"愛してる"の想いを   作:燕尾

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どうも燕尾です。
バイトの途中から失礼しています。
37話目、楽しんでいただけたら幸いです。





37.海未の悩みと課題

 

 

「……」

 

最近、海未の様子がおかしい。

だが、それは目に見えていた変化ではない。ごく小さな違和感から気付いた。

簡潔にいうと何かに悩んでいるようで、少し元気がない。

穂乃果の勉強見ているときも、上の空という状況が何度もあった。

なにかあったことは間違いない。そのなにかまではまったく分からないが、俺もそういう小さな変化には気付くようになっていた。

だが、海未の様子もさることながら、俺の心配は他にもあった。それは――

 

「すごい太陽だね…」

 

「夏、かぁ……」

 

昼休み。練習着を着た穂乃果、凛、にこ先輩の赤点候補者たちが屋上にいた――勉強の約束をすっぽかして。

 

「よーし、限界までいくわよー!」

 

にこ先輩の号令で大きく息を数三人。まあ大方、息抜きと称して練習がてら身体を動かしたかったのだろう。その気持ちを責めるわけではないが、少し立場というものを知っておいたほうが良いとは思った。

 

「――なにやってるん?」

 

「「「あ゛っ……」」」

 

入り口にいた希先輩の声に穂乃果たちは固まった。

 

「昼休みは部室で勉強って約束したやん?」

 

にじり寄る希先輩に三人は身を寄せ合って怯え始める。

 

「いいいいや! それは分かっているんですけど!」

 

「なんかちょっと身体を動かしたほうが頭にも良いかなぁって!」

 

「わ、私は二人に誘われただけよっ?」

 

「あ~! 嘘!! にこ先輩が最初に誘ってきたくせに!」

 

「そうだよ! 希先輩の目にビビッているようじゃアイドルは勤まらないとかなんとか言ってぇ~!!」

 

「デタラメ言うんじゃないわよ!」

 

醜く言い争う三人。だが、

 

 

「そう――」

 

 

「「「――っ!!」」」

 

「まあ誰でもいいやん、どうせ――皆一緒にお仕置きやから!」

 

「う、嘘……」

 

約束は約束。それを破る人には少しお灸や(しつけ)が必要だ。

 

「ふふふふふふふ……」

 

「「「う、うわああああああ!?」」」

 

そこから先は俺は何も見なかった。同性だけにしかできない方法でのお仕置きが希先輩の手で実行される。

 

「ま、あの三人は自業自得ということで――こんなところで何をしているんだ海未? 海未も屋上で気分転換か?」

 

「春人……」

 

俺を呼ぶ声はやはりどこか元気がない。俺は海未の隣に並んで、空を見上げる。

 

「――悩み事か?」

 

「やはり、気付いていましたか…」

 

海未は困ったような笑みを浮かべる。

 

「普通どおりに過ごしていたはずなのですが」

 

「あれでいつも通りに過ごしていたって言うなら、海未は賭け事の才能はないな」

 

「……それはあれですか、全部顔に出ているって言うことですか?」

 

むぅ、と頬を小さく膨らませる海未。だけど、それはまったく隠せていない海未が悪い。

 

「そういうことだ。何があったかは知らないが様子がおかしいことぐらいは分かる――友達だからな。一緒にいるようになって、それくらいは分かるようになった」

 

「――っ、そう、ですか……ありがとうございます…春人……」

 

「海未? 顔が赤いけど、大丈夫か?」

 

「い、いえ! 今日は暑いですから! ええ。暑いですからね…ええ……」

 

海未は落ち着くように深呼吸を何度か繰り返す。それから、落ち着いたタイミングを見計らって、俺は切り出した。

 

「それで、一体何があったんだ? 言いたくない事情なら無理には聞きださないが」

 

それこそ家庭の事情だったりしたら、俺が入り込む余地はない。

 

「そういう類の話ではないんですが、μ'sのことで少し……」

 

