ヒーローと成るためには、何が必要か?   作:_憂_

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かなり、遅くなってしまった…。



No.07 【少年】

「外せ!!外せよ!!外せっつってんだろうが!!」

 

今、私の眼前には身動きが取れないように両腕を拘束され、立ち上がり歩けないように両足首も縛られた少年がいます。しかも、かなり口が悪い。

……いえ、今のその状況だったら私だって言葉遣いは荒くなりますでしょう。

若干の頭痛を感じつつも、状況を把握しなければいけない。

 

「……死柄木くん。言っても無駄だと思いますが、彼は?」

「実験材料」

 

……なんでこんな事になったんでしたっけ……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何時も通り、“ばー”の扉を押し開け中へと入ったら両腕、両足首を拘束された少年がいた。まる、と。

……えぇ、たった一行で回想が終わっちゃいましたね。

 

いえ、そんな事はどうだっていいんです。

ブンブン頭を左右に振り、意識を戻すと両腕、両足首を拘束され暴言を吐きまくる少年に近付く。

 

「おい、オッサン!!さっさとコレ(・・)外せよ!!てか、てめぇら何なんだよ?!こんなことしやがって、ただですむと思ってんのか!」

 

お、おっさん……。

 

私が内心軽く傷付いていると、少年がコレ(・・)と呼んでいた、両腕と両足首を拘束している拘束具を少年がジタバタと陸に打ち上げられた魚の如く暴れるせいで拘束具を外そうにも外せない。

ちょっと動かないように頼もうにも、少年はさっきから暴れっぱなしで私の言うことに聞く耳を持ってくれないですし、私……ちっちゃい子の扱いなら施設に居たから知ってるんですけど、少年は見たところ中学生くらい……。

 

どう扱えばいいのか、全く分からない。

 

「おい、オッサン!!何、ボケッとしてんだ!!早くコレ(・・)外せよ!!」

「……なら、あんまり動かないで下さい。外しにくいので……」

「俺に指図すんな!!」

 

……何ですか、この子……。

 

私が呆れて一つ溜め息をつくと、少年は目をギラギラさせながら私を睨み付けてきます。いえ、別に怖いとか、そう言った訳では無いんですが……なんと言う地獄耳。

苦笑いを零しながらも拘束具を外し終えると、少年は私を突き飛ばす。

 

勿論、鍛えていなければ個性も強化型でない私は中学生の力で、後ろに突き飛ばされ背中を打つ。

 

筋肉がない私の身体は背中を打った瞬間に酷く痛み、肺の中からは空気が瞬間的に溢れ出てくるため、私は思わず咳き込みながらも少年を視界の端で追っていく。

少年の視線の先には、目の前で人が突き飛ばされたって言うのに心配しないどころか顔を覆う掌の下でこれでもかってくらいに口角を吊り上げて愉しそうに笑う、死柄木くんがいた。

 

……ちょっとくらい心配したっていいんじゃないですかね……。

 

私がそんな呑気なことを思っていたら、少年の肩甲骨の辺りから二つの茶色の大きな翼が服を突き破って現れ、それと同時に、少年の両腕は黄色く変色していき指は鋭く分厚い鉤爪のついた手へと変わっていった。

それはまるで猛禽類である、鷹や鷲のもので、思わず息を呑んで見いってしまいました。

 

少年の右腕が大きく振り上げられ、死柄木くんの手が少年の顔に向かって伸びていく。

 

「駄目です!!死柄木くん!!」

「そこまでです。死柄木弔」

 

私が発した言葉と重なるようにして、黒霧さんのよく通る声が響いた。

 

ピタリと動きを止めた死柄木くんを見て、口角を吊り上げた少年は好機とばかりに振り上げていた腕を真っ直ぐ死柄木くんへと降り下ろし……――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いたっ、痛いです。黒霧さん……」

 

クルクルと私の腕に包帯を巻き付けていた黒霧さんが、ぎゅっと強く包帯の両端を握り、私の腕を締め上げた。

 

「まさか、飛び込んで来るだなんて思いもしませんでしたよ」

 

呆れたように溜め息をつきながら、包帯の両端を結んだ黒霧さんに、手当てをしてくれた事へのお礼を述べると黒霧さんは何故か盛大な溜め息を吐いた。

チラリと視線を動かして横を見れば、人が怪我をしたと言うのに呑気に真っ昼間からお酒を飲む死柄木くんがいる。

 

後ろを振り返れば、個性を解き私をジッと睨み付けるように視線を投げ付けてくる少年と視線が交わった。

 

「……オッサン。アンタ何で飛び込んで来たんだよ」

 

少年の口から出て来たのは先程のとは違い、幾分か落ち着いた声。

一応、人に怪我をさせてしまった事への罪悪感は有るみたいですね。偉い、偉い。

 

ですが、先程から気になる事が一つ。

 

「私、オッサンと言われるほど歳を取ってはいませんし、私には加渡 移之(くわたりうつし)という名前が有りますので」

「加渡……?」

 

私が名前を名乗ると急に彼は、大人しくなり眉を寄せて私の顔をジロジロと寝踏みするかのように見詰めてくる。

……流石にジロジロ見られると、恥ずかしいというかあんまり気分がよくないというか……。

 

「アンタ!!(ヴィラン)のエクスチェンジゃーか!!」

 

え?

 

ちょ、ちょ、ちょっと待って下さい。私が何ですって?(ヴィラン)認定されたのは知っていますが、その……“えくすちぇんじゃー”というのはまさか……。

 

「お前の(ヴィラン)名だろ」

 

死柄木くんの現実を叩き付けてくるその言葉に私は撃沈した。

……いえ、(ヴィラン)認定されたことはテレビのニュースを見て知っていましたが、私自身、まさか(ヴィラン)名まで付けられるだなんて……。

 

私、まだ誰も傷付けてませんし、犯罪歴だって一応は皆無ですよ……?罪をでっち挙げられて少年院に容れられたことは有りますが……。一体、なんなんですか……。

 

「テレビ、見てなかったんですか?」

 

黒霧さんが、死柄木くんがお酒を入れて飲むのに使っていた硝子のコップを洗いながら私に訊ねてくる。

 

「……施設にいたころの習慣というか、癖であんまりそういったものは見ないんです……」

「何故です?」

「施設の職員が言うには、テレビからの情報によって(ヴィラン)として目覚めちゃいけないとか、なんとか……」

 

まぁ、多分これ嘘だと思いますけど。

 

「……(ヴィラン)……なぁ……おい、移之」

 

いきなり下の名前で呼ばれて、後ろを振り返るとギラギラと金色の瞳を光らせながら私に視線を向けてくる少年がいた。

少年は、一つ間を置くと口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺を、こんはクソみたいな世界から連れ出してくれ」

 

 

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