"愛してる"の想いを   作:燕尾

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ども、燕尾です。
今回は、誰でしょうねぇ?





お家デート

 

 

 

 

「ん? なんだ、これ……?」

 

金曜日の朝――登校し、下駄箱から上履きを取ろうとしたとき、一通の封筒が入っていた。

 

「どうしたの、ハルくん?」

 

俺の声に気づいた穂乃果が上履きを履いてやってくる。

 

「いや、こんなのが入ってたんだ」

 

「そ、それは…!?」

 

穂乃果にそれを見せると、まるで信じられないようなものを見るような、驚愕の目に変わった。

 

「大丈夫か穂乃果? 様子が変わったが?」

 

「な、なんでもないよ!?」

 

いや、明らかになにかあったようにしか見えない。額からの汗が出ているし。

 

「と、とりあえず! 中身を確認しよ!」

 

「わかった、わかったから落ち着いてくれ、な?」

 

急かす穂乃果を宥めながら俺は封を開ける。中には多重に折られた一枚の紙。

俺は紙を広げて、内容に目を向ける。

 

「なになに――放課後、屋上で待つ。必ず一人で来られたし。他の人を連れてくるべからず」

 

「……」

 

なんだろうかこの手紙は。内容からして呼び出しの手紙なのだが。

無駄に武士口調の達筆をふるった字。

 

「この差出人は決闘でもしたいのか…どう思う、穂乃果?」

 

「どう思うって言われても……私が思ってたのと違うし…」

 

さっきまでものすごい慌てていた穂乃果も微妙な顔をしている。

 

「どうするの、ハルくん?」

 

「ん…呼ばれてるし、無視するのもな」

 

「え、行くの? 大丈夫?」

 

「まあ、大丈夫だろう」

 

俺はもう一度手紙を見つめる。

 

「なんとなく、差出人が誰なのかは分かったから――」

 

 

 

 

 

――それから放課後。俺は指定された時間に、屋上へと向かった。

 

いつもの練習場所である屋上。そこには九人の姿ではなく、ある一人だけが凛とした佇まいで校庭を眺めていた。

 

「急に呼び出してしまってすみません」

 

「いや、呼び出すのは別に構わない。だけど、もう少し呼び出し方を考えた方がいいぞ――海未」

 

「えっ!?」

 

呼び出した海未は俺の言ったことに本当ですか、と目を見開いていた。

 

「なんで驚くんだ」

 

むしろあれでいいって思ってることに、俺が驚きたいぐらいだ。

驚愕する海未に俺はついそう言ってしまう。

 

「あの書き方は間違いなく果たし状だ」

 

ため息を小さく吐く俺に、海未は顔を赤くしていく。

書いてある字に見覚えがあったから海未だとわかったが、他の人が受け取ったらまず無視されてただろう。

 

「うぅ、そんな……一晩中考えていたのに……」

 

がっくりと肩を落とす海未に俺は苦笑いを向けるしかない。

 

「まあ、海未の空回りは置いておいて」

 

「追い討ちをかけないでください!」

 

「わざわざ手紙で呼んだ用事はなんだ? 本当に決闘でもするのか?」

 

「……いま、それでもいいと思ってますよ」

 

「本題に戻ろうか」

 

流石にからかいすぎたか、海未の顔が凄いことになっている。俺は即座に話を修正した。

とはいっても、俺も大体どういう話かは予想がついていた。

 

「俺だけを呼び出したってことは、約束の内容が何か決まったのか?」

 

「ええ、その通りです。今回は私の番、ということになりました」

 

「わかった。それで、どうするんだ?」

 

「えっと、そ、その……」

 

問いかけると海未はどこか恥ずかしそうに、緊張したように俺をまっすぐ見つめる。

それから、俺は海未の口から彼女の願い事を聞かされるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日。俺と海未は正座して向かい合っていた。

静寂の中、俺は海未のほうへと手を伸ばす。そして、

 

「王手」

 

パチン、といい音を鳴らし、そう宣言する。

 

「……参りました」

 

その俺の一手に負けを認めた海未が頭を下げる。

 

「いい勝負だった。負けるかと思った」

 

