"愛してる"の想いを   作:燕尾

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ども、燕尾です。
停電生活は大変でした。
でもそれを経験したからこそ見えてくるものもあり、次回こういうことが起こっても慌てることなく生活できそうです。


39.タイムリミット

 

 

 

「……まあ、こんなものか」

 

俺は返却されたテストを見て小さく呟いた。

赤点でないならそこまでテストの結果に興味はない俺はすぐにしまう。

 

「春人」

 

「春人くん」

 

「海未、ことり。テストお疲れ様」

 

お疲れ様です、お疲れ、と返す二人は笑顔だ。心配はしていなかったが二人も赤点ではなかったようだ。

 

「その様子だとテストの結果は大丈夫だったみたいだな」

 

「ええ。それどころか春人のおかげでいつもよりよかったぐらいです」

 

「春人くんから教わったところがばっちりテストに出たものね」

 

「それは二人の努力の結果だ」

 

俺が教えたのは最低限のことだけ。そこから理解を深め、問題が解けるようになったのは間違いなく二人の力だ。

 

「ふふ、相変わらず春人は照れ屋さんですね」

 

「かわいいなぁ、春人くんは」

 

「……本心なんだが」

 

別に照れてなどいない。それと可愛いは男に対しては褒め言葉ではないような気がする。

 

「それで春人くん、春人くんはテストの結果どうだったの?」

 

「ん? 可もなく不可もなくってところだな」

 

「国語95点、数学100点、化学94点、物理93点、日本史96点、世界史98点、英語92点――全部90点以上じゃないですか。これで可もなく不可もなくって、嫌味ですか?」

 

「人の答案を勝手に取り出すなよ……」

 

「しかも数学に至っては満点だよ……春人くんすごいね」

 

ケアレスミスの類いを除いて、間違えるということはその単元をちゃんと理解できていないということだ。逆に全部をしっかり理解していれば、誰だって満点は取れる。まあそれはあくまでそれは理論上のことであるが。

 

「学年10位以内の実力は伊達ではないということですね」

 

「ん……競争心と向上心を煽るのには最適だが、興味ない俺からしたら何だっていい」

 

「春人くんらしいね」

 

あはは、と苦笑いすることり。

 

「俺のことよりももっと重要な人たちがいるだろ? そろそろ集まっている時間だ」

 

「そうですね、では聞きに行きましょうか。皆の結果を」

 

「楽しみだね! 春人くんになにしてもらおっかな~?」

 

もうあの三人が約束したボーダーラインを越えていると確信したように言うことり。

俺はそうだといいなと思いつつ、二人の後に続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結果発表~!!」

 

ことりの号令にどんどんパフパフ~、とどこからか太鼓や管楽器の音がなる。祭りではないはずなのだが、何故か雰囲気が明るい。

 

「さて、ラブライブの出場と春人くんへのお願い権がかかったテストでしたが、その結果をみたいと思います♪ まずは――にこ先輩から!」

 

「ふっふっふ……驚きなさい! にこの高校生活史上最高得点!」

 

バン、と見せびらかした数学のテスト用紙にかかれている点数は――86点。

 

「にこ先輩すごいにゃ~!」

 

「やれば出来るじゃない」

 

「赤点候補だって言ってたのに、頑張ったんですね!」

 

「ふふん、にこにできないことなんてないのよ!」

 

一年生からの賞賛を受けて調子に乗るにこ先輩。

高校三年間で86点が最高なのか、と言いかけるがそれは純粋に喜んでるにこ先輩を前に今は無粋だろうと言葉を引っ込める。

 

「にこ先輩は赤点回避、80点越え、一人目クリアです! それじゃあ二人目は――凛ちゃん!」

 

「オッケー! 発表するにゃ~!!」

 

次に指名されたのは凛。凛の赤点候補の科目は英語だったが、その結果というと、

 

「じゃーん! 凛もクリアだにゃー!!」

 

凛の英語の点数は82点、赤点はもちろんのこと、俺が課した条件もクリアしている。

 

「これもかよちんと真姫ちゃんのおかげにゃー」

 

