HOTD ガンサバイバー   作:ゼミル

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「・・・・・・・・」

 

「おやどうした真田くん、そのような顔をして。もしや口に合わなかったのか?」

 

「いえ、普通に美味いですよ。毒島先輩なら、普通に良いお嫁さんになれそうだなぁってつい思っちゃって」

 

「おやおや、嬉しい事を言ってくれるじゃないか」

 

「う~、でも本当美味しい・・・」

 

「で、ここだけの話毒島先輩のタイプの男性ってどんな感じの人!?やっぱり自分より強い男とかだったりするんですか!!」

 

「あ、確かに毒島先輩ってそんなイメージが・・・」

 

「ふふふっ、それは企業秘密だよ。けど、君達が言ってる様なえり好みをするつもりは少なくともないよ。男の価値は単なる腕っ節や物事の技量のみで測れるものではないのだからね」

 

「「おお~」」

 

「な、何てカッコいい判断基準・・・こういうのを『漢女』っていうのかしら?」

 

 

嘘みたいだろ?まさしくゾンビみたいな<奴ら>に包囲されながら夜食食ってる最中の会話なんだぜこれ?

 

話のきっかけを作った俺が言える立場じゃないけど敢えて言わせてもらおう。どこの修学旅行の夜だ一体。

 

――――きっともう2度と、修学旅行に行く事は無いんだろうけど。

 

 

「あむっ――美味い」

 

 

具の入ってない塩むすびなのにどういう原理なんだろう、コンビニで売ってる様な代物とは比べ物にならないこの美味しさ。

 

本人曰く「夜食だから簡単な物にした」そうだけど、味噌汁も卵焼きもウインナーと野菜の炒め物も、普通に金が取れる美味さだ。

 

おむすびを頬張る。おむすびを置いて味噌汁を啜る。箸に持ち換えて炒め物をつまむ。おにぎり。味噌汁。炒め物。頬張って啜って摘まんで。以下略。

 

 

「でも2人の分はどうする?高城も鞠川先生もすっかり寝ちゃってるみたいだけど」

 

「大丈夫だ。2人の分もあらかじめ取っておいてある。明日のお弁当も準備してあるし――――君達年頃の男子ならば、中途半端な量ではすぐに腹を空かしてしまうだろう?」

 

「あははは、お見通しですか」

 

 

というかもう俺も小室もおむすび3個目(平野は4個目終了。まだ食えそうな気配)突入なんだけどね。実質昼も夜も3時のおやつも食事を抜いた状態だから、到着してからは腹が減って仕方が無かったのだ。

 

だから毒島先輩が夜食を作ってくれた事はかなり有り難かった。腹が減っては戦はできないとはまさしくこの事。

 

ちなみにさっき言った通り、高城も鞠川先生も酒を飲んで寝入ってしまっている為そのまま放置中。

 

 

「でもしょうがないよなぁ、世界がこんな事になっちゃったばかりだし。この1日だけでも色々とあったし、2人もきっと疲れてるんだろうさ」

 

「それはそうでしょ、私だって疲れたわよ――――永だってもう居ないんだし」

 

 

宮本の後半の言葉はほんの微かな音量だったけど、辛うじて耳に届いた。どうでもいい事だからわざわざ聞いたりはしない。

 

でもってこっちもも味噌汁の入ったお椀片手な宮本がふとこっちを向いてこんな事を聞いてきた。正確には、俺に向けてまっすぐというよりは若干左手の方を見ながら。

 

 

「それで―――あの、何かあったの?」

 

 

俺の視線も、宮本が見つめる先の方を向いた。というかこの場で飯を食ってる面子全員が同じ方を見た。

 

 

 

 

・・・・・左腕をがっちりホールドして離す気配が全く無い里香がそこに居る。

 

ナニをしかけた結果がこれですが何か?

