HOTD ガンサバイバー   作:ゼミル

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※今回から佐藤ショウジ先生作品ネタが混じってきます。


21

 

 

俺達の見ている前で、銃弾によってほじくり返されたアスファルトが高温の油の様に飛び散った。

 

とはいえ着弾地点は俺達から3m以上も離れた位置だったから誰かが鉛玉を食らうなんて事態にならずに済んだ。精々飛んできたアスファルトの破片が顔に当たった程度。放置されていたワゴン車の陰に逃げ込む余裕は十分あった。

 

俺と平野はすぐさま銃撃を受けんだと判断して素早く対応に移れたし、小室も持ち前の反応の良さで同じように動く事が出来た。

 

問題はあさみさんと田丸さんの方で、2人とも何が起こったのか分からないといった体でその場に立ち尽くしてすら居た。このままじゃ良い的だ。

 

 

「撃たれてます、あさみさん田丸さん早くこっちに隠れて!」

 

「……うぇっ、わっ、あわわわわわわわわ!!?」

 

 

平野の警告に先に我に返ったのは田丸さん。舌も足ももつれさせながらも転がるようにして俺達の所に駆け込んできた。

 

あさみさんは――――まだ動かない。「え?え?」と戸惑いと混乱が入り混じった表情を浮かべて未だにその場で固まったまま。こりゃダメだ。仕方なしに平野が動く。

 

 

「真田、援護をお願い!」

 

 

心得た。親指でM4のセレクターを弾き安全装置を解除。エンジンブロック部に身を隠しながらボンネット部分に両肘を置き照準安定の為の支えとする。

 

『敵』は何処に――――見つけた。非常階段の踊り場部分に銃を持った人影。100mは離れているから細部は分からないが男だ。

 

5.56mmの発砲炎(マズルフラッシュ)と連射音。M4の原形であるM16系統の銃声だと思考の一部が教えてくれた。今度はあさみさんの後方でアスファルトが弾け、ようやくビクリと身体を竦ませた。

 

下手糞め。そう思いながら俺もM4を発砲。アイアンサイトを使って裸眼で正確に狙うにはアフリカの先住民族並みの視力でもなければ200mが限度だ。ドットサイトが使えればマシだったろうがもう使えない以上贅沢は言えない。サイレンサーも取りつけたままだから威力が落ちて更に弾道は変化するに違いなかった。その代わりバカスカ発砲音を響かせる向こうと比べればこっちの銃声はまあまあ小さく抑え込まれていたお陰で、<奴ら>は敵の方に気を取られてこっちに近づいては来ないのがありがたかった。

 

残念ながら俺も外したらしかったが、良い線を行ったようで人影のすぐ周囲に着弾し泡を食った様子で人影が動くのは分かった。その時見えたシルエットからしてやはりM16系列だ。

 

その間に平野が無事あさみさんを回収して俺達の元へ逃げ込んできた。小柄な女とはいえ自分も含めて銃弾薬を含めた完全装備という格好の人1人を抱き抱えるようにして運んできたせいか平野は息を切らしていた。運ばれただけのあさみさんも何故か似たような感じだった。顔だけは嫌に赤くなってたが。

 

 

「ぜぇ、ひぃ、し、仕留めた?」

 

「悪い、外した。もう少し近づければなんとかいけそうだけど。あと相手の得物はM16系っぽいな」

 

「まあ短銃身なM4だとアイアンサイトだけじゃ辛いよね。あ、なるべくエンジンブロックの近くに居た方が良いですよ。この距離なら5.56mmでも軽くドアぐらい貫通しますから」

 

 

平野がそう他の3人にアドバイスするが、エンジンブロック部分に5人が隠れるには狭すぎるので小室と田丸さんには後部タイヤの陰に妥協してもらった。曳光弾か爆発物でも使われない限りガソリンタンクには引火しないだろう。そう思いたい。

 

