"愛してる"の想いを   作:燕尾

17 / 80

どうも! どうもどうもどうも! 燕尾でございます!!

さて私は、いまドコで小説の更新をしているでしょうかっ?

というわけでとりあえず八話目です。


8.スクールアイドル

 

 

翌日、いつもの三人と落ち合う場所へといつも通りの時間で着く。

海未とことりはそこに居たのだが、穂乃果の姿が見えなかった。

 

「おはよう~海未ちゃん、春人くん。穂乃果ちゃん、先に行っててだって」

 

「また寝坊ですか……まったく……」

 

「まあまあ、あんまり言うとまた(ふく)れちゃうよ?」

 

「ことりは穂乃果に甘すぎます」

 

(あき)れるようにため息を吐く海未を(なだ)めることり。このやり取りはもうすでに何度か経験している。

 

「穂乃果が遅れるのは今に始まったことじゃないし、ギリギリでも間に合えば問題はないだろ? まあ、遅刻したらさすがに言わざるを得ないけど。だからあまりうるさく言うのはやめておけ。じゃないと海未が疲れるぞ?」

 

「それは……そうですけど……」

 

とは言っても、海未の気持ちはわからなくもない。みんなで一緒に登校したいのだろう。こうしていられるのも人生の中ではごく一部なのだ。

それでも今日穂乃果が来なかったのは別の理由だろうけど。

 

「たぶんUTXに行っているんだろうな……」

 

「? 何か言いましたか、春人?」

 

なんでもない――そう言いつつ、おそらくこれから起こるであろう事を思慮しながら登校する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその予感は当たり――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんなこれ見てこれ!」

 

昼休み。穂乃果が数冊の雑誌を持って俺たちを呼んだ。机の上に置かれた雑誌には何らかの衣装を着た女の子たちがポーズを決めている。

 

「アイドルだよアイドル!!」

 

バッ、と広げられた雑誌の中には表紙と同じような女の子の写真が載せられており、穂乃果は興奮気味に話す。

 

「こっちが大阪のスクールアイドル。で、こっちは福岡のスクールアイドルだよ。いまスクールアイドルが増えてて、このスクールアイドルが人気の学校は入学希望者が増えているんだって!」

 

穂乃果の話が見えてきた。つまりは、自分たちもスクールアイドルを始めようって言う話だろう。

海未も悟ったようで、穂乃果に気づかれないように教室から出て行く。

穂乃果もあんなに近くにいたのに自分の話で盛り上がってて海未がいなくなっていることに気づいていない。

 

「それで私、考えたんだ! 私たちも――ってあれ? 海未ちゃんは?」

 

ようやくいなくなったことに気づいた穂乃果は辺りを見回す。

俺は海未がいったほうを指差すと、穂乃果は後を追うように教室から出る。

 

「海未ちゃん! まだ話し終わってないよ!!」

 

「ッ!! わ、私はちょっと用事が……」

 

言い逃れにしては(つたな)すぎる、と思いつつも口は出さない。

 

「言い方法を思いついたんだから聞いてよー!!」

 

駄々(だだ)(こね)ねるように叫ぶ穂乃果に海未はため息をつく。

 

「……私たちでスクールアイドルをやるとか言い出すつもりでしょう?」

 

「なんでわかったの!? もしかして海未ちゃんエスパー?」

 

誰でもわかることだ。昨日の今日で雑誌まで取り出して力説していたらわからないはずがない。

 

「わかりますよ! あれだけあからさまなんですから!!」

 

「だったら話は早いね~。今から先生のところに行ってアイドル部を設立しよう!」

 

「お断りします」

 

肩を揉みながら言い寄る穂乃果に海未はきっぱりと切り捨てた。

 

「ええ!? なんで!? こんなに可愛いんだよ! こんなにキラキラしているんだよ!! こんなに可愛い衣装着られるんだよ!!!」

 

海未にこれでもかと雑誌を見せ付け強調する穂乃果。それに対し海未は苦渋を舐めた顔をしている。

 

「なんでもなにも、そんな思いつきで成功なんてしませんよ! だいたい、それでこの学校の入学希望者が増えると思っているんですか!?」

 

「えっと、それは……人気が出なきゃだけど……」

 

「その雑誌に乗っている人たちはプロのアイドルにも劣らないほど努力している人達です。穂乃果のように好奇心で始めたって上手くいくはずがないでしょう!!」

 

「う……」

 

