施設に関係者以外が入れないように“
施設の入り口、裏口は黄色のテープで入れないようになっていた。
しかもその両脇には、警察官が二人立っており施設の中へ入ることは容易ではなさそうた。
しかも警察官の他に
その光景を遠目に見ていたのは黒いフードを被った移之と、相変わらず血色の悪い顔をした死柄木だった。
「死柄木くん。これじゃ、施設に近付けませんね」
「知らねぇよ……。
ポツリと死柄木が零した言葉を聞いていないのか、黒いフードをユラユラと風に揺らして、施設へと視線を向けていた移之は、道路を通る一台の車が施設の前で停まった。
ドアが開かれるとそこには、しわくちゃな顔を僅かに歪めた施設長がいた。
「あ……」
思わず声を上げて仕舞った移之は、黒いフードから覗く目で施設長を追い掛ける。
「アイツ、誰だか知ってんのかよ」
死柄木の言葉に頷いた移之は小さく「施設長です」と、答えた。
しわくちゃな顔の高齢の男性は
施設長を取り囲むようにして報道陣が、マイクやカメラを向ける。
しわくちゃな顔の施設長は報道陣をグルリと見回した後に、グッと顔をしかめた。
「……
施設長の口から発せられた声色に、移之は首を傾げた。
記憶なある限りでは、施設長が移之に対して名前を呼ぶことはあったハズだが、しかしそれも片手で数えられるほどで普段は名前すら呼ばない。
そして移之が首を傾げた声色は、弱々しく、移之にとっては違和感のある声だった。
しかし、普段の施設長を知っている人々は今、この場には移之以外誰もいない。
報道陣の一人が、施設長へとマイクを近付けた。
「
施設長は、視線を下へと落とすと口を開いた。
「……とても、危険で危ない子でした」
「え……?」
移之の口から漏れ出た声は、死柄木にも聞こえてきた。
「移之君は、
施設長はグッと涙を堪える。
その姿は、カメラに収まり、全国へと流されていることだろう。
顔を上げた施設長は、カメラに向に視線を向け涙を流しながら悲痛な面持ちで訴えた。
「移之君!!君は、よく施設内で喧嘩もしてたけど、君が“良い子”だということは私がよく、知っている……だから!!
……戻っておいで?」
施設長の言葉にニタニタとした笑みを浮かべながら、移之に視線を向けた死柄木は移之を馬鹿にしようとでも思っていたのだろうが、その考えは
黒いフードから覗く、移之の黒い眼がグルグルと闇を纏っていたからだ。
闇を纏う眼とは裏腹に、不気味なほどに、表情という表情がない移之の顔。
ここ数日、といってもたかが数日という短い間しか共に居ない死柄木でさえも解るほどに移之は、静かに……静かに、“怒り”をその身に巡らせていた。
「……ねぇ、死柄木くん」
死柄木に視線も向けずにただ、ジッと施設長に視線を向け続ける移之に死柄木は、米神から頬にかけて一筋の冷や汗を流した。
……死柄木弔という人間が知っている、
死柄木の眼前に居るのは、
押し潰されそうなほどに移之から発せられる、“殺気”。
「……君は、本気で殺したい人は居ますか?」
静かな声で、移之は死柄木に問い掛ける。
僅かに口を開き「……あぁ」としか言えない死柄木に興味なんて無いのか、移之はただ一言「そうですか」と応えた。
黒いフードから覗く、口角がゆっくりと持ち上がっていく様に、死柄木は目を逸らすことが出来なくなった。
「 私は、“ついさっき”、本気で殺したい人が出来ました 」
愉しそうに、でも、抑揚の無い声で話す。
もし違うのなら、移之が口元だけは愉しそうに、目だけは闇を纏って施設長に視線を向けているはずがない。