アクセル・ワールド~蒼き閃光Ⅱ~   作:ダブルマジック

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Acceleration Second86

 

 《サンタン・シェイファー》を一時的に退けて、上空80m付近から《要塞拠点》へと落下していったテルヨシは、そのジャンプだけでは辿り着けないことがわかると、背の高い建物オブジェクトの屋上へと《テイル・ウィップ》を上手く使って落下ダメージを無効にし着地。

 自慢の足を使って屋上から屋上への跳躍を繰り返してほとんどまっすぐ要塞拠点のある地点まで到達する。

 その時にはもう視界右上に《アイアン・パウンド》の表示があり、要塞拠点での戦闘音もしっかりと耳に届いていた。

 

「せいッ!」

 

 領土戦開始から300秒を過ぎていたために混戦模様もなかなかだったが、悠長に戦況の全てを把握していたら仲間が減る可能性もあったので、ほとんどノンストップで屋上から跳び降りたテルヨシは、その落下先の要塞拠点に居座っていたパウンドめがけてダイブキック。

 混戦だったこともあってパウンドの視界にはテルヨシの名前が直前に出てきたことは間違いなく、そうと気づいたのは交戦していたリクトが察して後退したからだろう。

 

「ぬっ! お前……はぁ!」

 

「ハイ拳ちゃーん!」

 

 どうあっても防御は間に合わないタイミングだったはずなのに振り向き様に拳を突き出してきていたパウンドの野生の勘ならぬ、ボクサーの反射神経は的確にテルヨシのダイブキックに拳をぶつけてきた。

 しかし全体重に落下速度も足して繰り出したダイブキックが、踏ん張って放っただけの拳に負けるはずもなく、一瞬の拮抗のあとには押し込んで攻撃を加える。

 ただ拳を弾かれたパウンドはその反動を利用して体を回しテルヨシのダイブキックの軌道から逃れて躱して、受け流すように避けられたテルヨシはそのまま要塞拠点に不時着。

 一応の保険でテイル・ウィップを支えに地面との激突は緩和したものの、ダメージを与えるまでに至らなかった攻撃に舌打ちしてパウンドからの反撃を嫌ってすぐに要塞拠点から離脱してリクトの隣に並び立つ。

 

「遅ぇよバカが」

 

「シェイシェイが遊んでほしいって駄々こねてきたからさぁ」

 

「ちゃんと振り切ってきたんだろうな」

 

「女の子にそんな酷いこと出来ないでしょ」

 

「ぶっ飛ばすぞコラ!」

 

 パウンドも踏み込んでまで攻めてくる気配はなかったのでとりあえずは落ち着いたものの、まだ戦況の全てを把握できていないため視野を広げて観察眼をフル活用していたら、リクトからのお小言が聞こえてふざけて反応したら怒られてしまう。

 もちろんサンタンは遠ざけつつ来たから、すぐにここまで来ることはないとすぐに訂正しまた怒鳴られたが、状況があんまりふざけてられないことも理解していく。

 何故ならパウンドが今いる要塞拠点の占拠を示すゲージがグレウォのレギオンカラーに染まってしまっていたからだ。

 

「《ビリダイン・リージョナリー》!」

 

 そしてその要塞拠点にはパウンドの他に西洋騎士風の鮮やかなエメラルドの装甲色をしたM型アバターである《ビリジアン・デクリオン》がどっしりと構えていて、別の方向にいたサアヤと《チャイブ・リリース》を牽制。

 視界上でデクリオンの必殺技ゲージが満タンになったのが見えた瞬間、遊撃に回っていた《アッシュ・ローラー》と《ブッシュ・ウータン》がサアヤとリリースを引っ掻き回して注意を逸らせると、デクリオンが手に持つ剣を掲げて必殺技発声。

 必殺技発声後にゲージが空になるのと同時に剣から4つの雷が放たれて周囲の地面に突き刺さると、その地面からデクリオンより少し薄い色の槍と盾を装備した無骨な西洋騎士オブジェクトが這い出てくる。