「はっきり言います――スクールアイドルは無しです!!」

 

海未のペースに追い込まれた穂乃果はもはや何も言い返せない。

話し合いは終わりといわんばかりに、予鈴が鳴り響き、ここでの話は打ち切られたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、海未は部活。ことりは用事があるといってすぐ教室を出て行った。

いつもなら一人残った穂乃果と帰るのだが、その穂乃果の姿が見当たらない。

連絡送っても反応もなかった。

 

「しょうがないな……」

 

そうして俺は穂乃果を探しに校内探索に出る。

しばらく校内歩いていると陽の光が俺を射した。何事かと見ると。屋上の扉が開いていたのだ。そして何かを覗き込んでいる女子生徒が一人。あれは、

 

「なにをしているんだ、副会長」

 

「ふぇ!? あ、君は確か……」

 

「以前はどうも。で、なにを見ていたんだ」

 

副会長を軽く押し退けて扉の隙間からのぞいてみる。そこには俺の探し人がいた。

 

「こんなところにいたのか……ちょっと失礼」

 

「え、あ、ちょっと……!?」

 

混乱している副会長は置いて、俺は扉を開ける。

 

「なに黄昏(たそがれ)ているんだ、穂乃果」

 

「あ……春人くん……」

 

「似合わないことしてるな。元気だけが穂乃果の取り柄だろうに」

 

「酷い!? 穂乃果にだって他にも取り柄はあるよ!!」

 

まったくもー、と膨れてまた空を見上げる穂乃果に俺は軽く笑う。

 

「それで、海未に強く否定されて落ち込んでいたのか?」

 

「……うん、いいアイデアだと思ったんだけどなー」

 

海未の言っていることは正論だ。有名な人たちは血を吐くような思いで必死に努力し、わずかな可能性を(つか)み取っていまの地位がある。やるからには生半可ではいけない。

だが、それはやるときだ。始めるときの理由は関係ない。

 

だから、俺は――

 

「――俺もいいと思うけどな。スクールアイドル」

 

「え……?」

 

驚くものを見たような目でこちらを向く穂乃果。

 

「思いつきや好奇心、やりたいと思ったからやる――それのどこが悪いんだ?」

 

「春人くん……」

 

「穂乃果。お前はやってみたいって思っているんだろ? スクールアイドル」

 

「うん……やりたい。ことりちゃんと海未ちゃん、それと春人くんと……皆で一緒にやりたい……」

 

「俺はあんな衣装着て舞台に立てないぞ。というか立ちたくない」

 

それはわかってるよ! と穂乃果は声を上げる。その後、ふふ、と小さく笑った。

 

「アイドルの衣装を着た春人くん……あはは、可愛いかも……」

 

「気持ち悪い想像をするな……せめて男性アイドルの衣装にしてくれ」

 

「それはそれでカッコイイかも……」

 

早めに現実に引き返してやらないといけない。軽く咳払いをする俺。

 

「とにかく、スクールアイドルをやるなら俺は応援するぞ」

 

「……ありがと、春人くん」

 

俺たちは笑い合う。それじゃあ今日は帰るか、と言おうとしたとき、穂乃果が目を閉じて何かに耳を澄ませていた。

 

「穂乃果?」

 

「何か聞こえない?」

 

そういわれて俺も耳を澄ませる。するとどこからか何かが聞こえた。

 

「ピアノの音と声……誰か音楽室で歌っているのか?」

 

確か学院の規則では特別教室を使うときには許可が要るはず。歌っているのなら吹奏楽部ではない。

 

「行ってみよう、春人くん!」

 

穂乃果に手を引かれて、屋上を出る。

歌声とピアノの音は音楽室に近づくほど大きくなっている。そして、ドアの向こうには、

 

「――――♪」

 

楽しそうにピアノを弾き歌う赤髪の少女の姿。不覚にもその歌声に聞き入ってしまう。

 

「綺麗……」

 

「ああ、そうだな」

 

思わず洩れてしまったのだろう穂乃果の言葉に俺も同意した。

そして演奏が終わった瞬間、穂乃果が興奮したように拍手を送った。

 

「おいっ!?」

 

拍手する気持ちはわかるけど中の子にバレるだろう、穂乃果を止めようとしたのだがもうすでに遅く、

 

「ヴェェ!?」

 

弾き語りをしていた女の子が驚いたようにこっちを見る。だが、そんなのお構い無しに穂乃果は音楽室へと乗り込んだ。

 

