"愛してる"の想いを   作:燕尾

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ども、燕尾です

番外編残りは絵里と穂乃果、さあ、どっちだ!






月と星

 

 

 

 

 

――ピンポーン

 

 

 

インターフォンを押すと、はーい、という声が中から聞こえる。

 

「春人さん、おはようございます!!」

 

「おはよう、亜里沙ちゃん」

 

元気良く迎えてくれたのは今日呼んだ人の妹だった。

 

「絵里は、どうしてる?」

 

「ごめんなさい。お姉ちゃん今日ちょっと寝坊したみたいでまだ準備してます――あ、外で待たせるのも悪いので、入っちゃってください!」

 

「いや、ここで――って、靴は流石に脱がないと駄目だろ……!?」

 

ここで待たせて貰う、そう言おうとしたのだが亜里沙ちゃんに引っ張られて家の中に入ってしまう。

 

「春人さん、お姉ちゃんの準備が終わるまでゆっくりしてください! あ、いま飲み物用意しますね!」

 

「あ、ああ…ありがとう」

 

居間に通され、椅子に座らされた俺は少し戸惑いながらも亜里沙ちゃんに返す。

 

「~♪」

 

μ'sの歌を鼻で歌いながらご機嫌な様子で飲み物を準備している亜里沙ちゃん。

 

「どうぞ、春人さん!」

 

「ありがとう亜里沙ちゃん。いただきます」

 

亜里沙ちゃんが用意してくれた紅茶に口をつける。

すると亜里沙ちゃんはなにかを期待しているような目で俺を見つめていた。

 

「うん、美味しい」

 

その一言に亜里沙ちゃんの表情はぱぁ、とさらに明るくなった。

 

「紅茶は普段から亜里沙ちゃんが淹れてるのか?」

 

「用意できる方が用意してますね。わたしはまだ、お姉ちゃんの淹れたのには勝てませんけど」

 

亜里沙ちゃんの淹れたものでも十分美味しいと思うが、彼女は首を横に振った。

 

「いえ、お姉ちゃんが居れた紅茶はもっと美味しいんです。春人さんも飲めばわかりますよ」

 

「それじゃあ、今度絵里に淹れてもらおうとするよ」

 

「はいっ、その時はぜひまたうちに来てください!」

 

「ああ。二人がよければ」

 

「私はいつでも大丈夫ですよ。お姉ちゃんも同じだと思います!」

 

 

 

「――同じなのはそうだけれど、せめて私がいる時に話してほしいわね、亜里沙」

 

 

 

「絵里」

 

亜里沙ちゃんの頭にポンと手を置いて注意したのは、準備を終えた絵里だった。

 

「ごめんなさい。準備に手間取ってしまって」

 

「いや、気にしないでいいんだが――珍しいな、絵里が寝坊をするのは」

 

「そ、それは…えっと……」

 

あまり切り込んでほしくなかったのか、絵里が言い淀む。

 

「お姉ちゃんってば、今日春人さんとお出かけするのが楽しみで昨日の夜遅くまで服選びをしてたから――」

 

「あああああ亜里沙っ!?」

 

「むぐっ!?」

 

躊躇のかけらもなく暴露する亜里沙ちゃんの口をふさぐ絵里だが、時すでに遅く、大方の話は聞こえてしまった。

 

「……まぁ、寝不足でいるよりはいいだろう」

 

大体寝坊と言っても予定より30分ぐらい遅れている程度、思い切り時間が過ぎたというわけではない。

 

「だから亜里沙ちゃんを放そうか、絵里。亜里沙ちゃん苦しそうにしてるぞ」

 

「――ぷはっ! 苦しかった!! もう、お姉ちゃん!!」

 

「亜里沙がいけないんでしょう!?」

 

「私はただお姉ちゃんのかわいいところを春人さんに知って貰おうとひららけおねへひゃんひはいひはい(お姉ちゃん痛い痛い)――!!」

 

「おしゃべりなお口は少し懲らしめないといけないみたいね……!」

目の前で始まった姉妹喧嘩? を俺は苦笑いして見ながら紅茶を頂くのだった。

 

 

 

 

 

「もう…亜里沙ってば……」

 

「まあ落ち着け」

 

隣を歩いている絵里はぷりぷりと怒っていた。

俺は苦笑いしながら彼女を宥める。

 