 

 

 

 

というか、普通自分を性的に襲いかけた男から逃げるんじゃなく逆にひっついてきてるって現状がおかしい。どういう思考回路してんだ一体。

 

幼馴染だからとか、そういう事だからだろうか。つまりやっぱり俺は里香から男扱いされてないって事なんだろうか。それだけじゃ説明できない気がするけど。

 

まったく、こっちの気持ちも知らないで。さっきから当たってるどころか押しつけられてる胸の感触のせいで居心地悪くて仕方ないってのに。

 

 

「おや小室君、口元にお弁当が付いているぞ」

 

「えっ?あ、すみません」

 

「ほらそこじゃないよ―――ちょっと動かないでくれ」

 

「ふ、ふぇっ!?ぶぶ毒島先輩!?」

 

「ほら取れた・・・・・あむっ」

 

「んなっ!?な、ななななななななな」

 

「うわぁ・・・いーなー羨ましーなー小室」

 

「ば、バカっ何言ってんだよ平野!」

 

「あ~らいつの間にか結構な御身分ねぇ孝毒島先輩と間接キスなんて」

 

「おや、何かおかしかったかな?」

 

「チッ、天然か(ボソリ)」

 

 

・・・周りは周りでリアルラブコメを繰り広げてるし。

 

そこへ、一旦この場を離れて2階に上がっていた涼さんが戻ってくる。

 

既にもうすぐ日付が変わる時間帯。立派な子供であるありすちゃんは本来とっくにおねむの時間らしく、眠たそうにしてたので上のベッドに寝かせに行っていたのだ。

 

 

「楽しそうだね、君達は」

 

「あああの、いえ、あの、騒がしかったですか?」

 

「ちょっとね。まだ外には結構な数の<奴ら>が残っているから、もう少し声を押さえておいた方がいい」

 

「うっ・・・すいません」

 

 

バツが悪そうに小室はこめかみを掻きながら頭を下げた。

 

役目を入れ替わるように毒島先輩が問う。

 

 

「娘さんのご様子は?」

 

「やはりこんな状況で疲れはしているけど、思った程じゃないみたいだ。君達のお陰だろう。命まで救ってくれた上にここまでしてくれて、本当にありがとう」

 

「いえ、元より貴方方を救ったのはここに居る平野君と真田君達です。礼なら彼らに仰って下さい」

 

 

毒島先輩はそう言ってくれたけど、正直何というべきか。何だかむず痒い。

 

命を救ったのだって実際の所アレはほぼ正当防衛(もっといえば過剰防衛。後悔はしてないが)であって、命の恩人だなんて大層なもんでもない。

 

平野も同意見なのか、見てみると曖昧な苦笑を浮かべていた。俺もきっと似たり寄ったりな顔をしてると思う。

 

人に賞賛され慣れてない分、身体がむず痒い。

 

 

「ところで希里さんは、他にご家族は居るんですか?」

 

 

唐突に宮本がそんな事を聞く。

 

その瞬間、涼さんの顔が一気に強張るのを見逃す筈がなかった。

 

しばらくの沈黙の後、苦く重々しい声色で涼さんは語り始めた。

 

 

「―――妻が居たよ」

 

 

『居た』、つまり過去形。

 

 

「あの時私と妻は、娘と外で食事を取ろうと思って娘の通う小学校へ迎えに行ったんだ。そして授業が終わってありすと合流した、そこまでは普通だった・・・・・・」

 

 

だけど校舎から出る途中、突如悲鳴が響いたのだという。

 

気が付けば、家族と一緒に悲鳴が起きた方へ向かっていたという。その間にもどんどん悲鳴が増えていき、そして。

 

 

「辿り着いた時には、教師も子供達も<奴ら>になって生き残っている人間を襲っていた。そんな<奴ら>から逃げようとする人の波に、私達家族は呑みこまれたんだ」

 

 

淡々と語る涼さんの表情は酷く陰鬱で、自然と聞いているこちらの空気も見えない岩がが圧し掛かってくるみたいに重くなっていく。

 

 

「その時は2人ともはぐれてしまったが、ありすはすぐに見つける事が出来た。もう2度と離すまいとありすを抱きかかえて私は、妻を探しにさっきの場所へ戻った」

 

 

だが、その時にはもう。

 

 

「見つけた時、まず私がした事はありすにその光景を絶対に見せないよう抱きしめて動けなくする事だったよ」

 

 

誰だって母親が自分と同年代の子供に食われている光景など、娘に見せれる筈が無い。

 

父子が辿り着いた時にはもう事切れていたのは不運だったのかそれとも幸運だったのか。

 

