男達の戦車道   作:那由他01

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 ももがーが原作基準で一年生だということを知らないで作品を書いていました。

 この話しもももがーが居ることを前提で書いていたので、ももがーの描写を全部切り取って、優花里を操縦手にしました。

 ですが、速攻で書き直したので、ももがーの描写が残っている可能性があります。

 その場合は報告してくれたら嬉しいです。


04:練習試合

 新聞部の五人は青褪めた表情を見せながら、四号戦車に乗り込んでいた。

 

「正直、頭痛くなるよね……取材料高いよ……」車長の赤岩が涙を溜めながら呟く。

「赤ちゃんのせいだよ……戦車道部の男子を取材しようなんて言った」装填手の青峰が溜息を吐き出した。

「発案したのは青ちゃんじゃなかった?」通信手の黄瀬が青峰を指摘する。

「運転難しいんだけど……」操縦手の緑野が目を回しながら操縦桿を握る。

「全部全部、政治が悪い……」砲手の黒田がすべてを放り投げて気を落としていた。

 

 新聞部に所属している一年生。入学してまだまだ一ヶ月とちょっとしか経っていないが、面白い記事を書けていないと新聞部部長百敷に怒られてスクープの宝庫、戦車道部に足を運んだのだが、マッコイに丸め込まれて戦車に乗せられていた。

 

「「「「「取材料高いよ……マッコイ……」」」」」

 

 

 アンツィオ高校との練習試合が近い。流石に二両で練習試合は心細さを感じる。愛の囁きのおまけで聞かれた大洗側の車両数。二両と答えるとそれは部活として成立するのかと久し振りに病んでいないアンチョビの声を聞けて嬉しいと思えたマッコイだが、確かに二両では心細い部分がある。人数を割って三両連れていくのも出来ないことはないのだが、五人乗りの戦車なら五人、三人乗りの戦車なら三人と乗るべき人数と役割は決まっている。一人でも欠けたら戦闘に若干だが不具合が生じる。そう考えるとやはり二両が一番なのではないだろうか。

 

「どうもどうも、新聞部の赤岩と言います。取材いいですか?」カメラを構えた赤岩と他四人の新聞部に所属している生徒。マッコイはニンマリと悪い笑みを浮かべて三両目の乗組員が見つかったと心の中で呟いた。

「あら、新聞部の取材? お化粧直した方がいいかしら」汗で軽く化粧が剥がれていたロックが取材陣に生温い麦茶を振る舞う。その姿に苦笑いを見せながらもありがとうございますと麦茶を受け取りグビグビと飲み干した。

「まあ、四人だけの男子生徒と突然結成した戦車道部、取材されるのもわからないこともないでござるな」ハルは満足げにふんぞり返っている。男の娘大好きの性犯罪者が居たら即座にハイエースに連れ込むだろう。

 

 マッコイ倉庫から四号戦車を連れてきてニンマリと見せつける。新聞部の一年生は写真を取りマッコイとは真逆の方向性の明るい笑みを見せる。マッコイは今度試合があるんだけど、間近で見たくない? なんて色々な部分をへし折って試合のことを説明する。すると是非取材させてください! そう赤岩は名乗りを上げる。

 マッコイは静かに頷いて観戦の許可が必要だからこの書類にサインちょうだいと笑いながら五枚の書類を倉庫のダンボールの中から取り出して、ボールペンを手渡す。

 

「そこに名前書いてね」新聞部一年の一年達はマッコイのことを疑わず、自分の名前を書き記した。

 

 ロックはその書類を覗き込んでみると頭を抱えた。その書類は観戦許可の書類でも、外出許可証でもなく、戦車道部への入部届だった。この学校は兼ね部が許可されており、部に所属していても助っ人のような立ち位置で入部することは出来る。それを逆手に利用したマッコイの悪知恵だ。

 

「はい、戦車道部入部ありがとうね」五人から入部届を受け取った瞬間に眩い笑みを浮かべて入部を歓迎する。新聞部の五人はぽかんとした表情でなぜ戦車道部に入部したのか? なんて思い始めるが、赤岩は目を凝らして名前を記入した書類を見てみると普通に入部届と書かれていた。なぜ自分達はそんな初歩的なことに気づかなかったのだろうか、そう思い詰めるが時既に遅し。

 