「それは嫌みですか?」

 

少し不機嫌そうに返す海未に俺は頷きながら将棋の駒をもとの配置に戻していく。

 

「そんなことない。気を抜いた一手を打てば、一気に負けてた」

 

「むぅ……もう一回勝負しましょう! 次こそは!!」

 

「その前に休憩しよう」

 

納得できないと言うかのように前のめりになる海未に俺は苦笑いして彼女を制止する。

今の手合わせで五回目だ。こんなに連続で勝負したら、流石に頭も疲れている。

 

「まだまだ時間はあるんだから、な?」

 

「……それもそうですね。私も少し頭を冷やした方が良さそうです。飲み物を用意してきますね」

 

「手伝う」

 

「大丈夫ですよ。それに春人はお客様なんですから、ゆっくりしてください」

 

これは、譲りそうになさそうだ。

 

「じゃあ、お言葉に甘えるよ」

 

はい、と嬉しそうに頷いて、海未は飲み物を準備する。

 

「今日も、いい天気だ」

 

縁側に移動してそこから外に向かって足を伸ばし、俺は空を仰ぎ呟やく。

いま俺は海未の家に来ていた。今日一日、海未に付き合う約束だからだ。

 

 

――は、ははは春人!

 

 

――ん。なんだ

 

 

――あ、明日土曜日に、わわっ、私の家に来てくれませんか!? お、おおおお家デート、しましょう!!

 

 

これが昨日、海未からあの屋上で言われた話だ。

ガチガチに緊張して、顔を真っ赤にしながらも頑張って言う海未の姿を俺は思い起こし、小さく微笑む。

 

しかも、お家デートという言葉はことり辺りにでも吹き込まれたのだろう。

そう考えればあの果たし状みたいな手紙も中身はさておき、呼び出し方としては定番だろう。

真面目な海未は家に呼ぶに当たる際の礼儀とでも言われてそれを信じ込んだのだろう。

 

「お待たせしました。こちらはお茶請けです。好きに食べてください――って、なに笑っているんですか? なにか面白いことでも?」

 

「いや、ちょっと思いだし笑いを――お茶ありがとう。頂きます」

 

正直に話せば、海未はまた慌てるか、頬を膨らまして不機嫌になるだろう。そんな海未も見たいがここは我慢しておく。

 

「……どうしてでしょう。春人がなにか良からぬことを考えてると、そう思ってしまうのですが」

 

「それは海未の思い違いだ」

 

「でしたら、ちゃんと私の顔を見ていってください! まったく、もう……」

 

結局、すねたように俺を睨みながらお茶に口をつける海未。

そして一息、溜息を吐いた。

 

「昨日といい、なんだか最近の春人は少しやんちゃになってきているような気がします」

 

「気のせいじゃないか?」

 

やんちゃっていうほどいたずらも何もしていないし、今も前も変わらないはずなのだが、海未は首を横に振る。

 

「いいえ。なんだか穂乃果やことりがいたずらするときにそっくりに、とまでは言いませんが、時々あの子たちと似た雰囲気を感じるようになりました――ああ、分かり易くなっていると言ったほうがいいですね」

 

「そう、か?」

 

問いかける俺に、海未は頷く。

 

「自分の変化は自分では気づかないものです。しかしその変化は春人にとってはいいことだと私は思いますし、私たちも春人が変わっていることを嬉しく思っています。心を開いてくれているという証拠ですから」

 

お茶をもうひと口付ける海未。

 

「正直、出会った頃から海のあの合宿の時まで、私から見た春人は心を閉ざして人を自分に近づけないようしているように見えて、何を考えているのかわからない人でした――あ、だからといって決して信用してなかったとかそういうことはありませんよ」

 

「そんな懐疑的な見方はしてないから安心してくれ」

 

出会った時の海未を思い出せば、信用できない人間と一緒にいることはないことぐらいわかっている。

海未はまっすぐ庭の塀のその先にある、青く広がる空を眺めながら言う。

 

「私たちに近いようで遙か先を一人で歩いている、傍に居るようで居ない、触れようにも触れることができない人でした」

 