それなら相談には乗れるのだが、海未はいまの時点で話すかどうか、悩んでいた。

少なくとも俺は支える立場だから相談ぐらいなら問題ない。

そう言うと、それもそうですね、と海未はぽつりと話し始めた。

 

「話すと少し長くなるんですけど、その――この間、偶然に生徒会長と会いまして話をしたんです」

 

「生徒会長と?」

 

それだけを聞くとあらかた話の方向性は予想できるが、とりあえずは話に耳を傾ける。

 

「ええ。生徒会長の妹さんが音乃木坂学院に来ていて、会長を待っている間にμ'sのファーストライブやPVを見ながら待っていたんです。ですが、妹さんが見ていたファーストライブの映像がサイトにあげてないものまで映っていて」

 

なるほどな。PVはともかくファーストライブの映像を取っていたのは生徒会長だったのか。もっとも、あまりいい感情でサイトにアップしたわけではなさそうだが。

 

「そうですね。映像を挙げたのは私たちの歌やダンスじゃ人を魅了することは出来ないと知らしめるためだったらしいです」

 

「まだそんなこといっているのか、あの会長は。とんだ頑固者だ」

 

「春人も負けず劣らずなのではないですか?」

 

「……失礼な」

 

「ふふ、冗談です」

 

いたずらっ子のような笑みを浮かべる海未。それに対して俺は少し頬を膨らませていたのだろう。それを見た海未は微笑ましいようなものを見るような目をしていた

俺は話を戻すために一つ息を吐く。

 

「まあ大方その話は分かった。どうせA-RISEさえ素人同然、とか言い出したんだろう?」

 

「え、ええ……その通りなんですけど、どうして春人が知っているんですか?」

 

「二人で話しすることがあって、そのときに海未に言ったことと同じようなことを言っていたからだよ」

 

さすがにファーストライブの映像までは知らなかったが、良く考えれば映像として残せる人物は生徒会長か希先輩ぐらいなものだとわかる。

 

「それで、いまそういうということは海未は気付いたんだな。生徒会長がそこまでいう理由に」

 

そして、それが海未を悩ませている種なのだろう。

 

「……はい。副会長に問い詰めて、知りました――自分たちと生徒会長の差に」

 

生徒会長は、物心ついたときからバレエをしていたらしい。そして、その幼い年でも周りの人々を魅了するほどの実力を持っていた。

副会長から見せてもらった生徒会長のバレエをする姿は今の海未を追い込むほどのものだったらしい。

 

「いまの私たちは幼い頃の生徒会長にすら劣っている、そう思えてしまうほどの実力差がありました」

 

悔しそうにする海未。少なからずとも競い合いの世界に身を置く海未はそういう感情を持っていた。だが、

 

「そうか。だけど――それがなんだ?」

 

「えっ――?」

 

きょとんとする海未に俺は言う。

 

「俺からしたら会長の話なんてもう昔の話。あの人が昔からどんな実力を持っていようがどれだけ実績があろうが、それは海未たちを否定する根拠にはならない――してはいけないものだ。そもそも、経験の差でやめろというならこの世でスポーツする人なんてとっくに消えてるだろ」

 

「それは、詭弁というものじゃ…」

 

「じゃあ聞くが、幼い頃の生徒会長と比べて自分たちはまだまだの海未たちはこれからどうするつもりだ? 生徒会長の言葉を受け入れてここで辞めるのか?」

 

「そ、そんなつもりは毛頭ありません!!」

 

大きな声で、強く否定する海未。そんな彼女に俺は小さく笑みを浮かべる。

 

「なら、誰がなんと言おうと進んでいくしかないだろう? それに応援してくれている人がたくさんいることも事実だ。前にことりにも言ったけど、認めないって言う人間なんて一定数はいる。生徒会長もその一人、そんな人の実力だとか言葉とかを気にしていたらキリがないぞ?」

 

「それは、そうですけど…」

 

海未の表情は晴れない。どうやら納得は出来ないようだ。頭では分かっていても気持ちはそうもいかないのだろう。

そこで俺は一つ提案した。

 

「どうしても納得できないのなら――教えてもらうというのも一つの手だ」

 

