"愛してる"の想いを   作:燕尾

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ども燕尾です。
一ヶ月空いていたのはストックを作り続けていたからです(言い訳)






53.行方の不安

 

 

「どどどどどうしよー!?」

 

放課後。屋上で私は頭を抱えながら叫ぶ。

 

『……』

 

練習着に着替えた皆からお通夜ムードが漂っていた。と、いうのも――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やったやったぁ!」

 

「部長! やりましたね、部長ぉー!!」

 

「茶道部、午後三時から一時間の講堂使用を許可します!」

 

「「やったぁー!!」」

 

目の前で喜ぶのは茶道部の部長と副部長。講堂の使用権を手に入れた二人は抱き合いながら喜んでいた。

そんな二人の姿を見ながら我らが部長にこちゃんは愚痴を言う。

 

「なんで講堂がくじ引きなわけ……?」

 

「昔から伝統らしくて…」

 

にこちゃんの愚痴に苦笑いでし返せない絵里ちゃん。

でもこれもルール。ハルくんがいつも言っているとおり、約束を守れなければ自分たちの活動の正当性がなくなってしまう。

 

「にこちゃん!」

 

エールを送る私ににこちゃんは緊張した面持ちで頷いた。

 

「見てなさい……!!」

 

「が、頑張ってください……」

 

気合が入りすぎてもはや威圧しているにこちゃんに担当の子達は少し怯えている。だが、それを止めるほど私たちも余裕がなかった。

 

「頼んだよ、にこちゃん!」

 

「講堂が使えるかどうかで、ライブのアピール度が大きく変わるわ!!」

 

私たちの期待を背負い、にこちゃんが抽選機を回した。皆が見守る中、ガラガラと音を立てて数回回された後玉が排出される。

 

その結果は――金色の玉ではなく、銀色。見事なハズレだった。

 

私たちは学園祭で講堂を使う権利を取ることができなかったのだ。

 

「残念! アイドル研究部、学園祭で講堂は使用できません!」

 

崩れ落ちている私たちを余所に、無常な宣言が伝えられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして今に至っている。

 

「だ、だってしょうがないじゃない! くじ引きで決まるなんて知らなかったんだから!!」

 

「あー! 開き直ったにゃ!!」

 

うるさい! と怒鳴るにこちゃんに肩を縮める凛ちゃん。

 

「うう…どうしてはずれちゃったのぉ!?」

 

「…まぁ、予想されたオチよね」

 

「にこっち、うち信じてたんよ……?」

 

「うるさいうるさいうるさーい!! 悪かったわよー!!」

 

地団駄踏んで叫ぶにこちゃん。くじ引きだからこればっかりは仕方がなく、にこちゃんを責めてもなにもならないのは分かっているけどそれでもハズレたことに落胆せずにはいられなかった。

 

「気持ちを切り替えましょう、講堂が使えない以上他の所でやるしかないわ。体育館もグラウンドも運動部が使ってるから、それ以外の場所ね」

 

「それは分かるのですが、どこで……」

 

講堂、体育館、グラウンドが使えないとなると場所なんてほとんどない。それでもできそうな場所を皆考える。

 

「部室、とか?」

 

にこちゃんの提案に私たちは一瞬想像する。だが…

 

「狭いよっ!」

 

「ぐぬぬ……」

 

九人でダンスすらできない部室では到底無理だ。

部室は却下。他にこの学校でできるところは――

 

「あっ! なら廊下とかはっ?」

 

「馬鹿丸出しね」

 

パッと浮かんだだけににこちゃんに即否定される。私も想像したらマーチングバンドのようにしかならなかった。

広い場所。皆が来そうな場所。アピールできそうな場所……いや、条件を絞ろう。

まずは広い場所が第一条件だ。広さがなければなにも出来ないのだから。そしてライブをするのに相応しい場所だ。

絵里ちゃんの言う通り、グラウンドや体育館は運動部が使っている。そのほかで広い場所は――

 

