HOTD ガンサバイバー   作:ゼミル

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・・・・・・何だか騒がしくて目が覚めた。

 

それにしても寝て起きる度に知らない天井なんだけども、まあそれも仕方ないか。この数日1日ごとに寝床が変わっているんだから。

 

俺が寝ていたのは寝具コーナーに置いてあった商品のベッドの上。他にも色々なデザインのベッドが並べられていて、身体を起こすとすぐ近くのベッドに腰掛けていた鞠川先生と目が合った。

 

 

「あら~、目が覚めたのね。良かったわ~頭は打ってないのは分かってたけど思いっきり壁にぶつかってたから心配だったのよ~。調子はどうかしら?」

 

「・・・・・・大丈夫そうです。身体はまだ痛みますけど、十分動けます」

 

 

多分寝る前に塗られた鞠川先生特製塗り薬が効いたのかもしれない。高城の実家で宮本が塗られたというアレだ。上を脱ぐ必要があったから上半身裸でうつ伏せで寝る羽目になった。

 

見まわしてみると、愛銃のM4とホルスターに収まったP226Rがベッドを支える脚の上の出っ張りに引っかけてあった。着てた学生服とシャツとタクティカルベストはご丁寧にハンガーにかけて箪笥の中。

 

 

「うう・・・・・・」

 

 

幼い呻き声がした。この避難場所に居た先客を含めても、俺の記憶に当て嵌まる在はたった1人しか思い浮かばない。

 

 

「ありすちゃん、此処に着いてから夜の間ずっと泣いてて。ついさっきようやく寝ちゃったみたいなんだけど、魘されてるみたいなの・・・・・・」

 

 

当たり前だと思う。しょうがないとも思う。

 

だけど、どうでもいい。

 

 

「皆は何を?」

 

「え~っとぉ、何だか先に居た人達が婦警さんにあーだこーだって騒いでたみたいで、皆そっちの方を見に行っちゃったみたいよぉ」

 

 

ああ、あの如何にも頼りなさそうな婦警か。俺達があのまま逃げ込んできた時も持ってた銃見てかなりテンパってたな。全身痛くてベッド見つけるとすぐぶっ倒れたから俺にはそれぐらいの印象しか彼女には持っていない。

 

 

「小室と毒島先輩は無事に此処に辿り着けたんですか?」

 

「ええ、朝方――――かしら?全部の時計が止まっちゃってて詳しい時間は分からないんだけど~」

 

「いえ、それだけで十分です」

 

 

俺は安堵した。それから2人の無事を知った途端自分が安堵した事そのものに驚いた。

 

やっぱり小室が絡むと調子が狂う。俺は他人の事も自分の事ももうどうでも良かった筈なのに。あの人たらしめ。

 

ワイシャツを直接羽織ってタクティカルベストの前を留めないままの恰好になって、寝るにあたって脱いでいたスニーカーを履く。

 

 

「ちょっと皆の様子を見てきます」

 

「分かったわ~それじゃあ私は眠たいからしばらくひと眠りしてるわね~・・・・・・」

 

 

あくびを噛み殺しながらありすちゃんと同じベッドに寝転がった鞠川先生は、僅か数秒で眠りについてしまった――――ありすちゃんを優しく抱きしめる格好で。

 

能天気そうに見えてもやっぱり鞠川先生も疲れてるんだろう。それまで自覚はなかったつもりだが、日の高さからして結構な時間をグースカ寝てた俺も似たり寄ったりにそれなりに疲労が溜まっているのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

俺達が逃げ込んだショッピングモールは吹き抜け式の天井が高い2階建ての構造で、天井の大半が半円のガラス窓だからEMPの影響で照明が灯されていなくても十分な量の光が頭上から降り注いでいる。

 

 

「あっ、起きたんだマーくん!身体の調子は大丈夫なの?」

 

 

顔を合わせるなり里香は俺に駆け寄ってきた。まるで人懐っこい猫か何かだ。鬱陶しい。

 

 

「アレぐらいじゃ簡単には死なん。お前は何やってんだ」

 

「高城さんに言われて、持ってきた銃とか弾とかをまとめて見張ってるの。此処に先に居た人達にはなるべく触らせない方が良いからって・・・・・・」

 