「え?」

 

「何を意外そうにしているんだ。実力者に指導してもらうのは別に悪いことじゃないだろう?」

 

単純なこと。いまの自分に限界を感じるなら、誰かに教えてもらえばいい。勉強でも、ダンスでも、歌でもだ。

 

「上手くなりたい、もっと上を目指したい気持ちがあるのなら頼んでみるといい」

 

「それは、私の一存では決められませんよ…」

 

「もちろんわかっている。それに――いまはそれどころじゃないしな」

 

俺はチラリとみる。希先輩にお仕置きされた三人は少し頬を上気させて痙攣しながら倒れていた。

 

「それを考えるのは期末テストを乗り切った後だ。とりあえず、あの三人の学力を上げないとな」

 

「そうですね…いまは目の前のことに集中しましょう」

 

「それじゃあ連れて行くか」

 

「春人――」

 

穂乃果たちのところに行こうとしたところで呼び止められる。

振り向けば海未は少しは晴れたような表情をしていた。

 

「ありがとうございます。おかげで気が楽になりました」

 

「…ならよかった。海未は真面目だから、あまり一人で抱え込まないようにな」

 

「はい」

 

俺は小さく笑って、希先輩と三人で穂乃果たちを連行していくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日のノルマはこれね!」

 

どさどさ、と大量の分厚い本を置く希先輩。

 

「「「鬼……」」」

 

恨みがましく呟く三人。

 

「あれ? まだワシワシが足りなかった?」

 

「「「まっさかぁー!!」」」

 

だが、希先輩の構えにすぐなんでもないように装う。

 

「それにしてもこんな量、この三人がこなせるとは思えないんだが…少し減らしたほうが身につくんじゃないか?」

 

「そ、そうだよね! ハルくんもそう思うよね!?」

 

ここぞとばかりに便乗する穂乃果。しかし希先輩は首を振った。

 

「甘いで春人くん。人間、極限にさらされてこそ本当の力を発揮するんや」

 

「どこぞの少年漫画の修行じゃないだろうに……とりあえず頑張れ、穂乃果」

 

「うわーん!!」

 

最初頃よりかはマシになってはいるが、それでもやはり苦手科目。モチベーションが上がらないのか三人のペンの進みは遅い。

 

「どうにかできないものか……」

 

「それならいい案があるで?」

 

悩んでいるところで希先輩が耳打ちしてくる。

 

「むっ――」

 

近づいた希先輩に穂乃果は眉を顰めていたが俺も希先輩も気付かない。

 

「いい? うちを信じて、うちの言う通りに喋ってな?」

 

「変なことじゃないよな?」

 

「春人くんがこの子たちの力になりたいって気持ちがあるなら、大丈夫やで」

 

ここまでにこ先輩の勉強を見てもらっていたこともある。俺は素直に頷いて希先輩の言葉を復唱した。

 

「穂乃果、凛、にこ先輩」

 

「ん? なにかな、ハルくん?」

 

不機嫌そうにする穂乃果に俺は希先輩から伝えられた言葉をありのまま言った。

 

「もし期末テストで苦手科目の点数が平均より上回っていたら、皆のお願いをひとつ何でも聞いてやる――って、おい……!?」

 

俺は希先輩に非難の目を向けるが、希先輩はニヤニヤと笑うだけだ。

 

「ハルくん、それホント!?」

 

「春人くん、いまなんでもって言った!?」

 

「マジっ? 春人が何でも願いを聞いてくれるのね!?」

 

一番最初に身を乗り出したのは、穂乃果だった。そしてそれに続いて、凛とにこ先輩も目に生気を宿らせる。

 

「いや、それは……」

 

言いよどむところで希先輩が追い討ちをかけてくる。

 

「あれ、春人くん? 男の子に二言があってええんか?」

 

この副会長、確実に面白がってやっているな。やっぱり、信じるべきではなかった。

今度何らかの形で仕返しをしようと決めたところで俺は息を吐く。

 

