"愛してる"の想いを 作:燕尾
えーと、再投稿です。
特に変わったところはありません。
次の日、今日も今日とて雨が降り注ぐなかの放課後、やはり部活の申請は一筋縄ではいかなかった。
俺、穂乃果、海未、ことりの四人は生徒会に申請書類を出しに行ったのだが、返ってきた返事はすべて否定の言葉だった。その内容は俺が予想したとおりのこと。
「アイドル研究部?」
首を傾げながら復唱する穂乃果に生徒会長は頷いた。
「ええ、この学校にはもうアイドルに関係する部活があります。生徒数が限られている今、同じような部活の設立はできないわ」
「生徒の数と部活の数は関係ないだろう。とってつけたような理由だ。もっと他にいいようはあるだろうに」
「……何かいいたいことでも?」
ぼそりと呟いた俺に生徒会長が睨む。俺はこれ見よがしに深くため息をついた。
「ならなぜ一人しかいない部活を野放しにしているんだ?」
「鋭いなぁ、春人くん」
中立の立場にいるような副会長の希先輩といえば生徒会長の隣でニコニコと笑みを浮かべているが、どこか苦笑いのようだった。
「えっ、一人? 六人必要じゃなかったの?」
「部活設立の申請は六人必要なんやけど、申請したあとは人数は関係あらへんのよ」
「だからこうして新しく設立しようとしている後輩たちは苦労するんだけどな」
「それなら別にあなたたちがアイドル研究部に入部したらいい話――」
「以前」
俺は生徒会長の言葉を遮って言った。
「ここのアイドル研究部の人間が俺に言ってきたよ。解散しろ、あんたたちなんか認めない――と。そんな人間が俺たちの入部を認めると思うか?」
「にこっち、そんなことを…いや、言うてたな」
希先輩が思わず頭を抱えていた。まさかいまここで自分たちの首を絞められるとは思っていなかったのだろう。
「いままでは問題なかったんだろ? なんせ入部を断る人なんていなかったんだ。だから設立した後のことは問題さえ起こさなければ何も問わないでいた」
すべての責任が生徒会にあるとは言わない。もともと部活管理の一部を担っているのは学院側が生徒会に頼んでいることだ。だが、関与している以上一端の責任はある。
「あんたらもわかっていたんだろう。気持ちの違いから一人になった
「っ!?」
「春人くん、どうしてそれを知ってるん……?」
「信頼できる伝手があっただけ。それに調べるのは簡単だ」
俺の声がだんだんと低くなっていく。どんどんと、心が冷えていく。
「部活勧誘の期間にも募集もかけていない、活動実績もない――そもそも活動すらしていないような奴は許して穂乃果たちの活動は許さない? 人を馬鹿にするのも大概にしろ」
「「……」」
雰囲気に飲まれたのか、二人は黙る。
「わざわざここにきているのは穂乃果たちに誠意があって、しっかり筋を通して活動しようとしているからだ」
「春人くん、ちょっと落ち着こう……?」
「あんたらが認めようが認めまいがどうでもいい、それは個人の自由だ。だが、公私混同して下らない理由並べて穂乃果たちの邪魔をするなら――」
「春人、それ以上は」
「俺はあんたらを、つ――」
「――っ、ハルくんっ!!」
唐突に穂乃果に手を握られる。その瞬間、俺はハッとする。振り返ると、どこか咎めるような穂乃果たちの視線。
「……言い過ぎだよ、春人くん」
「穂乃果……」
「生徒会長たちがそういうのもなにか事情があると思う。それに、絶対駄目ってわけじゃないんだから私たちが頑張ってアイドル研究部の部長さんを説得したらいいんじゃないかな?」
「穂乃果の言う通りですよ、春人。いまここで文句を言っても仕方ありません」
「そうだよ春人くん、いまわたしたちが出来ることをしなくちゃ」
優しい笑みを浮かべて、諭すような口調で言う穂乃果たち。
本当に彼女たちには敵わない。人の裏を知らず愚かしいと思うほど優しく、眩しいくらいにまっすぐな三人。
「それじゃあ早速話してみようと思います! 失礼しました!!」
そう言って、唐突に俺の手を引く穂乃果。
「あっ、ちょっと、穂乃果?」
「ほら、早く行きますよ」
「海未、どうして背中をぐいぐい押すんだ?」
「膳は急げ、だよ春人くん」
「ことりまで…わかったから、そんなに押さないでくれ」
戸惑いながらも、俺は穂乃果たちに半ば強引に生徒会室から連れ出されるのだった。