"愛してる"の想いを   作:燕尾

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ども、燕尾です。
こちらの話はだいぶん空いてしまいましたね。






67.再び、ラブライブ

 

 

 

 

 

 

 

「音ノ木坂学院は入学希望者が予想を上回る結果となったため、来年度も生徒を募集することになりました」

 

凛として佇み、堂々たる姿で話す学院長に全校生徒が耳を傾ける。

 

「三年生は残りの学園生活を悔いのないように過ごし、実りのある毎日を送っていってもらえたらと思います。そして一年生、二年生はこれから入学してくる後輩たちのお手本となるよう気持ちを新たに前進していってください」

 

講堂の壇上で話す理事長に視線が集中しているなか――その裏では穂乃果が緊張した面持ちで構えていた。

 

「大丈夫か? 穂乃果」

 

「ウ、ウン。ダイジョブダョ。ダイジョウブ……」

 

「片言になってますよ…」

 

「大丈夫じゃなさそうだね…」

 

「生徒会長になってから壇上に立つのは初めてだから仕方ないだろう」

 

頑張れ、と緊張を解すように穂乃果の頭を撫でる。

 

「んー…♪」

 

「春人、穂乃果を甘やかさないでください」

 

「春人くん、駄目だよ?」

 

すると、気持ちよさそうにしている穂乃果の両隣にいる海未とことりから窘められた。

 

「ん、そうだった」

 

「あっ……」

 

俺は穂乃果の頭から手を放す。

寂しそうな顔をしている穂乃果に少しの罪悪感を感じるが、ぐっと我慢する。

 

以前、穂乃果以外のμ'sの皆から女の子との距離感の取り方講座を受けてから、それ以来こうしてみんなから指摘をもらうようになった。

 

「穂乃果。穂乃果の緊張は当たり前のものだ。だから最初からうまくやろうなんて思わなくていい。たどたどしくたって、躓いたっていいから、とにかく今日は最後まで伝えることを意識するんだ」

 

「ハルくん――うん、ありがとう」

 

 

『それでは次は、新生徒会長の挨拶です。よろしくお願いします』

 

 

穂乃果の緊張が少し和らいだようになったところで、司会からの指名が入る。

 

「いってらっしゃい。生徒会長」

 

「穂乃果、よろしくお願いします」

 

「頑張って! 穂乃果ちゃん!!」

 

 

「うん! 行ってきます!!」

 

さっきまでの緊張の表情とは打って変わって、元気よく穂乃果は壇上へと向かっていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――だぁ! 疲れたぁ~~!」

 

そして放課後、穂乃果は生徒会の机に突っ伏した。

 

「お疲れ様、穂乃果ちゃん」

 

「お疲れ、穂乃果」

 

「やっぱり緊張しぱなっしだったよ~。生徒会長挨拶って、ライブとは全然違うね…」

「でも穂乃果ちゃんらしくてよかったと思うよ?」

 

当然のことを呟く穂乃果。だが、最初ということを考えれば乗り越えられただけでも十分だろう。しかし、

 

「どこがよかったんですか!!」

 

ことりのフォローを断じたのはやはりというか海未だった。

 

「せっかく前に四人で挨拶文まで考えたのに!!」

 

「……まあ、内容が飛んでしまったのだから仕方がないだろう」

 

「だよね!? 仕方ないよね!?」

 

「でも、それで開き直るのはダメだぞ?」

 

「うっ…すみません。はぁ……せっかく練習したのに……」

 

「とにかくっ!!」

 

海未は分厚い書類のフォルダーを四冊ほど穂乃果の目の前にドカッと置く。

 

「今日はこれを全部処理して帰ってくださいね」

 

「ええ!? こんなにっ!?」

 

「それとこれもです」

 

文句を垂れる穂乃果にさらに追い打ちをかける海未は穂乃果に紙を手渡す。

 

「なになに……食堂のカレーがまずい、アルパカが私に懐かない、文化祭に有名人を――ってこれなに?」

 

「生徒からの要望です」

 

なんというか、どうしようもない要望まで混じっているようだ。アルパカが懐かないって何なのだろうか。

 

「もうっ! 少しくらい手伝ってくれてもいいんじゃない!? 海未ちゃん副会長なんだし!!」

 