「……」

 

「私たちは、あなたのことがよくわかっていませんでした。はっきり言うと、今だってわからないことのほうが多いのかもしれません」

 

それは俺も同じだ。この数週間、いろんな人と過ごしてまだまだわからないことだらけだった。

 

「ですが徐々に、少しずつではありますが、こうしてちゃんと隣に居てくれて――こうして触れることもできるようになりました」

 

俺の手の甲に自分の手を重ねる海未。彼女の温かさが、じんわりと溶けていく。

単なる手と手の触れ合いじゃない。俺と海未の、皆との心の触れ合いだ。

 

「わかりますか? これもあなたが自分の道を引き返してでも、私たちに近づいてくれたおかげなんですよ?」

 

そう言ってくれるのは嬉しいが、それは違う。俺のことを買いかぶりすぎだ。俺は最初から皆の前を歩いてなどいない。むしろ全くの逆。

 

「皆が俺に近づいて手を引いてくれたんだ。前に居たのは、皆の方だ」

 

俺はずっと立ち止まっていた。こんなもの(心紫紋病)に侵され、打つ手がないと知って、歩くのをやめた人間だ。

 

「もしもあの時、海未たちに出会わなければ俺は一人そこでそのままいた」

 

何もせず、しようとも思わず、そのまま朽ちていたに違いない。

 

「俺が変わったというのなら、そういうことだろう」

 

「春人…」

 

海未は心配そうに俺を見る。

 

「別に自分を卑下して言ってるわけじゃない。これが本当のことなんだ」

 

俺の言葉に沈黙する海未。それは出る言葉がないというようなものではなく、何か考えているようだ。

 

「どうした、海未?」

 

そう問いかけるも海未はなんでもありませんと答えて立ち上がる。

 

「さて、休憩もこの辺にしてそろそろもう一戦しませんか?」

 

「ああ。いいよ」

 

「今度こそは負けません! 春人も全力で相手してください!」

 

そこまで言われてしまったら手加減をするのも失礼に当たるというもの。

この後、日が落ちるまで適当に休憩を挟みながら将棋を指したが、俺が負けることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

将棋に一区切りを付け、海未は日課であるという勉強をしていた。

海未の要望で、俺は彼女の勉強を見ていた。

 

「海未、春人くん。夕飯の支度が終わりましたよ」

 

そんな中、俺たちを呼ぶ声が聞こえてきた。

 

「はい、いま行きます――春人」

 

「そうだな。この続きは食べ終わってからにしよう」

 

ノートを片付け、海未の案内でリビングへと通される。

そこには既に、海未の両親二人が待っていた。

 

「お父様、お母様、お待たせしました」

 

「お邪魔しています。今日は招いていただきましてありがとうございます」

 

「君が桜坂春人くんか――」

 

海未と一緒にやってきた俺を海未の父親は下から上まで見ながらそういった。だが、彼の目はあまり良い感情を持っていない。

俺は彼が言葉を続ける前に頭を下げた。

 

「はい、桜坂春人です。海未さんや彼女の幼馴染の皆さんと仲良くさせてもらっています。本日はご相伴に預からせていただきます」

 

「む……」

 

俺の動作を見て海未の父親は苦虫をかむような表情をする。

 

「……園田健勝だ」

 

「私はいらした時にご挨拶をしましたが、改めまして――園田香那実です。いつも娘がお世話になっています」

 

父親の健勝さんとは対照的に、静かな微笑みを向けてくる母親の香那実さん。

 

「春人くん。一つ聞きたいのだが――」

 

ずいっ、と顔を寄せてくる健勝さんに俺は軽くのけぞる。

 

「まあまあ、健勝さん。お話は食べながらでもできますし、冷めないうちにいただきましょう」

 

なにか問いかけようとしてきた健勝さんを遮る香那実さん。

 

「だが…」

 

しかしと食い下がる香那実さんの纏う雰囲気が変わった。

 

「健勝さんが聞きたいことは私の料理が冷めてもいいというほど聞かないといけない、重要なことなのですか?」

 

