"愛してる"の想いを   作:燕尾

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ども、燕尾です。

いやー、番外編を描いていたら一年がたってましたねw
よほどの亀更新に自分でもびっくりです。

今回から本編に戻ります。







65.近づいていく真実

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこは私たちが初めて出会った場所だった。

 

 

「穂乃果」

 

 

そこで桜の木を眺めていたハルくんは私の名前を呼ぶ。

しかし、その様子はどこかおかしい。

 

「ハルくん?」

 

「ここで穂乃果と海未とことりと出会って、μ'sのみんなと出会って本当に良かった」

 

「どうしたの、急に?」

 

「みんなのおかけで、俺の人生は色づいた。灰色にしか見えなかった世界が鮮やかになった」

 

私の問いかけには答えずに、ハルくんは言葉を紡ぐ。

 

――まるで最後の別れのような言葉を。

 

そして、ハルくんは困ったように笑いながら言った。

 

「悪いな。もうさよならだ、穂乃果」

 

「――っ、なんでっ、どうして!?」

 

唐突のことに私は声を上げる。だけど、ハルくんは答えてくれない。

 

「俺の時間は終わった。だからいかないといけないんだ」

 

「意味分からないよ!? 時間ならたくさんあるよ! 私たちにはまだいっぱい――」

 

「ごめん」

 

そう言ってハルくんは申し訳なさを笑みで誤魔化して、私と反対の方へと歩き始める。

 

「待って、待ってよ! ハルくん!!」

 

だけどどれだけ手を伸ばしてもハルくんには届かない。

それどころかどんどん遠ざかって、桜の舞い散る道の奥へと消えていく。

 

「お願い、待ってよぉ! 私、もっと、ハルくんと――」

 

 

そこで私の意識は暗転した。

 

 

 

目を開けるとそこはいつもの部屋。

あの場所で彼と話しに行った跡なんてなにもない。

 

「……ハルくん」

 

電子音の音が響く中、私は彼の名前を呟く。

現実に戻されたはずなのに私の頬からは暖かいものが伝っていた。

 

まるでそれは現実なのだと言っているかのように。

 

「どうして、こんな夢…」

 

何度も私を呼んでいた雪穂が怒って入ってくるまで、私は動くことが出来なかった。

 

 

 

 

 

「……穂乃果?」

 

「……」

 

問いかけるも無言で腕を抱き締めてくる穂乃果に、俺は少し戸惑っていた。

隣を歩いている海未やことりに目を向けるも、二人とも首を横に降った。

どうやら二人もこうなっている理由が分からないようだ。

 

俺は再び穂乃果に目を向ける。

 

「……」

 

穂乃果は絶対に離さないというように、俺の腕に力を込めている。そしてその表情は、かなりの不安が表れていた。

そんな顔をしているからか、最初はお小言を言おうとしていた海未も、不満そうにしていたことりも、様子を見守ってくれる方向で纏まってくれた。

 

だが、

 

「穂乃果、もう授業始まるぞ?」

 

「もうちょっとだけ、お願い」

 

授業始まるときも

 

「穂乃果、流石に食べづらいんだが」

 

「もうちょっと…」

 

昼御飯を食べるときも

 

「待て穂乃果、流石にトイレは駄目だ」

 

「もうちょっとだけ――」

 

「こればかりはもうちょっともなにもない。海未、ことり――頼む」

 

「はい――ほら穂乃果、行きますよ」

 

「穂乃果ちゃん、行こうねー?」

 

「ああっ! 待ってよー!」

 

トイレに行くときも穂乃果はピッタリとくっついて来ようとしてきた。

 

 

そして放課後――

 

 

「あんたたち、いい加減にしなさいよね!!」

 

ついに、というか当たり前なのだが、にこからの叱責が飛んだ。

 

「春人、あんた穂乃果を甘やかしすぎよ!」

 

正直俺に言われても困る。朝からずっと穂乃果がこの調子で俺も戸惑ってるのだから。

振りほどこうとしたら、今にも泣きそうな悲しい顔をされ、どこにも行かないでと言わんばかりに力を込めてくるのだ。

 

「これじゃあ、練習にならないわよ……」

 

頭が痛いというように頭を押さえるにこ。そんなにこを他所に穂乃果はぎゅっと俺に身を寄せる。

それを目の前にしたにこは額に青筋を立てた。

 