 マッコイは見た目に似合わないスキップをしながら入部届をジャンクショップに投げ売られていた金庫の中に仕舞い込んで自己紹介をしようかと提案する。新聞部一年は冷や汗をダラダラと流していた。

 

「俺の名前は松本浩二、フレンドリーにマッコイって呼んでいいぜ」眩い笑みでマッコイ。

「ごめんね、うちの部長は強引だから。私は岩下六郎、ロックって呼んでいいわよ」苦笑いでロック。

「何がなんだかわからぬでござるが、拙者は春山春樹、ハルと呼んでいいでござるよ」少し違和感の残る表情でハル。

「僕は山崎新八……ジミーでいいよ……」悲しい表情でジミー。

「秋山優花里であります! 一緒に頑張りましょう!!」普通に入部を歓迎する優花里。

「……ぼくは猫田です。ねこにゃーと呼んでください……」ノートパソコンでオンライン戦車ゲームをしているねこにゃー。

「ぴよたんっちゃ!」協力プレイをしているぴよたん。

 

 新聞部一年は中々に濃ゆい面子が揃っているなと若干引き気味になるが、それでも入部したからには仕方がない。自己紹介をしなければならないと碇シンジ並の逃げちゃだめだ精神で一歩前に出る。

 

「新聞部所属の赤岩です」

「同じく、青峰です」

「同じく、黄瀬です」

「同じく、緑野です」

「同じく、黒田です」

「うんうん、これからよろしくね!」マッコイは一人一人と握手を交わし、満面の笑みを見せていた。

 

 これで三両試合に持っていける。だが、この子達は戦車に乗ったこともないひよっこ。練習試合は一週間後だ。もちろん生徒会から許可は降りている。

 

「じゃあ、練習しようか、練習風景はいくらでも取材していいよ」マッコイは笑みを見せて四号の装甲を撫でる。

「あ、はい」いつものようにカメラを構えて戦車道部の面々の写真を撮る。

「じゃあ、君達は四号に乗ってね。操縦は俺がするから。操縦手になる人は見て覚えて感じて、後、マニュアルよく読んで」マッコイの早速戦車乗ろうか宣言に冷や汗を流す新聞部五人。もう逃げられないことを感じ取った。

 

 

「松本くんも強引だねぇ、新聞部を騙して入部させるなんて」苦笑いを見せながら五名の入部届を受け取り判子を押す会長。流石に練習試合があるとしても無理矢理に入部を強要するとは思わなかったのだろう。

「練習試合がありますから乗員欲しくて。まあ、練習試合が終わったら退部してもらって構わないので」使い捨てはよくないよ、カイロじゃないんだからと会長からのツッコミに苦い顔を見せる。

 

 会長は新聞部の五人をどの車両に乗せるのかを確認する。マッコイは四号に乗せますと説明する。会長の方はあの時代のベーシックに近しい車両だから悪くない判断だね、そう告げて頷いてみせた。マッコイの方も扱いやすい車両ですし、拡張性も高いので初心者には持って来いですよ。そう明るく言ってみせた。

 

「それにしても、戦車整備工場の息子にもなると戦車道が根付いてる学校との繋がりが深いものだよねぇ」マッコイは苦笑いを見せて、確かにうちの工場を贔屓にしてくれている学校とは必然的に繋がりが深い関係になりますね。そう告げると会長はどの高校が一番関わり深い? 率直に尋ねてくる。

「そうですね、やっぱり地元ってわけで、サンダースとは関係が深いです。休みの日とかに職人さんと一緒に学園艦に行ったことあります。知り合いも沢山居ますし。今回練習試合をすることになってるアンツィオは一年前にお客さんになってくれたんですけど、整備の腕を買ってくれて、仲がいい知り合いがチラホラといます。知波単もレアな日本戦車を扱っているわけで、必然的にお客さんになってますね」会長は流石は日本で三番目に大きい戦車整備工場の次男坊だと感心して、何度も頷いてみせる。

