"愛してる"の想いを 作:燕尾
ども
燕尾です
63話目です。
放課後。私は誰と話すことも無く一人荷物をまとめる。
ことりちゃんは学校に来なくなった。留学の準備のためだ。
ハルくんは病気の治療で入院して来ていない。
教室には私と海未ちゃんだけなのだが、海未ちゃんとは口も聞けていない――いや、聞けるわけが無かった。
――あなたは最低です
海未ちゃんから言われた言葉が頭の中で反芻する。
屋上でスクールアイドルをやめると言った私に言い放たれた言葉。
あんな海未ちゃんは初めて見たかもしれない。怒ることや小言のように注意することはあったけど、あのときの海未ちゃんは私を見損なったような、軽蔑するような目をしていた。だけど、仕方がない。その通りなのだから。
自分勝手な行動してラブライブへの道を台無しにして、
いや、最初から私は自分勝手だった。海未ちゃんやことりちゃん、ハルくんまで巻き込んでいたのだから。
「……帰ろう」
私は嫌な考えを振り切るように教室を出る。
「穂乃果~!」
靴を履き替えて校門まで歩いたところで、ヒデコちゃんに呼び止められた。
「久しぶりに一緒に帰ろう?」
「あ、うん。いいよ」
「あ、それと少し遊びに行かない? 放課後、空いてるんでしょ?」
「あっ!?」
「ちょっと、ヒデコ!」
「気にすることないじゃない。だって穂乃果は学校守るために頑張ったんだよ?」
止める二人だったが、ヒデコちゃんは止まることもなくあっけからんと言う。
「学校を守るためにスクールアイドルを始めて、目的を達成したからやめた。なにも気にすることない――ねっ?」
そう。最初は手段だった。学校を廃校からどうにかするための。だから存続が決まったのならやることもない――はずなのに、
「……そうだね」
私は一拍詰まってしまった。そして頷くもどこかでそれを否定したい自分がいる。
だけど、そんな考えはすぐに打ち消した。
「学校のみんな、感謝してるんだよ」
「うんうん!」
「μ's見てうちの学校知ったって人、結構いたんだよ!」
「…ありがとう」
そういう言葉をかけてくれただけでも少し気が軽くなったような気がする。私たちがしていたことは少なくとも間違いじゃないんだって。
「それじゃあ、行こっ!」
「…うんっ!」
「調子はどうなの?」
病室にやってきた真姫が腕を組みながら問いかけてくる。
「ん、普通だな。発作以外、体調が悪くなることはない」
「それは普通って言うのかしら?」
「俺にとっては普通だから大丈夫だ」
それにどうしようもないことだからそう言われても困る。
「俺のことより、そっちは?」
「……μ'sの活動を休止したって言うのは」
「ああ、海未から聞いたよ。穂乃果のことも」
「そう…」
「それで、真姫はどうするんだ?」
「…決めかねているわ。どうしたらいいのかわからない、って言ったほうがいいかしら」
「他のみんなはどうするとかは聞いているのか?」
「花陽や凛、にこちゃんはアイドル活動を続けるみたい。海未は弓道部に行って、絵里や希は生徒会」
スクールアイドルをやる前の生活に戻ったようだ。
「真姫はどうしたい?」
「私は…」
真姫は一瞬悩んだが、意を決したように言った。
「そうね…私は、できるなら――皆といたい」
「……」
「μ'sは九人全員揃ってのμ'sだから」
「……そうか」
「何でそんな意外そうな顔するのよ!?」
「いや、あの真姫が正直にそんなこと言うなんて思ってなかったから」
ついこの間までは素直にすらなれてなかったというのに。
「人は変わるものだな」
「怒るわよ?」
ジト目で睨みつけてくる真姫。だが、俺は臆することもなく、彼女に手を伸ばす。
「成長したな、真姫」
「あ、ちょ、ちょっと、撫でないで、よ!」
フー、フー、と猫のように真姫は俺を威嚇する。少しやりすぎたか。
「もう! 一体なんなのよ!?」