また敵が撃ってきた。むしろ乱射と表現した方が正しい。1マガジン一気に撃ち尽くす勢いで銃声が続いた。内数発が車体を叩き扉部分の窓ガラスを割る。サイドウィンドウとドアを貫通した弾丸が1発俺と小室達の間を通り抜けていったりもした。田丸さんとあさみさんが押し殺した悲鳴を漏らす。

 

だが俺と平野は冷静さを維持できていた。既に人を殺した事があるという経験があったからだろう。

 

銃撃戦は初めてじゃない。

 

 

「平野、もう1度俺が撃って頭を押さえるからお前が仕留めてくれ。スコープを装備してるそっちの方が正確だ」

 

「了解まかせて!」

 

 

自身に溢れた返事が返ってきた。それでこそ戦友だ。

 

長い連射が途切れて敵がリロードに入るとすぐさま平野が立ち上がり、ワゴン車のルーフ上からVSS消音狙撃銃の銃身を突き出してマウントされたPSO-1M2光学照準器を覗き込む。それに合わせて俺も再びM4を構えた。

 

踊り場上では敵はM16のマガジン交換に手間取っているらしい素振りが見られた。あの様子じゃまともな反撃は出来まい。

 

まず俺が発砲。火花が敵の周囲で散り、泡を食って動きが止まった所で平野が狙撃。専用弾とサイレンサー一体型の銃身によって極限まで抑制された銃声はM4のそれとは桁違いに静かだ。むしろ機関部が空薬莢を排出する作動音の方が大きく聞こえたぐらいだ。

 

敵の頭部で血飛沫が飛び、前のめりに倒れる。M16が踊り場に激突する音がここまで響いてきた。

 

 

「…グンッナイ」

 

「ビューティフォー」

 

 

狙撃姿勢を解いた平野が小さくイギリス訛りの英語で独り言を漏らしたのが聞こえたのでそれに倣って称賛しておいた。こういう時の平野はやっぱり頼りがいがあって助かる。

 

目を見開いて固まっていた小室達と目が合う。

 

 

「……殺したのか、人を」

 

「ああそうさ。殺したよ。小室達も見ただろ、僕達を撃って来た時点で<奴ら>と同類なんだ。殺らなきゃ殺られるのは僕達なんだよ」

 

「……そう…だな」

 

「コータさん……」

 

「……っ」

 

 

小室と同じく見つめてくるあさみさんの眼差しから平野は顔を背けた。

 

他にも言いたそうな素振りを見せる小室だったが、此処で呑気にジッとしていられる状況じゃない。サイレンサーも無しに敵が銃を景気よく撃ちまくっていたせいでショッピングモールには<奴ら>の群れが押し迫っていた。

 

敵がモール内まで侵入しているとなると、何処かの非常口が破られている可能性が高い。そこから大量の<奴ら>に入り込まれるなど堪ったもんじゃない、<奴ら>の矛先をモールから転じさせる必要がある。

 

何か無いか、何か無いか。こんな事ならガスボンベ爆弾を景気良く使い切るんじゃなかった――――

 

 

「おい真田!?」

 

 

小室の声を背に受けながら俺は駆け出す。視線の先には多分ショッピングモールのお客目当ての物だろう、軽食用の移動販売車がやや離れた場所に放置されていた。販売スペースに通じる昇降用の扉は解放されたままだ。

 

周囲を探って<奴ら>の姿が無いのを一通り確認してから販売用スペース内へ入る。道具と放置されて腐った食材や調味料からしてクレープの屋台らしい。

 

 

「これなら…!」

 

 

お目当ての物はすぐ見つかった。焼き台のすぐ下のスペースにホースに繋がれたLPガスのボンベが据え付けられていたのでホースをぶっこ抜き、それからバルブを捻ってガスを垂れ流しにする。すぐに強い異臭が鼻を突き、狭い空間内に広がっていく。

 

ガスを吸い込まないようにしてそこから出ると、数m離れてから一旦足を止めてから手榴弾を取り出して安全ピンを引き抜き、間髪入れずに今飛び出してきた移動販売車の昇降用スペースへと投げ込んだ。

 

手榴弾は上手い事販売用スペースの中へと消える。でもって全力疾走。4まで数えた所で前方へ身を投げ出す。

 

