人類最速の俺が逝く緋弾のアリア   作:じょーく泣虫

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ハイジャックってやべーよな

アリアはあの後「一人にして」とだけ告げて、何処かに行ってしまった。

 

それを見届けてから、キンジと一緒に帰ってきた形になる。

 

帰り際に何か話すこともなく、寮まできて俺の口からやっと出てきた言葉はいつも通りのものでしかなかった。

 

「また、明日な」

 

「...ああ、またな」

 

キンジも表情一つ変えることなく、暗い顔でその言葉だけ紡ぐと、フラフラと部屋に消えていった。

 

俺も、なかなか酷いツラをしてるんだろう。洗面台の鏡には、随分と青くなった自分の顔が嘲笑うかのように俺を見据えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、夜が明けた。

 

 

 

ホームルームが終わっても、アリアは来なかった。後ろにグルリと体を向けて、キンジを見ると随分とアリアの席を気にしてるようだった。

 

その日のキンジは、授業中ずっと上の空で、きっと午後の授業も午前と同じ感じだったんだろう。

 

そうやって放課後に入ると、装備科の平賀さんからメールが届いた。

 

どうやら俺の銃の修理と改造を頼んでいたが終わったみたいで、いつでもいいから取りに来てくれ、という内容だった。

 

放課後は予定もないし、行くとしよう。そう思い、すぐさま平賀さんの所へ足を運んだ。

 

 

 

 

「やー、やー、よく来てくれたのだ、冴島くん!」

 

平賀さんに話しかける前に、平賀さんが俺に気づいて作業を中断し話しかけてきた。

 

「おっす、頼んでたモン出来たんだったな?」

 

「モチロン!バッチリなのだ!」

 

平賀さんはそう言うと作業テーブルの端に置かれたガンケースを引っ張り出して、俺の足元にそれを置く。

 

俺は中身を確認するために、腰を床に据えて、ガンケースをじっと見つめる。

 

平賀さんがガチャリとロックを解除して、ガンケースの上部を開けていく。

 

「―おお」

 

中に入っていたのは一丁のリボルバー。

 

鈍い銀色の銃身に、丁寧にニスが施されているウッドストックの重厚な雰囲気が堪らない。

 

「依頼されていたフレームの歪み補正、照準のズレ修正、トリガーの異常な軽さ、シリンダーの傷の修理。そして、割れたストックの交換でウッドストックへ変更、マズルブレ―キが破損したのでより大型の物へ変更。全部合ってるのだ?」

 

そう言って、顔を上げ、平賀さんはガンケースから俺へと視線を移す。

 

「ああ、確かに」

 

代金を平賀さんに渡し、ガンケースを受け取る。

 

「はい、丁度なのだ!それでは、依頼されていたXVRの修理、改造!これにて満了なのだ!」

 

平賀さんは笑顔でそう言って、今後とも御贔屓にと続けた。

 

「また何かあったらくるわ、ありがとさん!」

 

ようやく俺の銃が帰ってきた。

 

S&W Model460XVR(8.38in)。46口径マグナム弾を使用する、5発装填可能なリボルバー。

 

Model500は象殺しの異名で余りにも有名な世界最強のリボルバーだが、この銃にもそれと似た特徴がある。

 

それは、世界最速の拳銃ということである。このXVRから放たれる弾丸の弾速は700m/s。それ故にModel500以上の貫通力と、遠距離での威力を誇る。

 

全長381mm、重量2055gの化け物リボルバーだ。反動がエグいんじゃないかと思うかもしれないが、この銃、なんとマズルブレーキが装着されていて、予想より反動は少ない。

 

まぁ反動が強すぎてマズルブレーキが装備されたわけなんだが。

 

そうして寮の自室に戻って、ガンケースからXVRを取り出し、弾丸を装填して、ホルスターにしまう。予備の弾丸もスピードローダーに詰めて、ポーチに忍ばせる。

 

全部仕舞いきって、さぁ風呂にでも入るかとホルスターとポーチを外そうとしたところで、携帯電話が音を鳴らした。

 

キンジからの着信だ。なにかあったのか?

 

「もしもし、キンジ?どったの」

 

『急いで、羽田空港まで来てくれ!理由は後で話す!時間がないんだ!』

 

と、随分と切羽詰まったような様子で早口で言うキンジ。

 

マジになんかあったみてーだな...

 

時間がないなら急ぐべきだ。足はバッチリだし、運がいいことに銃も手元にある。

 

「ああ、分かった。羽田空港だな?」

 

『そうだ!頼むぞっ!』

 

ピッと通話を切って、携帯を仕舞う。

 

ガチャリと扉を開けて、寮の外へ出る。シューズの紐をギッチギチに縛って、軽く屈伸をして、手足をブラブラと遊ばせ、グルグルと回して慣らす。

 

つま先で地面を数回蹴って、腰を静かに落とし、クラウチングスタートの姿勢に入る。

 

グイッと踵を浮かせ、左足に、力を溜める。

 

「へへへ、走るのはなんやかんやで久しぶりだな!」

 

走ろうとしても予定が詰まってて走れなかったりして、結構鬱憤が溜まってたのだ。

 

ここで全部出し切って、パーッとしてーなぁ!

