HOTD ガンサバイバー   作:ゼミル

14 / 25
14

 

 

 

高城の親父さん達と睨み合ったその後。

 

高城はあの両親からの頼まれ事の用事があるとかですぐに別れた。どうでも良かったので詳しい事は聞いてないけど何故か小室や平野まで付いてった。

 

で、余ってる武器の引き渡しに関してはこれまた何故か俺に一任されてしまった。

 

これって俺だけで決めても構わないぐらいには信用されてるって事なんだろうか。そんな訳でまたも俺は強面のおっさん方に1人囲まれてる訳であって、いい気分な訳あるか馬鹿野郎。

 

まあ今更愚痴ったってどうにもならない。さっさと済ませてしまおう。

 

 

「つかぬ事を聞きますけど、ちゃんと銃の扱い方を習得してる人はこの建物にはどれぐらいいるんですか?」

 

「うむ。我々の同志の中には元警察官や元自衛官も多数含んでおり、その多数が会長とその家族の方々の護衛としてこの屋敷内に集まっている。そのような経歴の持ち主でなくとも、我々の様な会長や奥様の側近の者達は総じて海外にて射撃訓練を積んできた者ばかりだ」

 

「成程、揃いも揃って口だけのトウシロじゃない訳ね」

 

 

感想をポツリ。少なくとも俺と平野が殺した様な正しい構え方も知らないチンピラ以下とかとは違うのか。

 

何ていうか、俺と平野がお互い抱いてる様な同族意識が此処の人達にもちょっと湧いてきた。銃の扱いを実際にその身に習得してきた同志的な意味で。

 

うーん、同じ軍で同じ戦場を経験した別の部隊の兵士とバーでたまたま知り合った時みたいな感じ?

 

閑話休題。

 

 

「・・・・・・それじゃあこんなのはどうです?」

 

 

そう言って全開にしたハンヴィーの後部ハッチからまず引っ張り出したのはミニミ軽機関銃。

 

ハッキリ言おう。この際だから今後嵩張りそうな分を押しつける気満々だった。

 

ドンパチも良いけど<奴ら>の習性―――音に敏感に引き寄せられるのを考えると、持ってる銃の中で温存すべきはMP5SD6やルガーMk2の様にサイレンサー付きの銃器だ。

 

高城邸前での戦闘みたいにバカスカ撃ちまくってたら撃つ→銃声に反応して<奴ら>が集まる→集まってきた奴らを撃って撃退→以下略の無限ループになる事請け合いだった。でもって弾薬は無限じゃない。

 

こっから先は見敵必殺なランボーじゃなくて、隠密重視の特殊部隊流の流儀で戦っていくべきだ。

 

撃って撃って撃ちまくって大暴れってのも悪くないけど、スリルを長く味わうには現実との折り合いもつけないとね。

 

 

「本当に、何処でこんな物を君達は手に入れたんだ?」

 

 

誰かの興奮と呆れがない交ぜになった呟きが印象的だった。それは企業秘密って事で勘弁を。

 

さーて、どうしたもんかな。今のとこメインは5.56mmと12ゲージで、7.62mmは全く手つかずだからそっちを割くべきかな?

 

いやいや日本じゃ散弾銃や猟銃の弾はともかく軍用の小口径弾は米軍か自衛隊のぐらいしか持って無いだろうし。

 

 

「・・・こうなったら大雑把に分配してから決めてみるか」

 

 

最低でも此処出るの確定なのは俺に里香、小室、宮本の4人。

 

かなり余裕持って弾薬を携行するとしたらライフル弾は1人頭ベストとポーチ装備分でマガジン約10本+他予備分が更に10本は欲しい。12ゲージは100発ずつ持たせるか。後はサイドアームの拳銃とマガジンを5本ぐらいに、再装填用の紙箱入りのを数箱ずつ。

 

念の為予備の銃も持っていきたいし、いっそ足に乗ってきた車1台借りるか?それなら持ってける荷物の量もかなり余裕が出来るし行動速度も断然速くなる。車のエンジン音に<奴ら>が集まる可能性もあるが、それでもメリットは大きい。

 