真姫は羞恥と戸惑いで顔が真っ赤になりながら声を上げる。
「いや、真姫がそう言ってくれたことが嬉しくてな」
「パパみたいなこと言わないでよ、もう……」
真姫は呆れたように息を吐く。
そんな彼女を余所に俺は小さく呟いた。
「皆と居たい、か……」
「…何よ、まだ何か言いたいの?」
「そうじゃない」
目を鋭くする真姫に俺は首を横に振る。
「ことりも穂乃果も、真姫のように正直な気持ちをお互い言っていれば、こんなことにはならなかっただろうな」
「……そうかもしれないわね」
「でも、まだやり直せる」
「春人……」
「少なくとも二人とも、このまま別れることに納得してないだろう」
「だけど、どうするの? もうことりは学校来ていないわ。あなただって、来週まで入院でしょう? その間にことりは行ってしまうわ」
「時間はまだある。それにやりようなんていくらでもある」
「春人、あなた……」
俺は真姫をまっすぐ見据える。
「真姫、協力してくれ――」
「それじゃあね~」
「うん、ばいばい。今日はありがとう」
日が落ち始めて空が夕暮れに染まり始めた頃、私は三人と別れ、自分の家へと足を進める。
駅前に差し掛かったところで、結構な人だかりができていた。
皆が見ているのは建物に埋め込まれている大きいスクリーン。
そこに映っているのは、A-RISEだった。彼女らの映像の下にwinnerと書かれていた。
「そっか、優勝したんだ……ラブライブ」
改めて彼女たちの凄さを実感する。
たくさんの人から応援されて、好かれて、そして彼女たちはそれに応えていて。
あのまま続けていけばきっと凄いアイドルになるんだろう。それを現実にできるほどの力を彼女たちは持っている。
私は再び歩き出す。
今度は誰も傷つけない、誰も悲しませないことをやりたい。
自分勝手にならずに済んで、でも楽しくて、たくさんの人を笑顔にするために頑張ることができて、
「――でもそんなもの、あるのかな……?」
そんなことを考えながら歩いていると、前のほうにあるものが見えた。
「神田明神……」
練習場所として使わせてもらっていた神社。ダンスの練習は屋上と半々だったけど、体力トレーニングの日はいつもここだった。
「……せっかくだし、お参りしようかな」
私は石段を上がっていく。鳥居が見えてきたところで見慣れた後姿が見えた。
「あ…」
向こうも気付いたみたいだけど、どこか気まずそうにしていた。
「凛ちゃん、花陽ちゃん」
「穂乃果ちゃん…」
練習着を着ている二人は息を切らしていた。たぶん石段を走っていたのだろう。
「練習、続けてるんだね」
「うん」
「――当たり前でしょ」
後ろから急に声を掛けてきたのはにこちゃんだった。にこちゃんも二人と一緒で練習着だった。
「スクールアイドル続けるんだから」
「えっ……?」
にこちゃんの言葉に私は戸惑う。μ'sの活動を休止したみたいだから、アイドル活動自体休止しているのだと思っていたけど、まさか続けているとは思っていなかった。
「悪い?」
「い、いや……」
機嫌悪そうに腕を組むにこちゃん。
「別にμ'sが休止したからってやっちゃいけない理由にはならないでしょ?」
「でも、なんで……」
「好きだから」
迷いなく、まっすぐな瞳をして言うにこちゃん。
「にこはアイドルが大好きなの」
にこちゃんは臆面もなく言う。
「みんなの前で歌って、ダンスして、みんなと一緒に盛り上がって、また明日から頑張ろうって気持ちにさせることができるアイドルが大好きなの!」
まっすぐなにこちゃんの気持ちに私は気圧される。
「穂乃果のようないい加減な"好き"とは違うの」
「違うっ、私だって――」
そう返したのは反射的だった。だが、
「どこが違うの?」
「っ」
「自分から辞めるって言ったのよ? やっても仕方ないって」
「……」
ただただ私が言ったことを返してきたにこちゃんに私はなにも言い返せない。
「ちょっと、にこちゃん…」