「……わかった。平均点を上回ることが出来たら、お願いを何でも一つきく。約束だ」

 

「「「やったー!!」」」

 

喜ぶ三人に俺は仕方がないと小さく笑う。そのとき、俺にいくつもの視線が突き刺さった。

その視線の原因は海未、ことり、真姫、花陽の四人。喜ぶ三人を尻目に、四人は俺をじっと見てくる。

 

「……どうしたんだ? 皆して……」

 

「春人くん、ことりたちには何もしてくれないの……?」

 

「え……?」

 

戸惑う俺に、ことりたちはさらに続ける。

 

「先輩方や凛だけ褒美があるだなんて不公平だと思わない?」

 

「不公平も何も、真姫たちが赤点取らないのは分かっていることだろう?」

 

「それでも、私たちだって穂乃果たちを指導しています。いわば労働です。労働には見合った対価というものが必要です」

 

「春人さん、私も頑張っています……ラブライブにエントリーできるように、凛ちゃんに頑張って勉強を教えてます」

 

四人の期待するような瞳に俺はたじろぐ。

キッ、と希先輩を睨むと、

 

「あ、うちもなにかご褒美欲しいなぁ?」

 

「あ、あんたなぁ……」

 

あろうことか希先輩も俺にせがんで来た。

 

「春人くん……おねがぁい!」

 

「期待してもいいのかしら、春人?」

 

「ふふ、お願いしますね? 春人」

 

「わ、私は、無理しなくてもいいですよ!?」

 

「……もういい」

 

俺は頭を抱える。ここまでくれば三人も八人も変わらないだろう。それだったら条件を皆が団結するものにしたほうがいいだろう。

 

「なら条件を変える。穂乃果、凛、にこ先輩の苦手教科の点数。そうだな、80点以上だったら皆の願いをそれぞれ一つずつ聞く――ただし、全員がクリアすること」

 

誰か一人でも下回ったらこの話は無し、という俺に赤点候補者たちは顔を引きつらせる。

 

「え゛っ……!?」

 

「は、はちじゅ……」

 

「そんなの、できるわけないわ!!」

 

穂乃果と凛が戸惑う中、にこ先輩が叫ぶ。

いまの穂乃果たちでは到底届かない。それこそこれから毎日、死ぬ気で取り組まなければ、苦手科目で80点は叶わない。

 

「やるまえから、諦めるのか? ならラブライブも諦めるんだな」

 

『――っ!!』

 

この場にいる全員が息を呑んだ。俺は続けて発破をかける。

 

「いまのμ'sの順位じゃ、20位以内にはいるのはできるわけない。それならラブライブに時間を割くよりもっと別の――」

 

「やってやろうじゃない!!」

 

俺の言葉を遮るように、手のひらをくるりと返してにこ先輩は宣言した。

 

「ただし、約束は守りなさい! 私たち三人が全員80点以上取ったらあんたは八人全員のお願いを何でも、それぞれ一つずつ聞く――それでいいわね?」

 

「ああ、約束する」

 

俺は即座に頷き返す。

これは俺なりの試練だ。どう潜り抜けるか見させてもらおう。

 

「よーし、頑張るぞ!!」

 

「かよちん、真姫ちゃん! お願いするにゃー!」

 

「あんたたち、絶対80点以上取るわよ!!」

 

とはいっても、この様子だともう俺の望むものは満たしているといってもいい。

 

「ふふっ……春人くんは優しいなぁ」

 

「……うるさい」

 

耳元で呟く希先輩に小さく返す。どうやら俺の意図はバレているようだ。だが――

 

 

「海未ちゃん、ことりちゃん! 今日からうちにお泊まりしない?」

 

「わたしはいいけど……」

 

「いきなりどうしたんですか、穂乃果?」

 

「勉強だよ! 80点取るための!!」

 

 

「かよちん、真姫ちゃん! 凛たちもお泊まりで勉強しよう!!」

 

「そうだね、私たちも頑張ろう!」

 

「まぁ、付き合ってあげるわよ」

 

 