「その話を聞いてると、今すぐにでも戦車道復活させたい気持ちにはなるねぇ。でも、国への申請や予算の確保やらで今年は出来そうにないなぁ」会長は渋い顔を見せた。今現在の学園艦の運営状況は何度も話しているが悪化の道を辿っている。だが、戦車道部が誕生して少しだけ首が回るようになっているのが現状だ。金の為に戦車道を復活させたいと表現したら聞こえは悪いが、どちらかと言えば、お金のためというよりは、戦車道を目当てに入学する生徒を募りたいと思っている。学校の運営に必要なのは学生が学ぶために落とす学費であり、国からの補助金がすべてじゃない。魅力少ないと呼ばれているこの学校を戦車道一点集中型の学校にするのは心苦しさこそ存在するが、魅力の存在しない学校よりもいくらかマシだ。自分が卒業しても、この学園艦が存続できるように行動するのが生徒会長、この学園艦の頭脳の仕事だ。

「戦車に乗ってみたいならいつでも訪ねてきてください。一杯車両あるんで、好きなのに乗せてあげますよ」その時は頼むよ、そう告げてニッコリと微笑んだ。

 

 

 今日は練習試合当日。新聞部の五人は飲み込みが早かった。四号戦車に無理くり乗せられ、数週間の練習を強要され、それでもめげずに練習を続けていたら、なぜだかマッコイ達と同等の実力を身に着けていた。元々の連携力が伸びた結果なのだろうが、これは部長であるマッコイも困惑する程だ。

 車両を業者に引き渡し、学校が所有しているマイクロバスを借りて練習試合に出る十二人を乗せてマッコイが運転席に座る。

 

【注意:ガルパンの世界は免許区分が曖昧です。】

 

「松本殿は運転も出来るんでありますね」優花里が不思議そうに尋ねるとマッコイは財布の中から免許証を彼女に渡す。するとその免許証を見た全員が口を大きく開けた。

「大型バイク、大型自動車、大型特殊まで……」マッコイはそらそうだろ、実家が実家だし、国から特殊許可もらって取得したんだと言った。すると優花里がバイクは特別使わないのでは、そう質問すると細々としたパーツを忘れた時にバイクで走らされるのさ、と、顔を青くしてマッコイは告げた。

「アレはマッコイ殿が中学三年生の時、職人が工具を忘れたからと長崎から千葉までバイクで走らされた冬。拙者も……後に乗せられていたでござる……」ハルの顔色も非常に悪くなる。

「CB1300SFだったからまだましだっただろ……あれが250ccだったら本当に死んでたぞ」マッコイも顔色を悪くする。

 

 実家が実家だと苦労するのだなとハル以外の全員が納得した。

 野太いバスのエンジンサウンドが響き練習試合の会場までマッコイの比較的安全運転で移動することになる。久々に戦車以外の大型車両を運転すると言うが、路線バスとまでは言わないが運転の丁寧さに驚かされる面々。ハルはというと久々にマッコイの運転する車両に乗っているな、そう静かに思っていた。

 

 

 

 バスを走らせて数時間、早朝朝早くから出発しただけあって、女性陣は目を瞑って安眠を貪っている。マッコイ以外の男性陣は事前の作戦ノートに目を配らせていた。一応は戦車道部を立ち上げた主犯格である自分達が彼女達を纏め上げないといけないという自覚が眠気を消したのであろう。

 

「相手は快速戦車を主軸とした高校、貫通力の低い機銃戦車が大半を占めているでござるな」ハルは相手が出してくるであろう車両、CV33の情報に目を通す。

「確かにCV33を軸に車両を揃えてくるだろうけど、M41型セモヴェンテはこっちが用意した車両全部の装甲を貫通する砲性能を持ってるね」ジミーは頭を掻きながら対戦車自走砲のセモヴェンテにどう対処するか考える。

「可愛らしい戦車なのに持ってるものはBIGなのねぇ」ロックは口紅を塗りながら横目で資料を眺める。

「大会じゃなくて練習試合なんだ緊張するな。おまえ達も寝ろ、どうせ寝てないんだろ」マッコイは無表情で三人に寝るように指示を下す。だが、三人は溜息を吐き出して練習試合でも勝ちを拾えるなら拾う主義なのだと告げる。するとおまえ達も好きだねぇ、そう返事が返された。

 

 高速道路から降りると見るからに田舎の盆地に辿り着く。ここが今日の試合場所だ。

 女性陣も目的地が近くなるとポツポツと目を覚まし始め、大きなあくびが転々と広がる。そして駐車場にマイクロバスを止めると見知った顔がチラホラ、サイドブレーキをかけ、結構疲れたと一言弱音を吐いてから降車する。

