アクセル・ワールド~蒼き閃光Ⅱ~   作:ダブルマジック

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Acceleration Second65

「ただ、注意してもらいたいことが2つある」

 

 文化祭の振り替え休日という珍しく平日の夕方に時間が空いていたテルヨシは、サアヤの家にお邪魔する予定があったものの、その前に《アイス・イーター》ことアキラとのリアルでの対面と《ISSキット》の影響から脱した《ゲーテ・スピン》との対話に応じていた。

 スピンからは迷惑をかけたことへの謝罪があったものの、それはあっさりと終わらせて話はテルヨシ達のレギオン《メテオライト》の壮大な目的についてに。

 《帝城》の攻略という野望のために《五芒星》を仲間に引き入れようとしていたテルヨシ達の話に了承と取れる返事をくれたスピンに話を聞いていたテルヨシ達3人は手を取り合って喜ぶが、その輪に加わる前にとあくまで冷静に口を開いた。

 

「さすがに今日これからこの瞬間にお前らのレギオンにってのは無理がある」

 

「そりゃお前がいま所属するレギオンにも断りは入れないといけないしな」

 

「ああ。レギオンを抜けることに納得してもらえるようにするが、それにどのくらい時間がかかるかはわからない。今週中にとは言っておきたいが、それが済むまではお前らへの協力はする余裕がない」

 

「あと1つは何かしら?」

 

「これはまぁ、俺のいま所属するレギオンがそうだからってことなんだが……」

 

 その注意の1つは考えれば当然のことなので、3人ともそこは問題ないとあっさりと了承。むしろ今週中に説得までしてくれるのかと驚くくらい。

 それほどスピンという戦力はレギオンにとっても失うには惜しいものだと確信できるし、今も話だけはレギオンにしているだろう《シンデレラ・コントラリー》と《チャイブ・リリース》とてレギオン内では決断が出ていないはず。

 それほどの話をテルヨシ達が持ち出している実感が今さらながらに湧いてくると、進めた計画の先で「やっぱり無理でした」とは口が裂けても言えない。

 そうなったら元のレギオンに戻ればいい。そんなに話は深刻か?

 否。深刻なのだ。テルヨシ達の目的のために彼、彼女らの絆の輪を崩してしまう事実に変わりはないし、その崩れた輪は決して元の綺麗な輪に戻ることはない。

 だからこそテルヨシ達はその覚悟を大々的に表明する必要もあるし、妥協などあってはならない、全身全霊で挑む野望。

 テルヨシの中で『責任』という重いものがのしかかった感覚がありながらも、それを背負って前に進む覚悟も決めてスピンの話を引き続き聞くと、2つ目の注意事項は何やら今のレギオンの方針が関係しているらしく歯切れが悪い。

 

「仲間と呼ぶ以上は腹を割って話がしたいってわけで、レギオンではみんなリアルで顔を合わせてるんだが、俺もそのおかげで今のレギオンの良い雰囲気が保てていると思ってる」

 

「つまりスピンはリアルでオレ達に会って話がしたい。そういうこと?」

 

「お前らだけじゃない。これから加入させる他の3人に、それ以外のメンバーもってことだよ。それが叶うなら俺もこの話をレギオンに本気で掛け合うと約束する」

 

 これはどうなんだろうか……。

 スピンが歯切れ悪くも口にしたレギオン加入の条件はなかなかハードなものだった。

 最近はテルヨシ近辺で頻発してしまったから感覚が麻痺気味になってたが、本来《リアル割れ》というのはバーストリンカーにとっては御法度と呼ぶに等しい行為そのもの。

 たとえ同じレギオンに所属しようと《ネガ・ネビュラス》のように全員が顔見知りなんていうレギオンの方が稀有なことは考えなくてもわかる。

 それはレギオンが大きくなればなるほど顕著に現れるし、目の前のサアヤですら旧プロミのどのメンバーともリアルでの面識はなかったと聞く。

 そのリアル割れをレギオン加入の条件に加えるのは正直、かなり厳しいと言わざるを得ない。

 

