今日は土曜日。
職人という立場もあり、休みだろうが、早寝早起きが大得意なマッコイは自室の布団を押入れに収納してあくびを一つ。時刻を確認すると六時十五分と集合の時刻は九時なので物凄く早く起きすぎた部分がある。このまま九時までダラダラと過ごすのは職人としてのプライドが許さないのであろう、綺麗な青いツナギを身に纏って最低限の身嗜みを整え家を出る。
本日の予定は38(t)の整備、これは五六時間で終わるだろう。余った時間は戦車捜索、これは四号戦車を使用して目ぼしい場所に移動して捜索すればいい。マッコイは頭を掻きながら、確か、倉庫から一番近い戦車の情報は、三号突撃砲だったな、と、呟いた。
「考えることは同じでござるな」通学路をツナギ姿で歩いているとジャージ姿のハルがにこやかに挨拶をしてきた。マッコイも同じように考えることは皆同じだと告げて、一緒に登校していると次はロックと遭遇する。
「あらあら、皆早起きねぇ」ロックは赤色のジャージ姿で、今日も厚化粧。ロックの攻撃! SAN値を削るウィンクを投げつける。マッコイとハルのSAN値が2減った。
三人で登校していると次は学校指定のジャージ姿のジミーが現れる。だが、三人は平然とスルーする。
「ちょっとちょっと! 君達は普通に挨拶したんだよね!! 何で僕だけスルー!?」
「「「あ、ごめん。面白そうだったから」」」三人は本心からそう告げてしまった。
「なんでハルくんに至ってはござる捨ててるの!? 傷つくんだけど!!」ジミーはアスファルトに崩れ落ち、シクシクと涙を流しはじめた。流石に虐め過ぎたかもしれない。
「まあ、おはよう。早いな?」マッコイが苦笑いを見せながら朝の挨拶をするとジミーの表情はパッと明るくなり、自分がツッコミを入れたことなんて忘れて普通に学校に向かう。
校門前に到着するとなぜだかテントが設営されている。ご丁寧に所有者の名前も書かれており、確認すると秋山優花里と書かれていた。四人は神妙な顔でテントを開けてみると気持ち良さそうに眠っている優花里がいた。
唖然とした表情で四人は彼女のことを眺めていたら、パッと目を見開き。
「あ、おはようございます」
「うん、おはよう。先に倉庫行くから、テント片付けて来いよ」
「了解であります!」
なんというか、秋山優花里という生徒のアグレッシブさが垣間見えた瞬間だと四人は思った。
四人は校門を抜けて、倉庫に入る。そこには薄汚れた 38(t)と四号戦車が佇んでいる。
マッコイは工具の有無を確認し、注文し忘れた部品が無いか入念にチェックする。すべての工具、部品があることを確かめて、 38(t)のエンジンを確認する。四号戦車より劣化が酷いが、オーバーホールで動くようになる領域だ。即座に整備にとりかかる。
マッコイがエンジンのオーバーホールを開始したと同時にテントを仕舞った優花里が戻ってきて、マッコイに見とれる。主に器用に動いている指先の方向だが。
「手慣れた手付きでありますな」
「マッコイは松本戦車整備の次男でござるからな」
「え、日本で三番目に大きい戦車整備工場の松本戦車整備の?」
「そう、そこの社長さんの次男坊でござる。小さい頃から戦車整備を叩きこまれて、一通りの整備はお手の物、パーツ屋とも繋がりが深く、補助金の範囲内で色々と見繕ったり大助かりでござる」
「ああ、ゴム類めっちゃ劣化してるじゃん。付け替えないと」取り寄せたゴム類を加工して付け替える。優花里はその姿に目を輝かせていた。
時刻は正午になろうとしていた、エンジンの整備を一通り終わらせて、キューポラから車内に入り、エンジンをかけてみる。すると四号戦車とはまたちがうエンジン音を響かせた。優花里はまた、ヒヤッホォォォウ! 最高だぜぇぇぇぇ!! と叫び声を上げて、興奮している。その反対で、マッコイはほぼすべての作業を一人で完遂したので、息切れしながら疲れを隠しきれないでいた。
「私達も手伝えれば良いんだけど、こういう作業はやったことないからねぇ」とロックが呟きながら、自販機で購入したポカリスエットをマッコイに手渡す。マッコイはそれを勢い良く飲み干して、溜息を一つ吐き出す。
「中身は古めかしい自動車と大差ないんだが、一つ一つのパーツが重いからな、バラすだけでも一苦労だ。実家みたいに職人が沢山いて、使い勝手の良い機材があれば半分の時間でどうにかできるんだが……」汗を袖で拭って38(t)を洗車するために倉庫の外に出す。