 

「やあ……マッコイ……久しぶりだな……」艶めかしい声色でマッコイに話しかけるアンツィオ高校のデゥ―チェアンチョビ。声をかけられた張本人の方は何かしらの危機を感じたのか顔を引きつらせている。

「姉さん……元気だった。病気してない?」そう告げると病気はしていない、だが、強いて言うなら恋煩いをしているかもな、と、ハイライトの存在しない目を流す。二人のその姿を見ていたハルはレベル3だと心の中で呟いた。そして、レベル3ならまだマシか、そうとも呟いた。

 

 

 マッコイはこの雰囲気を打破しようとアンチョビ以外の生徒達に声をかけて握手を交わす。そして最後になぜだかアンチョビが迫り、両手を恋人繋ぎで握られた。これは握手なのだろうかと顔をもう一度引きつらせるマッコイだが、実家のお得意様の一人なので何も出来ない。

 ハル以外の戦車道部全員は色男には修羅場が付き物なのだと再認知させられていた。

 ようやく両手のホールドが解かれ、マッコイはバックステップを駆使してアンチョビと距離を放す。

 

「もうこの手……二度と洗わない……」そうやって右手をぺろりと舐めた。アイドルの追っかけでもここまで気持ち悪くないよ、そう思ったが、誰もそんなこと言えるわけがなかった。

「で、でで、で、姉さん……そっちは六両なの?」冷や汗をダラダラと流しながら質問するマッコイ。

「アンツィオの車両は装甲が薄いからな。だが、そっちは戦車に乗って間もない新人揃い。そう考えると倍の車両数が一番フェアだと思ってな」いつもの姉さんに少しだけ戻ったかと安堵の溜息を一つ。

 

 大型トラックが戦車道部の車両を運び入れる。少し遅かったな、そう思いながらも自分達が乗る戦車が無事に到着して一安心。今回戦車道部が用意した車両は、駆逐戦車(甲)、四号戦車、M22軽戦車と戦車道部の面々がいつものように乗り回している車両だ。

 

「よし、車両を定位置に移動させよう」マッコイはアンツィオのメンツに軽く敬礼して運び込まれた戦車に乗り込んでいく。

 

 車長席に座った瞬間にぐったりと項垂れて若干過呼吸気味になる。そしてキツイっすよ姉さんと小さな声で連呼する。その姿を無表情で眺める四人は因果応報なのだろうが、少し可哀想に思えるな、そう思った。

 マッコイの精神疲労が若干回復し、携帯無線機を手に取り各車両に連絡を入れる。

 

「練習試合だが、相手は小型軽量な車両が多い。機銃戦車のCV33で誘い出しを行って対戦車自走砲のM41型の射程に誘い出す作戦に出てくると思う。だから無闇矢鱈にCV33を追っかけるな、ただ、M41型を発見したら容赦なく追っかけろ、ただ、正面から撃ち合うなよ」セオリー通りの作戦を通達する。全車両から二つ返事でわかりましたと声が響く。

 

 マッコイはマップを片手にCV33が誘い出しを行いそうな場所に赤マーカーでチェックを入れる。左右両方に小高い丘と隠蔽率を底上げする雑木林、確実に両方に潜んでくるだろう。アンツィオが用意した車両はCV33が四両とM41型セモヴェンテが二両だ。

 

「はじめての練習試合だからな、焦る気持ちを極力持つな。冷静に状況を把握しろ。把握できなかったらこっちに連絡入れろ」大洗側の車両に最終通達を入れて一言、戦車前進、勝ち拾って帰るぞ。

 

 

 アンチョビは乗り慣れたCV33に乗りマップを確認する。M41型をセオリー通りに雑木林に移動させ、自分達が陽動を行う準備を行っていた。だが、マッコイ程の乗り手がこの程度の陽動作戦に引っかかる訳がないと理解している。なぜ、このような普通の陽動作戦を提案したのか、それは……。

 

「マッコイの陰部は右曲がりだからな……右側のセモヴェンテを狙ってくるだろうさ……」彼女がマッコイの陰部の事を話した瞬間にマッコイは悪寒を感じた。そして、本当に右側の雑木林に潜んでいるM41型を処理に動いていいのだろうかと自問自答を繰り返した。

 