「ううん、凛ちゃんが頑張った成果だよ」

 

「まあ、あれだけ私や花陽が手伝ったんだから当然よね」

 

一年生たちも泊まりがけの勉強会などで相当頑張っていたようだ。

後の残りは一人――穂乃果の数学だ。

 

「それじゃあ、最後は穂乃果ちゃん! お願いします!」

 

「穂乃果先輩……」

 

「私たちの努力を無駄にしてないわよね……」

 

穂乃果が解答用紙を取り出すのを皆が固唾を呑んで見守る。

 

「私の結果は――これだよ!」

 

穂乃果が広げた数学の答案用紙の点数は80点――ギリギリだが、合格だ。

 

『やったぁー!!』

 

それを見たみんなは声を上げて喜ぶ。

俺も小さく拍手する。

 

「おめでとう、皆。俺が言うのもおかしいがまさか赤点ぐらいの学力から80点以上取るとは思わなかった」

 

「ふふん、これがにこたちの実力よ!!」

 

ここぞとばかりに調子に乗るにこ先輩。

 

「よく頑張ったな」

 

俺はそんなにこ先輩を無視して穂乃果と凛に笑顔を向ける。

 

「えへへ、これも海未ちゃんにことりちゃん、ハルくんのおかげだよ」

 

「私も、真姫ちゃんやかよちんが一緒に頑張ってくれたから。それに春人くんもいろいろ教えてくれたでしょ? あれ、すっごい助かったにゃ~!」

 

「ちょ、にこも十分頑張ったんだけど!? どうして二人のほうだけを向くのよ春人!」

 

「にこ先輩が、調子に乗ってたから…?」

 

「調子になんて乗ってないわよ! これがにこの実力――」

 

「なんていってるがどう思う? 希先輩」

 

「ごめんなさい九割方希のおかげです。だからワシワシだけは――!」

 

振り返って謝り倒すにこ先輩。だが、そこには誰もいなかった。

 

「あ、あれ…希は……?」

 

「いるわけないだろう。冗談だからな」

 

「は、春人…あんたって奴は――!!」

 

「だが――」

 

怒って掴みかかってくるにこ先輩。そこで俺はスマホの画面を見せる。そこには、希先輩とのメッセージのやり取りが記されていた。

 

 

――にこ先輩が80点以上取れたのは自分の実力だとふんぞり返っているぞ?

 

 

――これはワシワシMAX確定やね

 

 

「――確定事項らしいぞ」

 

「……春人には人の心ってものはないのかしら?」

 

「ある。なかったら最初からここにはいない」

 

「そういう意味じゃなーい! ワシワシは嫌――!!」

 

この後の地獄(ワシワシMAX)を想像して叫び震えるにこ先輩。

だがそれもつかの間、にこ先輩はすぐに気丈な姿勢をとった。

 

「ふ、ふん! でもこれであんたが言っていた条件はクリアしたわ! 私たち全員の言うことをあんたは聞かないといけないのよ!」

 

「ああ、そうだな」

 

「そうだなって、淡々としているわね」

 

別に無茶な要求は退ければ良いだけの話しだし、そもそも自分の許容範囲外の言うことを聞く人間なんていない。

 

「なんでも願いを聞くとは言わされた――言ったが、俺のできないことをいって無駄にするのも勿体ないだろう?」

 

ぐっ、と言葉に詰まる先輩。

 

「まあ、逃げも隠れもしないから自分のして欲しいことを良く考えていうことだ」

 

そういった瞬間、俺の背筋に悪寒が走った。

バッ、と振り返ると皆が怪しい笑みを浮かべていたのだ。

 

「ハルくんがお願いを聞いてくれる…ハルくんに何してもらおうっかなぁ…」

 

「ええ。今から楽しみですね」

 

「春人くんが何でも言うこと聞いてくれるって、そんな機会ないものね♪」

 

「わ、私の言うことを春人さんが…聞いてくれる……」

 

「なににしようかにゃ~? ねえ、春人くん?」

 

「ふふふ。覚悟しておいてね、春人?」

 

「……」

 

俺は何も言えなかった。これから振られるであろう皆の願い事を考えると、どんな無茶を言われるのか、俺には想像できなかった。

すると、メッセージを受信したのかスマホが振動する。画面を確認すると送り主は希先輩からで、

 

 

春人くん、ファイトやで――あ、うちのお願いもよろしく頼むな? 