「あーもうっ、春人! あんた今日はもう帰りなさい!!」

 

「え…だが……」

 

「春人くん。にこの言うとおりにした方がいいわ。穂乃果のことは私たちが話を聞いておくから」

 

「だけど、本当にいいのか?」

 

「これ以上はにこっちが般若になるで?」

 

食い下がる俺に、希がにこの方を指差す。

にこからは気迫というか、見えるはずの無い憤怒のオーラを纏っているように見えた。

 

「わかった。それじゃあ、後は頼む。穂乃果、また明日な」

 

「は、ハルく――」

 

「はいはい、穂乃果はこっちよ。何があったか、話を聞かせてもらうわよ」

 

「そうですね。練習にまで支障が出るのは流石に目に余ります。事情をしっかり話して貰いますよ」

 

ずるずると絵里と海未に引きずられる穂乃果に祈りを捧げ、俺は屋上を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで穂乃果、一体なにがあったの?」

 

春人がいなくなってから私たちは穂乃果を囲んで話を聞く。

 

「それは、その……」

 

「朝からずっと春人に着きっぱなしで、頑なに離れようとしなかったのには理由があるんでしょう?」

 

「それに穂乃果ちゃん、ずっと春人くんを見ては不安そうな顔してたよ?」

 

「……」

 

「どんな理由でも私たちは怒りませんから、話してくれませんか?」

 

私は優しく諭すように、穂乃果と視線を合わせる。

 

「夢…」

 

すると穂乃果は消え入るような声でそう呟いた。

 

「夢?」

 

絵里が聞き返すと穂乃果は小さく頷いた。

 

「夢でハルくんが居なくなる夢を見ちゃったの」

 

なんだ夢か、とそう思えたのなら良かった。

 

しかし、穂乃果が語ったのはやけに現実味を帯びていて、まるで本当にそうなってしまうのではないかと感じてしまう内容だった。

 

「でも、それは夢なんでしょ?」

 

「うん…」

 

一通りの話を聞いて、答えを出したにこは大きく息を吐く。

 

「だったら気にしても仕方ないでしょうが。夢の内容が現実で起きたことあんたあるの?」

 

「確かに、凛も特大ラーメンのプールで泳ぐ夢を見たりしたけど、起きたことはないかなー?」

 

「私もすごくおっきいおにぎりが目の前に降って埋もれちゃった夢を見たりしたけど、実際にはないかな」

 

「それは流石に凛と花陽が特殊なだけじゃないかしら」

 

「でも、夢ってそういうものじゃないかなぁ?」

 

「確かに、突拍子の無いものが夢だよね」

 

「ことりや希の言う通りよ。春人がそんな素振りを見せたのならまだしも、夢なんて荒唐無稽のものなんだから不安になることなんて無いのよ」

 

にこの言っていることは正しい。夢で見たことが現実で起きることはまったく無い。だから気にしても仕方がないし、その内容に不安になることなんてない。

だけど、何故か私はそう思うことができなかった。

 

そしてほとんどがにこに納得しているなか、一人だけ穂乃果の夢の内容に驚愕している人がいた。

 

「真姫」

 

「っ!」

 

真姫は肩をビクリと上げて私に向く。その顔色はどことなく悪かった。

私は真姫のその反応を見て、確証を得た。

 

私たちの知らない春人のことを真姫は知っている。それも――決して良いとは言えないことを。

 

その確証は、私に考えたくもない結論へと導いてく。

 

「真姫、春人は――」

 

「……残念だけど、私はなにも知らないし、知ってたとしても春人の許可無しには話せない。病院の信用問題になるから」

 

私の言葉を遮ってそういうものの真姫はどこか平静を失い掛け ている様な表情をしていた。

それがもう答えに等しいと、私は思った。

 

「そうですか……なら真姫、ひとつだけ」

 

「なに?」

 

「春人のこと、一人で抱え込まないでくださいね」

 

「……っ!!」

 

その瞬間、真姫の顔が歪んだ。

それを見た私は、賭け事には向いていない、と以前春人に言われたことがこういうことなのだと、半ば現実逃避のように考えるのだった。

 

 

 




いかがでしたでしょうか?
今回は短めでした。

ではまた次回に
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