「────ほんじゃ、今日のところはこんなモンか」
2週間ぶりの《七王会議》も《加速研究会》への攻撃方針が決定となってからは《相互不可侵条約》の微修正や、先月のイベント以降、一向に実装された気配のない《宇宙》ステージの情報交換などで時間が過ぎ、それらを終わって雑談になる前に《ブルー・ナイト》が話を切り上げて会議自体を終わらせる方向に。
そのナイトの声で立ち上がった王達に合わせて、同席していたテルヨシと《ボスポラス・フォグ》も立ち上がる。
「次の会議は、加速研究会の本拠地が発見され次第、招集をかけ……」
「あー、ちょい待ってナイト。招集の方は来週もする可能性だけでも残してもらえる?」
「……あー、テイル? それは何でだ?」
「待てよナイト。あたしもそれに関しての事かはわかんねーが、そいつに聞きてーことはある」
「奇遇だな赤の王。実は俺達も気になっていたことがあってな。会議が終わったら聞こうと思っていたところだ」
「っていうかみんな、気づいてて会議ではスルーしようとしてたわけでしょ? 『アレ』に意味があるなら、何か言い出すのはわかってたんだから、まずは話させなさいよ」
「くっくっくっ。どうせろくなことではないでしょうがね」
「聞いてもいないでくだらないと言うお前もろくでもないがな、レディオ」
それで次回の会議の開催予定を口にしたナイトが、来週にまた会議をやる可能性がないことを告げようとしたので、仕方なくこのタイミングで割り込みそれを阻止。
そこから誰も言い出さないから流れるんじゃと思われたことをユニコを皮切りに次々と言い出す各レギオン。
それだけ目立つことを昨日の段階でしていたのだから、嫌でも目にも耳にも入る情報なだけに本題を告げていなくても話題が同じなことは理解できる。
それならそれでと黒雪姫がまずはまた席に座って話を聞く体勢になると、他の王や幹部達も渋々っぽくはあるが座り直して割り込んできたテルヨシに視線を向ける。
「わざわざ悪いね。んじゃ話すけど、みんなが聞きたいのは同じことだろうからまずそれからな。昨日の領土戦でオレ達のレギオン《メテオライト》は中野第2戦域にレギオンの旗を掲げさせてもらった。破棄しない限り、最低でも今週末の領土戦まではあの戦域はオレ達の領土ってことになる」
「そりゃ言われなくても領土マップ見りゃわかるしな。だがよ、テイル。昔にあそこを領土にしてた俺達が、何であそこの占有をやめたかってのはわかってる上でやったんだな?」
「もちのろん。ナイトが中2戦域を空けてくれたから今のバトロワ祭りが確立してるし、そこには感謝もしてるよ。ただ今回の旗揚げは別に今後ずっと、中2戦域を支配したいって意思を見せることにはない。むしろ今週の領土戦が終わったら破棄するつもりでいる」
議題と呼ぶにはあまりに小さなことながら、改めて席に着いた面々にまずは昨日に行った領土占有についてを説明。
実は昨日にテルヨシ達がやってきたことはこの領土占有なのだが、中2戦域は昔《レオニーズ》が占有していた領土で、この戦域を空白にするために色々と仕掛けた過去もある。
その後は暗黙の了解としてこの中2戦域はバトロワ祭りの聖地として大レギオンが占有することはなかったが、そこにわざわざメテオライトの旗が掲げられたことの意味について意味不明なことを言う。
「今週にどうあれ破棄すんなら、目的は領土戦ってことになるが……意図は何だ?」
「『力』の主張だよナイト。お前ら7レギオンに負けない力がメテオライトにあることを証明するためにはこれしかなかった」
「大雑把だなオイ。力ってのはあれか? 要はレギオンとしての戦力ってことか。んなもんたった3人のレギオンでゲリラ的に散々やってきただろ」
「だからってお前らがメテオライトを『災害』と見はしても『脅威』として見たことはなかったはずだぜ? 別にお前らを脅かそうって野望はないが、少なくとも今後の話を進める上でお前らと『同等のレギオンである証明』は必要になってくる。だからこその領土戦さ。だからこその中2戦域なんだよ、ナイト」
領土を占有しながら、占有自体が目的ではないとするテルヨシの話にナイトが1つずつ解決へと導く会話をしていくが、対戦の残り時間もあまりないので黒雪姫がまどろっこしい話はやめろと割り込んでくる。
「お前は力の証明と言ったが、その先に見据える目的は何だ」
「《帝城》の完全攻略」
──ガタッ。
そのテルヨシの発言に対して、予想の外だったかソーン、レディオ、ナイトが思わず立ち上がってしまう。