 

俺も高城と同意見だ。自画自賛するつもりはないけど、このショッピングモールに居た『先客』達が俺達より上手く銃を扱えるとは思えないし、向こうの手に渡れば最後持ち主だった俺達自身にその銃口が向けられかねない。

 

問題は里香にその番人が出来るかどうかだが――――コイツの柔道と馬鹿力なら要らぬ心配か。堅いリノリウムの床はさぞや投げ技の威力を高めてくれるに違いない。

 

里香がちゃんと『対応』できれば、の話だが。コイツは俺やコータとは違うんだ。生きた人間相手に実力行使できるかは甚だ不安だ。

 

 

「数が少なくないか?」

 

「他のは別の場所に隠す事になったから」

 

「・・・・・・何処に?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・じょ、女性用の下着売り場」

 

 

誰のアイディアなのやら。

 

 

「真田!大丈夫なのか、怪我して寝込んでるって聞いてたんだけど」

 

「少し身体を打っただけだ、問題無い。とりあえずそっちも無事に辿り着けたみたいで何よりだ」

 

「そっちも大変だったんだってな。麗達から聞いたよ」

 

「はいはい、再会を喜ぶのは後にして。真田も動けるんなら手伝って頂戴。話し合わなきゃいけない事や調べたい事なんかが私達には山ほどあるんだから!」

 

 

高城が手を打ち合せて皆の注目を集める。

 

 

「とりあえずまずは真田。アンタはそんな風にジャラジャラ銃を持ち歩かないようにして、せめて拳銃だけを目立たない様に隠すようにしなさい。ただでさえ此処の連中はこれだけの銃を持ってる私達に良い感情を持ってないんだから、少しはカモフラージュしておかないと余計なトラブルの元よ」

 

「残りの銃を隠したのも同じ理由か?」

 

「そう。此処の連中パパの部下ほどまとまりが良くないもの。もし銃を奪われたらそれを止める為にまた銃を使う羽目になるわよ。それなりに弾はあるとはいえキリがなくなるわ」

 

「せっかく此処まで辿り着けたんだ。出来る限り穏便に必要な物を分けてもらえるよう頼むのが1番だよ」

 

「とにかく、此処の連中を出来る限り刺激しない事!先に居た連中にとっては私達は泥棒と一緒なんだから!特にアンタは見た目はマトモっぽい癖に頭の線がプッツン切れ気味なんだから1番気をつけなさい!」

 

「そういう事は面と向かって言うものではないと思うのだが」

 

「本当の事でしょうが!いい?非常時以外は私かリーダーの小室が許可を出すまで絶対に此処では銃を抜かない事!宮本や古馬もその時は止めて頂戴!真田とコータ、分かったわね!?」

 

「い、Yes,Mam!!」

 

「へいへい」

 

 

どうでもいい。向こうが突っかかって来なければいいだけの話だ。

 

 

「他にも話し合いたい事はあるんだけど――――先生は何してるの?真田の傍についてた筈だけど」

 

「眠いからしばらく寝るってさ。ありすちゃんも一緒だ」

 

 

気まずい沈黙と空気。

 

 

「と、とにかく真田君の看病で先生も疲れてるんだと思うし、また後で集まる事にしない?」

 

「そうだな。その方が良いと僕も思う」

 

「そうしましょ。じゃあ手分けしてこの施設のの探索と必要になりそうな物資の場所を把握しておきましょ。あと誰かが此処に残って武器の見張りを―――」

 

「なら私が見張っておこう。こっちの方が視覚的にも近づきにくいだろうからね」

 

 

毒島先輩は腰に下げた刀の柄を軽く叩いて示す。銃よりも刀の方が一般的と言える日本じゃ、確かに刀の方がインパクトが強い気がする。

 

 

「それじゃあ先輩、銃の見張りをお願いします。鞠川先生が起きたら知らせてくれませんか」

 

「心得たよ、孝」

 

 

・・・・・・あれ、毒島先輩の雰囲気がおかしい気がする。小室に向ける視線がえらく熱っぽいし、宮本は宮本でえらく不機嫌そうだし。

 

まあ、どうでもいいか。

 

 

「ところで高城、服着替えたのか?」

 