ここ(・・)はどうかな?」

 

気付けば私はそう言っていた。

 

『えっ?』

 

「ここに簡易ステージを作るの! ここならお客さんもたくさん入れるでしょ?」

 

「屋外ステージってこと?」

 

「確かに人はたくさん入れるけど……」

 

希ちゃんやことりちゃんが周りを見渡して確認しているけどそれだけじゃない。

 

「ここは私たちにとってすごく大事な場所。ライブをやるのに相応しいと思うんだ」

 

「でも、それならどうやって屋上にお客さんを呼ぶの?」

 

「確かに…ここならたまたま通りかかる、ということもないですし……」

 

絵里ちゃんと海未ちゃんはすぐさま心配を口にする。

 

「下手すると、一人も来なかったりして」

 

「ええっ!? それはちょっと……」

 

真姫ちゃんの言う通り、一人も来ないかもしれない。海未ちゃんの言う通り屋上はそういう場所だ。

でも、だからといってやめる理由にはならない。お客さんが来るかどうかは私たちの努力次第なのだから。

 

「大きな声で歌えばいいんだよ!」

 

「そんなことで簡単に解決できるものじゃないでしょ?」

 

「校舎の中や、外を歩いているお客さんが聞こえる声で歌うの。そうしたらきっと興味を持って見に来てくれるよ! えっと、駄目…かな……?」

 

振り返れば何一つ現実的じゃない意見に気付いた私は最終的に語尾が萎んで、不安げに皆を見る。

すると悩んでいる人がほとんどの中、絵里ちゃんだけがくすりと笑った。

 

「穂乃果らしいわ」

 

そう言う絵里ちゃんはどこか腑に落ちたようだった。

 

「でも、今までそうやって何とかしてきたのよね。μ'sってグループは」

 

私は照れ笑いする。今思えば絵里ちゃんの言う通り行き当たりばったりで、そのときそのときで何とか乗り切っていたような気がする。

でもそれでいいんだ。私たちができることを精一杯やればいいのだ。

 

「決まりよ! ライブはこの場所に、ステージを作って行いましょう!」

 

絵里ちゃんの一声で、学園祭ライブは屋上ステージに決まるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新薬投与に検査など、一通り終わった頃には学校が終わっている時間に近づいていた。今は様子を見ながら安静にしている。

ただ病院というものはやることが終わったら暇なもので、俺は暇つぶしに本を読んでいた。

 

「ふぅ……ん?」

 

ちょうど読み終えたところで内線のコールが入ってきた。

 

「はい、桜坂です」

 

『桜坂さん。あなたに面会したいという方が来ているのですが、いかがしますか?』

 

「一応伺いますが、誰ですか?」

 

『えーっと…絢瀬絵里さん、東條希さん、それと真姫お嬢様のお三方です』

 

真姫は分かるが、絵里と希?

 

「面会します」

 

とりあえず、話しないことにはなにも分からないので面会の意を伝える。

 

『分かりました、お通しします』

 

内線が切れてから数分後、病室に絵里と希がやってきた。

 

「こんにちは、春人くん」

 

「お邪魔するで、春人くん」

 

「ああ。そこに椅子があるからそれに座ってくれ」

 

二人はそれぞれ椅子を引っ張り出し、腰を落ち着かせる。

 

「それで、一体どうしたんだ? こんなところに来て」

 

「どうしたもなにも、あなたが入院したって聞いたから心配してきたのよ?」

 

「みんなで押しかけるのも病院の迷惑になるから代表してうちらが来たんよ」

 

「大げさだ。入院と言ってもただの検査入院だぞ?」

 

「前の合宿で包帯まみれになったところを見たのに信用できるとでも思ってるん?」

 

希のどこか棘のある言葉と、厳しい目。

 