事前に『何か言う』とわかってはいた黒雪姫とユニコはなんとか驚きを留め、《グリーン・グランデ》も珍しく側近としていた《アイアン・パウンド》と顔を見合わせていた。
《アイボリー・タワー》は微動だにしなかったが、元より白のレギオンは眼中にないので反応だけ確認して話を続ける。
「バカな話だって思ったか? そりゃオレも絶対の自信があってそんな目的を掲げてるわけじゃないが、出来ないと断言するのは勿体ないだろう」
「んで、仮にお前らのレギオンがその力の証明ってのが出来たとして、帝城攻略を表明する意味はなんだよ」
「いくらオレ達でも帝城攻略をメテオライトだけで実行するのは到底不可能だってことはわかってるさ。ならどうするかって話になれば自然と話は見えてくるよな。ここに。この場に『7つも巨大なレギオンが存在する』んだから」
「……フッ。そういうことかテイル。つまりお前は我々7レギオンに帝城攻略という1つの目的のために手を取り合おうと、そういうことを言いたいのだな?」
「その通りだ、ロータス」
驚く王達にあくまで冷静に話をするテルヨシにまた腰を落ち着けた一同だったが、その先を見据えて出てきたのがまさかの『協力』とあって再びざわつく。
今は相互不可侵条約なんていうもので停滞してはいるが、以前はここに集まる7レギオンはしのぎを削って争うライバルであったわけで、その集団でほとんど完結してしまっていた。
だから帝城攻略という巨大な壁に対して、無意識のうちに『レギオン単位で挑むクエスト』と認識してしまって、その中で不可能だとしてしまえば無理だと結論に至ってしまう。
だがテルヨシはその無意識の対立にヒビを入れて、何もレギオンだけで挑もうとする必要はないと進言。
「お前ら7大レギオンが不可侵条約の前までバチバチやり合ってたのは知ってるさ。本来なら敵であるレギオンだが、敵であると同時に切磋琢磨するライバルでもあったお前らだからこそ、こういうことを言い出すのははばかられてきたのかもしれないな。だからオレが言ってやるよ。オレ達バーストリンカーが総力を以て挑んで攻略できないなら、そこで初めてオレは帝城攻略が『不可能』だって諦めてやる。逆にそれをやらずして不可能と断言する奴がいるなら、バーストリンカーとして決定的に何かが欠けてしまってるって、そう思うよ」
現状で帝城攻略はその糸口すらも見えない難攻不落の要塞のようなものだが、考え得る最大の戦力が上がれば見えてくるものも確実にある。
例えばかつて黒雪姫が失敗した《四神》突破の作戦も、1つのレギオンを分散配置する必要がなくなり、各門でリーダーとなる王とレギオンを配置し、レギオン単位で個別に攻略が可能になる。
4つの門を1つのレギオンで突破するという考えが、1つの門を多数のレギオンで突破する考えでは、様々なところで大きな差が出てくるわけだ。
「さしあたっての攻略が四神になるわけだから、とりあえず最低でも4つのレギオンが協力してくれれば、それだけで1つのレギオンでの突破口を探る段階に移れるし、四神に対して有効なアビリティや必殺技が見つかれば、戦力をレンタルしたりもできるだろ? だがこれを言い出すに当たって、発案者がオレ達であることを許容するには、お前らに力を証明しなきゃならない」
「そのための領土戦ってわけか……」
「そうは言うけどテイル。アンタのとこのレギオンってまだ『4人』しかいないでしょ。それで力の証明ってのも釈然としないね」
「ソーンの言う通りだ。だが安心しな。今週末の領土戦までにメテオライトは《5つの星》を集めて『総勢8名』の少数精鋭レギオンにまで仕上げてくる。だから攻める権利があるプロミとレオニーズとグレウォ。あとはネガビュも、その数に合わせて全力できてくれ。そのことごとくを跳ね返して必ず領土を防衛してみせる」
皆まで言わなくとも各レギオンの頭なら、協力が意味するところのメリットも当然ながら理解できるし、それを言い出したテルヨシ達メテオライトが力の証明を必要とすることにも納得がいく。
その中でサラッとソーンがメテオライトの今のメンバーの人数を4人だと滑らせたが、シズクの加入はまだ公ではないため、隠してきたのだろうそれを勘づかせないためにいち早く反応し《五芒星》を匂わせる言葉で上書き。
「大層な目的を掲げ決意表明してくれたところ悪いが、我々のレギオンはまだ攻撃に回せるほどの人員を確保できていないのでな。今回は隣接する3レギオンに頑張ってもらいたい」