 

 

 

・・・・・・向こうが文句をつけようもんなら、強行突破も辞さないだけだ。むしろ大歓迎。

 

 

 

 

「どうせならこんなのもありますけど」

 

 

HK69グレネードランチャーを持ち上げて見せると、頭痛を堪える様な表情で溜息まで吐かれた。

 

まぁ、気持ちは分かりますよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、その場で引き渡した武器と弾薬の量は持ってた分の4分の1前後に留めておいた。

 

実を言うとどの銃を渡そうかその場で考え始めた段になって、ケチ心が出てきたというかやっぱりごっそり渡すのはもったいなくなってきたんで途中で止めた。

 

それでも渡した銃の数はLMG(軽機関銃)から拳銃含め10丁以上だし、グレネードランチャー2丁の内HK69を渡したから弾薬半分込みで渡したからかなりの量だ。オッサン達もまだ多数の武器をこっちが抱えてる事を指摘する様な事は無かった。少なくともその時は。

 

でもってそれから場所はちょっと移る。ハンヴィーの収まる車庫とは別の、更に大型の車庫に停まった幌付きトラックの荷台にて。

 

 

「銃の種類からして、大体がアフリカや南米辺りから密輸されてきた物って感じですね」

 

「まったく、本当に唯の学生なのか?君の言う通り、そこに並んでいるのは主に遠洋漁業の漁船による密輸品だ」

 

 

荷台に置かれた木箱の中に納めてあったガリル・アサルトライフルの南アフリカコピー版(でもガリルもAKシリーズ真似た銃だ)であるR4ライフルを弄ぶ。

 

お隣さんの家に並んでた品々は新品同然の綺麗な銃ばかりだったけど、此処に積まれている分はどれも傷が多く、一目で使い込まれたと判る代物ばかり。でも整備して間もないのか、作動部周りにはうっすらと油が光っていて、棹桿を引いたりしてみても滑らかに動いて充分使い物になりそうだった。

 

でも此処にある銃は長物だけだとせいぜい20に満たない。屋敷の中には高城の親父さんの部下が男だけでも数十人はいるだろう。向こうの言った通りまだ数は足りてない。それでもそこらへんの警察以上に重武装なのは間違いないが。

 

隣の芝が青く見えた訳じゃないんだけど、向こうが持ってる銃がどんななのかが興味に駆られた俺は、必死に頼み込んだ結果こうして見せてもらってるのである。

 

やれやれ、これじゃあ平野の事笑えないな。

 

 

「我々憂国一心会に対し敵対関係にある利権右翼や暴力団といった、会長とそのご家族の命を狙う勢力に対抗すべく、元警察官・元自衛官を中心とした独自の武装集団の編成を組織内部で進めていた時期に集めたものだ。会長と奥様の交友関係は国内のみならず海外にまで幅広いものなのだよ」

 

 

もう幅広いとかそういうレベルじゃないだろ絶対。右翼団体通り越してテロリストのレベルだコレ。もしくは民兵集団。似たようなもんか?

 

今更ながら自分がずっと暮らしてきた地元がとんでもなく物騒な場所だった事を思い知らされた。でも、こんな世界になっちまった以上むしろ物騒さが高ければ高いほど身の安全に繋がってのはなんて皮肉。

 

銃器規制論者よ、ザマぁみやがれ。

 

 

「おい、ちょっと手伝ってくれないか?」

 

「ああ、今行く。君も触るのはもうそこまでにしてくれないか」

 

 

そこらへんの分別は残ってる(つもり)の俺は、言われた通り銃を元の箱に戻して荷台から降りようとしてふと目が止まった。

 

一緒に並んで積まれた、火気厳禁の警告マークが張られた箱。一旦封を開けられたのか、蓋がずれて中身が覗いている。

 

 

「・・・・・・・・・」

 

 

俺の見張り役のおっさんは仲間に呼ばれて目の届かない場所に消えた。つまり向こうからもこっちの姿は見えてない。今トラックの近くに居るのは自分だけ。誰も俺を見ていない。

 

これぞ魔が差した、って表現がピッタリに違いない。

 