「おい、穂乃果!」

 

彼女を追うように俺も音楽室へと入る。

 

「すごいすごい! 私、感動しちゃったよ!!」

 

「べ、別に……」

 

素直じゃないのか、女の子は目を逸らすように別のほうをを向く。

 

「歌、上手だね! ピアノも上手だね!! それに、アイドルみたいに可愛い!!」

 

「――っ!?」

 

赤髪の女の子は可愛いといわれ顔が真っ赤になるも、すぐに平静を装う。そんな彼女に穂乃果がいきなり切り出した。

 

「あの! いきなりなんだけど――あなた、アイドルやってみたいと思わない?」

 

「穂乃果、いくらなんでも突発過ぎるだろ……」

 

「だってだって! この子、可愛いし歌も上手だし。絶対輝けるもん!」

 

穂乃果に期待の眼差しで見つめられた赤髪の女の子は一瞬、ポカンとするが、次第に不機嫌そうな表情になった。

 

「なにそれ、意味わかんない」

 

そして、それだけを言って、音楽室から立ち去っていく。

 

「だよね、あははは……はぁ……」

 

穂乃果はガックリと肩を落とすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……」

 

校舎裏でまたもや黄昏る穂乃果。

 

「まあ、スクールアイドルとはいえ、皆が想像するのはプロアイドルと同じようなものだしな。無理という気持ちが大きいんだろう」

 

それが追い討ちだったようで、穂乃果は深くため息を吐いてしまう。

 

「やっぱり、無理なのかな……」

 

ここまで誰もかもに否定されると弱音の一つも吐いてしまうのはわかる。だからこそ俺は発破をかける。

 

「どうする、諦めるか?」

 

俺の言葉に穂乃果は即座に首を横に振って、立ち上がる。

 

「諦めない! だってやりたいんだもんスクールアイドル!」

 

「そうか」

 

「それに春人くんだって手伝ってくれるって言ったもん。穂乃果は一人じゃない!」

 

「……は? 手伝う? 俺が?」

 

思いがけない話に思わず聞き返してしまった。

 

「え、だって春人くん屋上で手伝ってくれるって言ってたよね?」

 

「それは応援するって言ったんだ! 手伝うとは――」

 

「――手伝ってくれないの?」

 

「……」

 

「春人くん……」

 

捨てられた子犬のように瞳を潤ませて俺を見上げる穂乃果。これはずるいと思う。だが、これに抗うことも出来ずに、

 

「……わかったよ、手伝う」

 

「ありがとう、春人くん!」

 

ぶっきらぼうにそう返した俺に穂乃果はパァ、と表情を明るくする。

 

「よーし、練習しよう! 春人くん、手拍子お願い!!」

 

「手拍子って、なにをするつもりなんだ?」

 

「ダンスの練習! こんな感じってイメージを掴むところから始めるんだ!!」

 

両手でぐっと拳を握る穂乃果に俺は笑みを零す。

 

「わかった。それじゃあ始めるか」

 

「うん!!」

 

そして、二人で練習を始める。しかし――

 

「ワン、ツー、スリー、フォー……」

 

「ワン、ツー、スリー――ってうわあ!?」

 

当たり前というか、穂乃果は途中で足を(もつ)れさせ尻餅をつく。

俺はそのたびに穂乃果に手を差し伸べる。

 

「大丈夫か? ほら――」

 

「うん、ありがとう春人くん。やっぱり難しいね」

 

「最初はそんなものだ。まだ続けるか?」

 

俺の問いかけに穂乃果はもちろん、と返す。

こうして練習をすること一時間、俺は二つの人影を見つける。その姿を見て俺は思わず笑ってしまった。

 

「ワン、ツー、スリー、フォー、ファイブ、シック――あう!!」

 

「少し休憩しよう、穂乃果。飲み物買ってくるよ」

 

「えっ、春人くん? あ……」

 

急に引っ張ってくれなくなった俺に疑問を持つ穂乃果。だが、俺が歩いた先にいた人物を見て声を洩らした。

俺は笑みを浮べたまま、後を引き継いだ。

 

「これから、穂乃果に手を差し伸べるのは二人だ。海未、ことり」

 

「はい……!」

 

「うん!」

 

俺と入れ替えで穂乃果の元に行く二人。

こうして一人からの始まりは三人からの始まりとなった。

 

 

 






いかがでしたでしょうか!

ではまた次回にお会いしましょう!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。