 このデクリオンの必殺技はクラリッサの《マスカレード・ボール》と効果としては似ていて、分身体ではなく忠実な兵隊オブジェクトを召喚する必殺技。

 ただしクラリッサの分身体が耐久性皆無なのに対して、デクリオンの兵隊はかなりの高性能を誇り、全てにおいて高水準なせいでサアヤ達でも同時に相手取るには厳しくなる。

 それをデクリオンは1度の発動で4体。さらにもう1度発動することで最大8体を操ることが出来るため、その2度目の発動はなんとしても食い止めたいところ。

 要塞拠点の占拠による恩恵で全消費後にもかかわらず、すでにデクリオンの必殺技ゲージは自動チャージを始めていて、毎秒1%ほどの回復量で100秒後にはまた発動してしまう。攻撃にも手が出ればもっと早い。

 向こうはデクリオン、パウンド、アッシュ、ウータンに加えて《オリーブ・グラブ》がアッシュのバイクの後ろに乗っていて、総勢5人。

 サンタンは引き離したので向こうはあと《パンジー・スティング》と誰か1人が不明なだけとわかったが……

 

「ギガ・スキアリッしゅ!」

 

「バカかお前は」

 

 実は屋上から跳び降りる直前に同じように屋上にスタンバイしていたスティングの姿をすでに捉えていたテルヨシは、自分がバレてないと思って仕掛けてきたスティングにカウンターをお見舞いしようとする。

 ただ、お見舞いも何も不意打ちする気全くなしな叫びで台無しなアタックにはため息すら出て、しっかり反応したリクトが突き出された腕の槍を横から殴って弾くと、バランスを崩したスティングをテルヨシが回し蹴りでパウンドの方に吹き飛ばしてやる。

 その様子にはリアルでも繋がりがあるサアヤが「うわぁ、バカやってる」みたいなイタい視線で哀れんだのがわかる。

 

「マスカレード・ボール!」

 

「《ボンバー・カーニバル》!」

 

 しかしこれでグレウォは6人が占拠した要塞拠点に集結し、テルヨシ達は4人で完全に逆境。

 デクリオンの兵隊も加えれば実質4対10と厳しい状況だが、すぐに遠間から援軍が到着しそれぞれが必殺技発声で突撃してくる。

 クラリッサは溜めた必殺技ゲージを全消費して10体の分身体を作り出し、要塞拠点を取り囲むように展開。

 ユリはお得意の上空から珍しく空爆攻撃であるボンバー・カーニバルで要塞拠点を無差別攻撃し始める。

 これによって一転、要塞拠点を陣取るグレウォの面々は苦しい攻撃を切り抜けるために動くことになるが、その動きを周囲を取り囲んだテルヨシ達がボンバー・カーニバルの範囲外から妨害。

 凄まじい爆撃であっという間に要塞拠点付近は爆炎と煙で埋め尽くされていく。

 要塞拠点のアドバンテージは確かに強力だが、その反面でどんなフィールドでも拓けた場所に構築されることから、単に占拠するだけでは的になることは必至。

 その対策を怠ったグレウォが失策だろうなと爆撃地を外から見ていたら、煙はテルヨシ達のいる場所にまで広がってきて視界が悪くなっていく。

 

「ちょっとこれ……」

 

「マズイな」

 

 それに危険な匂いを察知したテルヨシとリクトが動こうとした瞬間、《ブレード・ファン》を広げた状態で思いっきり振るって煙を吹き飛ばしにかかったサアヤの行動で煙は狙い通りに吹き飛ぶ。

 しかしそれを狙っていたかのように煙の中にいたアッシュがバイクを止めて叫び、ウータンの強靭な両腕にパウンドが掴まれている。

 

「《フライング・ナックルヘッド》!!」

 

「いくでヤンスよ!」

 

 向こうも向こうでこちらがまともな遠隔攻撃が出来るのがサアヤくらいなのをわかっていて、そのサアヤが動いたところで即座に動き出していた。

 アッシュの必殺技はバイクに搭載されていた対空ミサイルを2発撃ち出すもので、ウータンに掴まれたパウンドはその腕力で強引に投げ飛ばされてアッシュのミサイルを追従するように跳躍し、もちろんその狙いはボンバー・カーニバルを使うユリ。

 ユリも長年の連係でサアヤがなんとかしてくれると過信していたのと、必殺技発動中は一定速度を保って回転し続けなければならない都合で反応が遅れ、アッシュのミサイルを直撃。

 サアヤも気づいてブレード・ファンを展開剣にしていたが2歩ほど遅く、ミサイル直撃で昏倒し落ちたユリをパウンドが強襲。

 

「《イラプション・ブロウ》!!」

 

 ──ゴワッ!!