 アンチョビが考えていたのは自分が乗り込んでいるCV33をマッコイ達が乗る駆逐戦車(甲)に差し向け、そして、処理に動いる筈のM41型に処理させるという若干リスキーな作戦だ。だが、彼女は色々と恋狂っていった。マッコイに倒せれても快感で、マッコイを倒せても快感。色々とアレだった。

 

「で、姉さん。どうしてこんな危険な賭けに出たんッスか? 確かに相手の隊長を叩けば試合が楽になるのはわかるんッスけど、その逆の隊長車両以外を倒した後に数の暴力で畳み込む方が安定してるんじゃ……」操縦手をやらされているペパロニが率直な質問を告げる。するとアンチョビはマッコイを甚振るのは私の特権だと艶めかしい声で告げた。よくわからないという表情になりながら、そうなんすね、と、明るく返事をした。彼女は世渡り上手なのだろう。

 

 

 

 所変わってここは四号戦車の中だ。二週間足らずの練習で頭角を表した新聞部の五色のメンツは熟練の操縦者を思わせる表情で一人一人の仕事をこなしていた。戦車長のレッド赤岩はマップを確認し、アンツィオのCV33が仕掛けてくるであろう座標にマーカーで印をつける。もちろんマーカーの色は赤だ。

 

「もうそろそろ仕掛けてくるだろうから気を引き締めて、青ちゃんは本気で狙って、黒ちゃんは相手が仕掛けてきても追っかけないで、一旦停車して青ちゃんが狙いやすいようにアシストお願い」的確に指示を飛ばし、キューポラから身を乗り出して双眼鏡を使用し、辺りの様子を確認する。

 

 赤岩が通信手緑野にハンドサインを送る。そのまま緑野がマッコイ達が乗る駆逐戦車(甲)に連絡を入れる。マッコイが応答し、相手車両を発見したのかと尋ねた。もう一度赤岩のハンドサインを確認すると一両発見を意味していた。

 

「そこから狙い撃てるか?」マッコイが冷静な口調で撃破可能かの有無を確認する。

「微妙みたいですね、砲撃の練習は三日しかやれませんでしたから」そう告げるとマッコイは威嚇でいいから一発撃って相手を動揺させろと告げる。

「マッコイから通達、当たらなくてもいいから一発だって」赤岩は少し考えて徹甲弾から榴弾に切り替えてと装填手の黄瀬に命令を下す。

 

 赤岩が相手車両が存在する場所に砲塔を旋回させ、打ち方はじめと声をかけた瞬間に榴弾の炸裂音が響いた。結果的には命中こそしなかったが、榴弾特有の爆発によって履帯が外れて身動きが取れない状態になってしまっている。だが、修理を行えば戦線復帰が可能な破損なので嫌々もう一発徹甲弾を打ち込んで白旗を出させる。

 

「こちら四号戦車通信手緑野、相手車両一両撃破。このまま敵の殲滅に動きます」緑野が全車両に通信を入れるとお見事と各方面から激励の言葉が帰ってくる。

「じゃあ、虱潰しって言ったら聞こえが悪いけど、四号がこっちの戦力として一番強いから全力で頑張るよ」車長の一言で燃え上がる新聞部の面子であった。

 

 

 CV33が一両落ちて相手は残り五両、作戦を変えてくるのではないかとマッコイは考える。だが、機銃戦車のCV33で大洗側の車両の装甲を貫くことは出来ない。やはり、作戦としては王道過ぎるが、比較的安全な場所にM41型を潜ませてくる。それか一両だけ忍ばせて、残り三両のCV33と同伴して足りない火力を補ってくる可能性も否定できない。

 

「ん? エンジン音……CV33か」キューポラから顔を出して辺りを見渡す。するとアンチョビがニンマリとCV33から顔を出してマッコイを見えていた。ひッ!? と、女の子のような声を上げてしまうが、深呼吸三回で平常に戻る。

「何か見えたでござるか?」ハルがそう質問すると、雑木林を縫うように抜けてる。多分、俺達を誘い出してM41型に処理させようと考えてるんじゃないか、そう返答する。

 

 誘いを受けるかどうかを瞬時に考える必要があるが、こうも容易に相手側の隊長が突っ込んでくるものだろうか? 隊長の車両同士の殴り合いは戦車道の醍醐味ではあるが、彼女達が乗り込んでいるCV33は自分達が乗る駆逐戦車(甲)より断然装甲が薄く、砲も機銃で貫通力に欠ける。だからこそ必然的に誘い出しからの撃破を狙うはず。だが、地図を確認する限りアンブッシュしているであろう場所まで距離がまだある。