「亜里沙ちゃんも悪気があった訳じゃないだろう?」

 

「それは、そうだけど…」

 

納得できないような、どこか不満げな様子を見せる絵里。

ここまで尾を引く絵里も珍しい。

 

「春人くん、随分と亜里沙の肩を持つのね」

 

納得しないその原因はどうやら俺にあったようだ。

 

「肩を持ってるつもりはないんだが……」

 

「なんだか春人くんって、穂乃果は置いておいて年下の女の子には甘い気がするのよね…花陽の絵の通り、やっぱりロリコンなのかしら」

 

「それは誤解だ……!!」

 

なんという言いがかり。別に俺は誰かを特別扱いしてなどいないし、断じてロリコンなどではない。

だが、絵里は疑惑の目を向けるのをやめない。

 

「……どうしたらその疑惑は晴れるんだ」

 

「――そうね。今日次第で認識が変わるかもしれないわね」

 

そう言いながら絵里の瞳が怪しく光る。

 

「……頼むから、無茶なことは言わないでくれよ」

 

そんな絵里に対して、俺はまだなにもしていないのに疲れたように言ってしまうのだった。

 

 

 

 

 

「ここは…アクセサリーショップ?」

 

「ええ。その通り」

 

絵里についてやって来たのは、女の子が好んで身に付けそうなものが色々と置いてあるアクセサリーショップだった。

絵里は完成されたアクセサリーを見ながらも物色することはなく、いつも通りの道を歩くように進んでいく。

そして絵里が立ち止まったコーナーは装飾品の材料売場であった。

 

「私ね、アクセサリーやキルトを作るのが趣味なの」

 

「完成品じゃなくてか?」

 

「完成品もプロが作るだけあってお洒落で素敵なものがいっぱいあるのだけれどね」

 

自分でデザインして世界で1つだけのアクセサリーを作るのが楽しいと絵里は言う。

そこで俺はあることを思い出す。

 

「そういえばことりが言ってたな。絵里も衣装作りを手伝ってくれる、って。そういうことだったのか」

 

「ええ。装飾品とかは私も作ったりしてるのよ。元々好きだったのもあったから」

 

「なるほどな。今日はアクセサリー作りをしようってことか」

 

「その通りだけど、ただ作るのは面白くないじゃない? だから今回は――お互いに贈るアクセサリーを作らない?」

 

「互いに贈るアクセサリー?」

 

おうむ返しする俺に、そう、と絵里は笑顔でうなずいた。

 

「私は春人くんをイメージしたアクセサリーを、春人くんは私をイメージしたアクセサリーを、それぞれ作ってお互いにプレゼントするの」

 

「とは言っても、俺はアクセサリー作りは初めてなんだが」

 

「そこは私も教えるし、手伝えるところは手伝うわ」

 

「過程とはいえ、どんなアクセサリーを作ってるのか見てしまうのはつまらなくないか?」

 

「まあ、それはあまり気にしなくていいんじゃないかしら? 一緒の場所で作るのだし、こういうのは気持ちでしょう?」

 

「まあ…それもそうだな」

 

俺だけではどうしようもないことが出てくるだろう。それで意地張って失敗するより、素直に絵里に指導してもらって完成させる方が断然いい。

 

「それじゃあ材料を買いましょうか」

 

そして俺たちはそれぞれをイメージしたアクセサリーを想像しながら、材料を選んでいった。

 

 

 

材料を買ったあとは再び絵里の家に戻り、一息入れてからアクセサリー作りを始める。

 

「春人くんはステッチを使ったヘアゴムを作るのよね?」

 

「ああ。どうせなら身に付けられるものがいいと思ってな」

 

「結構難易度高いけれど大丈夫?」

 

「絵里に贈る物だから。頑張るさ」

 

「っ、そう…ありがとう……私も頑張るわ」

 

何故か顔を紅くさせる絵里。

 

「顔が紅いが、大丈夫か?」

 

「え、ええ! 大丈夫よ! 体調が悪いとかじゃないから気にしないでくれると助かるわ」

 

「そ、そうか…具合が悪くなったらちゃんと言ってくれ」

 

前のめりになる絵里に俺は思わずたじろぐ。

 

「……それじゃあ、基本的な作り方と道具の使い方の説明をするわね」

 

そして俺は絵里の教えと、ネットや絵里が持っている本を参考に絵里に贈るためのアクセサリーを作る。

 