 確実に仕留めるために必殺技まで使ったパウンドのボクシンググローブのような装甲から拳を押し出すような爆発的な炎が噴き出して加速させ、ほとんど撃ち落とすように振るわれた拳を受けてユリが豪快に地面へと叩きつけられる。

 そこに遅れて振るわれたサアヤの展開剣がパウンドを叩き落とすように襲撃し、パウンドも防御はするが力負けして地面へと叩き落とされるが、落下地点でウータンとオリーブがガッチリと受け止めてダメージは軽減していた。

 

「《ハウリング・パンヘッド》!!」

 

 この攻防でユリが戦闘不能に追い込まれて退場となり、テルヨシ達としてはこちらに傾きかけた流れをまた向こうに引き戻された形になる。

 さらにパウンドを攻撃した直後のサアヤを狙って今度はアッシュの対地ミサイルが放たれてサアヤを襲い、ここまでも狙い通りだっただろうグレウォの強かさに戦慄。

 もちろんこのミサイルはリリースが割って入ることで防御することはできたが、リリースが前に出たことでサアヤの視界が悪くなり、そこを突いてデクリオンの兵隊が2人に押し寄せる。

 となれば向こうの狙いはサアヤとリリースの撃破と見て間違いなく、狙いさえわかれば動きようはあると、テルヨシとリクトもアイコンタクトで動き出し、クラリッサも分身体を1ヶ所に集めて叫ぶ。

 

「《十人長》をこちらへ! あなた方は向こうの救援を!」

 

「だそうだスピン」

 

「《六層装甲》を1人で引き受けてくれるなら願ったり叶ったりだ」

 

 クラリッサにも狙いがあるのは明らかで数的不利な状況で敵のリーダー格を1人で相手にすると叫んだならば、それは自信の現れでもある。

 そうと決まればテルヨシとリクトの行動も早く、まずは目の前に立ちはだかったパウンド、スティング、ウータン、オリーブの4人に対して奇抜な抜け方をする。

 リクトが四肢の回転機構を《ドライブ》で動かし、そのリクトをテルヨシがテイル・ウィップで掴んで持ち上げると、そのままリクトを横凪ぎに振り回す。

 ぞんざいな扱いにはリクトから文句を言われそうなものだが、ドライブが発動してるリクトはただぶつかってくるだけのデュエルアバターではないので、パウンド達もその軌道上から外れるように回避に動く。

 と、読んでのテルヨシのアクションはリクトが前に振り出される瞬間に解放し勢いだけで前へと飛ばしてしまい、4人のほころびた壁を一気に抜けさせてしまうと、まんまと策に嵌まったパウンドがそれでも阻止しようと自分の拳自体を撃ち出す《ロケット・ストレート》を使おうとする。

 そうやってオレから意識を逸らしちゃったらダメでしょ。

 パウンドの意識がほぼ抜けたリクトにいった瞬間を逃すことなく前に出たテルヨシが奇襲で大ダメージを狙いにいくと、やはりスティング達が再び立ちはだかってきて、スティングは槍となってる両腕を引き絞って必殺技発声。

 

「《ラッシュ・ニードル》!」

 

「食らうでヤンス!」

 

「うおぉ!」

 

 さすがにアッシュの取り巻き3人衆だけあってその連係は見事で、前面をスティングの必殺技が阻み、上と左右に逃げるのをウータンの剛腕が防ぎ、唯一の下方向をオリーブが待ち構える。

 どこに行っても捕まると確信できる連係だ。しかしこちらも1人ではない。

 

「だっしゃあ!」

 

 これは完全にアドリブだったものの、スティングのラッシュ・ニードルが発動した瞬間に屋上から大きな雪玉になったアキラが落下してきて、そのままスティングを押し潰してくれる。