 

「……男は女の尻を追っかける生き物だからな、誘いを受けるぞ」賭ける必要のないギャンブルに出るのは男の特権と言ったものだと小さく呟いてジミーに舵を切らせる。

 

 アンチョビはニンマリと嬉しそうな笑みを浮かべて全速力でM41型がアンブッシュしている雑木林まで突き進む。マッコイも笑っていた、交流戦という枠組みにはなっているが、部としての初めての戦車道。普段勝ち負けなんて考えないで突き進む彼にとって、久しぶりに感じる勝ち負けを天秤にのせ考える戦い。男として一番失ってはいけない勝負師の度胸が彼を奮い立たせる。

 

「マッコイ……最高にかっこいいぞ……」

「姉さん、本当に俺のことを良くしてるな。生粋の勝負師で、負ける可能性なんて一ミリも考えないってこと」男の本質、それは最終的に勝負師であること、勝負することが男としての本能。不利だろうが、有利だろうが、勝負することに意味を感じるからこそ、男であると考える美学。

 

 マッコイは一対二の戦闘に備えろと宣言し、瞳に炎を灯していた。全員が了解と大きく声を上げ、完璧な戦闘態勢に突入する。

 戦車長兼ね通信手、松本浩二。

 砲手、春山春樹。

 装填手、岩下六郎。。

 操縦手、山田新八。

 練度十分、初めての実戦とは思えない領域に達していた。

 

「マッコイ……勝負だ!」アンチョビは強い笑みで宣言する。

「姉さん、今の姉さん最高にかっこいいよ!」マッコイも強い笑みで宣言。

 

 アンブッシュしていたM41がCV33がクロスするように現れ、至近距離で駆逐戦車(甲)を撃破しようと突っ込む。だが、ジミーが弾道を予測したかと言わんばかりの操縦によって、打ち出された弾は掠めることなく後方に着弾する。

 

「砲塔旋回! M41を各個撃破……狙え!」

「了解でござる!」

 

 アンチョビはペパロニに超信地旋回を命じ、駆逐戦車(甲)の正面装甲に機銃を放つ、だが、機銃程度で貫通される甘い装甲ではない。マッコイはロックにハンドサインを送り、正面機銃で応戦してくれと指示を出す。即座にロックは機銃を手に取り、アンチョビが乗るCV33に狙いを定める。

 

「姉さん、この人達強いッスねぇ!」

「M41をやられたら勝ち筋が小さくなる、こっちも動くぞ」トリガーに指をかける。

 

 装甲に弾かれる機銃の甲高い音が雑木林に響き渡る、これが戦車道であることを戦っている三台の乗員にわからせ、そして、エンドルフィンを分泌させる。戦車に乗るものだけが感じられる境地、それがここに存在していた。だからこそ、戦車道は人々を魅了する。

 

「ジミー、CV33は確実に履帯を外しに側面に回り込む! 方向は足で指示するから間違えるなよ!!」

「わかってるよ!」

 

 転輪を狙う為に行動を開始するCV33、確実の砲弾を当てられる距離に詰め寄るM41、その両方を対処する駆逐戦車(甲)、すべての戦車が自らのポテンシャルを遺憾なく発揮している。

 

「射線に入った!」射線に入ったCV33に砲弾を打ち込む。

「ただで終わらせないぞ!」放射された機銃弾が駆逐戦車(甲)の転輪を撃ち抜き、そして、それらを外す。

 

 マッコイはキューポラから顔を出し、M41の砲塔の向きを確認する。そして、ギリギリ間に合うとハルに砲塔旋回を命じ、そして、次弾装填と同時に二つの砲から弾が放たれる。

 白旗が上がった三台、二対三の構図が出来上がった。

 

 

「マッコイ負けちゃったみたいだにゃー」ねこにゃーは地図に赤いマーカーで丸を描く。

「でも、二台も倒してくれたみたいちゃ」ぴよたんはマッコイの功績を褒めた。

「どこに行きますか?」優花里はねこにゃーの指示を待つ。

 