「ち、違うぞ! 香那実の料理が重要だ! さあ、海未も桜坂くんも座りなさい! 香那実の料理を食べようじゃないか!!」

 

対面しなくてもわかるほどの圧。かけられているわけでもないというのに俺も冷や汗を垂らす。これが海未の原点かと納得してしまう。ちらり、と海未に目配せをすると、彼女はいつものことというように、苦笑いをした。

先ほどまでの威厳な雰囲気から一変、さあさあと促してくる健勝さん。

 

「では――頂きます」

 

『頂きます』

 

健勝さんが手を合わせるのに続いて、俺たちも手を合わせる。

今日の園田家の夕食は秋刀魚の塩焼きにきのこの味噌汁、きゅうりの漬物に筑前煮――見事な和食だった。

そういえば、穂乃果の家で初めてお呼ばれしたときも同じような和食だった。結構和食の比率が高いのだろうか。まあ、家柄というのもあるとは思うが。

 

そんなどうでもいいことを考えながら、俺は箸をつける。

 

「――美味しい」

 

口に入れて飲み込んだ瞬間、自然とその言葉が口から漏れた。

 

「よかったわ。お口にあったみたいね」

 

香那実さんが嬉しそうに言う。

秋刀魚の塩焼きの塩加減は絶妙なバランスを保ち、旨みをしっかりと閉じ込めた焼き加減。きのこの味噌汁も具材に合うような出汁と味噌が使われている。

そして何より、一番美味しいと思うのは筑前煮だ。

 

それぞれの具材の色味や風味がこれ以上になく引き立てられ、味のバランスも見事にまとまっている。

 

「この筑前煮、もしかして具材ごとに煮込み時間を変えていますか?」

 

「あら、気付いてくれて嬉しいわ。ええ、その通りよ――それぞれの具にあった煮込み時間でしっかりと染み込ませた上で具の味引き出させるの。ただし、他の具の味を邪魔しないようにバランスも考えないといけないけれどね」

 

「なるほど…」

 

俺も数日分の筑前煮を作ることは多々あったが、ここまでのことは考えていなかった。具材の硬さをなくし、味を染み込ませるだけにとどまっていた。

 

「気付いてくれたのは春人くんがはじめてです。海未も健勝さんも美味しいとは言ってくれるけど、それ止まりですから」

 

『うっ……』

 

香那実さんの毒づきに海未と健勝さんは夕食どころか言葉も喉に詰まらせている。

 

「春人くんはお料理をしているのですか?」

 

「ええ。一人暮らしをしていますから、金銭的に考えて基本は自炊です。惣菜などで済ませることもありますけど」

 

「その年で自立しているのは立派なことですよ。それに春人くんとは話が合いそうで嬉しいわ。今度一緒にお料理してみたいですね」

 

「迷惑でないのならぜひ。教えていただくことが主になりそうですし、手伝い程度のことしかできないと思いますが」

 

「そんなこと気にしなくて大丈夫ですよ。それに私、息子と料理することに憧れがあるんですよ」

 

女の子の子供しかいない香那実さんにとっては男の子というのはかなり憧れがあるらしい。

すると、テンションが上がった香那実さんはとんでもないことを言いはじめた。

 

「――そうだ、うちに婿入りしないかしら?」

 

「「ぶっ――!?!?」」

 

健勝さんと海未が香那実さんの発言に噴出す。俺もリアクション取ることができずになんともいえない顔をしてしまう。

香那実さんは、穂乃果や真姫の母親の穂波さんや真奈さんのとはまた違ったタイプの人みたいだ。

 

「香那実!?」

 

「お母様!?」

 

ガタガタ、と慌てたように立ち上がる健勝さんと海未。

 

「二人とも、食事中ですよ?」

 

「「いやいやいやいや!」」

 

それ所じゃない、と二人は首を高速に振る。

 

「まだ海未には早いだろう!?」

 

「あら、将来を見据えるのは大切ですよ? それに春人くん、良いじゃないですか。誠実そうですし、器量も申し訳ないでしょうし、好青年じゃないですか」

 

どこにいってもこういう話は付き物らしい。俺は少し遠い目をしてしまう。

 