 その奇襲に驚いたウータンとオリーブが動きを止めたのですかさず間合いを詰めてオリーブを手が空いてるクラリッサの方に蹴り飛ばし、掴んでこようとしたウータンを突き放すように蹴り飛ばして、まさにロケット・ストレートが火を噴いた瞬間にその軌道に乗せてやると、「ぶへっ!?」と情けない声と共にパウンドのロケット・ストレートがウータンに直撃してリクトへの攻撃を阻止。

 そして無事に抜けたリクトは高い機動力でデクリオンに肉薄して剣も盾も上手く使わせずに背後に回り込むと《ジャイロ・ブレーカー》でクラリッサのいる場所めがけてデクリオンをシュート。

 食らった直後はスタン効果もあるそれを受けたデクリオンは吹き飛ぶしかなく、飛んできたオリーブをタコ殴りにしていたクラリッサの集団に豪快に突っ込んでいった。

 これであとはクラリッサが何とかしてくれると踏んで、まさかのフレンドリーファイアをしてしまったパウンドがその怒りを拳に乗せてテルヨシを強襲。

 ──カチッ。

 切り替わる。意識が。感覚が。鋭くなる。

 テルヨシが極限集中モードに移行する時、たまにスイッチが切り替わるような音が頭に響くが、これが起きた時のテルヨシは持続力こそ半分以下に落ちるものの、密集地帯での被弾率が皆無になるほどの広い視野と判断力が獲得できる。

 それを勝手に《無敵モード》とか名付けるセンスのなさはリュウジをバカに出来ないが、わずかながらに周りの動きもスローに見える今のテルヨシならパウンドの強襲も怖くはない。

 リアルボクサーの鋭いジャブが火を噴いてテルヨシを襲ったところで、そのリーチを見切ってスウェー回避に動くと、本当に紙一重の距離でパウンドのジャブを躱す。

 ただしジャブは戻りが早く出も早いため、テルヨシの回避に驚く様子もなくすぐに連打してきたパウンドに合わせてテルヨシもステップ回避に切り替えて『見てから避ける』という集中力をゴリゴリ削る選択でパウンドを引き付ける。

 幸いパウンドのストレートを放つ拳はロケット・ストレートでウータンと一緒に飛んでいったのですぐに回収は不可能。最悪食らっても大打撃には繋がらないと踏んでいた。

 そうやってパウンドを自分に集中させることで他が動きやすくなり、スティングを押し潰してくれたアキラは、スティングに串刺しにされながらもその腕を締め上げて抜けなくして身動きを封じてくれて、デクリオンをクラリッサに押し付けて手が空いたリクトはその辺でぶっ倒れるウータンのそばに落ちていたパウンドの拳を明後日の方向に蹴飛ばして、何故か離れても感覚はあるらしいそれで一瞬強張ったパウンドの隙を突いて低空タックルをかまして押し倒す。

 ここで無敵モードが切れて少しの虚脱症状がテルヨシを襲うが、パウンドへのマウントだけは維持。

 

「春先にもこんなことがあったが、今度はそうもいかん!」

 

 その状態から改めて周囲を観察しようとしていたテルヨシに対して、マウントされていたパウンドがいつかの話を持ち出して一層の気合いを入れてくる。

 パウンドが言っているのはおそらく、春休み中に突然の来訪をしてきたリュウジ都一緒に臨んだ領土戦のことだろう。

 あの時も今のようにほとんどマウントして身動きを取れなくした後に他を全滅させて袋叩きにして勝利したから、それを根に持ってるらしい。

 その雪辱を果たそうと、以前よりも緩い拘束に目をつけて拳をテルヨシの胸元に突きつけたパウンドに、何をするかわかったテルヨシも飛び退こうとする。

 

「イラプション・ブロ……」

 

「《バースト・ショット》ォオ!!」

 

 無敵モードの反動でわずかに回避が間に合わないと悟った時に、パウンドの必殺技発声を塗り替えんばかりの必殺技発声が木霊して、言い切る前に発動したシズクの必殺技による攻撃がパウンドを襲撃。