 車長のねこにゃーは少し考えて、マッコイ達が撃破された雑木林の少し手間の草原に行くように指示を出す。優花里は了解と一声かけて、全速力で指示された地点に足を運ぶ。空挺戦車として運用されたM22は60km近い速度で駆け抜ける。

 ねこにゃーは瓶眼鏡を外し、双眼鏡で辺りを確認する。すると履帯の痕跡を発見する。そして、痕跡がどこに続くかを地図を見て確認そして、それがまだ倒されていない車両だということを肯定させる。この痕跡はマッコイ達の駆逐戦車(甲)が倒された雑木林ではなく、その先の小高い丘に続く。

 

「もしもし、新聞部さん? 履帯の痕跡を発見したから、一緒に倒しに行かないかな……」無線機で四号戦車に連絡を入れるとM22は装甲が薄いから高原を狙える雑木林に行って抑止力になってと説得される。ねこにゃーは少し考えて、その意見を受け入れた。

「で、どうしますか?」ねこにゃーはマッコイが撃破された雑木林の反対側でM41を撃破しに行くと告げると優花里は了解と告げて、雑木林に舵を切る。

 

 雑木林に到着するとねこにゃーの第六感が反応し、木陰に隠れて、そう叫ばせた。そして、優花里が木陰に舵を切った瞬間にその木に砲弾がぶつかり、鈍い音を響かせて倒れていく。

 

「装填時間があるから、出来る限り詰め寄ろう……」ねこにゃーは前進の指示を出して、優花里は木を盾にするように移動する。

 

 発見、その言葉が響いた時には、もうこちら側の砲から弾は発射されていた。

 

「履帯に当たったっちゃ!?」放たれた砲弾はM41の履帯に当たり、旋回不可能になっている。

「大丈夫、ゲームみたいに一瞬で治るわけじゃないから、確実に倒しに行こう」冷静にM41の背面にまわり一撃で撃破した。

 

10

 

「残りは機銃戦車だけだから安心して倒しに行けるね」赤岩が双眼鏡を片手にそう告げる。

「一応、機銃でもエンジンにヒットしたら負けちゃうから、絶対に油断しないでね」緑野が油断するなという感じで赤岩の発言をいなし、警戒心を忘れないでくれと告げる。

 

 二つの双眼鏡の光がキラリとひかり、それが交戦の合図になる。

 

11

 

 戦闘終了、最終的には戦車道部の勝利になった。勝因は早い段階からM41を撃破出来たことにあるだろう。マッコイは業者に戦車の運搬を頼んで、戦車道部の11人の元に戻る。

 

「いやはや、新聞部チームがMVPだわ」マッコイは若干申し訳なさそうな表情で新聞部の五人を見つめる。

「思いの外、善戦できました」赤岩は袖で汗を拭う。

「楽しかったか?」マッコイが質問すると全員が楽しかったと笑顔で言った。

 

 今回の練習試合、確かに強い一歩になったと空を仰ぐ。

 

「マッコイ、今日は完敗だ。戦車道部の面々を少し侮っていたようだ」アンチョビが苦い笑顔を見せながら、マッコイと普通の握手を交わす。

「今日は俺達に風が吹きました」

「じゃあ、今度は私達に風が吹くだろうな」アンチョビはマッコイの首に手をかけて、口づけを交わす。

 

 あらら、という表情でマッコイは頬を人差し指でかく。

 

「今日は早く帰らないといけないんだろ、だから、作戦はお預けにしておくぞ」マッコイはなにの作戦なんですかねぇ、と、乾いた笑い声を響かせた。

「じゃあ、アンチョビ姉さん、また試合したくなったら連絡入れますね」

「ああ、今度はこっちの車両全部持ってくるさ」それは怖いと笑みを浮かべる。

 

 

 

【おまけ】

 

「姉さん、なんかする予定じゃなかったんッスか?」ペパロニがアンチョビが持ってきた重々しい鞄の中を覗き込むすると手錠やロープが詰め込まれている。

「なんというか、今日は晴れやかだから、行動に移せなかったのさ」アンチョビは唇を人差し指でなぞる。

 

 そして、心の中で、今度、二人になったら行動開始だ、そう、呟いた。

 

 

【挿絵表示】

 




 一万一千文字、読み応えがあると思います。

 流石に一万文字近い文章を作るのは骨が折れますので、少し時間をいただきます。
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