突き返されて、ルールーは返事待ちって感じ」

 

「……はあっ!? あの《天井知らず》がお前らの話をちゃんと聞いたのか!?」

 

「そこはもっと驚きなさい。私達も未だに驚いてるから」

 

「僕も昨日聞いてビックリしてますし」

 

 ユリの加入条件から始まったものではあるが、今やきっかけに過ぎないそれはあえて言わずに、帝城攻略のための戦力を集めている旨の説明を滞りなく完了させたテルヨシに腕を組んで聞きに徹したスピンは、少し呆れつつも《チャイブ・リリース》のように突っぱねることもなく呑み込んでくれる。

 結果として最後の勧誘になったスピンに現在の状況も教えてあげたのだが、やはり驚きはあの孤高のバーストリンカー《ボッシュ・ルーレット》がテルヨシ達とまともに会話したことにあった。

 その事実にマジで驚きまくりのスピンだったが、ゆっくりと落ち着いてから思考に移って、五芒星の全員と話はしたことを加味してその口を開いた。

 

「……形としてはまだお前らのレギオンに入ったやつはいないんだな。だが誰もお前らのやろうとしてることを全否定してるわけでもない。俺も帝城攻略なんて考えたことはなかったが、何かしらの策は見えてきてると判断して良いか?」

 

「その辺は今週末にでもある程度で可能性が示せれば良いなぁとは思ってるよ」

 

「そう、か。俺もどちらかと言えばリリースの意見に寄るんだが、その策とやらが現実味を帯びるものになるなら、協力は惜しまない」

 

 そこから出た返事は始めこそ否定的だったものの、キットの件もあるからと実現に向けての協力は惜しまないと言ってくれたのだった。

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