「あー……んー……そうねぇ……そればっかりはオレ達がこの場でオッケーとは言いにくい」

 

「私達とボンバーは問題ないけど、五芒星の3人はそうもいかないからね……」

 

「あの、それが通らないとスピンさんはレギオンに入ってくれないんですか?」

 

「……いや、正直、俺もかなりの無理を言ってる自覚はあるんだ。だがそうやって今のレギオンで腹を割ってる以上、移籍先になるお前らのレギオンでそれ以下の絆の在り方は、今の仲間を納得させられない」

 

「ぐぬぅぅ……筋が通ってて納得せざるを得ないぃ……」

 

 その厳しさはスピンにも自覚があって、無理を承知で言っていることもわかるが、そこが今のレギオンを抜けるためにはクリアしなければならない壁であると話されると、こっちとしても無理と言えない。

 

「…………スピン、今どこにいる? 私達は中野駅の近くのファミレスにいるんだけど」

 

「俺は中野総合病院を出たところだが……」

 

「ああ、2週間近くも学校休んでたら何かしらの疑いは出るよな……」

 

「その辺はまぁ察してくれ。それより位置的には中野駅に近いが、会うつもりか?」

 

「即決できる条件ではないけど、そのつもりがある意思表示だけはしておく意味はあるでしょ。あと今後の連絡手段はないと話すだけでもこうやって面倒になるもの」

 

 マズい流れになってきていることはテルヨシにもわかったが、決断を下す状況でもないことも事実でどうするのがいいのか迷っていると、旧プロミ所属の経験が成せる判断か、サアヤがとにかく今はスピンの条件を呑む気があると示す必要性を話し、現在地からも割とすぐに合流できるスピンは少しだけ考える。

 

「……自分が言い出したことだ。リアル割れに抵抗はない。ただ、リアルの俺はお前らが思うほどのやつじゃないから、あまり期待はするな」

 

「そんなこと言ったらオレ達もそうなんじゃないの? こっちとあっちでのギャップなんてあって当然だしな」

 

「なんとなくだが、お前だけはリアルもそんな感じだと確信してる」

 

「良い勘してるわね。このままリアルにいるわよ」

 

「ビックリするくらいこのままです」

 

「裏表のない人間なのだよ」

 

 リアルで会うこと自体に抵抗はないが、どうやらリアルでのギャップが心配らしいスピンの意外と乙女な部分には笑える。

 ギャップという意味ではユリや綸ほどの衝撃はないだろうと確信はあるので、余程のことがない限りは大丈夫だと返したテルヨシ達に了承すると、スピンは引き分け申請のあとに対戦フィールドを去ってリアルでの合流に動いてくれた。

 

 対戦を終えて待つこと5分ほど。

 中野総合病院からファミレスまでならおよそ500mあるかどうかなので、早足くらいならそろそろ着くかなと入り口に目を向けていたテルヨシ達は、おそらく1人で来るだろう中学生くらいの男子に照準しておく。

 その予想通りに1人の学校制服を着た男子生徒がファミレスに入ってきて店員に席を勧められるのを断って3人組の学生のグループを探して店内を見渡し、テルヨシ達を目に止めて視線が合ったらまっすぐに歩いてきてボックス席の前で止まる。

 

「君達がそうで間違いないかな」

 

「アンタがそう思うならそうだと思う……けど」

 

「いやぁ……まぁ……とりあえず座ってくれる?」

 

「では失礼させてもらうよ」

 

 遠目からでもなんとなくその『異質さ』には気づいていたが、目の前まで来るともう凄いの一言。

 スピンのリアルと思しき男子生徒は、サラリーマン顔負けのビシッ! としたブレザーの制服を着こなし、混じり気なしの黒髪はきっちり七三分けで整えられている。

 仕草も1つ1つがキビキビとしていて背筋もピンとし、動きに無駄がないというかなんというかだ。

 表現するなら率直に言って『生真面目な男』という印象しかないスピンにギャップ慣れしたつもりだったテルヨシとサアヤもさすがにどうしたものかと接し方に困るが、アキラの隣で面接しているが如く綺麗に座るスピンは、見た目通りの真面目な性格から無駄話もなしに切り込んでくる。