「杉並の3戦域なんて占有するから防衛で手一杯なんだろうが。まっ、帝城攻略をやるやらないはともかく、これはあたしらに対する宣戦布告でもあるわけだし、調子づかせねーためにもプロミからは《三獣士》を全員出撃させてみっか」
「なんだか話がでっかくなっちまったが、今の加速世界は研究会の企みに影響されまくってるからな。それに抗う意味でもブレイン・バースト本来の楽しみ方ってやつを貫くのもいいかもな。コバル。マーガも行きたきゃ行っていいぜ。編成は任せる」
「俺達グレウォも《六層装甲》を筆頭に仕掛けさせてもらう。ここまで挑発したのだから、それで負けても文句は言わんよな、テイル?」
「当たり前だろ。むしろ幹部クラスを叩きのめすくらいじゃなきゃ証明になんねーよ。その代わり、本当にオレ達が防衛に成功した時には、また会議を開いてもらって、そこで改めて質問をさせてもらう。オレ達と一緒に帝城の完全攻略をするかどうか……いや、協力してくれって頭を下げに来るのが正直なところか。オレ達の野望にお前らを巻き込むわけだからな」
中2戦域の五芒星と言えばテルヨシを筆頭に王達でさえ一目置く存在。
そんな5人が1つのレギオンに集ってまとまるということには何らかの脅威は発生したか、俄然やる気になったユニコ達がそれぞれ攻撃の意思を表明。
残念ながらネガビュはメンバー不足から辞退となったが、赤、青、緑の3レギオンからは幹部クラスも出張ってくるとあってテルヨシも内心で闘争心メラメラ。
しかしそれを表に出さずに、防衛に成功した暁には今の話を真面目に取り合ってもらう約束を取りつける。
これで各レギオンにも考える時間は与えられたし、攻略の糸口はまだないが、以前《チャイブ・リリース》が言っていた『可能性』を示すことはできる。
「話はわかった。いやぁ、やっぱお前は面白いな、テイル。立場的にいま言っちゃなんねーけど、お前らの野望に乗っかりたくなってきたぜ」
「お、王!? それをいま言われては、我々が全力で潰しに行く意味が……」
「わかってるって。やるからには贔屓なしで全力だ。お前らの覚悟、俺達に証明してみな」
「言われなくてもやるさ。あっ、報酬の分け前とかは正式に話が進んでからにしようぜ。その辺で揉めるのは目に見えてるし、こっちも考えておくから。長々と引き留めて悪かったな。これでオレの話は終わりだ」
話は通ったので、あとは来たる防衛戦までにやれることを全てやって当日を迎えるだけ。
ナイト達には総勢8名などと宣言したものの、未だ半数が未加入という状況は変わらないので、なんとしても今週中に残りのメンバーを招集しなければならない。
大きな役割を終えてひと息ついたところで、ナイトも締めようとしていた会議を改めて締めて、次の開催はメテオライトとの領土戦の結果次第として会議を終了。
残り時間も200秒を切ったため、白、黄、赤のレギオンがまずは姿を消し、フォグも「楽しい会議であったぞ」と言い残して退場。
黒と緑のレギオンは先週に言っていた会談の話でもしているのか、近寄っての会話を手早くしているようで、それを横目にテルヨシもそういえばと思い出して去ろうとするナイトに声をかける。
ナイトも何だといった雰囲気でテルヨシに振り向いて待ってくれたが、そのナイトに少し待ってと告げたソーンが、珍しくテルヨシに自分から近寄ってきて話をする。
「さっきはありがとね、テイル。私とルーレットの繋がりを匂わせる発言は迂闊だったわ」
「それは今後も公にしない方向なのね。ルールーはソーンにレギオン加入をどう説明してるの?」
「『とても大きなことをやろうとしてるあの人達と一緒に何かを成し遂げてみたい』って。そんなこと、この世界であの子が言ったのは初めてのことだったけど、今日のこれで納得したわ。あの子の《親》が誰かはもう知ってるのよね。なら約束して。絶対にあの子を裏切らないって」
「それはもう絶対の絶対。可愛いソーンちゃんの頼みなんてなくても、オレはいつでも女の子の味方だしね」
「……そうね。あなたはそういう人よね。それじゃあの子のこと、お願いね」
割とテルヨシのことは毛嫌いしている節もあるソーンだが、大事な《子》同然の《ボッシュ・ルーレット》ことシズクのことになるとそんな自分のことはどうでもいいらしく、刺々しいイメージも今だけは見せずにテルヨシにそんなことを言ってきた。
もはや母性とも言えるソーンの変わり様にはテルヨシもちょっとビックリだが、そんな大事な子を他人に預ける決意もしっかりと受け取ったので、その約束だけは何があっても守ろうと心に誓う。
話はそれだけでナイトも待たせてるしとさっさと立ち去っていったソーンを見送って、終わったかと待ちぼうけしていたナイトに近寄って改めて個人的な会話をする。