ステッチは絵里をイメージしたデザインを再現するように一つ一つビーズを通し作り上げる。

ヘアゴムに使うものは絵里のイメージに加えて誕生石の模型など彼女に纏わるものをいくつか選んだ。この中から使うのは装飾の重さで頭や腕が疲れないように出きるだけ軽いもの。

そしてヘアゴムは使い心地が良くなるよう、歪にならないようにバランスを取りながら慎重に編み、丁寧に作り上げていく。

 

「……」

 

その最中に絵里の方に視線を向ける。絵里も真剣にアクセサリー作りを進めている。それを見た俺も彼女から手元のアクセサリーへと目を落とした。

 

「「……」」

 

お互い言葉を交わすのは俺が教えを請う時ぐらいで、ほとんど無言で時間が過ぎていく。

しかし、それが気まずいとかなにか話さなければという気に駆られることはなかった。

今さらそんな状態になるような仲でもなければ、互いにプレゼントする物だから適当なことは出来ないと集中していたというのもある。

 

それが良いのか悪いのか判断は出来ないが、俺も絵里も二人して予想以上に早くお互いに贈るアクセサリーが出来上がった。

 

「ふぅ……」

 

「お疲れさま。紅茶淹れてきたわ」

 

俺より早く出来上がった絵里はティーセットの準備をしてくれていた。

 

「亜里沙ちゃん絶賛の絵里の紅茶がこんなにも早く貰えるとは思わなかった」

 

昨日の今日どころか、数時間前の今になるとは俺も思ってなかった。

 

「もう、やめてよ。全然そんなことないんだから」

 

恥ずかしそうにする絵里。だが、俺の内心は少し楽しみにしたいるのも事実だ。

 

「無駄にハードルをあげるのは良くないわよ――はい、どうぞ」

 

「ありがとう」

 

俺は絵里からカップを受け取って早速口をつける。

 

「なるほど……確かに亜里沙ちゃんの言うとおりだ」

 

亜里沙ちゃんには悪いが、確かに絵里と亜里沙ちゃんに違いがあった。

絵里の方が風味の際立たせ方が上手く出来ているのだ。

それはお湯の温度や茶葉をつける時間、そして人の口に入るまでの時間がしっかりと構成されているのだ。

 

「亜里沙ちゃんが言ってた意味が分かったよ。本当に美味しい」

 

「二人とも本心で言ってるのは分かってるし、褒められて悪い気はしないのだけれど、これ以上は恥ずかしいから止めてちょうだい」

 

本人にそう言われてしまったので、紅茶の感想を言うのはそこまでにしておく。

 

「――さて、それじゃあお互い作ったアクセサリーのお披露目をしましょうか」

 

紅茶で一息ついた絵里が切り出す。

 

「まずは私からでいいかしら?」

 

「ああ」

 

俺が頷くと、絵里は机の中から作ったアクセサリーを取り出す。

それはとても綺麗に編み込まれたビーズのネックレスだった。

 

極小のビーズが一つ一つ細い糸に通されており、それを何本か用意してから編み込んで一本にしている。

ビーズを使用しているから一見きらびやかが強調されているように思うが、冷色と暗色を上手く組み合せて落ち着いた雰囲気を作り出していた。

そして装飾品は小さい金属の円板から三日月と星を型どった物を使用している。これが俺をイメージしたものなのだろう。

 

「どう、かしら……?」

 

若干不安そうにする絵里に俺は頭を掻いた。

 

「参ったな……」

 

そう言いながら俺は俺が作ったアクセサリーを絵里に見せる。

 

「あ……」

 

俺の言葉の意味が分かった絵里は小さな声を漏らした。

俺が作るものを絵里はもう知っている。しかしそれは完成品の話であって、その内容に関しては絵里は知らなかった。その結果出来たのが――

 

「ステッチが三日月と星の、ヘアゴム……」

 

絵里と同じモチーフの装飾のヘアゴムだった。

ゴムの部分はスカイブルーの中に薄目のピンクをいれて編み込み、ゴムの中央には絵里の誕生石である小さな赤いトルマリンの模型を添えた三日月と星とのステッチを付けている。

 

「まさかお互いイメージしたのが同じ物とは思わなかった」

 

俺も思わず苦笑いしてしまう。

 

「どうして、私のイメージが月と星だったの?」

 