「ええ、あんなひらひらしたの着てらんないから。アンタ達も今の内に着替えたらどう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

とりあえずさっきまで寝てた寝具コーナーを通って向こうの方にどんな店があるのか見に行く事にした。M4は皆の銃をまとめている場所に置いて、今身に付けている武器は太腿のホルスターの拳銃ぐらいだ。

 

そしたら向こうからやってきた『先客』の1人と出くわす。黒のニット帽を被ったガタイの良い兄ちゃんだ。腰にぶら下がっているのは鉈。

 

 

「何じろじろ見てやがんだああ?」

 

「いいえ別に」

 

「ケッ」

 

 

えらく不機嫌そうだった。擦れ違い間際、「せっかくイイ女だから・・・」とか「ガキも一緒かよ・・・」とか「あんなの見せられちゃヤレる訳ねぇだろ・・・・」とかなんとか。何を企んでたのやら。

 

ありすちゃんともどもスースー寝息を立てている鞠川先生の横を通り過ぎて奥の店へ。

 

家具売り場の隣はDIYショップ、つまり日曜大工用品の並ぶフロアだった。木材から大工道具、壁で仕切られる事無く隣のアウトドア用品店にも繋がっていて、すぐ向こうの棚には本格的なレジャー用品や庭弄り用の品々、登山道具などなどまで並んでいる。

 

ここなら色々役立つ者が見つかりそうだ。自分で言うのもなんだけど、宝探し的なアレっぽくて正直ちょっとワクワクしてたりする。

 

 

「何があるかな、っと」

 

 

こういうのをよりどりみどりっていうんだろう。登山用の本格的なリュックだけでも大小様々な種類が巨大な棚の1つを埋め尽くしていた。とりあえずそこから好みの色合いの大型リュックを失敬。

 

ハードな強行軍でも耐えられるよう頑丈かつ軽量な新素材で出来ています、と宣伝用のタグに記載してある。確かに俺の家から持ってきたリュックよりは上等そうだ。

 

まずは携帯用のガスバーナー。誰も近くに居ないのを確認してから予備を含めて複数リュックに放り込む。ライフラインがEMPで壊滅したから食料やお湯を温めるのに役立つ筈だ。

 

DIYショップでワイヤーも手に入れた。物を固定する以外にもトラップや鳴子みたいな警報装置の作成に使える。一応ロープも入れておこうかと考えたけどワイヤーより嵩張るし保留。

 

 

 

 

武器になりそうな物も色々と並んでいた。鉈とか枝切り鋏とかよりも俺の目を引いたのは登山道具の棚に置いてあったピッケルだ。

 

昔どっかで読んだ物の本曰く、ピッケルには銃創みたいな純粋な山登り向けに杖として使える60~70cm位の長さのタイプと、クライミングや氷壁みたいに急角度の絶壁を登る為の全長30~40cmの草刈り鎌みたいなタイプに分かれるそうだ。

 

俺が手に取ったのは後者のアイスクライミング用の物。アイスクライミングで使う類の物はアックスと呼ばれ、普通のピッケルよりも曲がり気味で軽い。説明書によればチタン合金製の高級品だとか。

 

素振りしてみるとなるほど、軽くて振り回しやすくて中々手に馴染む。鋼鉄並みに固いだろう岩肌や氷壁に食い込ませて人間を支える為の代物なんだから強度も折り紙つきだ。

 

まさしく鎌の刃によく似たブレードの部分をなぞってみても鋭さは十分。これなら<奴ら>の頭も簡単にカチ割れそうだ。

 

ブレードの反対側はハーケンを打ち込む為のハンマーになっているからブレードで突き立てるも良し、ハンマーで殴っても良し。<奴ら>相手ならナイフとかよりも使い勝手が良さそうだ。気に入ったから貰っておこう。

 

 

「~~~~~~♪」

 

 

アックスをストラップで腰に留めて、我ながら珍しくご機嫌になった俺は鼻歌交じりにショッピングを続け・・・・・・ある物に目を惹かれた。

 

『キャンプの思い出作りに!』とのフリップと一緒に並べられた花火セットだ。袋詰めのセットの他にロケット花火に打ち上げ花火にクラッカーボール、そして爆竹。

 

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 

最後にこんな花火をやったのは何時頃だっけ―――――そんな感傷は放り捨てといてと。

 

<奴ら>は音に反応する。花火、特にロケット花火や爆竹などなども破裂して音を出す。銃声ほどじゃないけど、それなりに近所迷惑な音を。

 

・・・・・・これ、使えるんじゃないか?