「もちろん、私はもう目を通しています!」

 

「じゃあ、やってよぉ!!」

 

じたばたと、まるで駄々をこねる子供のよう。だが、穂乃果はわかっていない。自分の置かれている状況が。

 

「仕事はそれだけじゃないんですよ。あっちには校内に溜まりに溜まった置き傘の処理、こっちはほったらかされた各クラブの活動記録のまとめ、向こうのロッカーの中には三年生から丸ごと引き継がれたファイルの処理があるんです!」

 

「うっ……」

 

「生徒会長である以上、誰よりもこの学校のことに詳しくないといけません!」

 

「でも、基本的に三人いるんだし、手分けしても――」

 

「ことりは穂乃果に甘すぎます!」

 

いつもの三人のやり取りに俺は苦笑いする。

 

「海未。海未の言うことももっともだが、ことり言うことも一理あるだろ」

 

「春人、あなたまで…!」

 

俺はファイルを取り、中身を少し見る。

 

「穂乃果に甘くしろとは言わない。だけど過程から結果まで、全部知っておく必要がないものだってあるだろう? そういうものを分担するのがいいんじゃないのか?」

 

「それは…そうですね……」

 

「まあ、それでも穂乃果の配分はかなり多くなりそうだけど。基本的には目を通すつもりでいてもらうのが一番だな」

 

「うう…生徒会長って大変なんだねぇ…」

 

 

「――わかってくれた?」

 

 

穂乃果の言葉に合わせるように入ってきたのは、元生徒会長の絵里だった。

 

「頑張ってるね、君たち」

 

「絵里ちゃん! 希ちゃんも!!」

 

「生徒会のほうは大丈夫? 挨拶、かなりつたない感じだったわよ」

 

「えへへ、ごめんなさい――それで、今日は?」

 

「特に用事はないけど、どうしてるかなって。自分が推薦した手前もあるし、心配で」

 

「明日からまた、ダンスレッスンもみっちりあるしね。それに――」

 

すると希はカードを取り出して怪しげに笑った。

 

「カードによると穂乃果ちゃん、生徒会長としてかなり苦労するみたいだしね」

 

「ええっ! そんなー!!」

 

苦労しない生徒会長なんていないとは思うが、希の言いたいことが分かった俺は黙っておく。

 

「だから、三人もフォローしたってね?」

 

「気にかけてくれてありがとう」

 

「いえいえ、困ったことがあればなんでも言って。いつでも手伝うから」

 

ついこの間まで生徒会の業務をしていた二人がそう言ってくれることにかなり心に余裕ができる。

おんぶに抱っこはしてはいけないが、アドバイスや手を貸してもらえるのであれば最適だといえるだろう。

 

「で――春人くんはなにしてるん?」

 

「ん? とりあえず分担する仕事の確認をしてる」

 

「パラパラ読んでいるけれど、それで内容把握できてるのかしら?」

 

「ああ、問題ない。内容と誰が適任かは頭に入っているから、あとで付箋張っておく」

 

そう言って、俺は次のファイルを開く。

そんな俺を皆は驚いたように見つめていた。

 

「春人くん、すごい……」

 

「そんな特技があったなんて、知りませんでした」

 

「……私よりハルくんが生徒会長になったほうがよかったんじゃないかなぁ?」

 

「冗談でもそういうことは言いうなよ、穂乃果」

 

呆れてしまう穂乃果の言い分に、俺はファイルをめくりながらため息を吐くのだった。

 

 

 

 

 

それから、絵里と希は勉強すると言って図書室へと行き、穂乃果は教室へ行った。どうやら生徒会室より教室の方が捗ると思うとのことらしい。

海未とことりも穂乃果のフォローのため、彼女について行った。

俺はこの分厚いファイルを抱えて外に出るわけにはいかなかったので生徒会室に残った。

 

「お疲れー」

 

そこへやってきたのはヒデコだった。

 

「ん、お疲れ。どうしたんだ? もう生徒会でやることはないと思うが?」

 

「いやー、静かなところで雑誌を読みたくて。ほら、教室は穂乃果たちが生徒会の仕事してるから、知らない振りしてそこで雑誌を読むのもね」

 

「ヒデコたちの今日やることは終わったんだから気にすることはないだろう。そこは穂乃果たちも気にしないと思うが」

 