「なぁナイト。ちょっと具体性のない話にはなるんだが、心意の第2段階ってのが今のところバーストリンカーの引き出せる力の限界って認識は合ってるか?」
「なんだその突拍子もない話。心意の限界だぁ?」
「んー、いや、この前ちょっと自分でも全くわからないくらいのレベルで心意技を使ったみたいで、それがこれまでの第2段階心意技よりももう1つ上の段階を越えたレベルに達してたっぽくてさ。もう1度やれって言われてもできる自信は全くないんだけど、そういう経験が《オリジネーター》のナイトにならあるかなって思ってさ」
先週の作戦時に発動させた高レベルの心意技《
だから加速世界誕生から生き残っているオリジネーターならば何か知っているかもと尋ねてみると、顎辺りに手を添えて唸ってから口を開く。
「……そいつは口で説明したところでどうにもならん気がするな。理屈でどうこうってよりは、極限まで自分の『真髄』ってやつを研ぎ澄ませるかどうかって話になる。使いこなそうと思っても第2段階心意技の何百倍の時間……事によっては永遠に習得なんてできねーような代物だ」
「それはナイトも同じってことか」
「まぁな。グランデに聞いても同じようなことを言うと思うぜ。まっ、本気で習得するつもりなら俺のレギオンに入って修行するプランも……」
「いやそれはいい。ただ心意技にさらに上の段階があるってのがわかっただけで収穫だったよ。ありがとな、ナイト」
「本来なら他のレギオン所属のやつに教えるようなことでもなかったが、お前は個人的に気に入ってるしな。特別なことだが、他言無用で頼むぜ」
別に自分のレギオンに所属しているわけでもないテルヨシに丁寧に教える義理もないのに、ヒントのようなものはくれたナイトは相当に甘い。
それだけではあの心意技を再び使えるようにすることは不可能に近いが、ナイトの話から『そういう上位の心意技は存在する』と示されたのは大きな収穫。
さらにナイトやグランデでさえ未だ習得には及ばないみたいなことを聞くに、そんな代物をヒヨッコのテルヨシがどうこうできるわけもないので、密かに継続していた再現の修行も今日からはもう無駄かと諦める。
具体的にどういうものかわかるまではこの件は放置の方向でいいかと、話が終わったならと退場していったナイトを見送って、黒と緑の話も終わったっぽいのを遠目に確認してすぐに、コバルとマーガがフィールドを閉じてしまったようで強制的に現実世界へと戻されていった。
千代田区の飯田橋駅からダイブしていたテルヨシは、つい数分前に乗ったばかりの電車にまた乗り込んで、東京メトロ東西線で2つ先の早稲田駅を目指す。
バトロワ祭りを終えて会議のために中野駅から飯田橋駅。そしてそのまま早稲田駅へと移動ばかりで嫌になりそうだが、早稲田駅は高円寺駅に戻る道中なのが不幸中の幸いか。
そんなことを思いながらも1度は降りることになる早稲田駅で改札を潜って、事前にメールで指定されていたジャンクフード店まで寄り道なしで直行。
おそらくは自分が一番遅い到着になってるだろうと予想しつつ目的のジャンクフード店に入ってすぐ、席を確保していたサアヤが呼び込むので6人座れるボックス席へと腰を下ろす。
その席にはすでにサアヤの他にアキラ、シズク、リクトの姿があり、テルヨシの分の注文もすでにされてあって全員が何らかの飲食はできる状態になっていた。
「あれ、シズっちは休日でも制服なのね」
「はい、校則なのですみません」
「夏休みとかは適応外?」
「一応そういうことにはなっていますが、その……そういった校則があるので着る機会もなく、私服の方はバリエーションに乏しいです」
「じゃあ夏休みはショッピングでもしちゃおっか。シズっちの着せ替えとか楽しそうよね」
「そんなこと言って、本当はシズクの露出を増やしたいだけでしょ。男ってこれだから……」
「何が悪いというのか。なぁアキラ、リクト」
「ぼ、僕は今の袴田さんでも十分すぎます」
「また色恋沙汰の話か。くだらないことを話すための集まりならば帰らせてもらうが」
バトロワ祭り終了からテルヨシ以外が直行で来ているはずなので、すでに自己紹介の方は済んでいる空気を察して、挨拶代わりに今日も制服なシズクから話を発展させてみた。
しかしリアルでのノリが悪いリクトが本当に帰りそうな雰囲気になってしまったので、仕方なく雑談もそのくらいで今回のメンバーが集まった目的へと移っていく。
「んじゃ始めよっか。第1回レギオン会議を」