 

「よぉーい...ドンッ!」

 

 

 

 

 

自分の掛け声で、スタートを切った。

 

 

 

 

 

――瞬間  

 

 

 

 

   世界が  加速した。

 

 

 

 

道路を走る自動車なんかよりもずっと速く、道行く人々は俺の速度に驚き、F1でも見ているかのような勢いで首を振り目線を俺に追いつかせようとしていた。

 

 

 

予想はしてた。予感はあった。バスジャックの一件から、格段に速くなっている。

 

ギュンッ!ギュン!

 

腕を振る度にグングン速度が上がっていく。楽しい、楽しい!

 

そうやって走っている中で、あっという間に羽田空港にたどり着いてしまった。

 

キンジは、見渡すが何処にもいない。

 

もしかして俺のほうが速かった?キンジは急いでるんだったよな、じゃあ探しにいくか。

 

そう思い、踵を返し、また走る。

 

キンジはすぐに見つかった。真っ直ぐ羽田空港を目指して走っていた。

 

キンジの前方、10mまでいって、跳躍しながら空中で体を捻り、後転を加え、五点着陸を決める。

 

「うぉおお!?」

 

キンジはかなり驚いていた。そりゃそーだ、まさか俺が羽田空港から出てくるとは思わなかっただろう。

 

「よォーキンジ!あんまりにも遅いから迎えにきたぜ」

 

そう言いながら有無も言わさずに、キンジを背負う。

 

「えっちょ」

 

「さぁ、俺の速度にご招待!」

 

キンジを背負ったまま、全力で走る。キンジが何か叫んでるけど聞こえない。

 

そのまま羽田空港のチェックインに到達。急ブレーキを掛けて武偵手帳を見せてチェックをパス。そのまま金属探知機を横からすり抜けて、すり抜けて...

 

「なぁキンジ」

 

「な、んっだ!」

 

「で、これどこいくの」

 

「はああああああ!?」

 

だって話は後でするって言ったじゃんかよぉ...

 

「あぁ、もういいっ!そっちの、ボーディングブリッジだ!いい、か!?今度は、ゆっくりだぞ!頼むぞ!」

 

「任せろ!最速だな!」

 

「ちがっあっ」

 

指示された方へ全力で走っていく。

 

まだハッチが締まる気配もないANA600便、ボーイング737-350 ロンドン・ヒースロー空港行きに突っ込んだ。

 

急ブレーキを掛けて、跳躍。グルリと回って慣性を完全に殺し、着地。

 

「―ああ、また世界を縮めてしまったぁ...」

 

ウットリ。

 

両手を広げ、くるくると独楽のように回転し自分の可能性を最大限に褒め称えていた。

 

「もう二度と、お前の背中には乗らん。これなら1930年代の自動車のほうがマシだ」

 

キンジは顔を青くしながら、俺を睨んでくる。何が不満だったのだろう、速さが足りなかったのかもしれない。俺もまだまだってことだな。

 

「で、キンジ。こっからどーすんだ。てかなんで空港?」

 

「アリアが武偵殺しに狙われてる。武偵殺しが次にジャックするのは、俺たちがいる、コイツだ」

 

キンジはコツコツ、と床を叩く。成程、このボーイングが次の標的な訳だな。

 

「じゃあ、アリアを探すか」

 

床に座ってるキンジに手を差し伸べ、キンジがそれを受け取る。引っ張り上げて、キンジを起こしアリアを探すことにした。

 

「いや、その前に」

 

キンジがフライトアテンダントを1人捕まえて、武偵手帳を突きつけつつ、叫んだ。後ろでハッチが完全に閉まる音が聞こえた。

 

「武偵だ、離陸を中止してくれ!」

 

「お、お客様!?どういうことか、説明を...」

 

「説明をしているヒマはないっ!はやく!」

 

キンジに気圧されたのかちょっと涙目になっているフライトアテンダントは、おぼつかない足取りで二階へと駆け上がっていった。

 

「これで、一安心だな」

 

キンジがふぅ、と一息つく。

 

俺ものんびりと、伸びをして、息を整える。

 

「ん?んん!?」

 

グラリ、と足元が揺らいだ気がした。いや、動いてる!

 

「おい、キンジ!止めたんじゃあないのかっ!」

 

「どういうことだ!?」

 

そこに、さっきのフライトアテンダントが帰ってきて、申し訳なさそうな顔で俺たちに話しかけてきた。

 

「あ、あのぅ。すいません、ダメでしたぁ...規則で、離陸は中止できないし、そんな命令どこからも来てないって...」

 

「こ、コノヤロウ..!」

 

キンジが怒りでブルブル震えている。それを見てフライトアテンダントは更に顔を青くした。

 

「まーキンジ、ちょっと落ち着け。もうなっちなったモンはしゃーねーだろ?こうなったらこうなったで、どうにかするしかねー」

 

そうやってキンジの肩に手を置いて、グイグイと揉んでほぐす。

 

「―ああ、そうだな。この機体は、セレブ御用達の新型機。アリアも何処かにいるだろう」

 

フライトアテンダントと別れ、キンジが適当にスイートルームの扉を開ける。

 

「キ、キンジ!?」

 

「俺もいるぜェー」

 

「なんで!?」

 

 

そこには紅い目を丸く見開いて、驚いているアリアがいた。

 

 

 

 

 

ハイジャックってやべーよな




オリ主の拳銃は勿論世界最速の拳銃弾が撃てる拳銃です。

速いのはいいことです。
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