なーんて事はだれでも思うテンプレ&テンプレ。
けど、俺の遭遇したそれはちょっと毛色が違った様だ。
さてと、さくっと行きますか?勇者様よ?
少し時間が空いたので、昔書いたプロットを再構築してみました。
「マサルが事故に遭った……」
「はぁ!?」
俺が自身の親友『
電話してきた友人の話しでは部活の帰りに、偶然トラックに自転車で衝突したらしい。
マサルとは、お互いの名をニックネームで呼び合う仲だし、小学生の頃からの親友だった。
自慢に成りそうだが、アイツは俺よりずっと上等な人間だ。
勉強、スポーツ、ルックス、そして性格。どこの完璧超人だ?って良くからかったモノだ。
しかしそんなマサルが今、不幸な目に会っている。
俺は病院の場所を聞き、財布も持たずに走り出した。
さて、ここで大きく話が変わるが……
『異世界転生モノ』のラノべを読んだことは有るだろうか?
まぁ、読んだ事はなくとも……
健全な若者たち、または妄想世界に生きる者は夜布団に入ってから寝付くまで頭の中で……なーんて、事もあるだろう。
死んで気が付いたら、異世界!!剣と魔法と欲望渦巻くファンタジー……
そんな世界で、チートな力もらってさ。
伝説の剣とか?禁断の呪文が書かれた魔導書とか使ってさ?
プライド高めのお嬢様倒したり、天才とかエリートとか呼ばれるいけ好かないイケメンぶっ倒したり?
何もしなくとも、女の子がよって来たり的な?ハーレム作ったり的な?
んでもって。
政府転覆、世界征服たくらむ組織の刺客に狙われたりな?
ああ、ドラゴンとか悪魔との契約も忘れちゃいけないよな?
ちなみに契約すると美幼女になるタイプで。
……なんだよ、俺の趣味だよ!!悪いか?
まぁ、いい。話をもとに戻そう。
俺も?健全な男子高校生なわけで、そんなのに憧れていた時期もありましたっと。
何で過去形かって?そんなの決まってる……
マサルのせいだよ!!
「ここに居たか!!戦士ドルドよ!!」
さわやかなイケメンボーイが俺に話しかけて来る。
戦士とか言っちゃってる、非常に残念な生物が俺の親友、富忠 優…………のハズだ。
病院でマサルを見舞った時、コイツは俺にこう言った。
『ん?おお!!戦士ドルドではないか!!魔王へブルグランに致命傷を負わされ、戦線を離脱したお前がなぜここに!?』
一瞬世界が凍ったね、マジに。
理解できないってか、理解したくなかった。
だってよ?親友がおかしなこと口走るんだぜ?
戦士?魔王?戦線離脱?何それ、現代日本にそんなの有るの?
幸い医者の見立てじゃあ、特に体に異常はないらしい。
どう見ても頭がやられてる様だが……医者には解らないらしい。
県立病院もアテにならない様だな……
さて、頭が痛くなるのはここからだ。
俺はいろいろと、詳しく話をコイツから聞くことにした。
なぜ、そんなことを言い始めたのか?一体何の冗談なのか?
怖い物見たさ的な、興味もあったしな。
「なぁ、お前はダレなんだ?」
「おいおい、ドルド。何を言っている?
俺は、マエルフリート・サンン・ルシフルに決まってるじゃないか!?
一回は魔王へブルグランの生命を操る禁呪から世界を守る為に一緒に戦っただろ!?」
「すまん、いつの話だ……?えっと、あと名前長くない?
あ!頭文字続けるとマサルだ!!細かいな、設定……」
現実逃避気味に俺は自己完結した。
だが、どう見ても現実は残酷なままだった。
マサルは何度聞いても自分の事を勇者だって言い張るし、突然空中に向かって謎の詠唱をした後に『なにぃ!?禁呪が使えん……まさかアンチ魔術結界が広域に!?だが、俺の目を逃れられる結界など……』
とか、割と真剣に言ってる。
どうしよう?そんなセリフが俺の頭に自然に浮かんでいた。
それはマサルが、学校に戻っても変わってくれなかった。
「貴様ぁ!!我が魂、天神剣『ティルノ・ペリュンオン』に触れるとはどういう事だ!!」
クラスでも、人気者のマサルは当然そのケガの噂が広がっていた。
中には心配している、女子(俺が片思い中だったあの子)もいた。
それは男子も変わらずで、お調子者の猿田がなぜかマサルの持っていた鉄パイプを指摘した瞬間マサルは切れた。
「何時如何なる時でも武器を手放さない!!それこそが勇者の矜持!!
やすやすと俺の武器に触るな!!」
余りに真剣なマサルの声に、クラス全体が一瞬にして
うん、やっぱりおかしい。
それはそれと、俺の片思いのあの子に至ってはへたり込んで泣き出してしまった。
マサルの異変は授業が始まっても変わってくれなかった。
古文の広岡(通称ゴリ岡)がクラスメイトに、現代語訳させ始めたときは教科書を見て。
「コレは!?古代文字のテキストだと!?まさか、此処は古代呪文を全員の取得させているのか……?
危険だ!!こんな人数でヤレば、古代魔法が相互抵抗を見せて多重術式の混濁詠唱が――」
なんて言ってる。
ゴリ岡は完全に目を点にして教科書を床に落としていた。
「なんだこの世界は……魔物も居ないし、魔王も姿を見せない……
人は解放されたはずなのに、なぜ皆この様な苦しそうな顔をしているのだ?」
マサルが道行く人間をみて、不思議そうに話してた。
鉄パイプを装備した高校生のセリフがコレだぜ?