すぐにその場を後にし、車に娘を乗せて学校から逃げ出した。だが道路に散乱していた何かの破片を踏んでタイヤがパンクしてしまい、車を捨てて徒歩で逃げだしたところで俺達と遭遇し―――今に至る。

 

ありすちゃんには、母親がどうなったのかは伝えていない。

 

地雷を踏んでしまった宮本は目に見えるぐらい狼狽して申し訳なさそうにしていた。

 

 

「ご、ごめんなさい!不躾にそんな事聞いて・・・」

 

「いや、良いんだ。構わないよ、これは私の責任なんだ、あの時手を離してしまった私の・・・・・・」

 

 

涼さんは自分の顔に浮かぶ自分も周りも滅入らせる顔を隠すように手で覆いながら、振り絞るような震える声を漏らす。

 

 

 

 

涼さんの話は、もはやこの世界のどこにでも転がっているであろう悲劇の1つにしか過ぎない。

 

果たして、次の悲劇の当事者になるのはこの中の一体誰なのか。きっと『誰もそうならない』なんて希望論は捨てた方が楽に違いない。

 

俺だって連絡が入る1秒前まで、家族が死ぬなんて考え全く予想してなかったさ。

 

 

 

 

やがて聞こえ始めた大の大人のすすり泣く声を聞きながら、俺は顔にも口にも出さずその推論をやがて訪れる現実として心の内に留めておく事にした。

 

――――希望を持たない方が絶望しないで済む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分が自宅の自分の部屋で寝ていた事に気づくまでしばらくかかった。

 

何でこんな所に居るんだ。鞠川先生の友達の家に居たんじゃなかったのか。人を殺して、お隣さんが武器の山で、学校が退学になって、両親が死んで――――世界が壊れて。

 

部屋の外で人の居る気配がする。俺はベッドから起きると、部屋から出た。

 

 

 

 

ああ、何だ。やっぱり夢だったのか。

 

 

 

 

――――それは世界中で死者が蘇って生きた人間を喰らうという、まるっきりフィクション顔負けの世の中で銃片手に戦ってたという記憶に対してじゃぁない

 

リビングに両親が居た。息子の『僕』から見ても子供に甘いと思ってしまうぐらい優しかった父さんと、温和そうに見えてしっかり父さんを尻の下に敷いてる母さん。

 

2人の顔を見た訳じゃない。今2人は俺に背を向けている。

 

恥も外聞も投げ捨てて2人に抱きつきたかった。でもそれは無理な相談だとも理解していた。

 

何となく、分かっていたからだ。

 

 

 

 

目の前に居る2人も、もう<奴ら>でしかないんだと。

 

 

 

 

両親がゆっくりと振り向いた。裏返った眼球。流れる血の涙。土気色というよりはもはや黒ずんでいるように見える変色した肌。だらしなく開いた口元からは言葉にもなってない呻き声が漏れる。

 

これはやっぱり夢だ。いつの間にか握られていたSIG・P226Rの重みだけが、嫌に現実感溢れていた。

 

一歩一歩、のたのたとした足取りで近づいてくる両親、違う、両親のなれの果ての<奴ら>に俺は銃口を向ける。

 

銃が、銃を握る手がぶれる事は無い。夢の中だと分かっていても、特に動揺もせずかつての両親に銃を向けれた点に俺は驚き、そして諦観の念を抱いた。自分自身に対して。

 

 

 

 

ああ、やっぱり自分は狂ってる。

 

 

 

 

そして引き金を――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「真田!!」

 

 

多分、文字通り飛び来てしまった気がする。

 

視界に飛び込んできたのは平野の顔。近い、近いって。いくらなんでもソッチの気に転職したつもりは無いぞ。

 

気付く。平野の手が俺の手を押さえつけていた・・・・・・・・・もっと正確に言うと、俺が握ったまんまだったP226Rのスライドと撃鉄が動かないよう抑え込んでいる。

 

そっと、引き金が落ちる寸前まで曲げられていた指を慎重に離す。

 

危なかった。危うく、寝ぼけて暴発させる所だった。平野に感謝だ。

 

 

「大丈夫?汗まみれだよ?」

 

