"愛してる"の想いを 作:燕尾
どうも、燕尾です。
第七話です。
最近の趣味は「どうやったら二次元の世界に入り込めるか」を考えることです。
放課後、俺たちは学院のあちらこちらを歩き回っていた。というのも、
「そういえばことりちゃん、学校がなくなるのは早くても三年後って言っていたよね? という事は遅くなることってあるの?」
「うん、廃校が決まったわけじゃないの。来年度の入学希望者が定員を大きく下回っていたら、正式に廃校にするんだって」
「掲示板にも貼っているんだが、まあ、穂乃果は見ていないか」
あんな大々的に掲示されてあったにもかかわらず、編入だ、試験だ、なんだと騒いでいた彼女が気づいているわけがなかった。
「ということは入学希望者が集まれば廃校にはならないってことでしょ? つまり、この学校のいいところをアピールして生徒を集めればいいんだよ!!」
穂乃果の提案で音ノ木坂学院のアピールポイントを探すべく、まずは学院について知ろうということで学院を探索していた。ちなみに、俺は授業が終わった後帰ろうとしたのだが、
「授業終わったー!海未ちゃん、ことりちゃん、春人くん――あれ、春人くん? どこに行くの?」
「どこって、帰るだけだけど?」
こんな言い方はアレだが、学校がなくなろうが俺にはあまり関係ないのだ。しかし、
「なんで!? 学校がなくなっちゃうんだよ、春人くんも手伝ってよ!」
「春人、頼りにしていますよ」
「お願い春人くん! ことりたちに力を貸して!!」
三人から逃れるすべはなく俺は捕まり、手伝うことになった。
そして学院の各施設を廻って、自分たちで見て歩いて――その結果、
「音ノ木坂学院の良い所! まずはこの学院には歴史がある!」
「歴史ですか。確かに良い点の一つではありますね。他には?」
「他に? えーっと、えっと……伝統がある!!」
「それ、一緒じゃないか……」
結局一つしか思いつかなかったんだな、穂乃果。
「他にないのですか?」
海未の質問に対して穂乃果はうんうんと唸る。そして考えた末、
「ことりちゃん!」
「ええ!?」
「丸投げするのか……」
後を任されたことりが考え込む。
「ええっと、んーと、強いて言うなら……古くからあるってことかな」
その答えに俺たちはガクッと膝から崩れる。
「ことり……話を聞いてましたか?」
俺と穂乃果の気持ちを代弁する海未。ことりはことりで、首をかしげていた。
結局のところ、歩きに歩いて見つかったアピールポイントは"この学院は古くからある"だった。
「あ、でもわたし、少し調べて部活動でいいところを見つけてきたよ。とはいってもあんまり目立つものじゃなかったけど、ないよりかはマシかなって」
ことりが机の上に調べた紙を置く。俺たちは覗き込むように見た。
「なになに――珠算関東大会六位に合唱部地区予選奨励賞、ロボット部書類審査失格……最後のはプラスどころかマイナスじゃないか……」
散々な結果にげんなりしてしまう俺たち。
「そもそも、目立った成績を出してる部活があったらもう少し生徒が集まっているはずですからね……」
「やっぱりだめかー……私、この学校好きなんだけどな……」
しょんぼりと肩を落とす穂乃果。彼女の雰囲気に当てられて海未やことりも静まり返る。
「わたしも好きだよ、穂乃果ちゃん」
「普段は口にしませんが、私も好きです」
それぞれ"好き"を口にする三人。だが、気持ちだけではどうしようもない部分は必ずある。今日は
帰りの道中、俺は一人考えていた。
――私、学校好きなんだけどな。
――わたしも好きだよ。
――普段は口にしませんが、私も好きです。
何の恥じらいもなくそういった穂乃果たち。たった一年ちょっと通っただけの彼女たちがそこまで言う理由はわからない。でも、そんな彼女らが俺には
彼女たちには未来を生きる時間がある。過去を振り返られる時間を作れる。未来を生きる時間があるものには未来のことを考えることが出来る。過去を振り返られる時間があるものは過去を良いものにしようとする事が出来る。
今を生き抜くだけの俺にはそれが出来ない。よって、彼女たちの気持ちはどうしようもなく理解出来ないのだ。
だけど、それでも――
「――手伝ってあげるか」
俺の小さな決意を聞いたのは茜色の空だけだった。
いかがでしたでしょうか?
結論から言うと「二次元の世界には入れない」ということがわかりました。
だけど私は諦めない!!