「ううん、いいの。凛ちゃん」
凛ちゃんがにこちゃんを咎めるけど、私はそれを止める。
「にこちゃんの言う通りだから」
自分から辞めると言って、μ'sを抜けた。スクールアイドルを辞めた。にこちゃんの言うことに間違いはない。
「練習、邪魔してごめんね」
私は神社を後にしようとする。
「穂乃果ちゃん!」
そんな私を花陽ちゃんが引きとめた。
「その、あのね…」
私が振り向くと、花陽ちゃんは言うかどうか迷った様子を見せるが、それでもというように笑顔を浮かべた。
「今度、私たちライブをやろうと思ってるの」
「三人でライブ……?」
「うん、だからね? もし良かったら――」
「穂乃果ちゃんが居たら絶対盛り上がるにゃ!」
「二人とも…どうして……」
「わからないの?」
戸惑う私に、にこちゃんが目を向けてくる。
「あんたが最初に始めて、二人を誘ったんでしょう? だったら、最初のライブくらい絶対来なさい。それがファーストライブに来てくれた二人への礼儀よ」
「にこちゃん……うん、わかったよ。見に行かせてもらうね」
私は三人に挨拶をして神社を後にするのだった。
「そういえばにこちゃん、どうして凛たちが穂乃果ちゃんたちのファーストライブに行ったこと知ってるの?」
「そ、それは…」
「もしかしてにこちゃんも、あの場所に居たの?」
「ち、違うわよ! あんたたちが話してたことあったから知ってただけ!」
「にこちゃんには話したことないような気がするにゃ」
「そっ、そんなことはどうでもいいの! ほら、早く練習の続きするわよ!!」
帰ってきた私はベッドに寝転がって天井を仰いでいた。
――好きだから
――穂乃果みたいな、適当な"好き"とは違うの
あのとき、にこちゃんの言葉を否定したのはほとんど反射だった。
私のスクールアイドルへの気持ちを全部否定されたのが嫌だった。
でも自分から辞めるって言ったのだからそう捉えられてもなにも文句は言えない。にこちゃんが正しかった。
「……」
「穂乃果~?」
ころん、と寝返りを打つと唐突に部屋の戸がノックされた。
「穂乃果、あなたにお客さんよ」
「お客さん…?」
「店の方で待ってるわ」
お母さんはそれだけを言って降りていく。私は首を傾げながらも下へと降りる。
「穂乃果」
本来居ないはずの人の姿に私は目を見開いた。
店のテーブル席にはハルくんがいたのだ。
「は、ハルくん…どうしてここに……入院してたんじゃ……」
「抜け出してきた」
「ぬ、抜けっ…!?」
それって結構マズイことじゃないだろうか?
しかし、ハルくんは小さく笑った。
「冗談だ。真姫には伝えてから、外に出てきた」
「病院の人たちには?」
「秘密にしてきた」
「それじゃあ一緒だよね!?」
「ちゃんと後で怒られるさ――それより、いま時間あるか?」
「今から…? え、えーっと……」
時間を見ると夜の七時前。外も大分暗くなってきている。
突然のことと、この時間帯ということにどうしていいか迷う。
「大丈夫よ」
だけど私が答えるより早く、お母さんが答えた。
「どうせなら今日はうちでご飯食べていく?」
「すみません。さすがに病院に戻らないといけないんで」
そういうハルくんにお母さんは少し残念そうにする。
「穂乃果、少し散歩しないか?」
「えっ、散歩…?」
「ああ。いわゆるちょっとしたお誘いだ」
突然のハルくんのお誘いに、私はキョトンとしてしまうのだった。
「……お待たせ」
「ああ。それじゃあ、行こうか」
穂乃果の準備が終わって彼女の家を出た俺たちは、歩き始める。
「……」
穂乃果は気まずそうに俯いたまま前を見ないで歩いていた。
それは今の穂乃果の状況を如実に表しているようだった。
そんな穂乃果に俺はなにも言わず、ただ先導するように彼女の一歩前を歩く。
「ハルくん」
無言の時間が辛かったのか、俺の名前を呼ぶ穂乃果。
「ん?」