箱の中身を数本引っ掴んだ俺は素早く学生服の中に突っ込むとトラックから降りた。あんまり目につかない内に車庫を出ようと裏口に向かう。まんまコソ泥だなこれじゃあ。

 

だもんだから、いきなり声をかけられた時は月並みな言い方だけど口から心臓が飛び出るかと思った。むしろ失敬した物までばら撒きそうになった。

 

ああもう、心臓に悪い。

 

 

「お、なんだ、ガンマニアの片割れの兄ちゃんじゃないか。何やってんだこんな所で」

 

「いやあ、その、此処の人達と手伝いとか話とか色々と・・・」

 

「へえそうかい。ま、もっと気楽にしてりゃいいぜ?兄ちゃん達はあんな地獄ん中暴れ回って沙耶お嬢様を無事連れてきてくれたんだ、もっと寛いでくれてもいいと思うぞ」

 

 

むしろ寛ぐ方が性に合わないんですよ今の俺は。

 

確か、松戸さんという名の恰幅のいいメカニック然とした男性は工具片手にカラカラと笑った。

 

脱出行の裏口へと視線を向けた俺は、ふと裏口のすぐ傍に鎮座している物体に気が付いた。防水カバーですっぽり覆われた何か。下から見え隠れしているのは、オフロード用のタイヤ?

 

裏口に近づくのも兼ねてその物体に近づいた俺。カバーを捲って正体を知るよりも早く、松戸さんが説明してくれた。

 

 

「ソイツに気が付いたか。それはな、米軍が計画中止で放出したのを手に入れた代物なのさ。有名どころじゃヤマハがメジャーだが、これだけの代物はそうそうお目にかかれないぜ?」

 

「ATV(全地形対応車)・・・4輪や6輪はともかく、8輪のは確かに初めて見ますよ。それにこれ、水陸両用モデルでしょ」

 

「あたぼうよ!」

 

 

オフロードバイクと軽自動車を足して2で割ったような代物のATVはレジャー用がメインだけど、パトロールに乗りまわす米軍基地の警備兵の写真で見た事もあった。

 

6輪・8輪といったより大型の物なんかは遠隔操縦を可能にして歩兵の代わりに大荷物を運ぶための無人機として研究・試作されたタイプも存在する。これもその類なんだろうか。

 

 

「仮にコイツに乗る事になったとしても、軍用向けに頑丈に作られてるから<奴ら>を楽に弾き飛ばしながら突破出来るだろうよ」

 

「へえ・・・にしてもよくもまあこんな物見つけて引っ張ってきましたね」

 

「そこら辺はやっぱり会長と奥様の手腕の賜物だな。凄い御方達だよ全く」

 

 

 

 

―――――数時間後、この時の松戸さんの言葉をそっくりそのまま実践する羽目に陥るとは、全く想像していなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後まっすぐ部屋に戻った。失敬した品物の存在には気付かれる事無く、今は自分のバックパックに突っ込んで隠してある。

 

でも困った。手持無沙汰になってしまった。屋敷を離れようにも同行する小室達の準備が終わるまで待たなきゃならないし、『お客様』の俺達には仕事が殆ど与えられない。これもまた子供扱いされてるって事の証左か。

 

銃の作動チェックもさっき済ませてしまったし、欲を言えば照準調整もしたいんだけど撃つ度に微調整、なんて真似は射撃場でもなきゃ無理だ。平野も愚痴ってたな。

 

M4は炸薬量の多い―つまり威力も高けりゃ反動も強い―ライフル弾だから50mぐらいはほぼ直線弾道。それなりの距離でもまっすぐ狙えばまっすぐ飛んでまっすぐ当たるからそこら辺は腕で補える。

 

問題は拳銃。拳銃の有効距離は7m、と言われてる通り短い部類だ。精度の高いP226Rでも似たような物。拳銃を使う場面は基本筋距離だったからまだ狙った通り当てれてたけど、今後どうなるか分からない以上もっと細かい癖も掴んでおきたいのが本音だ。

 

俺の命綱は銃。銃が言う事を聞かなきゃ俺が死ぬ。だからもっとこの銃を知り尽くしたい。

 