「・・・ちょっと夢見が悪かっただけさ」

 

 

いつのまにか寝てしまった内に朝になっていたらしく、締めきったカーテンの向こうが明るい。

 

視線を動かしてみると、記憶を無くす直前まで俺の腕にひっついたまんまだった里香の姿が無い。

 

 

「もう少ししたらここを出発して川の向こうに行く事になったから、真田も準備手伝って」

 

「分かった。まだ水道使えるよな?」

 

 

頭覚まそうと洗面所へ。

 

でもって定番の如く、こういう時に限って微妙に顔を合わせたくないと鉢合わせする。

 

 

「あ、マーくん・・・」

 

 

里香も寝起きで顔を洗いに来たのか、とにかくさっさと用を済ませてしまおう。

 

犯そうとしてきた俺に対して軽蔑しようが嫌悪しようが、里香がどう思うのかはどうでもいい。

 

ただむしろ、あんな事をしてきた俺へ里香がそれまで通り・・・・・・いや、これまで以上に俺にくっついて離れないのが逆に居心地悪いというか、気味が悪い。

 

幼い頃と違って俺は男でそういう欲望もあるってのも重々理解してるのに加えて、里香の方はアンバランスな色気に満ちている。もう、ただの幼馴染って感じで接っせれる自信は全く無い。

 

もはや目の毒過ぎてどうでもいいって訳にはいかないんだよ、正直な話。今だって昨日から変わらないあの裸Yシャツのままだから、色々と見えてしまって目の置きどころに困る。

 

昨夜の事も謝るべきなんだろう。でもどんな顔してどう言って謝ればいいのか分からない。だから謝らない。謝れない。それに、別に許されなくても構わないし。

 

結局俺がやろうとしてる事は逃げだった。思えば、学校を追い出されてから誰にも会おうとせずずっと引き籠ってたのも、現実から逃げようとしてただけと言える。

 

俺と里香の間には、水の音だけが響いた。

 

顔を上げる。鏡に、ずいぶんと目つきが悪くなった感じがする自分の顔が映る。丁度視線と同じ高さ辺りに大きくシャツを盛り上げ過ぎて薄い布地の下からしっかり突起が浮き上がってる上に呼吸のたびに揺れてる物体が目に入ってきて、慌ててもう一度水で顔を覚ます羽目になった。

 

タオルを探す。見当たらない。

 

 

「はい、これ」

 

「む・・・」

 

 

差し出されたタオルを、すぐに受け取る事が出来なかった。

 

でも見回しても他にタオルは無い。渋々、そのタオルを借りる。一応ありがとうと礼は言っておいた。

 

 

「―――マーくん、昨日の事だけど」

 

 

だと思ったよ!

 

顔を拭く手を止めて里香を見た。里香の顔は怒ってる様にも、軽蔑しているようにも見えない。恥ずかしがってる、って表現が当て嵌まる。

 

 

 

 

「ま、マーくんがあんな事したいんだったら――――わ、わわわ、私は何時でもいいから!!」

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何だって?

 

真っ赤な顔で逃げていく里香を、俺は見送る事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしてこうなった・・・・・・どうしてこうなったっ・・・・・・!!」

 

「えーと、真田?何かあったのか?」

 

 

どうしよう。余りにもあんまりな展開過ぎてリアルorzしてしまうぐらい訳が分からない。

 

もう何が何だか。本当に、どうしてこうなった?予想外というか、里香が何考えてるのかさっぱり分からん。

 

 

「なあ、危うく襲いかけた幼馴染に逆に何時でも襲っていいってOK出されたらどうすればいいと思う?」

 

「ハァ、何だそれ!?」

 

「スマン、聞いた俺が馬鹿だった」

 

 

据え膳食わねば男の恥とはいうけどそういう問題じゃないっての!

