side. 少年
今日も何時も通り、七時過ぎに目を覚まして
校門を抜けて、生徒玄関を入れば周りからはチラチラと視線が飛んでくる。
馬鹿らしい、鼻で笑ってやりたくなる。
授業は受けずにそのまま屋上へと向かう。ドアノブを捻り、ドアを押せばはゆっくりと外側に向かって開いていく。
髪がユラユラと風に吹かれ、脱色し根本までガッツリ染め上げた茶髪が鬱陶しい。鞄を地面に投げ捨てて枕代わりにして、鞄の上に頭を預ける。
地面が
今日も、今日とて平和、平和。
馬鹿みてぇに笑いながら、登校してくる奴等の気が知れねぇよ。
確かに公共の場での個性の使用は原則厳禁。なのに、これを馬鹿正直に守って、何時どこで、誰が個性を発動させるか分かんねぇくせに……。
……個性でも使って、何人か殺ってみてもいいかも知れねぇな。
まぁ、そんなこと出来るほどの勇気なんぞないんだがなぁ……。
こんなクソつまんねぇ世界で生きるより、
……こんな、餓鬼の戯れ言が現実に成りそうになるだなんて思いもしねぇよな。
授業なんてこれっぽっちも受けずにさっさとゲーセンにでも寄れば、そこにはダチが何人かいた。
財布の中身を見ながらギャアギャア騒いでる馬鹿と、得意気にUFOキャッチャーか何かで取ったらしい景品を見せびらかす野郎。
その間に挟まれるように立っていた奴と俺との視線がかち合った。
だからと言って、別に喧嘩に成ったりする訳じゃねぇけど面倒臭い事に変わりはない。
親しげに声を掛けられて、面倒臭ぇと思いながらもアイツ等の側まで行けばなんでか、一緒に遊ぶことに成って。今思い返せば断らなくて良かったと思っている。
アイツ等の馬鹿デカイ声に耳が痛くなりながらゲーセンで暇を潰して、腹が減ったらハンバーガー食いに行って、そしたらアイツ等のうちの……あぁ、誰だったか。
あぁ、そういやゲーセンでギャアギャア騒いでる馬鹿野郎だったか?
アイツが金がねぇとか言い出したんだよな。面倒臭ぇから、無視してたら金貸してくれだとか言われたんだよな。
でも、俺アイツの名前知らねぇし。
金貸す義理もねぇし、無視して帰ろうとしたら路地裏に引き込まれて後は定番中の定番。
「金貸してくれよぉ」なんて言いながら、拳つくってカツアゲ開始。
でもなぁ、アイツ等、俺のこと嘗めすぎだろ?
個性をちょっとだけ片方の右腕だけに個性を発動させて、思いっきりアイツ等のことをぶん殴って気絶させてやった。
思いっきりとは言っても、骨が折れるようなものじゃねぇから精々目覚めた時に鈍痛のせいでしばらく動けない程度のもの。
そんなことも解らずに、ぶっ倒れた仲間を見て顔を歪めて俺を睨み付けてくるコイツ等は、三流以下だろうな。ちゃんと相手の事を見てねぇから、俺みてぇなのにも負けんだよ。
血ヘド吐いてぶっ倒れた奴がちゃんと息してるかどうか確かめて、さっさと帰ろうとした時だったか?