怪しいお薬の関与を疑っちまうよな。
「苦しいってのはどうかな?別に戦争してる国と違って街中で撃たれる事は無いだろうし、明日の飯に困ったり寝るとこに困る奴は、一部を除いていねーよ?」
「戦士ドルド!!貴様何を言っている!!争いだけじゃない!!皆が笑顔で幸せに生きる世界じゃないと意味がないのだ、わかるか?
日々幸福を噛みしめ、そして――」
「ああもういい、もういいから」
俺は頭が痛くなってきて、マサルの言葉を遮った。
正直言って耳が痛かった。
分かってる、そんな事。とっくの昔に知ってることだ。
今の生活は、活力が無い。
なんでもほしい物が手に入る今の世の中。
必死こいて何かするなんて、バカバカしくてやってらんないって奴だ。
少し年上の大人どもは『ゆとりはダメだ』の一言で掛け合いもしない。
そこもわかる。
自分たちが必死こいて、勉強を詰め込みさせられたのに、若い奴らは「ゆとりが必要」とか言われてぬるま湯に漬かったような生き方をしてる。
それを叩けるチャンスが来れば当然俺も叩く。
叩かれても、あきらめがすぐにつく俺ら。
そんな奴らばっかりが充満してたら、(ほんとかどうか知らないが)マサルみたいな別の世界から来た奴にはこの世界はさも異様に映るのかもしれないな……
「なぁ、マサル」
「ん、なんだ戦士ドルドよ?」
まだその呼び方かよ……いい加減にしてほしいぜ。
俺の本名は――
ドン!!
俺は突如走り出した、マサルに突き飛ばされた。
「何する――」
そこまで言って、俺の世界はスローモーションへと変わった。
陸上部もびっくりのスピードで走るマサル、カードレールを足場にしてそれを蹴ってさらにスピードを上げる。
俺の視線の先には、小さな女の子。
止めろ、それはベタすぎる。
そんな俺の思いを無視して、そのこにトラックが突っ込んでくる。
そう、マサルはそこに向かってなんの躊躇もなく飛び出したのだ。
声が出ない、足が動かない。マサルを連れ戻すべきなのに、大切な、一生に一人出会えるか否かの大切な人なのにそれでも俺の体は硬直したままだ。
どうしたマサル?俺の硬直の魔法でもかけたのか?
あきらめじみた脳が下らない冗談を思いつく。
だが現実は大まじめで。奇跡的に助かったマサルに再び襲い来る逆境。
だめだ。奇跡なんて2度も起こってくれない。
しかし、そんな風に悲観する俺をマサルの声が遮った!!
「うおぉおおおお!!秘儀!!ライジオン・シュレイヴァー!!」
何かの技か、戦い方か知らないが、マサルは女の子を抱いて華麗に地面を滑っていく!!
大型トラックの下をすりぬけ、俺の前で立ち上がる。
「ま、マサル、心配させんなよ!!馬鹿なことすんなよ!」
うれしさをこらえて、俺は必死になってマサルを罵倒した。
そうしなきゃいけない気がしたからだ。調子に乗られてまたやられたら俺の心臓は持たない。
「ふん、ずいぶん腑抜けたな戦士ドルドよ。
あの程度、魔火山ギオルヴェ・ビィドの罠の方がまだ大変だったぞ?」
なんて、くだらない事を言ってくる。
認めたくはないが、本当にこいつは勇者なのかもしれない。
魔王も、魔族も剣も魔法無いけど、こんな時代にこそ勇者は必要なのかもしれない。
俺はそんな風に思った。
「おい、大丈夫か?怪我ないか?」
すっかり忘れていたが、俺はさっきの事故にあった女の子を起こしていた。
見た所足を少し擦りむいた程度だが、頭とかを打ってない確証はない。
幸運なことに、その少女はゆっくり目を開けてくれた。
いや、
「ここは――」
「大丈夫か?あっちのマサルがお前を助けてくれたんだぜ?」
状況が読めない少女に俺が説明する。
まぁあれだ、俺は小さな女の子には優しくすることにしてるんだ。
「助けた?我を?くくくくくくはははっはっはは!!!」
突如として笑いだすその子をみて俺は悪い予感がした。
止めろ。頼むからやめてくれ。
「愚かなり、勇者マエルフリート・サンン・ルシフルよ!!」
「ぬう!?貴様まさか――」
「くくくく……そう!!我名は魔王へブルグラン!!
長き輪廻の果てに!!この世界によみがえったぞ!!勇者よ!!戦士よ!!
くは!!くはははっはははっは!!!」
「ああ!!蘭ちゃん無事でよかったわ……さ、お母さんと一緒に念のため病院へ行きましょうね?」
嗤う自称魔王、そしてそれに駆け寄る髪の長い女の人。
多分母親だな、若くて美人だ。正直いって俺の好みだ。
「ありがとうございますね。今度お礼に行きますから」
母親はそう言って俺に、自分の電話番号を書いて渡してくれた。
紙にまでどことなく良い匂いがする。マジやべぇ……
露骨な現実逃避を決め込み、俺は横目で魔王討伐を誓うマサルを見ていた。
いや、あれだよな。異世界転生は他所でやってほしいよな。
男、鈴木 明彦はトラック運転手である。
仕事の帰り、太った妻とまともに目を合わせてくれなくなったDQNの彼氏を持つ娘の待つ家へと急いでいた。
だが、ハンドル操作を誤り高校生とぶつかりそうになる。
危ないと思った次の瞬間、見たことも無い世界に来ていた。
「勇者さまお願いします!!」
罪のない人々の声援を受け、明彦は今日もアクセルを吹かす!!
「魔王へブルグランが消えても我ら、4大魔貴族は不滅!!いまこそ、世界を手中に!!」
「くらえー!トラックひき逃げアタックー!!」
今日もどこかで、ひっそりと誰かが転生してるかも……
因みに続きません。