絵里は俺のイメージの理由を聞いてくる。気になるところだったのだろう。俺も同じことを聞こうとしたのだからよく分かる。

 

しかし、俺はこのモチーフで作った理由も絵里と被っている気がした。

 

「――まず絵里はどちらかというと太陽の明るさじゃなくて、夜を照らす月の輝きの雰囲気だと思ったんだ」

 

「……」

 

「大人びてるっていうのか、3年生だからというのもあるが、力が漲るような元気な太陽じゃなくて静かに照らす綺麗な月だと思った」

 

「じゃあ、星は?」

 

「夜を静かに見守る月の傍の星は静けさとは反対に夜の中の無邪気さを考えた。絵里にも年相応の可愛らしさがあるから。ヘアゴムの色でスカイブルーの中に薄いピンクを要れたのもそれを考えた」

 

「……なんだか、こう、嬉しいのだけど少し恥ずかしいわね」

 

正直に言った俺の方がもっと恥ずかしい。

 

「それに、やっぱり同じだった。私も春人くんのイメージを月と星にしたのは貴方と同じような理由なの」

 

絵里はそう言いながら自分の作ったネックレスを撫でる。

 

「暗くて見えない夜道をまるで導くように照らしてくれるように、そして見守ってくれるように輝く月。星たちの輝きが一つ一つ違うように年相応のいくつもの魅力を持った人――それが私が思った春人くんのイメージだった」

 

本当に、俺と似たような理由だ。

 

「どうやら似た者同士らしいな、俺たちは」

 

そういえば、絵里がμ'sに入る前にも似ている部分があるを考えては否定してたことを思い出す。あの時の感覚は間違ってなかったようで、俺と絵里は通ずるものがあるらしい。

 

「似た者同士、ね…どこまでも私たちは同じみたい」

 

絵里もそれを感じ取っていたようだ。

 

「春人くん、後ろ向いて――ネックレス、つけてあげる」

 

絵里はネックレスを持って立ち上がった。俺は無言でそれに応える。

絵里の手で彼女の作ったネックレスが俺の胸元に飾られた。

 

「うん…よく似合ってる」

 

正面から見据えた絵里は笑みを浮かべて言う。

そして、彼女は自分の頭の後ろのシュシュに手をやり、髪を解いた。

綺麗な金色の髪が、輝きながら宙を舞う。

 

「ねえ春人くん…次はあなたが私に、そのヘアゴムをつけてくれないかしら?」

 

「……いいのか?」

 

俺は少し戸惑ってしまう。だが、絵里は微笑みを崩さない。

 

「私が頼んでいるの。あなたが作ったものを、あなたの手で私に身につけさせて――今日はそういう日でしょう?」

 

それを持ち出されたら俺は何も言えない。

 

「――わかった」

 

俺は頷いて絵里の後ろに廻り込み、彼女の髪を取る。

その瞬間に感じる柔らかくサラサラ触感とふわりと香るいい匂い。

それに俺は少しドキリとしながらも、彼女の髪をまとめてヘアゴムを通しいつもの髪形に整える。

 

「どう、かしら……?」

 

あえて見えやすくするように、下から覗き込むように上目遣いで問いかけてくる。

 

「ああ。よく似合ってる」

 

「ふふ。私と同じこと言ってる」

 

そう言われた俺は何となく気恥ずかしさを感じて目を反らす。

 

「――ありがとう、大切にするわ」

 

そんな俺に絵里は飛び切りの笑顔を向けてくるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ふふっ」

 

私は頭の後ろについているヘアゴムを鏡で見て小さな声を漏らす。

 

「お姉ちゃん、嬉しそう?」

 

それを見た亜里沙は不思議そうに私を見る。

 

「春人さんと何かあったの?」

 

「んー、そうね…」

 

問いかける亜里沙に対して私は一瞬考えた(のち)

 

「あったけど内緒にしておくわ」

 

言わないでおくことにした。

えー、と不満げな声をあげる亜里沙だけど、私は今日のことを気付かれるまで私と春人くんの二人だけで共有することに決めた。

 

「教えてよ、お姉ちゃんー!」

 

「ふふ、だーめ♪ 亜里沙が気付いたら、ちゃんと答え合わせしてあげる」

 

声を上げる亜里沙に対して、私は笑みを浮かべながらそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絵里の家でアクセサリー製作をしてから数日後。

