"愛してる"の想いを   作:燕尾

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どうも、燕尾です。

五話目です。





5.廃校

 

穂乃果たちと友達になり、久しぶりの学校にも慣れてきたある日、全校生徒が体育館へと集められた。

何事かとざわめく生徒たち。それもそのはず、わざわざ今日の午前中の授業を急遽変更してまでのこの全校集会だからだ。

 

「一体なんの集まりなんだろう……」

 

「授業の予定を変更してまで集められているのですから余程のことでしょう」

 

「でも、お母さんはなにも言ってなかったけど……」

 

ことりは考えるように首をかしげる。

ことりと知り合って初めて知ったが、ことりの母親はこの音ノ木坂学院の理事長を務めている。

 

「理事の娘だからって学院の事情をおいそれ先に話すわけにはいかないんじゃないのか?」

 

でも娘を生徒として線引き出来てる辺り、ちゃんとした教育者なのは伺える。

 

「どんな話が出てくるのか……」

 

まあ、あまりいい話ではないのは確かだろう。

全校生徒が(そろ)い、南理事長が壇上に上がったところで先程までのざわめきが一気に消える。

 

「皆さん、こんにちは」

 

理事長の挨拶に、こんにちは、と生徒たちが返事する。

 

「今日は重大なお知らせをしなければならないということで午前の授業を変更し学院のすべての人に集まって貰いました」

 

重大な知らせという言葉に生徒たちはぼそぼそと言葉を交わし始めた。

 

「我が音ノ木坂学院は年々、生徒数が減少しています。三年生が三クラス、二年生が二クラス、一年生に至っては一クラスしかありません」

 

話の途中だが、俺はこれが何の知らせなのか、大方予想ついた。それは前々から思いついていたことでもあったからだ。

 

「この現状は理事会でも問題視され議論されてきました。重なる議論の末、理事会はひとつの結論を出しました」

 

南理事長の言葉にいつの間にか騒いでいた生徒たちの声は静まっていた。その静まりを確かめた南理事長は決定的な一言を言った。

 

「今後、生徒数の増加が認められないと理事会に判断された場合、来年度から生徒の募集を取り止め、音ノ木坂学院は廃校とします」

 

一瞬の静寂が場を支配したのち、彼方此方から声が上がる。まあ、当然だろう。

理事長の宣言に戸惑う者、無関心な者、混乱する者と生徒たちの反応は様々だった。そして、

 

「わ、私の輝かしい高校生活が~!?」

 

「穂乃果!?」

 

「穂乃果ちゃん!!」

 

全校生徒のなかで一番リアクションが大きかったであろう彼女は気を失った。

俺は混乱に乗じて穂乃果たちのところに行き、

 

「穂乃果はベストオブリアクションの称号を手に入れた」

 

「春人!? ふざけた事言っている場合ですか!?」

 

「冗談だ」

 

海未のツッコミを受け流しながら、俺は倒れた穂乃果の背と膝裏に手を添えて、一気に持ち上げる。

 

「なっ――!?」

 

「わぁ♪」

 

いわゆるお姫様抱っこの状態に、何故か海未が声にならない声を上げ、ことりは楽しそうなものを見る目をしている。

 

「海未、穂乃果を保健室に連れてくから先生に伝えてくれ。ことりは保健室まで付き添いを頼む。勝手がわからないから」

 

「は、はい」

 

「任せて、春人くん」

 

腕の中でうなされている穂乃果にため息を付きつつ、俺たちは保健室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先生に事情を説明して、保健室へとやってくる。

 

「ちょっと待ってて、いま鍵を開けちゃうから」

 

ことりがポケットから鍵を取り出す。なんでことりが鍵を持っているかというと、先日の委員会決めのときに彼女が保健委員になったからだ。それでも普通は養護教諭が持つはずなのだが、そこは理事長の娘。信頼度も高く、ある程度の融通が利いた。

まあ、理事長の娘といっても微々たるものでそのほとんどはことりの努力の賜物だろう。

中に入り、穂乃果をベッドに寝かせて、ひと息つく。

 

「目、覚まさないね。穂乃果ちゃん、学校がなくなるのがショックだったのかな」

 

「まあ、それもそうだけど。穂乃果の場合、勘違いして別の学校の編入試験を受けないといけないのに勉強どうしようって考えているんじゃないか?」

 

「ぐ、具体的だね。でも穂乃果ちゃんならありえるかも……」

 

あはは、と苦笑いすることり。

そう。ここ数日で学んだのだが、穂乃果ならズレている可能性がなくはないのだ。

 

「それで縋ってくる穂乃果を注意しつつも普段から勉強していればとか小言を言う海未」

 

「……ふふっ」

 

優しい笑い声を()らすことりに俺は首を捻る。

 

「どうした? 突然笑うなんて」

 

「春人くん、段々とわたしたちのことわかってきたのかなって思うと嬉しくて」

 

そういって微笑むことりに俺は気恥ずかしくなり、顔を背けてしまった。

 

「ふふ、いま春人くん、照れてるのかな?」

 

「……別に、照れてない」

 

「わたしたちも春人くんのこと大分わかってきたから、誤魔化してもわかるんです」

 

「……勘違いだ」

 

そうは言いつつも悔しそうな雰囲気が表情に出ていたのか俺に勝ち誇ったような笑みに変えることり。

だが、不思議と嫌ではなかった。むしろ嬉しく思う自分がいる。

そんな自分がおかしくて、俺もつい笑みを零した。

俺とことりはお互いの顔を見てはクスクスと笑う。

 

「ん……んぅー……?」

 

すると、ベッドで寝ていた穂乃果がもぞもぞと動き、そして、

 

「んー……あれ……? わたし……」

 

目を擦りながら起き上がる穂乃果。その様子を見てことりは一安心したように息を吐いた。

 

「起きたか、穂乃果」

 

「春人くん……? あれ? ここはどこ?」

 

「わたしは誰?」

 

「まさか、穂乃果記憶喪失になっちゃった!?」

 

さすが穂乃果、ノリがいい。だけど、自覚している記憶喪失なんてあるはずない。

 

「春人くん、冗談を言っている場合じゃないんじゃないかな?」

 

「……悪い」

 

笑顔で釘を刺してくることりに俺はすぐに謝った。彼女の笑顔が少しばかり怖い。

 

「まあ冗談はここまでにして、ここは保健室だ。気分が悪いとかあるか、穂乃果?」

 

「うん、調子はいいよ。でもなんで穂乃果は保健室で寝てたの?」

 

先ほどの出来事を本当に覚えていない穂乃果に少しばかり吃驚(びっくり)する。

 

「穂乃果ちゃん、さっき気を失っちゃったんだよ。覚えてないかな?」

 

ことりに教えられて思い出した穂乃果は、あっ、と声を出した。

 

「そうだ、穂乃果、学校が廃校になるって言う変な夢を見たんだ! そんなわけないのにね!!」

 

斜め上過ぎることを言い出した穂乃果に俺もことりも言葉を失う。

 

「夢ときたか……」

 

「穂乃果ちゃん……」

 

どこか残念なもの見るような雰囲気の俺たちに穂乃果が戸惑う。

 

「えっ? 違うの?」

 

「穂乃果、それは夢じゃなくて現実のことだ。さっき全校集会で廃校の知らせを理事長から伝えられた」

 

「え……えぇ―!?」

 

俺から伝えられた事実に穂乃果は大きな声で叫ぶのだった。

 

 





いかがでしたでしょうか。

ではまた次回にお会いしましょう。さようなら!


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