 

 

「これも貰っていくか」

 

 

思い立ったら即実行。大きな音が出るタイプの花火を次々リュックに放り込んでおいた。でもって不意に沸き上がる衝動。

 

――――どうせならもっと『派手』なのを作ってみたらどうだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後、俺は持ってきた材料と必要になりそうな道具を持ってモール内のコーヒーショップ『スターラークス・カフェ』前に移動していた。カウンター前には丸テーブルと椅子が並んでいて作業場に丁度良さそうだったからだ。

 

調達してきた道具と材料はペンチに十字に折り目をつけて中心を窪ませた大きめのメモ用紙、爆竹に工作用のプラスチック製パイプ、そしてライターにカセットコンロ用のガスボンベとダクトテープだ。

 

まず人差し指ぐらいの太さの細長いパイプを適当な長さに切り、片側をライターで軽く炙る事で溶けた部分がすぐに固まって穴を塞ぐ。

 

次に、ホルスターから拳銃を抜いて更にマガジンも抜く。薬室に装填されてある分も取り出すと、マガジンに詰め込んである9mm弾を次々親指で弾き出してテーブルの上に広げた。

 

ペンチを使って薬莢と弾頭部を分ける。今回必要なのは弾丸その物じゃなく、爆発する事で弾頭を飛翔させるという銃にとって必要不可欠な火薬だ。中身を即席の紙皿に広げる。

 

2~3発分で十分だろう。さじ1杯分ぐらい紙の上に盛られた無煙火薬を慎重な手つきで切ったパイプの中に注ぎ込んでいった。その上から束ねてあったのを1本1本バラした爆竹で蓋をしてテープで固定。勿論導火線は覗いたまま。

 

でもって火薬を詰めたパイプを今度はガスボンベと一緒にボンベに巻きつければハイ完成。即席爆弾の一丁上がりだ。

 

とはいえ、グレネードランチャーや手榴弾みたいな破片効果を狙ってある訳でもなくダイナマイトみたいに強力でもなく、精々プロパンガスを誘爆させて小規模な炎と衝撃波を引き起こす程度の物。爆竹よりは更にデカイ音を発生させるだろうから陽動や足止めに使うつもりだ。

 

単に爆竹や花火を解しただけの火薬じゃ意外と固いガスボンベを破裂させるのに不十分だと思ったから弾薬に使われてる火薬を使ってみたけど、これなら多分何とか使い物になるだろう。そんな感じで今作れる分だけ作っていく。

 

 

 

 

誰かが俺のすぐ後ろまで近づいてきていたのに気づくまでしばらくかかった。机に影が映った時になってようやく振り向いた。

 

 

「あのー、何をやってるんですかぁ?」

 

「・・・・・・誰でしたっけ?」

 

「ああ、申し遅れました!主床東署交通課、中岡あさみ巡査であります!気軽に『あさみ』って呼んで下さい!」

 

 

そういえば身体中痛くてすぐにぶっ倒れたから俺だけ此処の『先客』と自己紹介し合ってないんだっけ。

 

 

「真田聖人。一応よろしく。で、そっちの人は?」

 

 

眼鏡に坊主頭、首にはアクセサリーとヘッドホンをぶら下げたヒップホップ系の兄ちゃんの方を見る。

 

 

「俺?えっと、俺は田丸ヒロ。ところで学生さんは何やってんだ?工作か?」

 

「簡単に出来る爆弾作りですけど何か」

 

 

正直に告げた途端思いっきり引かれた。当たり前か。

 

 

「オイオイ冗談はよしこちゃんにしてくれよ。学生で爆弾作りとか何処で覚えたんだよ。最近の学生は物騒だね全く」

 

「これだけ簡単なヤツなら本やネットで調べる必要もありませんよ。やろうと思えば此処に揃ってる品物でナパームとかも作れますけどね。日本じゃANFOは難しいですけど」

 

「アンフォ―――って何ですか?」

 