 

「さぁ、皆! 今日も気合い入れて練習するわよ!」

 

放課後の屋上に絵里の元気な声が今日も響く。

 

「おぉ~…絵里ちゃん今日も元気だ……」

 

その様子に若干戸惑うも穂乃果は頷く。

 

「ないよりかはいいけど、最近の絵里の練習メニューはすぐバテるのよ。もう少し考えてほしいわ」

 

にこはどこか呆れたように言う。

最近の絵里の練習は容赦ないというか、結構ハードなのだ。

 

「えりちは今日も張り切っとるなぁ。最近は生徒会の仕事も効率良く出来とるし」

 

「でもこの前までは――具体的に言えば先週まではだけど、こんな感じじゃなかったよね?」

 

「ええ。いつもの絵里というか、ここまでやる気に満ち溢れているような感じではありませんでした」

 

それぞれが考えているなか、その原因に気付きいた者がいた。

 

「先週までは、ね……」

 

「真姫ちゃん、何か分かったの?」

 

「何かもなにも、原因くらい考えれば分かることよ」

 

「勿体ぶらないで凛たちにも教えてよー」

 

凛に急かされた真姫は俺の方を見る。

その視線につられてか絵里以外の全員の目が俺に向かい、全員がどこか納得した様子を見せる。

 

「休みに何かあったとしか考えられないわよね? ねぇ、春人?」

 

「……」

 

「それに春人、何か首からぶら下げているようだけど、それはなにかしら?」

 

黙る俺にさらに追い討ちを掛けるように問いかけてくる真姫。

すると絵里以外の皆は顔を合わせて頷いた。

 

「ちょっと見せて!」

 

「お、おい…!」

 

その直後、すばやい動きで俺の首もとの"ネックレス"をあらわにさせる穂乃果。

 

「絵里ちゃん確保にゃー!」

 

「あ、ちょっとみんな……!?」

 

それから他の皆は、絵里に突撃し抱きついたりしながら彼女を拘束する。

 

「あー!」

 

そして絵里の変化を見つけた凛が声を上げる。

 

「絵里ちゃんの髪飾りが変わってる! しかも春人くんと同じようなアクセサリーの!!」

 

隠していたほどでもないことがどんどん明るみになっていく。

 

「なるほど、それでご機嫌だったんやね。えりち」

 

「別にそんなことないわよ。いつも通りのはずだったんだけど?」

 

「ダウトね」

 

「ダウトです。絵里」

 

「流石にそれは無理があるんじゃないかなぁ…?」

 

「私もそう思います」

 

首を横に振る真姫、海未、ことり、花陽から立て続けに突っ込みを食らう絵里。

 

「自覚ないのが一番重症よね。こっちから見たらあからさまだったてのに」

 

「うぐ……」

 

にこにとどめを刺された絵里は苦虫を噛み潰したような表情をする。それに関して言うと、俺はなにも擁護できない。

 

しかし絵里は絵里で大変そうだが、それよりも俺は自分の身を案じるべきだった。

 

「ハルくん……」

 

目の前の穂乃果からドスの利いた声が俺の耳を貫く。

 

「ハルくん…なんで絵里ちゃんとお揃いのアクセサリーを……?」

 

「穂乃果…少し落ち着いてくれ……」

 

「ハルくんと絵里ちゃんがちゃんと話してくれたら、落ち着くと思うよ…?」

 

「えっ…私もなの、穂乃果!?」

 

驚く絵里。だが――

 

「まあ、当然よね」

 

「ことりもその辺のお話は聞きたいなぁ?」

 

「うちも聞きたいわ」

 

「私もどういう経緯でそのようになったのか、じっくり聞かせて貰いましょう」

 

「凛も気になる!」

 

「私も、気になります……」

 

「まあ、別に私はなんでもいいけど」

 

練習のことなんてそっちのけで、俺と絵里は他の皆から囲われる。

この感じだと話したとしても皆が納得するかはまた別なのだろう。

 

 

「どうして…どうしてこうなるのよー!?」

 

 

横で叫ぶ絵里に応えることなくただただ、どうしたものかなぁ、と俺は空を仰ぐのだった。

 

 

 

 

 

 






いかがでしたでしょうか?

最後は穂乃果です!

次は穂乃果の話ともう一方の作品も更新しようと思います。
興味があればそちらもご覧ください。

ではでは~

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