「そうと決まればさっさとやるわよ! 希、しっかり教えてよね!」

 

「ふふっ……はいはい」

 

 

皆のやる気の表情をみていると、些細なことはあまり気にはならなかった。

 

「ハルくん、ハルくん!」

 

「なんだ、穂乃果?」

 

気力十分、という穂乃果。すると彼女はとんでもないことを言い出した。

 

「ハルくんも穂乃果の家でお泊まりしよう!」

 

「……いや、それはダメだろう」

 

即座に断ると、えーなんでー!? と文句を垂れる穂乃果。

吟味するまでもなく、俺が年頃の女の子の家に泊まるなんてダメに決まっている。

 

「だってハルくんにも勉強教えてほしいんだもん! ほら、ハルくん学年で10位以内だって言ってたから!」

 

「なら、学校でいいだろう?」

 

「それじゃあ、時間が短すぎるじゃん! もっとゆっくり教わりたいの!」

 

「……海未、ことり、助けてくれ」

 

さすがに助けを求めるが、二人は考える素振りをした後、

 

「いいんじゃないかな? 春人くんが穂乃果ちゃんの家に泊まっても」

 

「えっ、ことり?」

 

「ええ。私も春人が来てくれると大変助かりますし」

 

「海未まで…そういう問題じゃないだろう」

 

勉強へのモチベーションが上がったのはいいが、流石にそれは受け入れられない。

 

「これで俺が穂乃果たちと同性だったら普通に引き受けてたが、あいにくと俺は男だ。取り返しのつかないことになったらどうするんだ」

 

「ハルくんは、私たちに変なことするの?」

 

「いや、しないけどな……?」

 

「なら大丈夫だよ、私たちもハルくんは信用してるし!」

 

「そういう話じゃないだろう?」

 

あくまで体裁の話だが、考えなければいけないことだ。

 

「とにかく駄目なものは駄目。学校でならいくらでも付き合うから」

 

「えー……」

 

しゅん、と肩を落とす穂乃果。どうやら本気で落ち込んでるみたいだ。

それから上目遣いで俺を見上げる。

 

「……ハルくん」

 

「……」

 

小さな犬が飼い主に無言で懇願してきているようだ。

 

「駄目、かな……」

 

そんな泣きそうな表情をされると、俺が何かしてしまったような錯覚に陥ってしまう。しかし、俺は心を鬼にする。

 

「泊まりは駄目」

 

「そっか……」

 

しゅんとする穂乃果。もし彼女が犬だったとしたらその尻尾は力なく垂れているのだろう。

自分のうちに感じる居たたまれなさから、でも、と俺は続けた。

 

「穂乃果の両親が許可するなら、穂乃果たちが勉強している間は一緒にいよう」

 

穂乃果の顔が一気に笑顔になる。

 

「本当!? 嘘じゃないよね!?」

 

「ああ、本当だ。穂乃果の両親がいいと言うなら」

 

そういうが早いか、穂乃果は携帯で誰かにコールをかけた。

 

「あ、もしもしお母さん! 今日から家で海未ちゃんとことりちゃんとハルくんとでお泊まり勉強会するから! 大丈夫だよね!?」

 

さりげなく俺まで泊まる人数に数えられている。この一瞬で忘れたのか、それとも興奮で失念しているだけなのか、わからない。

 

「うん、うん――それじゃあ、よろしくね!」

 

「穂乃果……」

 

「大丈夫だってさ! これでハルくんも泊まれるよ!」

 

穂乃果は俺が言っていた言葉をちゃんと理解していたのだろうか。いや、理解していないだろう。もう、指摘するのも疲れてきた。

 

「まあ、いいか…疲れた」

 

「そういう割には微笑ましそうな目をしてるで?」

 

「あんたって、本当に穂乃果には甘いわね。まったく心を鬼に出来てないじゃない」

 

希先輩とにこ先輩、三年生二人の指摘に俺は顔を歪めるのだった。

 

 

 

 

 

 







いかがでしたでしょうか?
ではまた次回の更新にてお会いしましょう。
さよなら~



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