 

「まずはネームタグの交換をお願いしたい。僕は東條陸人(トウショウリクト)。《明北学院》の中等部2年だ」

 

「お、おう。皇照良。梅郷中学校の3年だ。テルでいい」

 

「都田沙絢よ。《帝秀学園》の3年」

 

「大喜多亮です。《桃園小学校》の4年生です」

 

「帝秀か……我が校とは少なからず因縁があるな」

 

「進学校として上がバチバチやってるだけで、生徒は他校のことなんてあんまり気にしてないけどね」

 

「そのようだな。都田先輩の態度からそれはよくわかる」

 

「私が基準はやめて。私は少数派だと思うから」

 

 早速のネームタグの要求にまずは自分からと3人に渡しながら口頭でも自己紹介。

 それに倣ってテルヨシ達もネームタグを渡しながら自己紹介してみせ、3人のネームタグを受け取ってから学校の話でサアヤと少し盛り上がる。

 勉強の話は頭が痛くなるので聞こえないフリをしつつリクトのネームタグにもある明北学院という学校に何故か覚えがあったテルヨシは、どこで聞いたか記憶を遡っていく。

 

「明北って……先週に学園祭やった?」

 

「我が校はそこまで熱心に取り組んではいないが、確かに先週に学園祭は開催されている」

 

「あー、なるほどね。その日に休んだバーストリンカーってお前か」

 

「もしや襲撃の噂を聞いていたか」

 

「まぁそんなとこ」

 

 それで思い出したのは先週のネガビュの会議の中でフーコが持ってきた《マゼンタ・シザー》の学園祭襲撃の話。

 その標的となったのがリクトの通う明北学院で、襲撃されたグレウォ所属の3人の他に当日に欠席していたバーストリンカーもいたと報告にあったのだ。

 それがまさかリクトであるとは思わなかったが、今はその話はさして重要でもないので「そんなことより」と話は本題へと移す。

 

「オレとサアヤとアキラ。3人ともと連絡手段を作るのか? それともまだ誰か1人にしておくか?」

 

「そこに関しては僕もここに来る間に考えていた。現状ではまだ君達のグループに入ると約束はできないが、前向きに検討しているということは伝えられるだろう。その上で今はテル先輩、あなたとスムーズに連絡がつけばいいと考える」

 

「スムーズにね……こいつ平日は学校とバイトで1日のほとんどをグローバル接続切ってるけど」

 

「そうなのよねぇ……どっちかというとサアヤの方が適任かもしれん。一応はグループのリーダーだし」

 

「……では都田先輩でもいいですが、僕のグループには女性がいたことがなかったゆえ、女性と連絡先を交換するのは都田先輩が初めてということになる……」

 

 何はともあれ無事にリアルでの対面は果たしたので、あとは連絡先を交換するだけで今日のところはお開きでいい。

 それならとさっさと用件を済ませにかかったテルヨシに対して賛同しつつ、結果としてサアヤとのアドレス交換となった。

 ただリクトは女性への免疫があまりないらしくて、アドレス交換にドギマギする姿はサラリーマン風な身の丈から急に子供っぽさが見えて思わずニヤけてしまった。

 

「ふふっ、いいわねそういう初な反応」

 

「からかわないでくれ」

 

「サアヤにドギマギするのもよくわかる。よくわかるけど、残念ながらサアヤはオレと付き合ってるから、ここから恋愛に発展するようなことはないと思ってくれていいぞ」

 

「……中学生で男女交際とは余裕がありますね」

 

 それは悪いと思いつつ、少し恥ずかしがるリクトにはサアヤと脈はできないという割と残酷な現実を突きつけて強引に緊張を解き、聞いたリクトも下らないとは言いつつも目の前の2人がカップルとわかると、自分とは生きる世界が違うと線引きしたのか何やら壁が作られた感覚。