地べたに這い蹲りながら両手で頭を庇う寸前、背後で爆発……否、大爆発が起きた。

 

予想以上に激しい爆発音が鼓膜を襲い、足元から熱波が襲ってくる。余波だけで髪の毛がチリチリ焦げそうになったぐらいだ。ああ耳が痛い。

 

たっぷり数秒間、腹這いで伏せてからゆっくり身体を起こすと、手榴弾に加えLPガスと残っていたガソリンがまとめて誘爆した移動販売車は真っ赤な火の玉と化していた。販売用スペースが存在した車体の後ろ半分なんか原形を留めていない。

 

ともかく狙い通りモールに押し寄せていた<奴ら>は、今の大爆発に興味を惹かれて一斉にこちらへと転進していた。大回りに回り込めば十分相手にしなくても横を通り過ぎる事が出来る。モール内へ戻るなら今の内だ。

 

ハンドサインで『GO!』と合図すると意を汲んでくれた平野達がはすぐさま車の陰から出てモールとの距離を詰める。俺もすぐに合流し皆の後を追った。

 

「大丈夫か」って小室にかけられた声は耳鳴りのせいで少しくぐもって聞こえた。ガス爆発という物を舐めていたかもしれない。

 

シャッターと今や無用の長物と化した強化ガラス製自動ドアに護られた1階部分の出入り口の1つまでもう目前まで来た、その時だった。

 

出入り口のすぐ隣に設けられた手動開閉式の非常口が内側から開き、フード付のトレーナーにジャラジャラ無駄に大量のアクセサリーを付けた明らかに見覚えの無いガラの悪い男が姿を現す。

 

その手にはサブマシンガン。クソ重たいUZI暴れん坊で有名なイングラムか、ともかく向こうもこっちの姿を捉えるなり銃を持ち上げる。どう見ても敵。

 

だから問答無用で撃った。指切りバーストで3発、全て胸部に着弾。弾を食らって硬直した指先がサブマシンガンのトリガーを引いてしまい、背中から倒れ込んで銃口が上を向いた為に撒き散らされた銃弾は全て天井へと撃ち込まれる。配線ごと天板が撃ち砕かれて細かい破片が床に降り注いだが、EMPで電気系統が全て破壊されたので断線した配線から火花が飛び散る事も無く、感電の危険性も無い。

 

それはどうでもいいとして、モール内から次々と粗野な感じの男達の声が幾つも聞こえだした。

 

 

「おい、1人やられたぞ!」

 

「撃て撃て、撃っちまえ!」

 

「女だったら殺さずに取っとけよ!男は銃の的にしちまえ!」

 

「おい待てよ、向こうも銃持ってんぞ」

 

「鎧田さんに報告しといた方が良くねぇか!?」

 

 

敵の数は結構多そうだ。中から次々弾丸が飛んできてガラスに幾つも穴が生じ、泡を食ってた田丸さんやあさみさん達が悲鳴を上げて弾が届かない位置まで這う這うの体で隠れる。非常口を守る厚い鋼鉄製の防火扉に阻まれた弾丸が甲高い音を立てて弾かれた。

 

その音を聞いた途端、胸の奥底から笑いが込み上げてきて堪えきれずに口元が歪む。

 

そろそろとろくて数で押し潰してこようとする以外張り合いの無い<奴ら>の相手は飽きてきた所だ。そこに降って湧いた生きた人間との派手な撃ち合い――――殺し合い。大いに楽しめそうなシチュエーションじゃないか!