「まあそれでも、ね――っと、ごめん。ここにいても邪魔になるだろうし別なところに行くね」

 

「別に気を遣わなくても大丈夫だ。それに、多少生徒会室を自由に使うのは役員の特権だろ」

 

「そう? ならお言葉に甘えて失礼しまーす」

 

そう言ってヒデコは座り雑誌を読み始めた。

そういえば、何気にヒデコとこうして二人きりになることはなかった。

チラリとヒデコを見ると彼女は黙々と雑誌を読んでいる。

話すこともないので、俺も引き続き仕事の振り分けを行う。

 

「……」

 

「――ふう、終わり。あと一つか」

 

「……」

 

三つあったファイルの二つ目の振り分けが終わり、どさっと置いて一息吐いたところで、ヒデコが此方を見ていることに気付いた。

 

「ん? どうした?」

 

「いやー、凄い手際だなぁって思って」

 

「別に慣れれば誰でも出来る」

 

「慣れたとしてもそこまで出来はしないと思うな」

 

実際に自分は出来てしまっているからなんとも言えない。

 

「ねね、最近はどう?」

 

「抽象的すぎるな……今は生徒会の話でゴタゴタしてるが明日からはまたライブに向けて練習を再開するつもりだ」

 

自分のなかで皆の調子の事を聞かれたのだと思って答えたのだが、ヒデコは違う違う、と首を振った。

 

「そうじゃなくて、春人くんと皆の関係だよ」

 

「……?」

 

何を聞いてきてるのか理解できない俺は疑問符を頭に浮かべた。

 

「ほら、μ'sの皆に囲まれながら数ヶ月過ごしてきて、こう――男女の仲とか、そういう話があるでしょ?」

 

「ない」

 

「……えっ?」

 

即答する俺にヒデコはキョトンとする。

 

「…えっ? ないの? ほんとに? これっぽちも……?」

 

「少なくともヒデコが考えているようなことはない。みんな俺に対して普通に接してくれてるから」

 

「えぇ~…そういう……」

 

するとヒデコは凄い困惑した表情を見せて、俺に背を向ける。

 

「でもちょっと待って…穂乃果はもちろん、ことりちゃんとか他の人も、少なくとも春人くんの言う普通の接し方以上の感情で接してるんだよねぇ――」

 

ボソボソと喋るヒデコに今度は俺が困惑する。

なにやら自分のなかで整理しているみたいだが、他人(ひと)の角度から見たら恐いことこの上ない。

 

「じゃ、じゃあさ、春人くんの中で特に気になってる女の子はいないの?」

 

「それは、どういう?」

 

「こう、1人で居るときでもなんとなーく頭の中に浮かんじゃう子というか、この子のために何かしてあげたいとか思う、そういう人」

 

「……」

 

そう言われて、思い浮かんだ人がいた。

 

――って、なに考えているんだ。俺は。

 

その考えを振り払うように顔を横に振った。

 

「おっ、その顔は居るって顔だね」

 

だが、ヒデコには伝わっていたようで興味津々の様子を見せてくる。

 

これは、面倒なことになる前に退散するべきだ。

 

この手の話はこちらから強引に終わらせなければいつまでも終わらないのは何度も経験済みだ。

俺は話を打ち切ろうと最後の一つのファイルを手にしようとした瞬間、生徒会室の扉が勢い良く開かれた。

 

『はぁ…はぁ……』

 

「あ、春人くん、お疲れにゃ~」

 

「……お疲れ。で、にこと花陽と真姫はなんで息を切らしているんだ?」

 

「ほ、穂乃果はっ……?」

 

にこは息を切らしながら問いかけてきた。どうやら穂乃果に用事があるらしい。

 

「穂乃果なら教室で生徒会の仕事するって言って行きましたよ? ね? 春人くん?」

 

「ああ。そうなんだが、穂乃果に用なら――」

 

「教室ねっ、分かったわ! 行くわよあんたたち!」

 

教室にいると言う情報を得た四人はまた慌ただしく教室へと向かっていった。

 

「……穂乃果に用なら携帯とかでどこにいるか聞けば良いだろうに」

 

というか、廊下を走るな。

俺は嘆息しながら自分の携帯を取り、連絡を取る。

 