 

 

「女ってヤツは、分からん」

 

 

とりあえず、この一言に尽きる。

 

ああもう、ウダウダ考えてても埒があかない。今は別の用事を済ませよう。問題の先送り?ほっとけ。

 

 

「平野、ちょっと良いか?女性陣が着替えてる間に装備する物を整えとこう」

 

「分かった。希里さん、拳銃とショットガンを触った経験はあるんですよね?自動小銃なんかはどうです?」

 

「いや、そこまでは触った事は無いよ。だけど拳銃とショットガンは駐米時代に向こうの友人に連れられて何度か射撃場で撃った事がある」

 

「じゃあ、はいこれ。このモスバーグは9発、薬室にも1発入りますから。こっちのタウルスはマガジンに15発入ってますんで。予備の弾とマガジンはこっちに」

 

「ん?確かこの銃はベレッタという名前だと聞いたんだが―――」

 

「ああそれは南米産のベレッタM92のクローンで―――」

 

 

本人の申告通り、希里さんの手つきはちょっとぎこちないけど扱い方そのものはそれなりに理解してる感じだ。フォアグリップや拳銃のスライドを引いて、作動を確認している。

 

俺は俺で、KS-Kを取り出すと小室に渡した。その重みに驚いた様子だった。

 

 

「小室はこれ使え。散弾だから狙いが曖昧でも当たりやすいだろうから」

 

「これもショットガンなのか?てっきりほら、映画によく出てくるカラシニコフとかっていうアサルトライフルってやつかと」

 

「元々その銃をベースにして開発したタイプだからね。機構も似たようなものだから頑丈で確実に作動するし、モスバーグみたいなポンプアクションじゃなくてセミオートだから連射も効くから」

 

 

こっちはこっちで完全に素人だから、簡潔かつ丁寧(なつもり)に扱い方を教えていく。

 

 

「このレバーを押し込むとマガジンが外れるようになるから、親指で押しながらすぐに取り外せるよう何回か練習した方が良い。新しいマガジンを取り付ける時はしっかり押し込んで、挿入口にしっかり嵌り込んで固定されたのを確認してからこの棹桿を引けば――――」

 

「ちょっと待ってくれ、そんなに一度に言われても分かんないって」

 

「――――銃の扱いをきちんと理解してなきゃ、自分や周りが死ぬぞ?」

 

 

銃の暴発で死人が出るのはざらだ・・・・・・寝ぼけたせいで、平野が起こしてくれなきゃ撃ってた事確定な俺が言っても説得力無いけどさ。

 

割と本気な調子でそう告げると、渋々といった感じで小室が頷く。

 

 

「頼むよ、誤射で殺されるのは本当に勘弁して欲しいんだから。小室もそうしたかないだろ?」

 

「・・・分かったよ。でも、いざとなったら棍棒代わりにでもするさ」

 

「ま、そういう扱い方も間違っちゃないけど」

 

 

とりあえず俺のサバゲー用のベストを貸す。俺が着てるお隣さんの部屋にあった本物とは違ってそこまで頑丈じゃないけど、予備の弾薬や他の装備を持ち歩いたりするのには十分事足りるだろう。

 

サイドアームの拳銃と拳銃用ホルスター、太腿に巻くタイプのレッグポーチも渡す。こっちは純正のベレッタM92Fだ。在日米軍から流れた代物だと予想してる。

 

 

 

 

リビングで俺達野郎共がそんな感じの会話を繰り広げていると、上で着替えていた女性陣がようやく降りてきた。

 

宮本とありすちゃんを除くと、彼女達の格好はかなり様変わりしていた。まぁ、返り血浴びてたり服が破けてたりで結構汚れてたから仕方ないな。

 

でも色々と、露出とかあれやこれやを目立たせてて人の目―主に野郎―を惹きつけそうな格好ばかりなのは何でなのやら。

 

毒島先輩とか、普通に横の切れ目からパンツ見えそうなんですけど?

 

 

「「うわぁ・・・」」

 

「ふっふっふっふっふ」

 

「はは、あはははは・・・・・・」

 

 

もう笑うしかない。服が変わってる面子全員、目の毒以外に何と言えと?

 

つーか里香。だからそれ俺のシャツだろうが。下着と短いスカート履いた以外変わってねーし。上のボタン留められないのは仕方ないとしても、下着透けて見えてるのには気付け。

 

―――――でもって全員が全員、見惚れそうなほど似合ってる風に見えるんだから性質が悪い。

 

 

 

 

 

 

 

 

何かもう、笑う事しか出来ない俺達だった。

 

 

 

 

 

 

 


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