今回は水着なんて着用せずにツナギ姿、ジャージ姿で洗車を行う。その姿を見ていた売人は高値で取引される写真を撮れなかったと悔しげに語った。
徐々に輝きを取り戻していく38(t)の姿に感動を隠しきれない優花里はいいが、マッコイはエンジンの整備も合わせて色々と疲弊しているので三分ほどでダウンしてしまった。体力に自信がある彼でも、一両の戦車を一人で修復するのは肉体的にも、精神的にも堪えるということだ。
「綺麗ですなぁ……」
「にしても……この学校の戦車はガソリンエンジンが多いな。国からの補助金が手厚いといえど」ジミーが纏めたノートを読み進めていたマッコイ。
「ガソリンエンジンと言いますと、どのような車両が?」ガソリンエンジンを使用している車両は数多く存在している。どんな車両が残されているのだろうかと優花里は質問する。
「うーん、有力な戦車は多分売られてるだろうから……このノートの中のラインナップを見る限り、三号突撃砲、M3中戦車、ルノーB1bis、八九式中戦車(甲)、ポルシェティーガーは微妙だが、まあ、あるかもしれない。唯一のディーゼルは三式中戦車だけだ」ほぼすべての車両がガソリンエンジン。ディーゼルなら燃費をあまり考えずに乗ることは出来るが、ガソリン車となると色々と維持費が高くなる。だが、この中にお宝戦車が二台入っている。それは八九式中戦車と三式中戦車だ。日本戦車はマニアから根強い人気があり、この二両合わせて下手をすると億単位の値段で売買出来るかもしれない。それに、戦車のトレードを申し出れば、T34みたいな生産数の多い車両が三四両くらい入ってくる可能性もある。
洗車を終わらせて、38(t)と四号戦車に給油。使用の準備は整った。
マッコイは少し考えて、三号突撃砲のページにペンでチェックを入れる。最後に使用した場所が学園艦に存在する溜池の周辺と書かれている。ここから比較的近い場所、四号戦車を走らせれば十五分くらいで到着する。38(t)を倉庫に収納し、四号戦車に全員で乗り込む。
「三突を探しに行くぞ」とマッコイ。
「三突なら溜池の周辺だね、日がくれないうちに探しに行こうか」とジミー。
「戦車を探すってわくわくするでございますなぁ」と優花里。
「移動手段があるっていいでござるな」とハル。
「どんな戦車なんでしょうね」とロック。
手慣れた手つきで四号を走らせていると学園艦に住む人達から温かい声が聞こえてくる。
「あら、四号久し振りに見るわねぇ」
「若い頃が懐かしいわぁ」
「三突はいないのかしら」
「私は三式に乗ってたわねぇ」
案外戦車道経験者が多く乗っているのだな、なんて五人は感心しながら溜池まで流す。そして、溜池に到着すると周辺をくまなく捜索するのだが、戦車らしい影は見当たらない。だが、マッコイの戦車センサーはビンビンに反応していて、普通なら発見できないような部分を発見する。
「油……いや、ガソリンだな」
溜池に浮かぶ油、それを瞬時にガソリンと理解する辺り、マッコイの嗅覚は本物だ。
「池の中に多分沈んでる。三突は結構高値で売買されるからそれを阻止しようと沈めたのかもしれないな」マッコイは着込んだツナギを脱ぎ、パンツ一枚の姿になる。優花里は顔を真赤にして顔を隠すが、指の間から普通に見ている。彼女も乙女なのだ。
潜って確かめてくるから、ワイヤーの準備を頼むと四人に頼んで勢い良く溜池の中に飛び込む。そこそこ深い溜池の中を息が続くまで潜っていると戦車らしき姿が確認できた。三号突撃砲発見、マッコイは浮上して発見とピースサインを見せた。
「ワイヤー投げ渡してくれ、引っ掛ける」ロックが四号戦車と連結したワイヤーをマッコイに投げ渡す。それを受け取ってもう一度溜池の中に潜り、三突の引っ掛けに取り付ける。後は牽引するだけだ。
陸に戻って持ってきていたタオルで最低限体を拭いてツナギを着込む。その後はいつものように四号戦車に乗り込んでエンジン点火、方向展開してから牽引作業をはじめる。徐々に姿をあらわす三突に優花里は目を輝かせ、よだれまで垂らしていた。