「肥料と軽油を混ぜて作れるお手軽爆弾」

 

 

流石に日本のホームセンターに硝酸アンモニウムが転がってる筈無いんだけれど、それ以外にも適切な薬品と知識があればもっと強力なプラスチック爆弾も作れるのがこの世の中だ。非常に残念な事に知識も材料も今の俺にはどっちも足りない。

 

ちなみにナパームは石鹸とライターオイル辺りで作れるし、危険を犯せば放置されてる車からガソリンを抜いてくるのもありだけど炎単体じゃ<奴ら>には効果が薄いから断念。

 

 

「大体、こんな死人が歩き回る世界以上、(元)学生がこんな物で身を守るのもしょうがない事だと思いません?」

 

 

テーブルの上に置いていたP226Rのトリガーガードに人差し指を入れて揺らしてみせる。弾が装填されてないのは丸分かりなのに途端に2人はたじろいだ。

 

・・・・・・田丸さんの方は少し反応が違ったけど。

 

 

「な、なあそれやっぱり本物のP226なんだよな」

 

「だったら?」

 

「ちょっとだけでいいから触ってみてもおk?」

 

「うぇっ!?な、何を言ってるんですかぁ田丸さん、危ないですよ!」

 

「いやー、やっぱりハンドガンのマニアとしちゃこうやって本物見せつけられちゃ我慢できないですって。こんなご時世なんだからもう本物拝める着ないなんてないかもしれないんだし、大目に見てくれよ婦警さん」

 

「う、うううぅ~~~」

 

 

・・・・・・何だかこのあさみさん、里香と似ている。童顔だし、小動物っぽいし。どーでもいい事だけど。

 

ぶっちゃけ頼りない。制服も似合ってないし、今もあわあわと涙目になりかけだ。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

俺は無言でP226Rを田丸さんに差し出した。貴重な同好の士だ。弾は抜いてあるし、これぐらいは構わない。田丸さんの方も嬉々として拳銃を掴み取って、惚れ惚れと眺め始める。

 

 

「うおおおおおっ!!こ、これが本物のSIG・P226R・・・・・・!それも今流行りのピカティニーレール標準装備したモデル!くーっ、カッちょいーじゃないの!」

 

 

お隣さんの家の銃の山に遭遇した時の平野を彷彿とさせるテンションだ。人間同じ趣味を持つと驚きの反応も似たり寄ったりになるらしい。

 

尚も有頂天な様子の田丸さんが詰め寄ってくる。

 

 

「なあなあ、他にも銃はあるんだろ?グロック19かディティクティヴはねーの?ハンマーシュラウドついてるヤツ!」

 

「すいませんけど両方とも持ってきてない筈です・・・・・・俺達が銃を手に入れた場所なら置いてあってもおかしくありませんけど」

 

「そうかぁ、そりゃあ残念」

 

「代わりに暗殺仕様のMkⅢとタウルスで我慢してくれません?」

 

「うーん、実物があると分かるとそれはそれで捨てがたいZe!」

 

 

一応冗談だけど。でも同好の士となると平野も呼んで一緒に是非とも銃器談笑を楽しみたい物だ。何せ俺や平野みたいな趣味の持ち主は貴重なのだ。特にこのご時世、『生きて話の通じる』人間ならば尚更に。

 

他方、俺と田丸さんの会話にあさみさんは全くついていけない様子で、頭上にクエスチョンマークが浮かんでいるのを幻視出来てしまった。

 

やっぱりこの人、精神年齢が幼そうである。

 

 

「にしても羨ましいねぇ。銃で完全武装な上に可愛い子やエロい先生も取り揃えてるとか、よりどりみどりだろ」

 

「・・・・・・これだけの武器も面子も、結果たまたま偶然とかが上手く噛み合ったお陰なだけですよ」

 

 

俺の場合はお隣さんが実は銃の密売人か何かで残された大量の銃器を全て引き継いだ辺りがきっかけか。

 

ある意味世界が<奴ら>まみれになった事よりも出鱈目な偶然である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――その時。

 

 

「おい、お前!どうかしたのか、しっかりしてくれ!!」

 

 

 

 

そんな年老いた叫び声が、ガランとした建物に響き渡った。

 

 

 

 

 

 


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