 

 

「あの女……」

 

今度必ず仕返しする、絶対してやると、俺はスマホをギリギリと握りながらそう誓うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とりあえず願い事は各々考えて各自頼むということで、俺たちはテストの結果とラブライブにエントリーすることを報告しに理事長室へと向かった。そして、理事長室へと近づいたときに、部屋の中から大きな声が聞こえてきた。

 

「どういうことですかっ! 説明してください!!」

 

「ん、今の声……生徒会長か?」

 

「だよね、どうしたのかな?」

 

俺たちは顔を見合わせる。そして、気付かれないように静かに扉を少しだけ開ける。

 

「いま言ったことが全てです」

 

詰め寄る生徒会長に対して理事長は毅然として答えていた。だが、その表情はどこか悔やんでいるように思えた。

 

「ごめんなさいね。でもこれは決まったことなの」

 

決まったこと、ということはこの学校の進退についてだろう。そしてそれについて謝っているということは――

 

「音乃木坂学院は来年度の生徒募集を止め、廃校とします」

 

どうやら、時間はもう残されていなかったようだ。

 

「っ!!」

 

「おい、穂乃果!?」

 

理事長の言葉を聞いた穂乃果たちはノックも何もかも忘れて理事長室へと乗り込んだ。

 

「理事長、今の話し本当なんですか!? 本当に学校なくなっちゃうんですか!?」

 

「あなたたち!?」

 

咎める生徒会長を無視して穂乃果は理事長をじっと見つめる。すると理事長は息を吐きながら言った。

 

「本当よ」

 

「お母さん! そんなこと全然聞いてないよ!!」

 

「お願いします、もうちょっとだけ待ってください! あと一週間いや――あと二日で何とかしますから!!」

 

「落ち着け穂乃果」

 

「わわっ!?」

 

俺は穂乃果を引き剥がす。必死なのは良いが、もう少し冷静になれないものか。

 

「相手の話もしっかり聞け。それにあと二日でどうにかするのは無理だ」

 

「そんなのやってみないとわからないじゃん!」

 

「だから落ち着けって言ってるだろう。学院長たちが何もしていないのにいきなり廃校決定なんてするわけないだろう」

 

「春人くんの言う通りよ」

 

視線を向ける俺に理事長は頷いて苦笑いしていた。

 

「廃校にするのはオープンキャンパスの結果が悪かったらという話よ」

 

「オープンキャンパス?」

 

「一般の人に見学に来てもらうってこと?」

 

「一般って言っても中学生が主だけどな」

 

「ええ。見学に来た中学生たちにアンケートをとって、その結果が芳しくなかったら廃校にする――そう絢瀬さんにも説明してたの」

 

「なんだ……」

 

今すぐの決定じゃないことに安心する穂乃果。しかし、

 

「安心なんて出来ないわよ。オープンキャンパスは二週間後の日曜日――その結果が悪かったら本決まりってことよ」

 

生徒会長の言葉に穂乃果たちに緊張が奔る。すぐとはいえないまでも残りの時間が少ないこと、そして後がないことに動揺していた。

生徒会長が穂乃果と理事長の間に割り込む。

 

「理事長。オープンキャンパスのイベントの内容は生徒会で決めさせてもらいます」

 

「その結果は見えていると思うけどな…」

 

小さく呟いたというのに生徒会長には聞こえていたのか、睨まれるが俺はどこ吹く風で無関係な方向を向く。

そして相も変わらずの生徒会長にさすがの理事長も折れた。

 

「……止めても無駄みたいね」

 

というより、言葉の通り止めるのは無駄だと思っていたようだ。

 

「失礼します」

 

生徒会長は一礼してそのまま理事長室から出て行く。

 

「……いいんですか、あのままにして。碌なことにならないと思いますけど」

 