「良いもの見っけ~」
餓鬼見てぇに楽しそうな声上げて、後ろから迫ってくるアイツに直ぐに気付いたんだよ。
ただ、アイツを……掌を顔に張っ付けたアイツを見た瞬間に、蛇にでも睨まれたみたいに一瞬にして身体が言うことを効かなく成りやがった。
身体が言うことを効かなく成った次の瞬間には、アイツによって顔面をぶん殴られて悲しいことに、一発で意識が吹っ飛んだ。
目覚めて見れば、両手両足は拘束されてて自由に動けないときた。しかもアイツにぶん殴られる前は空が赤らみ始める時間帯だったはず。
俺がぶっ倒れていた部屋に付けられていた壁掛けの時計の針は丁度夜中一時過ぎを指してた。
流石に焦るさ。
さっさとこ拘束具をぶち壊して、逃げ出してやろう。んでもって、サツんとこに行って事情を説明すれば少しは動いてくれるだろう。
そう思えば行動するのは早ぇ。先ずは両腕と両脚に個性を発動させる。拘束具は人型の俺の腕に合わせて絞められてる。
個性を発動すれば俺の腕と脚は、一時的に筋力量が増して太く、強くなる。腕と脚を覆うようにして皮膚は黄色く硬く変色し、生半可な武器じゃ傷一つ負わせる事が出来ないちょっとした盾に成ってくれる。
バキンと、拘束具が外側からの力に負けて、弾け飛ぶ。ありがてぇことに、拘束具はサツが
立ち上がって、外に繋がるドアを開けて外に向かおうとすれば、
「オイオイ、どこ行く気だよ。外はもう、真っ暗だぜ?……餓鬼」
背筋に氷水をぶちこまれたみてぇに、背中が栗立って、背後から得体の知れねぇバケモンに覆い被さられたような感覚に支配されて、息がしづらくなった。
歯がガチガチ音を経てそうで、馬鹿みてぇな虚勢を張って後ろを振り向けば、
黒い靄の中から半身を出していた、あの、掌で顔を隠したアイツがそこにいた。
「餓鬼は寝る時間だ」
その次の瞬間、腹の鳩尾辺りに強烈な鈍痛が走って、また意識を手放すはめになった。
「おやすみ、
意識を手放す前に見えたのは俺の学生証を片手に、顔に張り付けた掌から僅かに見える目を歪めた病的に痩せた男だった。
目が覚めた時には、辺りはもうすでに明るくなりかけいて、強制的に意識を手放されてから、かなり時間が経ったらしい。
時計の針も七時過ぎを指しているからな。
それよりも、……今のこの状況をどうにかしねぇといけねぇ。
両腕両足を厳重な拘束具で縛られた俺を値踏みするみてぇに、眺める俺をぶん殴りやがった病的に痩せ細ったクソ野郎。
俺が個性を発動しても発動しなくても、一発殴れば骨が折れるんじゃねぇかなんて疑うくらいのその身体のどこに俺の意識を手離せられるくらいの力があんだよ……。
「……おい、クソ野郎……。さっさとコレ、外せ」
「無理なお願いだなァ」
ヘラリと笑って応えた男に、睨みを効かせた所で意味のねぇことくらい知ってたが、虚勢を張るにはこれくらいしか思い浮かばねぇ。
今の俺に着けられている拘束具だと、例え俺が個性をはした所で外せるほど柔なもんじゃぁねぇ。きっと対
いま、この現状で暴れてもぶん殴られて意識を手放さられるだけだ。
顔に張り付けた手から僅かに見える目をゆっくり細めた男に、俺はもう一度問い掛けた。
「コレを、外せ」
「さっきも言っただろうが。無理だ」
ブチリと俺の頭ん中で血管が何本か千切れたような気がした。
「この、クソ野郎が!!!!!」
ろくに動けもしねぇ身体で必死にうごこうとする俺はさぞ滑稽だったろうよ。
だけど、黒い靄状の何かがいきなり空間に現れたらそっちに目がいって、一気に冷静に成らざるを得なかった。
当たり前だろうが。両腕両足を拘束された状態で、自力に抜け出すことも出来ねぇのに、俺はどうすることも出来ねぇ。
個性を発動したとしても、戦えねぇし、何も出来ない。
タコ殴りにされて、死ぬのだけはぜってぇ嫌だ!!
黒い靄状の何かから出てきたのはバーテンっぽい服を着た首から上と、両手が黒い靄状の何かで出来た男だった。
咄嗟に身構えたバーテンっぽい服を着た男を睨み付けると、男は俺を見て一つ溜め息をつきやがった。
「死柄木弔、見せびらかすのは彼が来た後にしたらいかがです?」
「は?何言ってんだ黒霧、アイツの驚く顔が見たいからここに置いといてんだろうが」
「そうですか」
バーテンっぽい服を着た男は、見たまんまの黒霧なんて、名前らしい。
俺をこんな目に会わせやがった男は死柄木弔何て言う名前らしい。
「おい、なに無駄話してんだよ。さっさとコレ、外せ」
「……チッ。面倒くせぇ奴だな。さっきも言っただろうが、無理だ」
個性が発動しかかる。
腕に個性が発動しかけているせいで、ギチギチ変な音を経てる。
「外せ!!外せよ!!外せっつってんだろうが!!」
「死柄木くん、黒霧さん居ます……か?」
ひょっこり顔を出してきたアイツは、どっかで見た顔ソックリで……。
俺はアイツに救われる。それは、今もそうだがこれから先、
こんな抑圧され過ぎて、馬鹿馬鹿しい可笑しな世界になっちまった世界で