 

けどここで釘付けになっていたら、またこの銃声を聞きつけた<奴ら>が戻ってきて弾丸と歩く死人の挟み撃ちになってしまうのは想像に難くなかった。そんな間抜けな死に方は御免だ。お楽しみはこれからだっていうのに。

 

俺の視界に、最初に撃ってきた男が陣取っていた非常階段が映った。

 

 

「非常階段から中に入って回り込む。今度は平野が連中を引きつけておいてくれ。頼めるか?」

 

「Roger!幸運を!」

 

 

非常階段に向かおうとするとどういう訳か小室も追ってきた。

 

 

「ちょっと待てよ、1人で行くつもりか!?僕も付いていく、田丸さんとあさみさんは平野を援護してあげて下さい!」

 

「わ、分かった!」

 

 

付いてきた小室を見やる。何で一緒に来たんだ、というのが俺の本音だ。

 

 

「来なくても良かったんだけど」

 

「だからって、あんな危険な奴ら相手に1人で行かせれる訳が無いだろ!」

 

 

小さな親切余計なお世話、だ。対人戦でも平野なら安心して背中を預けれるけど、<奴ら>ではなく武装した人間相手に小室と組むとなると確かな信頼を持つ事が出来ない。

 

好みの問題ではなく経験と実績の問題からだ。

 

 

「小室は『人』を殺せるのか?」

 

「……殺したくて殺したいとは思わないさ。けど話し合いが通じる相手でも無さそうだし、殺さなきゃ僕達が死ぬっていうんなら――――」

 

 

 

 

――――殺してみせるさ。

 

 

 

 

「……MP5のセレクターを3バーストにセットして、敵を撃つ時は頭じゃなく的の大きな動体を狙って。相手は生きた人間なんだから一々ヘッドショットを狙わなくても胴体に当たれば仕留められるから」

 

「…分かった」

 

 

俺の指示通りセレクターを操作する小室に先んじて2階部分の非常口に辿り着いた。

 

扉の裏側に張り付いて突入のタイミングを計る、とその前に平野が狙撃した敵の死体から手がかりと使えそうな物が無いか探ってみた。M16系統なのは分かっていたが、今時のチンピラ丸出しな派手な格好の若い男が使っていた銃はM16系統の中でも最初期に作られたタイプであるM16A1だった。古すぎて今じゃむしろ珍しいかもしれない。にしても、どっからチンピラがこんな長物を入手したんだろ?

 

銃は放置しておくが死体のポケットに無造作に突っ込んであった未使用のマガジンは頂戴しておこう。M16はM4の原形だから弾薬とマガジンも共有可能で病院での戦闘でそれなりに消費していたからありがたく使わせてもらう。そこまでしてから埋め込み式のドアノブに手を伸ばした。

 

触れるよりも早く、またも内側から扉が空けられた。突然の事に手を伸ばした体勢で凍りつく俺と踊り場に足を置いた姿勢で固まる小室が見ている前で、空いた隙間から拳銃―グロック17―を握るごつごつしたデザインの指輪を何個もはめた手が姿を現す。

 

向こうからは俺の姿は扉の死角になって見えていない。

 

 

「ふっ!!」

 

 

ゆっくりと開く途中だった扉に肩から体当たりを敢行。全体重を乗せたタックルを受けて鋼鉄製の扉が勢いよく閉まる――――拳銃を握る手ごと。

 

扉から伝わる肉と骨が押し潰される奇妙な手ごたえ。扉1枚隔てて悲鳴が響き、グシャグシャに肉が裂けて歪な形状に変わり果てた手から拳銃が落ちる。

 

異物の存在で完全に閉まり切らなかった扉の隙間に爪先を突っ込み、非常口の正面に回り込みながら適切な射撃姿勢を取りつつ足だけでこちらから扉を開け放った。

 

まずすぐ目の前で腕を抱えて蹲っている男、激痛の余り突入してきたこっちに気を配る余裕もないそいつにヘッドショット。続いて標的を探して銃口を万遍なく空間内に振り向ける。ショットガンを持ったチンピラと目が合ったので向こうが腰溜めに銃を構えるより早く胸に2発、頭部に1発。キルカウント2人追加。

 

しっかりと非常口を締めてから俺と小室は通路に出た。角で敵の姿が無いか確認してから吹き抜け部分の通路へ。M4にサイレンサーが付けっぱなしなのと撃たれる前に撃ち倒してるお蔭か、どうやら俺達の侵入に敵は気づいていないと見える。

 

 

「それにしても一体何なんだコイツらは…」

 

「どこぞのヤバい所に伝手のあったチンピラの集まりじゃないか?」

 