「そういうこと言わないの春人くん。絢瀬さんも学院のためにって必死に頑張ってくれているんだから」

 

その頑張りが一ミリたりとも学院のためになっていない、と言ってしまうとさらに窘められそうだ。

 

「言わなかっただけ褒めておきましょうか」

 

「自然に思考を読まないでください」

 

にっこりと笑いながら言う理事長に俺は少し恐怖するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後がないことを聞かされた穂乃果たちの練習はいつもより力が入っていた。

細かいところも念入りにチェックをして、皆の息を一つに、修正を重ねて作り上げていく。

 

「1・2・3・4・5・6・7・8――!」

 

今も新しい曲の通し練習をしている。海未の手拍子にほかの六人がそれぞれ合わして、最後のポーズを決める。

 

「――よしっ! うん、みんな完璧!」

 

「よかった。これならオープンキャンパスまでには間に合いそうだね!」

 

「でも、ほんとにライブなんて出来るの? 生徒会長に止められない?」

 

真姫の心配はもっともだが、その点については問題ない。

 

「真姫、オープンキャンパスのときには部活見学の時間があるんだ。だから生徒会長といえど止められることはない」

 

むしろそこで止めてしまえば印象が悪くなることぐらい生徒会長もわかっていはいるだろう。だから生徒会長別に脅威ではない。むしろ、いま心配なのは、

 

「うん。春人くんの言う通り、部活紹介の時間は必ずあるはずだからそこで歌を披露すれば――」

 

「――まだです」

 

ことりの言葉を遮り、皆の喜びを打ち消したのは海未だった。

 

「まだタイミングがズレています」

 

やはりというか、海未だけは現状に満足できていなかった。

原因は分かっている。生徒会長の話しだろう。

 

「海未ちゃん……わかった! もう一回やろう!!」

 

何も分からない穂乃果は少し戸惑うが、すぐに気合を入れる。

 

「それじゃあ、俺は飲み物を作ってくる」

 

「うん、ありがとハルくん」

 

一言断ってから俺は保冷バッグを持って屋上をから出る。

 

「海未。焦る気持ちも納得できないのも分かるが、何も言わずに押し付けるぐらいなら素直に話をしないと駄目だぞ」

 

「っ、わかっています……」

 

その際、海未に耳打ちしたのだが彼女は一瞬ハッとしたが、この様子だと次も――いくら練習を重ねても海未は認めないだろう。

それから俺は全員分の飲み物を作ってから戻ってくると、案の定少し不穏な雰囲気だった。

 

「何がいけないのよ、はっきり言って!」

 

海未に詰め寄っているのは真姫。そして何も知らない穂乃果たちは少し不安そうにしていた。俺は一度ため息を吐いて、パン、と手を叩く。

 

「ハルくん…?」

 

「ここまでにしよう、あまり根を詰めてもいけない。水分を取って柔軟して今日は終わりだ」

 

「ちょっと待って、まだ話を聞いてないんだけど」

 

食い下がる真姫を俺は宥める。

 

「まだ海未自身も自分で整理できてないところもあるんだ。後でしっかり話をするからいまは我慢してくれ」

 

しばらく真姫は俺と海未を見つめて、はぁ、とため息を吐いた。

 

「……仕方ないわね。ちゃんと教えなさいよ?」

 

「ありがとうな、真姫」

 

「ちょっ、子ども扱いしないでよ!」

 

よしよしと頭を撫でてあげていたら真姫に手を払われた。

これで喜ぶのは穂乃果ぐらいなのか?

 

「穂乃果、ちょっとこっちに来てくれ」

 

「ん、何かなハルく――わっ?!」

 

試しに穂乃果を呼んで頭を撫でる。穂乃果は最初こそ驚いていたもののすぐに受け入れてえへへ、とはにかんでくれた。

 

「うーん、穂乃果は喜んでくれるのにな…分からん」

 

「ハルくーん、くすぐったいよ~」

 

「ほんと、なんなのこの二人……くっつくなら早くくっつけばいいのに」

 

俺たち二人を見た真姫はげんなりして何か呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 







いかがでしたでしょうか?
ではまた次回に、身体にお気をつけて~



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