世紀末帝王伝説「れっぷれ!ライザーさん!」 作:shou9029
混沌渦巻く戦場で、誰もが怯える風がある。ひとたびソレに呑まれれば、二度と生きては帰れない。
今日もまた、戦場に風が吹き荒ぶ。
―…
今、アドバンス帝国の城下町は大いに賑わっていた。長く続くリチュアル共和国との戦争が一段落し、見事勝利した自国を称えての盛大な祭事の真っ最中だったからだ。
国の民が皆喜び、そしてアドバンス帝国の誇る六魔将軍を褒め称えている。街のどこへ行っても、騒いでいない民はいないのではないかと思うくらいに騒がしい。
「…呑気なものだ。戦場を知らぬ者たちは。」
天に望む城の窓から、騒ぎ楽しむ民を見下ろして。アドバンス帝国六魔将軍の一柱である烈旋の暴風こと、烈風帝ライザーはポツリと呟いた。いつも戦場の最前線で戦っている自分からしたら、民が言うような見事な勝利など、戦争において在りえないことをよく知っているためだ。
自分が敵兵を切り刻めば血の雨に打たれ、砲弾に打ち抜かれれば醜い死体が出来上がる。そんな犠牲と殺生を繰り返してもなお、戦いが終わらない。
なぜ、多くの者を殺めた自分がここまで称えられているのであろうか。戦場に身を置いたばかりのころは、国の為に戦うことしか考えず、こんなことを考えるなど思わなかったものだ。
それがどうだ。下手に生き延びてしまったが故に、いつしか風帝と呼ばれるようになった。下手に強くなってしまったが故に、いつしか六魔将軍、ひいては烈風帝と称えられるようになった。
ただ、敵を殺して回っただけなのに。いくら自国のためとは言え、敵国にも和平を望んだ民はいたはずだ。いくら自分の身のためとはいえ、殺した敵にも待っている者がいたはずだ。
「殺すことしか出来ぬのに…なにが烈風帝…」
人の上に立ち、兵を導く立場になったからこそ悔やむ。これ以上の戦争の無意味さを、これ以上の人の死の無駄さを。
「…私は…、私の使命とは…」
無邪気に楽しむ民を見ながら、自分の立場に苦悩する日々。一体、いつまで戦い続けなければいけないのだろうかと考える。目に、流れぬ涙を感じて。
「あれれー?ライザーちゃん、こんなとこで何しとるんや?お祭り行かへんの?」
「…誰だ?」
そんな時、狭い塔の入り口の方から声が響いた。ライザーが振り返りそこを見ると、そこには烈火の鎧に身を包んだ戦友の姿。
「…テスタロスか。何の用だ?」
「いやいやー、ライザーちゃんの姿が見えへんから探しとってん。」
「…そういう気分になれなくてな。」
そう言ってアドバンス帝国六魔将軍が一柱、爆裂の鬼神こと爆炎帝テスタロスはライザーの隣に立ち、窓に肘をかけて城下を見下ろした。幾度も共に戦場を駆け抜けてきたテスタロスとは、お互いに死地を助け合っただけあって、よき語らいの相手となってくれている。
「まーたどうせ戦いたくないゆーてメソメソしとってんやろ?ライザーちゃんホンマそういうとこ女々しいわぁ。」
「…それを言いにきたのか?まったく、貴様こそ緊張感が足りんのだ。だから先の戦争でも…」
「はいはい、それもう聞き飽きてん。ホンマにライザーちゃんとメビウスちゃんはクドクドクドクド…折角お祭りやってんのやからさぁ。どや?今あそこ行ったらヒーローやで自分。」
「…私はいい。人を殺めたことで称えられるのは。」
「まぁ、せやろな。そう言うと思っとったけども。でもこれは戦争や。ライザーちゃんが覚悟決めて戦場に出たのと同じで、敵さんも覚悟決めて出てきてるんや。一々気にしとったらキリがあらへん。」
「それは、分かってはいるが。しかし…」
「しかしもかかしもあらへん。…でもせやなぁ、じゃあ、俺らが世界取ったら、ライザーちゃんは死んでった兵のために頑張り。そいつらが居たおかげで今の世界になったことを感謝して、ほんで尽くせばいい。そのときが来るまでは、とりあえず今頑張ればいいんちゃう?」
「…フッ、簡単に言う奴だ。」
思えば正反対の性格の二人だったが、話の種には事欠かない。いや、正反対だからこそなのかもしれないなと、沈んでいた気持ちが僅かに持ち上がるのを感じたライザー。
テスタロスに気を使われたのは気に食わないが、まぁ今は感謝しておいてやろう、そう思った。
「それで、何故私を探していたんだ?まさか元気付けるためではあるまい?」
「あぁせや、ライザーちゃんがメソメソしとるから、つい忘れるところやったんか。ホンマ勘弁してや。…んーとな、なんやったっけ…あぁそうそう、なんか天帝さんが後で来いゆーっとったんやったわ。ほな、確かに伝えたで。」
「お前、そんな大切なこと…しかしアイテール様が…わかった。確かに。」
テスタロスの口から出てきた名、このアドバンス帝国を治める王の命令に、やや驚いたものの、それを忘れて去ろうとしたテスタロスにもどうかと思う。しかし、王直々の呼び出しとあれば行かないわけにはいかない。天帝アイテールが何用というのか。それを知りうるはずもないが、王の命だ、今それを考える必要も無い。