『――もしもし、ハルくん? どうしたの?』

 

もちろん相手は穂乃果だ。

 

「穂乃果、今何処に居る?」

 

『中庭だよー。ちょっとお腹空いちゃって』

 

「ちょっと話すことがあるから今からそっち向かう。大丈夫か?」

 

『うん、大丈夫だよ。待ってるね――』

 

電話が切れたのを確認した俺は荷物をまとめて、席を立つ。

 

「という訳で、中庭に行ってくる。悪いが鍵は頼む」

 

「はいはーい。またね、春人くん」

 

ヒデコと別れの挨拶を交わし、俺は生徒会室を出る。

何だかんだでヒデコからの質問責めを回避できたことに安堵しながら。

 

 

 

「……なるほどねぇ。あれは時間の問題だわ」

 

 

 

一人生徒会室に残ったヒデコは生徒会室の外を見つめながらそんなことを呟いたが、当然俺には聞こえなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、今日もパンが美味いっ!」

 

穂乃果の元にやってきたさっきの四人。そのうち凛を除いた三人は息も絶え絶えだっだ。

 

「ぜぇ…ぜぇ…」

 

「はぁ…はぁ……少しは、じっとしてなさいよね……」

 

「もう、無理だよぉ……」

 

「穂乃果ちゃん探したんだよー?」

 

「?」

 

探されていたことなど知る由もない穂乃果は当然首をかしげていた。

 

「というか、どうして春人くんが私たちより先に居るのぉ……?」

 

「携帯で連絡して場所を聞いたからに決まってるだろう」

 

「……私たち、走り損じゃない」

 

「なんで…生徒会室で、言って…くれなかったのよっ……!」

 

「ならもっと落ち着いて行動してくれ。俺の話を聞く前に出ていったのはにこたちだろ」

 

俺の返しに悔しそうに唸るにこ。そんなにこたちに俺はため息を一つ吐いた。

 

「取り敢えず部室に行こう。三人は穂乃果がパンを食べてる間に息を整えようか」

 

穂乃果がパンを食べ、三人が息を整えたあと俺たちは他の皆も呼んで部室へと向かう。

 

そして、そこで四人から聞かされた話に驚愕した。

 

 

『もう一度、ラブライブっ!?』

 

 

「そう! A-RISEの優勝と大会の成功をもって終わった第一回ラブライブ、それがなんとなんと! 第二回大会が開催されることが、早くも決定したのです!!」

 

花陽はパソコンのモニターを指さした。

そこに、穂乃果以外の皆が集まる。

 

「今回は前回の大会規模を上回り、会場の広さも数倍、ネット配信のほかライブビューイングも計画されています!!」

 

「すごいわね」

 

「すごいってもんじゃないです――」

 

皆は花陽の説明とモニターに夢中になって穂乃果のことには気づいていないようだ。

 

「……穂乃果は見に行かなくていいのか?」

 

「うん」

 

穂乃果の様子に俺は少し疑問に思うも、穂乃果には自分なりの思いがあるのだろう。追及するつもりはなかった。

 

「お茶、飲むか?」

 

「うん、ありがとう」

 

俺は自分の分と穂乃果の分のお茶を淹れて、片方を穂乃果に差し出す。

その間も、皆は大会についての話をしていた。

 

本選は前回のようなランキング上位グループの出場ではなく、各地区予選の勝ち上がり方式を取ること。これにより、無名でもパフォーマンス次第では本選出場が可能なこと。

そして、俺たちはA-RISEに勝たなければいけないことなど。

 

「――って、穂乃果?」

 

打倒A-RISEと意気込みをしたところでようやく気付いた皆は、穂乃果に視線を向ける。

だが、そんな視線もお構いなしに穂乃果はお茶を啜り、一息吐いた。

その様子に皆は戸惑いながらも、穂乃果の言葉を待つ。

 

「出なくても良いんじゃないかな?」

 

『えっ……?』

 

「……ふむ」

 

穂乃果の言葉に、全員が固まった。

 

「ラブライブ、出なくても良いと思う」

 

お茶に口を付けて同じことを言った穂乃果に、皆は驚きの声をあげるのだった。

 

 

 

 






いかがでしたでしょうか?

ではまた次回に
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