 恋愛観は個人の自由なので、リクトの中で中学生の恋愛は早いと言うなら否定はできないため、そこについての議論は無意味と結論を出して、滞りなくサアヤとのアドレス交換が完了。

 

「さて、と。用件は済んだし20分くらい使っちゃったから、待たせるのも悪いしさっさと行こっか」

 

「うわぁ……現実に戻さないでよぉ……」

 

 少し時間はかかったがこれで用件は終了したのは確かなので、まだ超重要な案件が残ってることを思い出させるように席を立ったテルヨシに対して、考えないようにしていたっぽいサアヤの足取りは非常に重い。

 そんな2人がどこへ行くのかと気になるアキラとリクトも頭にクエスチョンマークを浮かべるので、隠す気のないテルヨシが「親に挨拶しに行く」と間違ってはいないが受け取り方によって誤解がありそうな言い方で2人を困惑させる。

 それにはサアヤがすかさず「そんな大層なものじゃないから」と顔見せ程度なことを述べたが、どのみちカップルのイベントなのは変わりないので他人事のような表情になった2人は引き留めることもせずに店を出ていく2人を見送るのだった。

 

 寄り道はしてしまったが、これでとりあえず今日の最大イベントに突入できるとテンション高めなテルヨシがそのテンションでサアヤの手を握って歩く。

 対して親と会わせる側のサアヤは握る手を拒みはしないまでも、テンションまではついていかずに足取りに元気もない。

 

「そんなにオレがお母さんと会うのが嫌?」

 

「嫌とかそういうのじゃないけど、いざそうなって私がどうしていいのかわからないから……」

 

「いつも通りにしててよ。オレもいつも通りでお母さんと会うからさ」

 

「それもそれで不安なのよねぇ……お母さんのこと口説いたりしないでよ?」

 

「サアヤの前でお母さんを口説けるほど肝っ玉は据わってないっす……」

 

 そんな調子ではテルヨシも気兼ねなくお母さんに挨拶はできないので、なんとか家に着くまでに前向きにしてあげたいと話しかけ、自分がどうなるかわからないのが不安なサアヤからそれを払拭しようとしてみる。

 しかし別の不安を抱かせる結果となって苦笑してしまうが、それが逆に良かったか小さく笑ったサアヤが「信じてあげましょう」と握る手を少し強くしてくる。

 

「そういえばテルの両親のことを聞いたことなかったわね。どこで何をしてるの?」

 

「父親はオレが2歳の時に他界して、母親はアメリカの刑務所に入りながら精神治療を受けてる」

 

「…………なんかごめん。気軽に聞いて……」

 

「知らないで聞いたんだからサアヤは悪くないでしょ。話さなかったオレも悪いしね。だからサアヤに会わせるとかは今は無理かなぁ。母親とはほぼ絶縁してるようなもんだし、仲も良くない」

 

 その流れからテルヨシの親についてを尋ねてきたサアヤに対して、余計な気を遣わせないようにと坦々とした口調で答えて会わせることはできそうにないことを言うと、ちょっとだけ泣きそうな表情をしたサアヤが足まで止めて謝ってくる。

 テルヨシの中ではもうほとんど気持ちの整理をつけたことなので、サアヤが気に病むこともないと言いたかったが、優しいサアヤは少し引き摺ってしまうと思って握っていた手を指を絡めるいわゆる恋人繋ぎにしてみせる。

 

「色々と事情はあるけど、今は充実してるし幸せだって感じてる。そう感じられるのはサアヤがそばにいてくれるからだよ。そのサアヤが悲しい顔をするのはオレも悲しい。何より笑ってる顔が好きだしね」

 

「……それでもごめんね。無神経だったのは反省する」

 

「オレとサアヤの関係は色々とまだまだ『これから』なんだよね。今までも大事だけど、その『これから』も大事にしていこう」

 

「……もう、テルのくせにカッコつけないでよ」

 

「たまにはいいじゃないですか」

 

 お互いにまだまだ知らないことの方が多いのが現状なのはこの前のマリアの件でも認識したが、改めてそうなんだと思わせたこのやり取りに2人ともが小さく笑って「もっと知っていこう」と顔を見合うのだった。