「それに春人くん、検査入院っていつも二日ほどで終わるって話じゃなかったかしら? 穂乃果たちが聞いた話だと今週はこれないような話だったみたいだけど、そこのところはどうなの?」

 

そして絵里の追加発言に俺は冷や汗が垂れる。

 

「春人くん、嘘ついてもカードで分かるよ?」

 

「どうせ後から分かるんだから今正直に答えなさい」

 

どう切り抜けようか考えていると二人から釘を刺され、退路が塞がっていく。

 

恐らく二人を上手く誤魔化しても、真姫が真奈さんから事情を聞けば伝わる。そうなればすぐにバレてしまうだろう。

なら絵里の言う通り余計な心配をさせないように今しっかりと説明した方がいいか。

 

「今回俺が入院したのは、治験のためだ」

 

「治験…?」

 

よく分かっていないのか、絵里は首を傾げている。

 

「新しい薬というのは本当に効果があるか、副作用でどういうことが起きるかしっかりと立証してからじゃないと世の中には出回らないものなんだ。だから人に使って確かめる実験をする、それが治験だ」

 

「春人くんを実験体にしているっていうの…?」

 

「極端に言えばそうなるが必要なことだからな。それに被験者からしたら治るかもしれない可能性の一つだから、そんな悪いものじゃない」

 

悪いものじゃない、と断言しなかったのは何が起こるかわからないからだ。治るかもしれないし、治らないで副作用に苦しむだけかもしれない。進行を遅らせられるかもしれないし、もしかしたら余計に悪化する場合もある。

 

「どうなるかは経過次第だから今回は一週間ぐらい様子を見ないといけないんだ。だから今すぐどうこうっていうものじゃない」

 

「そうだったのね…」

 

納得してもらって何よりだ。このまま気付かないで帰ってくれれば万々歳なのだが、そうはいかなかった。

 

「春人くん」

 

最初に勘付いたのが希だった。

 

「えっ、ちょ…希っ?」

 

絵里の戸惑いに目も暮れず、希は前に乗り出して俺の額に手を当てようとする。咄嗟のことに、俺は反射的に希の腕を掴んでしまった。

驚きと、納得と、気まずさの視線が入り混じる。

 

「やっぱり」

 

じっと見つめてくる希から目を逸らした瞬間、異変が起きた。

 

「――っ! ごほっ、ごほっ!!」

 

俺の中から何かこみ上げてこようとしてくるのだ。

 

「おええぇぇ――」

 

堰き止めることのできないものに俺はすぐ近くにあったゴミ箱に顔を突っ込んでモノを出す。

 

「春人くん!?」

 

突然のことに絵里は慌てるも、すぐに背中を擦ってトントンとゆっくりとしたリズムで軽く叩いてくれる。

ビチャビチャと撒き散らされる吐瀉物。もう出尽くしたと思ったのだが、まだ身体は出すことをご所望らしい。

 

「ごほっ、げほっ……うぇ……」

 

「大丈夫、桜坂くん?」

 

ようやく収まって来たところで看護婦がやってきた。どうやら希がナースコールを押したらしい。

 

「ええ、副作用ですので……紙コップに水を入れてもらえますか?」

 

はいこれ、と既に用意していたようですぐ渡された。俺はそれを受け取り洗面台へとよろよろと移動して口を何度かすすぐ。その間に看護婦は手馴れた手つきで吐瀉物を片付けていた。

 

「それじゃあ私はこれを片付けたらそのまま戻るから、何かあったらまた呼んでくださいね」

 

「はい…お騒がせしました……」

 

一礼しようとする俺の額を小突いて早くベッドに戻りなさいと促す。

しかし、俺はベッドに戻るのをためらった。

 

「「……」」

 

さっきから俺の様子をずっと見ていた人らがいるからだ。どうやら逃げることはできなさそうだ。

 

「えっと、その…驚かせて悪い」

 

目を逸らしながら謝る俺に二人は揃ってため息を吐いた。

 

「副作用なら仕方がないわよ」

 