「どうして私の家に来たの? 病院まで抜け出して……」
もっともな質問が飛んでくる。俺の行動はあまり褒められたものじゃないことは穂乃果も理解しているのだろう。
「言った通りだ。ちょっとしたお誘い。俺も病院生活が退屈で外に出たかったから、誰かお供が欲しかった」
「ハルくん」
「たまにはいいだろう。細かいことを気にしないのは穂乃果の得意分野だろう?」
真面目に咎める穂乃果だが、俺は意にも介さない。
「ハルくんって、たまに――ううん、割りとズバズバと言うよね」
不服そうに、頬を膨らませる穂乃果。
「遠慮しないことを教えてくれたのは穂乃果たちだ――まあ、とりあえず今は俺のワガママに付き合ってくれ」
「……うん」
手を伸ばすと、恐る恐るといったように穂乃果は俺の手を取って隣に並ぶ。
「それで聞いてなかったけど、どこに行くの?」
「ん、それはな――」
手を繋いでしばらく歩いた俺たちが向かったのは――
「ハルくん、ここ……神社?」
「ああ。神田明神だ」
俺たちがやってきたのは神田明神。石段を上がって鳥居の端をくぐる。
拝殿ではお賽銭を投げ二礼二拍手一礼。特に願うことはないのだが、少し居座ることに対しての挨拶をしておく。
それが終わった後、俺たちは拝殿の階段に腰を落ち着かせる。
穂乃果はまだ顔を下げて地面を見つめている。
「穂乃果。見てみろ」
「見るって何を…?」
「空を見てみろ」
「空……?」
そう言って穂乃果はようやく顔を空へと向ける。
「――」
その瞬間、穂乃果の息を呑む音が聞こえた。
空にあるのは満天の星。そして、白銀に光る月。
ここだけが別世界のような、切り離されたような空間になっていた。
神田明神は灯がなく、街の光も届かないため、よく見える。
周りに誰もいない、俺と穂乃果だけの自然のプラネタリウムだ。
「綺麗だろ?」
「……うん。凄く綺麗」
穂乃果は呆然としながら星空を眺めていた。
「天気がいい日に、たまに来てるんだ。普通の人はこの暗闇を嫌って来ることないからこうしていつもこの夜空を独り占めしてる」
誰もが知っているような、秘密のスポット。矛盾しているようだが、細かいことはあまり気にしない。
「どうしてハルくんは、ここに来るの?」
「やっぱり一人で居るときに、変な
「雑音?」
「簡単に言えば自分の身体のこととか、これからどうなっていくのだろうとか、変なことを考えるんだ」
――いつ終わりが来るか。そのときどうなるのか、とか。
ただ待つだけの時間にいつもまったく不安がないことはない。そういうときにこうして散歩に出てここに来る。
「ここに来てこうして眺めていると、そういう雑音だとか、変な考えがすうっと消えて、気が楽になるんだ」
「そんなところを、私に教えても良かったの……?」
「俺だけの場所じゃないからな。それに、穂乃果に見せたかったから」
「そう、なんだ……」
穂乃果を連れてきたのはそういうことだ。ここまで言えば彼女もそれを薄々気付いているだろう。
これ以上引っ張ることもないので、俺は本題に入る。
「穂乃果」
「なに……?」
俺は穂乃果の名前を言うが、顔は空に向けたままにしている。
「海未から話は聞いたよ」
「……っ」
「そう身構えなくてもいい。辞めたことを責めるわけじゃないから」
「じゃあ、何を言いにきたの」
穂乃果は不信そうに俺を見る。だが、俺は穂乃果に顔を向けない。独り言を言うように俺は続けた。
「海未、後悔していた」
「えっ……?」
「本当は穂乃果にあんなことをする資格なんてなかった。そう言っていた」
「ちが…海未ちゃんは……」
「本当に最低なのは私だって」
「違う! 海未ちゃんは間違ってない! 海未ちゃんが悪いことなんて一つもない!!」
穂乃果は声を荒げて否定した。
「全部私が悪いの! 私が勝手なことばかりして、全部壊して、人の気持ちも考えてなかった! 私がちゃんとことりちゃんと向き合っていれば、こんなことにはならなかった!!」