「三号突撃砲、ドイツ対戦車自走砲だ。こいつ一両で戦車数十両に匹敵する火力を持ってるとか持っていないとか」優花里はいつものように頬擦りしている。その姿に四人は苦笑いを見せながら、外装と内装の確認をはじめる。流石に水の中に長い間放置されているため、色々と劣化が激しい。三号突撃砲がメジャーな戦車じゃなければ、修復は難しいと言わざる負えない状態だったが、一応はメジャーな戦車なので修復は可能だ。
「どうですか? 動きそうですか?」と優花里。
「ああ、普通に使える。ただ、パーツ取り寄せないといけないからな。それに生徒会に報告とか」マッコイは三突の装甲を撫で、すぐに動ける状態にしてやるからな、と、小さく呟いた。
2
後日。
生徒会長角谷杏はあっけらかんとした表情でマッコイの報告を聞いていた。まだ一ヶ月も経っていないのに三両の戦車を発見し、その中の二両は既に稼働できる状態にあるというのだ。彼女は尋ねる、この学校に残っているであろう戦車は後何両くらいだと。マッコイは少し考えて、多分、あと五両はあると思いますと告げる。彼女はこのままのペースで戦車が発見され続ければ、戦車道を復活させるのも悪くないと考えた。国からの補助金も手厚い戦車道を行えば、色々と学園艦の維持も楽になる。公式戦に出て知名度を向上させることも不可能じゃない。
「いいねぇいいねぇ、このままのペースで戦車探してちょうだい。来年戦車道復活させるのも視野に入れておくから。もちろん、復活させたら君達男子生徒四人も大会に出させてあげるよ。ルールブック的には男子OKだし」会長はにこやかに背伸びをしてマッコイの肩を叩く。
「あ、そうだ。男子戦車道部に入部希望者が出たんですが、女子生徒なので部の名前を普通の戦車道部に変更したいのですが、大丈夫ですかね?」優花里から預かってきた入部届。それを会長は受け取って、気さくに了解と一言告げる。
マッコイは一礼してから生徒会室を後にする。
「一ヶ月も経たないうちに三両も戦車を発見。幸先いいねぇ」呟くと隣で鎮座していた桃がそうですね、と、相槌を打った。
3
大洗女子学園に入学して約一ヶ月、四号戦車を主体とした練習をはじめた。実家から三突のパーツを取り寄せたのだが、次の寄港まで離れているため、三突の整備は繰り上げとなっている。戦車の捜索もやりたいところなのだが、戦車道部として戦車を動かしたいという気持ちもある。だから、一日置きに稼働練習と戦車捜索を繰り返していた。
「クラッチはもっと丁寧に繋げ、変にエンジン音響くから相手に位置がバレる」マッコイは車長席からジミーに指示を飛ばす。
「難しいね……でも、動かしてるって実感はわくかな……」ジミーは慣れない操縦に四苦八苦しながらも、徐々に上達している。
「流石に学園に残されていた砲弾が全部湿気ていた時は涙でござる……」砲手を任されているハルは溜息を吐き出して、自分の役割が果たせないことに落胆していた。纏まった砲弾が届くのは三突のパーツと同日だ。
「私も装填する砲弾がなければやること無いのよねぇ」ロックも自分の役割が果たせなくて顔をしかめている。
「自分なんて通信する相手がいないでありますよ……」優花里も自分の役割が果たせないで悲しそうになっている。
三人の視線がジミーに降り注ぐ。
「「「(ジミーが地味に活躍してる……少しショック……)」」」
「(なんか物凄く心が痛むことを言われたような……)」
車長のマッコイは四人のことなど知らないという表情でジミーが纏めたノートに目を通す。三式中戦車の目撃例がなぜだか駐輪場の周辺に集中しているな。マッコイは登下校をしていた時のことを思い返す。そして、ダラダラと汗を流しながら、小さく、あった。そう呟いた。
日本戦車は色々と影が薄い。対戦車戦闘を視野に入れず、歩兵支援車両として製造されていた部分がある。そこがイギリス戦車と日本戦車の共通点だ。装甲の差は敵の危険度の差だろう。
「ジミー、駐輪場の方に行ってくれ」操縦初心者のジミーに無茶振りを入れる。
「えっ? あの細い道を通るの……怖いんだけど……」ジミーは流石にあの細い道を操縦をはじめて数日の自分が通るのは難しいと意見するが、そうしないと上手く操縦できないぞとマッコイに強く言われ、断れずそのまま駐輪場に四号戦車を走らせる。
「でも、どうしていきなり駐輪場なんですか?」優花里が静かに質問すると影が薄い戦車が一両あるんだよな。と、苦い顔をしながら説明する。頭上に?マークを作りながらも、駐輪場に到着した瞬間に!マークに変貌する。そこには三式中戦車が寂しそうに鎮座しているからだ。