「ちょっとビックリしたけどね」

 

理解ある二人で助かった。この二人じゃなかったらもっと大変だっただろう。

そんなことを思いながら、二人と途中から来た真姫の四人で今日のことについて話した。

主に月末にある学園祭で行うライブについてのこと。くじ引きでにこがハズレを引いて講堂が使えないこと。それでライブは練習場所である屋上に簡易ステージを作って行うこと。

 

「講堂の使用権がくじ引きだったって言うのは驚きだな。茶道部があの広い講堂で何を披露するんだ」

 

「まだ部活動が多かったときの名残らしいわ。講堂の使用について揉めに揉めたから、業を煮やした実行委員会がくじ引きにするって言い出したのが始まりね」

 

「そしてにこが見事にハズレを引くのは決まっていた未来だったと…」

 

「なに言っているのよ……まあ、予想されたオチではあったけど」

 

「にこっちはここぞというところでやらかす気質なんやろうね」

 

「……さすがににこが可哀想に思えてきたわね」

 

ここには居ないにこの言われように絵里がなんとも言えない顔をする。

 

「とりあえず、なんとかなるんだな」

 

「ええ。簡易ステージを作るのに色々と審査はあるけれど、ライブはできるわ」

 

ラブライブの出場をかけて最後の追い込みをそれぞれ掛けている中、ライブができないということは免れたのは本当によかった。

 

「こんなところからで申し訳ないけど、応援している」

 

「春人くんはしっかりと治療に専念してな」

 

そういう話をしているうちに面会時間の終わりがやってきた。

 

「私はまだ話したいことがあるから少し残るわ」

 

「それじゃあ私たちは帰りましょうか、希」

 

そういう真姫を残して病室から去ろうとしている絵里と希に俺は声をかける。

 

「あまり気負いすぎないように、な」

 

絵里と希は最初ビックリした様子を見せるも、頷いて帰っていく。

二人の姿が完全に見えなくなってから俺は真姫に向き直る。

 

「それで、話したいことってなんだ?」

 

「えっと、それは……」

 

問いかけると口篭る真姫。大方の予想はついているが、真姫から話すまで俺は待ちの姿勢でいる。

 

「その、調子は…どうなの?」

 

「変わらずだ。新薬の副作用で崩すときはあるけどな」

 

「そう…」

 

真姫は相槌を打ってそのまま黙り込む。最近の彼女はずっとこんな感じだ。

顔を合わせては気まずそうな顔をして、話そうとしてもなにも言葉が浮かんでこない。だから中身のない質問や話ばかりで会話がすぐ終わってしまう。

 

「真姫」

 

「なに?」

 

だから俺から切り出すことにした。

 

「無理はするな」

 

「……なんのことよ」

 

真姫は誤魔化そうとしているが隠し通せておらず、バレバレだ。

 

「ここ数日、碌に寝ていないんだろ」

 

目の下の隈がうっすらと見える。ファンデーションはしているのが分かるから、隠しきれないほど濃くなっているのだろう。

理由は言わずもがな、心紫紋病のことを遅くまで調べているから。真奈さんからも話は聞いてるから言い逃れはできない。

 

「俺は大丈夫だ」

 

「入院している人が大丈夫って言っても何の説得力もないわよ…」

 

「そういうことじゃない」

 

俺がどういうことを言っているのかは真姫も分かっているはずだ。

 

「知っているからといって真姫がどうにかしないといけない義務はない」

 

「……っ」

 

真姫は病院の院長(西木野先生)の娘ということもあって、穂乃果たちより俺の状況を正しく知っており、身近に資料がある環境下にいる。そうなれば真姫がこういう行動に出るのは予測できた。

 

「前にも言っただろ。俺はそういう気持ちでいてほしくない」

 

「違うわよ……」

 

「俺は皆の時間を奪いたくない。皆には前に進んでほしい。だから――」

 

