「なぁ、アイツあの
「本当に?あぁ、だからここの施設に……。
(分かっていますよ。それくらい)
「なに言ってんだよ。ほら、この間あったじゃねぇか、子供を
「あぁ、そう言えばあったわね。でも、確かその親って情状酌量になったんでしょう?その後、子供を殺された
(五月蝿い)
「あぁ、ソイツも
「全くよ。オールマイトが現れてから、犯罪件数が下がったと思ったのに
(私の母親が現れずとも、犯罪件数なんて上がるものだ。)
(人間なんて、馬鹿ばかりだ)
「「早く、死んでくれないかな」」
(丸聞こえですよ)
(貴方たちの、心の声なんて)
何度も何度も読み返した本を閉じて、目蓋を下ろして目を閉じ、脚の間に顔を埋める。
目を閉じて、耳を塞いで仕舞えば何も知ることはない。
何も聞かない。
何も見ない。
(そうすれば、何も知らないですむ)
「移之君。君に会いたいって人が来てるよ」
頭上から声を掛けられて思わず顔を上げれば、そこには優しそうな笑みを浮かべたしわくちゃのおじいさんがいる。
移之が入れられた施設の施設長。
立ち上がり、施設長の後をついて歩く。
(この人は、嫌い……)
優しそうな笑みを浮かべているくせに、腹の中は真っ黒。
金のことしか考えていない。
「さ、移之君。この人たちが、新しく君のお父さんとお母さんになる予定の人たちだよ」
優しげな声で紹介され、顔を上げればどこかで見た顔が二つ。
「やっぱり……。初めて見た時から可愛いって思ってたのよ」
「君のお母さんが
女性の方は仕切りに移之の顔や、手を強い力で握ってくる。
フルフルと震える口角のせいで、無理矢理笑顔をつくっていることがバレバレだ。
男性の方は笑顔を浮かべてはいるが、目が笑っておらずまるで道端に散らばるゴミを見るかのような目付きで移之を見下ろしてくる。
(あぁ、そうですか。なるほど)
どこかで見た顔だと思っていた移之だったが、ようやく思い出せた。
「お子さんを殺されたことに対しての、復讐ですか?」
この二人は、移之の母親に子供を殺されたいわば被害者たちだった。
それまで、必死に笑顔をつくっていた女性の顔がグニャリと歪み、移之の手を押し潰さんばかりに握り締めた。
「何でアンタが生きて、あの子が死んだのよ!!!!!
ギャーギャーと餌を探し求める鳥のように喚きながら、移之の頬を思いっきり平手打ちをした女性は、男性に止められる。
それでも喚き続ける自分を叩いた女性に、移之は視線を向ける。
「何よ……、何なのよ、その目は!!!!!」
癇癪を起こして、移之へ掴みかかった女性に移之はヘラリと笑みを浮かべた。
視界いっぱいに女性の顔がある。
視界の端には、こちらを睨み付けている男性と面倒臭そうに事の成り行きを見ている施設長。
(やっぱり、みぃんな、馬鹿ばっかり)
「どうぞ、殴って下さい。蹴って下さい。貴方の気の済むまで」
振りかぶった女性の拳は、移之の頬へと迷いなく向かっていった。
目を閉じて、耳を塞いで仕舞えば何も知ることはない。
意識を切り離すことは、眠るより簡単なこと。
(私を殺したって、死んだ人間は帰って来ないんですよ)
「寝覚めが悪い、ですね……」
目を覚ましてみればここは確か……連れて来られたあの“バー”……ですかね。
今は一体、何時……なんでしょうか……。
カウンターに突っ伏していた上体を上げて辺りを見渡して見ても、時計なんてなくて、今が何時なのか全く分からない。
どうしましょうか……。
そう言えば、死柄木くんはどこに……。
「やっと起きたのかよ。途中で死んでるのかと思ったくらいだ」
黒い靄の中から死柄木くんがゆっくり現れた。
死柄木くんの個性は、ワープ、とかですかね?
「ふふふ。こう見えて、生命力には自信があるんですよ。死柄木くん」
死柄木くん。
そう呼ぶと、死柄木くんは私に向かって掌を伸ばしてきた。
何をしようとしているのか、分からず首を傾げると死柄木が出てきた黒い靄の中から人(?)が出てきました。
どこかで会ったきしたんですが、誰でしたか……。
う~んと悩んでいると、黒い靄の人(?)は死柄木くんとは違い丁寧な口振りで挨拶をしてくれた。
「申し遅れました。私の名前は
「そうですか。それはまた、面倒を……。そもそも、何故私なんかをあの施設から連れ出したのですか?」
私がそう問い掛けると、何かに電源の入る音がした。
後ろを振り返って見てみれば、そう大きくないテレビに電源が入っていた。
「あの……これ、は?」
私が言葉を漏らすと、黒霧
「貴方をあの施設から出してくれた、いわば貴方の恩人ですよ。私たちは
そうは言われても、私としてはあの施設に対する不満はこれっぽっちも無かったのですがね。
ですが、まぁ、そんなことを言って仕舞うほど教養が無いわけでもないので。
適当に「そうですか」と答えてみたり。
「随分と、適当だね。
テレビから流れてきた声に、私は笑みを浮かべてテレビへと歩を進める。
「……何かな?」
「いえ、ただ。よくもまぁ、面倒事を買って出たなと、思いまして」
後ろで死柄木くんの痛いくらいの視線が飛んできますが、今は無視させて下さいね。
「貴方は私に何か期待をしているのですか?母親を
ですが、きっと先生と呼ばれるこの人は、そんな事を思ってはいないのでしょうけれど。
「私に、復讐心などはございません」
「だろうね。君からは、
やはり、先生と呼ばれるこの人は、恐ろしいくらいに人の心の奥底を突くのがお上手なようで。
「では、何の見返りもなしに私をあの施設から連れ出したと?」
私がそう問い掛ければ、先生と呼ばれるこの声の持ち主は「いいや」と否定の言葉を上げた。
「君は、君の母親を死に追いやった
……この人は、末恐ろしいですね。
まさか、そんな事を聞いてくるだなんて……。
「君は、君の母親がどんな思いで
母親の事は施設にいた頃からずっと、言い聞かされていた。
凶悪な
けれど、まさか、
口元がゆるゆると緩んでいくのが、よく分かる。
自分じゃ抑えきれないくらいに。
「君に、
外の世界を知らずに育った者こそ、貪欲なまでに、探求するもの。
主人公は、
その影響で、
しかし、いざ出てみればあまりのちっぽけさに消沈。
先生の「
ってな感じです。