 

「一応今まで撃った分の感覚思い出して調節してみるか・・・?」

 

 

ベッドに腰掛けながら悩んでいると、扉の開く音。鍵はかけていない。

 

入ってきたのは里香。この部屋を出る前の焼き直しみたいだった。

 

どこか嬉しそうにはにかみながら、またあの時宜しく俺の隣に腰を下ろす。躊躇い無く俺に身体を擦り寄せてきた。

 

 

「―――ありがと、マーくん」

 

「何がだ」

 

「マーくんも一緒に、私のお父さんとお母さんを探しに行ってくれるって言ってくれた事。マーくんが一緒なら私もすごく安心だよ。マーくんが来てくれたら2人もきっと喜ぶだろうし・・・・・・」

 

「どうかな。それ以前に生きてたら、いや、<奴ら>になってなきゃの話さ」

 

 

そして俺はそっちの仲間入りを果たしてる可能性が高いと踏んでいる。里香みたいに希望的観測で現実を見る気にはなれなかった。

 

大体、里香の両親が生きてるか死んでるか死んで生き返ってようがどうでもいい。俺の目当ては結果じゃなくて過程なんだから。

 

 

「そう、かもね」

 

 

里香から笑みが消える。不安一色の表情で俺にしがみついてきた。同年代どころか上級生でもこれを上回る規模を見た事がない膨らみが俺の腕に押しつけられて潰れる。

 

ホットミルクに鼻の香りが混じったみたいな匂いが否応なしに鼻腔を刺激してきた。里香の両手が俺の掌を導いていく。胸の谷間に半ば呑み込まれて、無限大の柔らかさの中に大きく脈打つ里香の鼓動が間近に感じ取れた。

 

 

「まぁくん・・・」

 

 

興奮は、してる。こっちだって脈拍急速増大中、血圧だって鰻登りで頭も股間も熱くて仕方ない。

 

 

 

 

だけど、それでも。

 

 

 

 

僕の思考は果てしなく冷たかった。幼馴染の行動が余りにも性急で、本能や欲望に駆られてとはかなり程遠いと感じ取れる程度には。

 

 

「お前、一体何のつもりだ?」

 

「え・・・まぁ、くん?」

 

「現実逃避のつもりなのか何なのかは知らないけどな、それなら他を当たれ。俺は今そんな気には更々なれないんだ」

 

「ち、違うよ!私、そんなつもりじゃ。それにマーくんじゃなきゃヤダ!」

 

 

最後の言葉は忘れとこう。普通なら男冥利に尽きるんだろうが、今の俺にはどうでも良かった。ただ里香が鬱陶しくてしょうがない。

 

昔はずっと一緒だった。ずっとこいつにひっつかれてたっけ。腕っ節は俺より強かったのに臆病で、泣き虫で、呑気で、抜けてて。そんな時間が当たり前で、そんな瞬間を俺自身気に入っていた。

 

全ては過去。もうどうとも思わない。思えない。『俺』の中で決定的に何かが変わった――――違う、壊れたのか。それを再度自覚した。

 

いや、俺が壊れてるなんてそれこそ今更な話じゃないか。

 

 

「ならどういうつもりなのかハッキリ言え。そして、出てけ」

 

 

今度は俺が組み敷いといて『出てけ』ってのはなんかおかしい気がするけれど。

 

しばらく里香は、魂の抜けた様な眼で俺をじっと見つめていた。それから急速に瞳が潤み、涙が頬と目尻を濡らす。

 

 

「――――分かってるんだよ、本当は」

 

 

時折唇を噛みしめながら、10年以上傍に居た中で初めて聞く、血反吐を吐くような掠れ声を里香は絞り出す。

 

 

「この目で見てきたんだもん。学校でもあっという間に皆襲われて、お互いなんてちっとも顧みないで逃げ出そうとして、それでも皆<奴ら>になっちゃって。街も世界もみんなこんな様子で」

 

「ああそうだな。それがどうした」

 

「ずっと変わらないと思ってた。ずっとお父さんと、お母さんと、マーくんと、マーくんのお父さんとお母さんとずっと一緒だと思ってた」

 