「違う! そうじゃない!!」

 

大きな声で否定した真姫の言葉に俺の言葉が途切れる。

 

「私は貴方に救われた! あのとき貴方が私にちゃんと向き合って言ってくれたから私は本当の気持ちを知ることができたっ、前に進むことができたのよっ!!」

 

真姫が言っているのはμ'sに入る前のことだろう。そんな大層なことは言っていない。ただ上から目線で説教垂れただけなのだが、真姫はそうじゃなかった。

 

「私は春人に救われた。なのに、私は…私は貴方になにも返せないッ!!」

 

「そんなこと――」

 

気にしなくていいとそう言おうとしたが、真姫の顔を見たらいえなかった。

 

「私は春人に報いたい。それなのに、調べれば調べるほど、現実を知っていくほど私にはなにも出来ないって思い知らされて、それが悔しくて、情けなくて……」

 

それは真姫の本心だった。真姫は本当に俺に救われたと思い、次は自分が俺を救いたいと思ってくれていたのだ。

だけどそんな真姫の気持ちを現実は嘲笑うかのようにいとも容易く打ち破った。不治という壁を真姫はいち早く理解してしまった。しかしそれは決して諦めではない。

それにいくら調べられる環境下にあるといっても精々資料を読み漁ることが関の山で、できることのほうが少ないのだ。

 

「どうしてよ…どうしてなのよ……どうして私は……」

 

自分の不出来さを嘆き、崩れ落ちる真姫。

現実を知り、踏み込んでいくというのは覚悟が必要なことだ。この子はどれほどの覚悟で俺に向き合ってくれていたのだろうか。俺はそれを計り知ることができなかった。

だから俺は肩を震わせる真姫の頭に手を置いて、ゆっくり撫でた。

 

「それでいいんだ、真姫。まだ真姫は高校生だ。出来ないことが多いのは当たり前だ」

 

言うなれば真姫はまだ蕾の状態だ。花が咲くには養分(経験)や時間が足りないだけ。だがその気持ちがあれば、真姫はきっと綺麗な花を咲かすことができるだろう。

 

「悔しい想いが自分に努力をくれる、それは自分の成長の養分になる」

 

これからなのだ、真姫が成長していくのは。

 

「だから無理はしないでくれ。今は花になった人に任せていいんだ」

 

「春人…」

 

真姫は不安げに俺を見つめる。そこには本当にそれで良いのかというような気持ちが感じ取れる。そして、それを認めたくないというのも。

だがそこに一つの声が飛んできた。

 

「春人くんの言う通りだよ。真姫」

 

「パパ…それにママまで……」

 

病室に入ってきたのは西木野先生と真奈さんだった。

 

「私たちだって同じ気持ちになることがあるから真姫が焦る気持ちはよく分かる。だけど無理する姿を見るのは春人くんは望んでいないよ」

 

「でも、悠長にしていたら春人は……!」

 

「だからそれは真姫の役目じゃない」

 

「それは私たちの役目よ、真姫」

 

俺の言葉を引き継ぎ、真姫の肩に手を置く真奈さん。

 

「あなたはこれから。だから、いま無力感を感じることはないのよ」

 

「わたし、私は……――っ!?」

 

諦めの悪い真姫を俺は引き寄せる。

 

「ありがとう、真姫。もう十分だ」

 

「……っ、 ……っ!!」

 

何か言おうとしているが、まったく声になっていない。

 

「俺に報いたい、俺のために何かをしたいと言ってくれるのなら、これからも前に進んでいってくれ」

 

 

――それが俺の願いだから

 

 

真姫はなにも悪くない、これでいいんだと、俺の気持ちが伝わるように、優しく言う。

 

「春人……くっ…うぅ……うあぁ……」

 

しばらくの間、真姫は泣き続けていた。まるで自分の不甲斐なさを責めるように、懺悔するように――

 

 

 






いかがでしたでしょうか?
ではまた次回に



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