 《カリス》による狙撃だったことは間違いないが、命中したパウンドの頭が酷いレベルで吹き飛んでテルヨシの目の前で首なしパウンドが完成すると、突き出していた拳も全損によって力なく落ちて、次いで体全部が消滅してしまった。

 地面に倒れるパウンドを狙えたことから、シズクの位置はかなり高い位置だろうなと立ち上がりながらパウンドの頭が吹き飛んだ時の様子を参照して方角を定めると、150mくらい離れた建物オブジェクトの屋上から飛び降りたシズクの姿を発見。

 ともあれ今回の2番手であろうパウンドを撃破したのは大きく、落ち着いて状況を把握しにかかると、なんか子供の喧嘩みたいにじゃれあっていたアキラとスティングが仲良く相打ちしちゃって助けるのが遅れてしまった。

 まぁ相打ちなら上出来だろうと、アキラの奮闘を労いつつ他を見ると、クラリッサにボコボコにされて放られたオリーブが昏倒している横で、デクリオンがクラリッサ相手に大苦戦。

 

「《リバース》!」

 

「ぬっ……ぐっ」

 

 元来、デクリオンは正面からの戦闘ならグレウォでもトップクラスの性能を誇り、その実力で第2席にいるのは紛れもない事実。

 そのデクリオンが圧されるのは、やはりクラリッサのアビリティ《インベート》による動作の逆転作用による影響だ。

 相当な鍛え方をしなければクラリッサのインベートで咄嗟に『右は左』『上は下』『前は後ろ』などのあべこべな動きをコントロールできるはずもなく、それが分身体の中からどんどん撃ち込んでくるのだから頭の中はぐちゃぐちゃなはず。テルヨシでもあそこから逆転は難しい。

 それならデクリオンも召喚した兵隊を使えばいいだろうとなるが、それも不可能。

 何故ならその兵隊4体はサアヤとリリースが全力で打ち倒しに動いていて、デクリオン自身への援軍に動かせば大きな隙を作り、瞬く間に倒されてしまうからだ。

 クラリッサの分身体もその数は減りはしたが、結果的にデクリオンをほぼ完封する形で撃破。こればかりは準備と相性の問題なので、決してデクリオンが弱かったわけではない。通常対戦ならクラリッサももっと苦戦していたはずだ。

 残りはアッシュ、ウータン、オリーブの3人だが、要塞拠点こそ占拠しているグレウォでも、一気に傾いた形勢は覆すのは難しい段階にまで達して、デクリオンの兵隊が倒され、オリーブが倒され、ウータンも倒されて、最後に残ったアッシュも容赦なくサアヤがバイクをぶっ壊して、翼を奪われた鳥状態に。

 

「マジ・ナイスファイトだったぜテメーら!」

 

「あっ、そういえばシェイシェイが残ってた」

 

「ああ、サンタンならアタシのところにぶっ飛んできたから倒してきた」

 

「ならこのガイコツで終わりだな」

 

 もはや哀れになるほどの状況でアッシュも諦めて称賛の言葉で締めようとあぐらをかいてしまい、そういえばとテルヨシが吹き飛ばしたサンタンがまだいるなと口にすると、運良く飛ばした先にシズクがいたらしくすでに撃破済みとわかる。

 それならとリクトもこの領土戦も勝利に終わったかと言葉を出していたが、どうにもスッキリしないテルヨシはそこでうーんと唸るが、サアヤはどうでもいいでしょとアッシュにとどめを刺す。

 

「……あっ! もう1人いる!」

 

 と、まさにアッシュが倒された瞬間に思い出したテルヨシの言葉に、サアヤ達もえっ? といった雰囲気を醸し出した後に、倒したグレウォの人数を思い出すと、確かにまだ7人。グレウォが数を合わせてきたなら、もう1人このフィールドにいることになる。

 そしてアッシュが倒されたことで相手はその残る1人になるので、必然としてテルヨシ達の視界右上の表示は等しく同じデュエルアバターの名前が表示されることになるが、それを見た瞬間、テルヨシだけでなくあのサアヤが驚き言葉を失ってしまった。

 何故なら視界にはこう表示されたからだ。

 

《グラファイト・エッジ》

 

 と。

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