 

 少しハプニング的なこともあったが、再び歩き出した2人は無事に家にまで辿り着き、立派な洋風建築の一軒家の敷地前で立ち止まって握っていた手を放す。やはり見られるのは恥ずかしいらしい。

 中ではサアヤのお母さんがまだかまだかと待ち構えていると思われるのでサアヤも呼吸を落ち着けてからなるべくいつも通りに玄関の扉を開けて「ただいま」と帰宅を知らせる。

 その音と声でリビングにあった気配が玄関へとやって来てお母さんが姿を現す。

 

「ちょっとぉ、遅いわよサアヤぁ」

 

「用事もあったんだから仕方ないでしょ……っていうかお母さん……」

 

 顔を見せるや否やサアヤに文句を言うお母さんだが、その所作には洗練さが溢れていていつものように家に上がるサアヤはスルーしつつも客人のテルヨシには綺麗な屈み方からスリッパを差し出してくれる。

 サアヤのお兄さんが8つ上の23歳ということは、お母さんは少なくとも40歳は越えているはずなのだが、なんともまぁ見た目は若い。サアヤと少し歳の離れた姉妹だと言われてもギリギリ通りそうなほど。

 ただ母親としての立場は保ちたい心理か、格好に関しては非常に落ち着いた印象を受ける色合いと、肌の露出を控えたものとなっていて、人妻の色気を中に押し込めている感じ。

 

「お父さんと旅行に行く時以上に化粧が決まってるけど……」

 

「え、ええ? 私はいつもこんな感じよ?」

 

 そんな上品さも漂うお母さんに対してのサアヤの反応は冷ややかで、いつもよりも気合いの入った化粧には呆れてしまって、とぼけるお母さんの恥じらい方はサアヤと似ていた。

 そんな親子のやり取りを玄関に立ち尽くして見ていたら、気がついたお母さんが上品に笑いながらどうぞと立ち上がる。

 

「ごめんなさいね。いらっしゃい、皇照良君」

 

「もう名前もご存知なんですね。お邪魔します」

 

「サアヤがいつも『アイツ』とか『アレ』とか失礼なことを言うからちゃんと呼んであげなさいって注意したらポロッとね」

 

「ポロッとじゃないでしょ! がっつり『彼氏の名前は? ねぇねぇサアヤぁ』って食いついてきたのはどこのどなたですかね!」

 

「もう……ポロッとの方が可愛げがあると思ったから少し捏造したのに、わかってないわね」

 

「ああはいはいそういうのに疎くて悪かったです。それじゃ着替えてくるからリビングで待ってて。お母さんは余計なことしなくていいからね」

 

 すでにサアヤから名前も聞かされていたらしくて自己紹介が省けたが、独特な空気で展開される親子の会話にテルヨシでさえ割り込めなくて呆然としてしまう。

 その会話を強引に終わらせて2階への階段に足をかけたサアヤが自室に着替えに行こうとして、謎の注意を受けたお母さんが「何のことやら」ととぼける様子を見て不安に思いつつも2階に上がっていき、残されたテルヨシはお母さんにリビングへと案内された。

 サアヤのお母さん、都田晴海(ハルミ)さんは、サアヤの注意を受けたとは思えないほどの好奇心でテルヨシを大型のスクリーンテレビ──家族団らんのためのものだろう──を正面にコの字型に配置されたソファーへと勧めて、手際よく飲み物とコースターを差し出し別の辺のソファーへと座りマジマジとテルヨシを観察。

 観察することには慣れてるテルヨシもその視線には少し戸惑いつつも出された飲み物は飲むべきかと口をつけておく。

 

「それでテルヨシ君はサアヤとはもうキスとかしたのかしら?」

 

 そのタイミングでニコニコのお母さんは唐突に爆弾を投下してくるから、虚を突かれたテルヨシは飲みかけていたものを盛大に噴き出してしまうところをギリギリで堪えて咳込むのだった。

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