 

でも現実は全く違った。

 

 

「でもマーくんのお父さんとお母さんは死んじゃった!世界もおかしくなっちゃった!ずっと変わらないままでいて欲しかったもの全てがみんな壊れた!」

 

 

ドスッ、と押しつけると呼ぶには聊か強い勢いで里香が俺の胸元に顔を埋めた。

 

 

「お父さんもお母さんも、高城さんの家族みたいに凄い人じゃない。私はこんな世界で、皆みたいに自分の家族が必ず生きてるなんて信じきれるほど強くない」

 

 

だけど、と里香は俺の顔を見上げた。いつの間にか里香の手が俺の背中に廻されていて、腕の力が増す。

 

 

「マーくんはこうして私の目の前に居てくれてる。こうやって、触れ合って、一緒になれる距離に」

 

 

唇が少しずつ歪んで笑みを形作る。

 

初めて見る表情だった。笑顔の筈なんだけど、笑顔からは程遠く感じて何とも形容しがたい。でも見覚えのある姿。

 

ああそうだ、初めて<奴ら>ではない生きた人間を殺した時。平野が浮かべ、そして自分でも浮かべていただろうあの瞬間の顔だ。

 

ベクトルは全く違う、だけど似ている。そう、仮に言い表すなら里香が浮かべているのもまた狂気の微笑と呼んでも過言じゃない。

 

意外にもそんな悪趣味な人形みたいな笑みはすぐに消えて、一気に昔そっくりな泣き顔に変わった。

 

 

「だからお願いだよぉ・・・一緒に居て。傍に居させて。何でもするから、マーくんと一緒に居る為なら何だってするし、マーくんも私に何だってしていいから、だから・・・・・・」

 

 

単純な話だった。頭のネジが外れたのは俺や平野だけじゃなかった、というオチだった。

 

里香との昔からの関係にこだわっていたのは俺の方だった。俺も現実を考えてなかったのは里香とどっこいどっこいなのかもしれない。だって勝手に『里香は昔から変わらない』と勝手に決め付けてたんだから。

 

人も世界も理(ことわり)も狂った中で里香だけが狂わない――――そんな筈がなかったんだ。理性を塗り潰す割合が大きかれ小さかれ、どんなベクトルだろうが今や里香は俺と同類、狂人の仲間入り。

 

その矛先が俺、というのは何だか複雑だけど。

 

未だ俺の下で里香は泣いている。それを俺は見下ろしている。

 

 

 

 

俺の中で、奇妙な感情が頭をもたげた。

 

 

 

 

急速に破壊衝動にも似た何かが俺の脳裏を埋め尽くしていく。最初に里香をこっちから押し倒した時もこんな感覚だったが、衝動の大きさはもっと上だ。

 

もっと泣かせてやりたい。犯してやりたい。破壊してやりたい。向こうから望んだ事だ。『何だってしていい』、と言質も取った。

 

今日になってからまだ<奴ら>を1匹も殺してない。その分の殺戮衝動がこっちに転化したのかもしれない。無性に里香の身体が上手そうな御馳走に思えてきた。

 

レイプ魔や里香の存在に興奮の奇声を飛ばしてたチンピラ連中もこんな気持ちだったりするのか?チクショウめ。

 

 

「ならお望み通りにしてやるよ・・・!」

 

 

ワイシャツの胸元を強引に引っ張ると、いとも簡単にボタンが弾け飛んで生身の肌が大きくさらけ出された。ギリギリの所で押さえつけてるといった風情のブラも無理やり引き剥がすと、膨らみに釣られて揺れる鮮やかな色合いの先端が目に飛び込んでくる。

 

無理やり衣服を剥ぎ取られた瞬間里香が浮かべたのは―――――歓喜だった。

 

衝動に突き動かされて里香の肢体に貪りつく間も、やっぱり意識の何処かは何処までも冷静な目で客観的に俺と里香を眺め続けていた。

 

 

 

 

 

 

確かに里香は、良い女だと思う。

 

だけど湧いてくる感情は決して――――――恋愛感情なんかじゃない。

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。