「海未だって春人くんのこと、嫌いではないのでしょう?」

 

「嫌いではないですが、そういう話ではありません!」

 

「私、春人くんが海未のお婿さんになってくれるのなら大歓迎ですよ?」

 

「お母様!!」

 

顔を真っ赤にして一喝する海未に、香那実さんは笑って受け流す。

もっと海未の家は落ち着いた食事をしているのかと思ったが、そうでもないようだ。賑やかで、温かい。

そんなことを思いながら俺は味噌汁をすするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――海未。ここ、また間違ってる」

 

「あ……」

 

夕食後俺たちはまた勉強の続きをしていた。しかし、海未はいまいち身が入っていないようだ。今やっているのは数学なのだが、計算ミスを繰り返している。

原因は言わずもがな。夕食時のことだろう。

 

「今日はここまでにしておこうか、頭を使いすぎだ」

 

午前中からずっと将棋をして、夕方から勉強。それにさっきのこともあわせて色々と疲れているだろう。

 

「……それもそうですね。すみません、私から頼んだのにこんな」

 

「気にしなくて良い。むしろ、海未には感謝してる。今日家に招いてくれたのは俺のこと考えてくれたからだろう? 久しぶりに、いつもの休日って感じがした」

 

「気付いていたのですね。ここ最近の春人は皆のことで忙しそうだったので、ゆっくりとした時間が必要だと思ったんです」

 

「でも、よかったのか? もっと自分のして欲しいことを言ってもよかったんだぞ?」

 

「それなら将棋の相手をしてもらいましたから十分です。μ'sの皆は将棋を指さないですし、お父様ともやりつくしてしまったので、別の相手が欲しかったんです」

 

「そうか。まあこれからは時間があれば相手するよ。勝ち逃げされるのは嫌だろう?」

 

「……言ってくれますね。今度指すときには、負かしてあげますよ」

 

挑発に乗ってくれたようで、笑みを浮かべているものの心の中では何かを燻らせている海未。

 

「楽しみにしてる――それじゃあ、そろそろお暇するよ」

 

時間も二十時半過ぎ。これ以上はさすがに迷惑にもなる。それに、

 

「……」

 

ずっと気配を消しながら、襖の隙間から俺を睨みつける健勝さん。彼の心を安心させるためにも帰ったほうがよさそうだ。

俺は彼女の部屋から出る。

玄関では海未だけでなく、香那実さんと健勝さんも見送りに来た。

 

「春人、今日はありがとうございました。私のわがままに付き合ってもらって」

 

「いや、こちらこそ。俺も今日は楽しかった。それと夕飯までご馳走になって、ありがとうございます」

 

「いいのよ、また来てくださいね。そのときは一緒にお料理しましょう」

 

「はい。そのときはよろしくお願いします」

 

「それから、次に会うときには良い報告を聞かせてくださいね?」

 

「お母様!」

 

夕食のときのことを掘り返された海未はまた顔を赤くする。俺は俺で苦笑いをするしかなかった。

 

「ほら、健勝さんも。お客様がお帰りですよ?」

 

「……」

 

香那実さんから促される健勝さん。しかし、彼は俺を見下ろすだけだった。

無言だが早く帰ってくれといわんばかりの態度。だが、それが娘を持つ父親の普通の反応だろう。むしろ俺は健勝さんの反応に安心している。

 

「もう…すみません、春人。こんな両親で」

 

「気にしなくていい――じゃあまた学校で、お邪魔しました」

 

「はい、また学校で。気をつけて帰ってくださいね?」

 

「ああ」

 

別れを告げて、俺は園田家を後にする。

 

「それにしても、また随分と凄い両親だったな。いろいろな意味で」

 

香那実さんも健勝さんも、穂乃果や真姫の両親と同じぐらい個性豊かだった。だが皆、子どものことを思い、彼女たちのために動いている。

 

「両親、か」

 

俺は一人小さく呟きながら月明かりだけが光源の夜道を一人歩くのだった。

 

 

 

 

 

 

 






いかがでしたでしょうか?
さあ、残りは花陽、絵里、穂乃果の三人だけど、誰にしようかな?



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