マッコイはこいつの影の薄さに脱帽したと一言告げて外装と中身を確認する。不動車ということである程度劣化が進んでいるが、四号や38(t)、三突に比べれば断然綺麗な状態で残っている。腐った燃料を排出して、消耗部品の交換をしたら普通に動くようになるだろう。
「……なんか、見たことあります。ですが、認識出来てなかったであります」戦車大好きな優花里がアスファルトの地面に四脚をついた。戦車を愛してやまない自分が、この三式中戦車を発見できなかったことに色々と負の感情が巡っているのだろう。マッコイの方も、戦車整備工場の息子なのに戦車をスルーしてしまって、悩ましく思っている。
ロックが二人のことを察したのか、黙って四号戦車と三式中戦車をワイヤーで連結する。流石に牽引作業は慣れていないから怖いと言ったジミーと交代する形でマッコイが操縦席に座る。
4
徐々に集まりはじめる戦車達。だが、一つ大きな問題がマッコイの前に立ちはだかった。それは三式中戦車のパーツである。チハやハ号のような生産台数の多い車両はパーツを入手することが容易であるのだが、三式中戦車のような本当にレアな車両はどうしてもパーツの手配が難しくなる。日本戦車に精通するマニアに知り合いはいるのだが、気分屋な性格の人のため、協力してくれるかどうか、それが問題だった。
「比較的綺麗な状態でござるから、修復も容易でござろうな」
「いや、三式中戦車のパーツってあんまし流通してないんだよな。専門の業者に頼んだら俺達の予算すべて掻っ攫われるかもしれないし……叔父さんに頼るしか無いのかね……」
「あの変人の叔父さんでござるか……」ハルは叔父さんという単語を出した瞬間に顔をしかめる。
他三人はキョトンとした表情になるが、マッコイとハルの表情は徐々に渋くなっていく。
あの叔父さんというのは、日本日本戦車愛好連盟会長、松本高志その人、そして、マッコイの叔父さんだ。マッコイがティッシュペーパーから戦車までなら、叔父さんは日本戦車のネジから幻の四式中戦車、五式中戦車までという超弩級の日本戦車好きの変態だ。多分、三式中戦車のパーツは腐る程に取り揃えていて、無いなら作っているだろう。だが、この人は本当に気分屋でコレクションに余裕がなかったら何も与えてくれないような性格の人だ。協力してくれるかどうか、本当にわからない。
「……ダメ元で連絡してみるか」マッコイは気乗りしない表情で携帯電話を取り出して登録されている叔父さんの番号にかけてみる。すると1コールで電話に出た。
「どうしたんだいコウちゃん、面白そうな日本戦車見つけた?」
マッコイは物凄く渋い表情になりながら、三式中戦車のパーツが余っていないかを尋ねる。
「どの部分が欲しいの? エンジンパーツなら腐る程あるから大丈夫だけど。というか、作ってる」
「エンジンの消耗品を少々と砲塔の旋回装置」旋回装置の故障と聞いた瞬間にごめん、それは余ってないかな、と、冷たい口調で帰ってきた。ああ、これは貰えないパターンだと察して、そのまま電話を切ろうとする。が、叔父さんが一つ余ってるのあったわ、と、言った瞬間に切ることをやめた。
「三式中戦車の砲塔旋回装置は無理だけど、二式砲戦車の砲塔は普通にあるよ。三つくらい余らせてる。砲は駆逐戦車(甲)仕様の57 mmを付けるね。あと、オークションで間違えて買っちゃったM22軽戦車もあげるよ。日本軍鹵獲仕様のM3軽戦車って書いてたのに送られたのはM22軽戦車なんて笑っちゃうよね」
一式中戦車、二式砲戦車、三式中戦車の車体は共通している。砲塔は少しの加工で取り付けられる。三式中戦車の砲塔は重たいから、機動力に悪影響を及ぼしている節があるが、二式砲戦車の砲塔を付ければ機動力が改善され、ディーゼルの燃費も享受できる。四号はなんやかんやで燃費が悪い。
「じゃあ、大洗にそれらを送ってください。お金は」
「その三式中戦車の砲塔と砲でいいよ」
「いいんですか? それだと結構な赤字に」
「お金なんてどうでもいいんだよ。腐る程持ってるし」
マッコイはそうですね、と一言返して電話をきった。なんだろうか、あの人のペースに飲まれたら何も出来ないと心の底から思ってしまった。だが、必要なパーツとおまけで戦車まで貰えた。色々と目まぐるしいが、事態が好転したことに胸を撫で下ろす。