「……床主って意外と治安が悪かったんだな」

 

「違いない」

 

 

何せ日本でありながら重武装した地方最大の右翼団体の本拠地があったりマンションの一室に山ほどの銃器が隠してあるような土地だ、サブマシンガンやアサルトライフルで武装したチンピラが存在してたって対して驚くほどの事じゃないのかもしれない。俺達だって人の事言えないし。

 

 

 

 

 

 

身を低くしながら速足で平野達と敵がやりあっている入口の方へ向かう。

 

転落防止用の手すりは鉄製のフレームと強化ガラスを組み合わせただけの代物なので普通周囲から丸見えだったろうが、平野達の相手に気を取られている敵は俺と小室の接近に全く気付いた様子は無い。階上から見下ろす。

 

数は7人。内2人は頭部と心臓を射ち抜かれて血の海に沈んでいた。残りの5人はそれぞれ柱やベンチ、案内板を遮蔽物にして入口に向け撃ちまくっている。

 

と、また1人ベンチの裏に陣取っていたチンピラが背もたれ部分を貫通した弾丸によって左胸を貫かれた。きっと平野のVSSだ。あの銃は400m先からでもボディアーマーを着た敵諸共撃ち抜く為に開発された貫通力の高い特殊な9×39mm弾を使用するからアレ位楽勝に違いない。

 

それにしても、連中の得物からしてどうやらモールに残しておいた俺達の武器は奪えていないみたいだ。ここから見る限りチンピラ連中の武器はM16A1にMP5A2(小室が持ってるMP5SD6と同じMP5ファミリーの1つで作動機構そのものも全く同じだ)、Vz61スコーピオン・サブマシンガンと日本のチンピラが持つには過剰に物騒な代物揃いとはいえ、どれもモデルとしては古い物ばかりだしそもそも俺達が持って来た武器には含まれていない。

 

下に居る連中の注目は平野達に釘付けで、無防備な背中が俺達には丸見えだ。

 

 

「タイミング合わせろ。小室は手前の2人を、俺は奥のもう2人をやる」

 

「わ、分かった」

 

 

指示を出しつつ機関部に弾を残したまま弾倉交換(タクティカルリロード)。向こうが未だ俺達の気配に気づく素振りなし。

 

これなら楽勝だろう――――小室がヘマさえしなければ。

 

もはや人を殺す事に然程の躊躇いは抱かないが、他人の尻拭いを好きでする趣味は持ち合わせてない。

 

 

「3、2、1――――撃て」

 

 

2つのサイレンサー越しの銃声が鼓膜を震わせた。照準の先、案内板を盾に潜んでいたチンピラの側頭部が半壊して横倒しになる。即座に銃口をややずらしその奥の柱に隠れているチンピラの胸部を射抜いて射殺。

 

顔と銃口は動かさず目線だけで小室の受け持ち……手前側のチンピラ2人の方に注目してみると、案の定というか1人は倒れていたがもう1人はまだ無傷で生き残っていた。というか、弾を食らった方も足を撃たれただけでまだ生きてるクサい。

 

抑制された銃声によって別方向から撃たれた事がイマイチ理解出来ていない様子のチンピラは、いつの間にか自分が唯一の生き残りである事に気づいてパニックになっている。小室に撃たれて悶絶している仲間の姿と他の死体を何度も交互に見てから耳障りな悲鳴を上げ、かと思うと四方八方に銃を乱射しながらモールの奥へと逃げようと走り出す。

 

甘い。その背中にゆっくりと狙いをつけてから1発だけ撃った。首と胸の中間辺りに命中し、逃げ出したチンピラは前方へ見えない手に突き飛ばされたかのようにもんどりうってヘッドスライディング。床に血の筋を残し、チンピラが2度と起き上る事は無かった。

 

 

「俺は足じゃなくて『胴体を狙え』って言った筈だけど?」

 

「……偶然外れただけだよ」

 

 

 

 

 

それだけ言い返して、小室は停止したエスカレーターから1階に下りていった。

 

 

 

 

 

 


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