「ほななー。俺は町のねーちゃん達とフィーバーしてくるさかい。」
「あまり羽目を外しすぎるなよ。」
「わーっとるわい。」
そういって、テスタロスが去っていった。まったく、軽い奴の癖に、こういった気遣いまでしてしまうあたりは流石だ。今度奢ってやらねば、そんなことを考えて、ライザーもその場を後にした。
―…
「烈風帝ライザー、アイテール様へ拝謁のため参りました。」
「あぁライザー殿、お待ちしておりました。」
王の間へと続く扉の前で、ライザーは一人の女性に話しかける。従騎と呼ばれる、天帝の側近である天帝従騎イデアだ。主に、天帝は人前に姿を現すことを滅多にせず、命令など伝えるべきことは全てイデアによって伝達される。いくら六魔将軍といえども、天帝にはおいそれとは会うことが出来ず、必ず彼女を通して出なければならない。
「よかった。丁度テスタロス殿しか捕まらなかったのですが、ちゃんと伝達されたようで。」
「はい。少し怪しかったですが。」
「…怪しい?…何かあったのですか?」
「いえ、いつものど忘れ癖です。お気になさらずとも、しっかり聞き賜っております。」
「そうですか…まぁ、結果的にあなたは来てくれたのですし良いとしましょう。天帝様がお待ちです。どうぞ。」
「はい。」
そう言って、イデアが大きな扉に手をかけて、開け始める。外の空間と王の間が繋がった瞬間、何にも例えられぬ緊張感がライザーを包み、王の間へと一歩進む。
「アイテール様、ライザー、ただ今ここに。」
そして、王の間の扉が閉まりきったのを確認して、純白の鎧に身を包んだ女王の下ライザーは片膝をついて頭を垂れた。それをみて、天帝アイテールは静かにその口を開く。
「ライザー、よく来てくれました。頭を挙げなさい。」
「はっ!」
「あなたを呼んだのは他でもない。極秘裏に頼みたいことがありまして。」
「…天帝様自ら、私に?」
「はい。六魔将軍随一の誠実さを誇るあなたにしか頼めないことなのです。このことは、私とイデアしか知りえません。詳細も、今は話せませんが、それでも宜しいですか?」
「そんな大役を私に…ありがたき幸せ。」
王にここまで信頼してもらえることは素直に嬉しい。何に変えても、その依頼は達成しなければ。強い思いがライザーを包む。そして、曇りの無いそれの気持ちを感じたのか、アイテールは続けた。
「詳しくは出発してから通達がいきます。ライザー、お願いします。」
「はっ、この命に代えても。」
それは、ものの数分で終わった謁見だったが、先ほどまで沈んでいた心からは考えられぬほどに、ライザーの心に強い火が付いていた。烈風の如く、迅速に解決してみせよう、そう心に誓って。
―…
「では、私は所要でしばらく出かける。留守を頼んだぞガルーム。」
「何も祭りの最中に行くこともないでしょうに。…まぁわかってますよ。深くは聞きません。」
アドバンス帝国内の自宅で旅の準備を終えたライザーは、城壁の外で出発の直前と言ったところだった。
戦争孤児の多くを保護しているライザーだが、その中の一人、最年長でもあり、自分のことをよく慕ってくれる一番の家臣であるガルームに任せておけば後のことは安心だ。自分の亡き後、ガルームに全てを授けても良いとさえ思えるほどに、よく尽くしてくれている。
「でもくれぐれも、無茶だけはしないように。どうかお気を尽きて。」
「あぁ。では行ってくる。」
そう言って、闇夜に紛れるように馬を走らせ始めるライザー。天帝への謁見のあと、イデアから出発時間と目的地のみを聞いて、それを頼りに進む。途中で詳細が来るとのことだが、ひとまずは目的地に急ぐことだけを考えよう。そう思って。
(静かだ。先日までの戦乱が嘘のように感じる。)
馬の速さで、風切音が耳に心地いい。荒れ狂う爆音というノイズに耳が慣れてしまっていたものだから、こういった静かな風の声は心に染みる音楽だ。ライザーは、風の音と匂いを感じながら馬を走らせ続ける。
「…目的地は、スピリットの里か。遠いな、2日はかかりそうだ。」
思えば、戦争続きで休む暇も無かったからか、任務とはいえ気分はまるで小旅行。微かに気分が緩むが、一瞬の後それを引き締める。あくまでこれは任務。天帝から授かった極秘事項。浮かれる要素は一つも無い。
「気を抜くわけには行かないな。」
風を切り裂きながら、ひたすら真っ直ぐに馬は走り続けた。
―…
はい、色々とすみません。
遊戯王Wingsの息抜きに書いていたら、何故かこんなものを書いていました。
思い付きで書き始めた物なので、どこかで矛盾がおきたりすることがあると思いますが、その時は大目に見てください(涙
基本的に息抜きに書こうと思っているので、更新は遅くなるとおもいますが、どうぞよろしくお願いします。
遊戯王Wings「神に見放された決闘者」の方もよろしくお願いします。
敬具