「交渉成功、あの人やっぱり苦手だわ……」ぐったりと苦い表情を見せる。ハルは叔父さんのことを多少なり知っているので、背中を撫でて介抱する。
「で、どのくらいの収穫があったのでござるか?」
「ああ、三式中戦車の形は失ってしまうが、二式砲戦車の砲塔と57 mm砲を送ってくれるって言ってる。駆逐戦車(甲)の仕様だな。あと、M22軽戦車もおまけでプレゼントしてくれるとか」
「おお、五両目はイナゴでござるか」またガソリン車だよとマッコイは苦笑いを見せる。
マッコイとハル以外の三人はマッコイが本当に凄い家の出身で、凄い人と知り合いなんだなぁ、と心の底から思った。
5
「やあやあ、最近は生徒会室に来ること多いねぇ、何かあったの?」会長はマッコイの登場に少し疑問を抱きつつも、明るい歓迎をしてみせた。マッコイの方は苦笑いを見せて、
「知り合いから戦車を譲ってもらったんですが、リースか学校の保有にしないと補助金が出ないので、どっちにするか生徒会の方で決定してもらわないと」
「え、実家から戦車持ってきてくれたの?」流石に戦車整備工場の次男坊でも自分の一存で戦車を持ってきたりすることが出来るのだろうか、少し疑問を抱きつつも、彼がこの学園に持ってくる戦車の資料に目を通す。
M22軽戦車 Locust、アメリカが製造した空挺戦車だ。まあ、アメリカ本国が使用する目的ではなく、イギリスの要望で製造された部分が強い。
会長は少し考えて、マッコイに質問を投げつける。
「リースと学校保有、どっちが使い勝手がいいの?」
「リースだったら国からの補助金で借りられることになりますし。取り押さえられた時は貸してる側に車両が戻るだけで済みます。学校保有だったら国からの補助金が学校側に入ってきて、生徒会側が決済やら色々とやらないといけなくなりますね。個人的には、リースという立場で国からの補助金を受けて、その補助金を全部戦車道部の経費にあてたいところなんですが」会長は考える、大洗女子学園の財政はそこはかとなく危うい。ここは学校保有という形にして一円でも予算を確保しておきたいと。
「うーん、こっちも財政厳しいから学校保有にさせてくんない?」マッコイはわかりましたと返事を返す。会長は判子を押した。
マッコイは一礼してから生徒会室を離れた。
「まさか探すだけじゃなく、戦車を引っ張り出してくるとは。奴の行動力は底なしですね」桃は会長にそう言葉を投げかける。会長も静かに頷いて、物事が上手く運びすぎて怖いくらいと弱音を吐いてみせた。
to be continued
【おまけ】
松本高志、四十五歳、一児の父であり、日本日本戦車愛好連盟の会長を努め、職業は投資家を名乗っている。無類の日本戦車好きであり、彼の家の地下には幻の日本戦車が数多く眠っている。その最たるものが彼の目の前で見事に輝いている四式中戦車だ。池に沈んでいるという噂を聞きつけた彼が一人で潜って探し当てたらしい。多くの調査団が探し当てられなかった戦車を見つけ出した彼の勇姿に世界各国の日本戦車ファンが泣いた。そして彼も泣いた。
付け加えて、四式中戦車をおかずにご飯三合は食べたらしい。夜のおかずにも。
「パパは本当に戦車が好きだよね」今年で小学三年生になる長女の葵が彼の隣に立って四式中戦車を眺める。
「葵は日本戦車好きかい?」即答で弱いから嫌いという返事が返ってきた。これは父親でも苦笑い。
彼は静かに四式中戦車の装甲を撫でて、狂おしい表情を娘に見せる。流石に小学三年生とはいえど、父親の奇行に引いてしまっている。だが、日本戦車に関わっていない時の父は普通の人間だから嫌いになれない。
「この四式中戦車はシャーマンにすら負ける雑魚、五式もペラペラの雑魚、その後ろでデカい図体してるオイ車も基本的には雑魚、故障魔神。だけどね、僕はそういう日本戦車の欠点だらけのところが大好きなんだ! 葵も僕の遺伝子を受け継いでいるからすぐにそうなるよ!!」
「ぱぱ……嫌いになるよ……」
「ごめんなさい……」
【松本高志】
日本日本戦車愛好連盟会長。職業は投資家で、色々と金持ち。自宅の地下には日本戦車展示スペースがあり、幻の四式中戦車、五式中戦車、オイ車やら色々とキチガイじみたラインナップが揃っている。仕事をしている時は真面目な人なのだが、プライベートは奇人である。
8800~9500文字くらい安定かな?