「だからμ'sも、スクールアイドルも辞めたのか?」
「そうだよ…」
「自分が――なんて、そればかり言って何になるんだ」
「でも!」
「一人で抱え込んでもなにもならないのはわかるだろう。それに今の状況も知っているはずだ」
「じゃあ――それなら!!」
俺を押し倒して胸元を掴んでくる。
「それなら私は、どうしたらよかったの!? どうしたらいいの!?」
穂乃果の瞳から小さな雫が流れ落ちる。
「知ったときには、わかったときにはダメだった! 今さら何をしたってどうしようもない! 全部が遅かったんだよ!!」
溜め込んでいたものを全て流しだすように。
「教えてよ…もうわからないよ……」
心の底にある気持ちをぶつける穂乃果はがっくりとうな垂れた。
「私は…どうしたらいいの……どうしたら許してもらえるの……?」
今の穂乃果は自責の念に駆られている。親友のことりを蔑ろにした、皆で目指していたラブライブを諦めさせてしまったと。
本当は自分でもどうにかしようと考えたはずだ。でも覆せるだけの力を穂乃果は持っていなかった。
くしゃくしゃに顔を歪ませ、穂乃果は俺にすがるようにギュッと服を握る。
「……穂乃果」
そんな穂乃果の手を優しく剥がして、俺は手を取った。
「穂乃果はどうしたいんだ?」
自分で考えさせるように俺は言った。
「自分の気持ちに嘘をつかなくていい。我慢しなくていい。穂乃果の願いを、正直な気持ちを考えるんだ」
「私、は……」
穂乃果は下唇を噛みながら、なにかを我慢するような表情をしていた。だが――
「……私…嫌だよ……」
暫くしてから、そんな呻きのような小さい言葉が聞こえた。
「なにが嫌なんだ?」
「ことりちゃんと、サヨナラしたくない……μ'sも…まだ続けたい。みんなと一緒にやっていきたいよ……!」
「…そうか」
「やだ……嫌だよぉ……!」
そこからはもう穂乃果も我慢しなかった。
嫌だ、嫌だと子供のように泣きじゃくる。
「穂乃果」
俺は宥めるように穂乃果の頭を撫でる。
「ハルくん……」
「大丈夫だ」
濡れた瞳で見つめてくる穂乃果に俺はそう言った。
「遅いことなんてない。自分に素直になってどうしたいのか、ことりに、皆に伝えるんだ」
「うん…」
「怖がる必要はない。それさえすれば皆も受け入れてくれるはずだ」
穂乃果を受け入れられないほど皆の心は狭くはない。それは今まで過ごしてきた穂乃果が一番わかっているはずだ。
「穂乃果ならできるって、俺は信じている」
「うん…うん……!」
弱々しく、だけれどしっかりと決意を胸にして穂乃果は頷くのだった。
「ハルくん、お願いがあるの……」
手を繋ぎながらしばらく二人で夜空を見ていると、唐突に穂乃果が言った。
「なんだ?」
「ハルくんも一緒に来て欲しい」
「……」
俺は頭を掻く。
俺が一緒に行ってもなんにもならないし、あまり意味はないはずなのだが、穂乃果はそんなことない、と否定した。
「お願い…私のためだけじゃなくて、ことりちゃんのためにも、ハルくんには来て欲しい」
そのお願いは聞いてあげたいところなのだが、俺は首を横に振った。
「悪い。それはできない」
「えっ…どうして……?」
「たぶんもう病院から抜け出せないから」
「あっ…」
俺がここに来れたのは真姫の手助けと病院の営業が終わり手薄になっていたからだ。昼間に抜け出すことは無理だろう。
「そうだった! ハルくん! 病院!!」
穂乃果は思い出したように立ち上がった。
「病院に戻らなきゃ! ハルくん!!」
俺の腕を引っ張る。
「その前に穂乃果を――」
「私は後! ハルくんの病院が先だよ!!」
ずいっ、と凄む穂乃果に俺は仰け反りながら頷くことしかできなかった。
そして病院に戻ると、穂乃果は信幸さんに迎えに来てもらって帰り、俺は真姫と一緒に真奈さんに説教されるのだった。
いかがでしたでしょうか?
ではまた次回に