IS:ボンド   作:田中ジョージア州

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今回は巧となのはを中心にキャラの掘り下げを行います。


6話 充電アダプタが細いとなんか不安になる

ーー昼時 食堂

 

今朝は急にかつての幼馴染の到来に驚いた一夏は、箒と同伴で食堂へと足を運んだ。その道中は箒から鈴音との関係を尋ねられ説明していた。

 

「お前がファースト幼馴染なら鈴はセカンド幼馴染ってとこだな。」

冗談を交えながらの説明にふむと真剣な顔付きをしながら箒はひとりごちる。

 

「一番か……だが幼馴染というステータスは失った訳か。」

 

箒からしてみればキャラ被りしている上、どうやら相手とは同じ胸中らしいため冷や冷やモノなのだが、勿論一夏からすれば思ってもみない反応なので照れながら。

 

「ステータスって、俺と幼馴染なんてなんの得になるんだ?」

「むっ。お前には理解出来んのか。」

 

全然、と即答の一夏に無表情ながら内心ではかなり傷ついた箒。小さく「いつかは…」と決意を固める。

 

食堂へと着いた一夏はトレイを取り列に並ぶ。そこまで混んでいた訳ではないが、今日は何故かいつもより空腹だ。中々進まぬ列にソワソワと視線を揺らす一夏の姿に箒が苦言を漏らす。

 

「見っとも無いぞ一夏。」

 

「だって、腹減ったんだもん。」

 

「もう直ぐだ。我慢しろ。」

 

「へ〜い。」

 

漸く回って来た順番。食券を渡し料理を受け取る。IS学園の食堂は食券を購入してそこから厨房で調理を始めるためタイムロスが少ない。食堂のおばちゃんからカツカレーライスを受け取る。腕のトレイから至近距離で漂ってくる食欲を唆る匂いに益々腹の虫が鳴く。

 

「はぁー、もうくたくただぜ。早く食おうぜ箒。」

「分かった分かった。」

 

急かす一夏に適当に相槌を打ちながら、目線は空いている席を探す箒。すると。

 

「ん?」

「どうした?……おっ?」

 

何かに気づく箒が気になり見てみると。

昼食だろうラーメンをテーブルに置いて、もっとくたくたになって机に突っ伏している鈴音が居た。

隣にはそんな事など気にする事もなく料理を黙々と食べる、転入生乾巧の姿。鈴音と同時に二組に越して来た2人目の男性操縦者だ。そして

 

「オルコットさんか?」

 

遠目でも輝く、ノロケでも何でもなく本当に映える。イギリスの代表候補生セシリア・オルコットの姿がそこにはあった。三者とも現在絶賛注目の的である。なぜ同席しているのかは謎だがどうにも近寄り難い。

 

「なんか知らんが離れて座ろうか箒。」

「あ、あぁ。」

 

そして離れた位置に空いている席を見つけ、早口で料理を掻き込み教室に戻る二人だった。

 

 

疲れた。

代表候補生になる過程でもそうはなかった疲労感が体を襲う。モノレールで知り合った巧が二組に入ると解った時は嬉しかったがその面倒を自分が見てやると、丁度席も隣になったことで謎の義務感に駆られ口にしてしまった事を鈴音は後悔している。

 

巧は無茶苦茶。むちゃくちゃ無愛想だった。モノレール時はそうでもなかったが、人が増え集団生活が始まった途端それは顔を出した。

まず古今東西の共通。転校生への質問責めだが、これに巧はすべての質問を無表情、全無視という友好もあったものではないコミュニケーション法をご披露なされクラスを引かせる。更には見学に来た先輩生徒の積極的なアプローチがお気にめさなかったようで、鋭い目に皺を寄せて

 

「うっとい。お前とお近づきなんかなりたくねぇんだよブス。」

 

と上下関係(年は巧が上)と現在の一般認識である女尊男卑を構わない台詞であわや乱闘沙汰寸前に、極め付けがISの実習訓練の時だ。

動かせるといってもぎこちない動作で女子なら間違いなく入試の段階で落とされている巧。いよいよ候補生の自分の出番だと張り切り一般生徒とは色違いの赤の入ったピンクのISスーツを着て指導をしていた。かなりハードな要求だったが巧も気を許した鈴音相手には文句は言わず必死に応えようとし、鈴音も熱が入りかなり接近していたから必然ともいえるのだが。

 

急な浮遊感とブラックアウト。

 

許容を超えた要求に応えようとブンブンと腕を振り回していた時、同じく熱が入り普通より近づいていたことでその射程内に入ってしまい結果的にだが。ISの剛腕で思いっきりぶん殴られる形となった鈴音は放物線を描き地面に激突。すっ飛んできた担当教員によって授業は一時中断状態となる。それがトドメとなり今こうして好物のラーメンを運んで来たは良いがこうして力尽きているわけだ。ちなみに巧はというと同席するセシリアとの会話に勤しみコッチに構いすらしない。

 

……………この野郎

 

「では巧くんは日本中を旅しているのですね。」

 

「そんな大したもんじゃねぇよ。」

 

セシリアの感嘆を受け流しながら黙々と料理を口に運ぶ巧。同じクラスですらもう自分を犬猿し始めているというのにまさか隣のクラスから外人が昼食を同席したいと頼み込んでくるとは驚きだ。しかもこれまでのまるで珍獣を見るかのような扱いをしてくる女達に比べてセシリアの態度は実に淑女的だ。余計な事を聞いてこない彼女に巧もすっかり気を許し、セシリアも巧の落ち着きある(ただの面倒臭がり)振る舞いが好みに合うらしく。仲が深まるのに時間はかからなかった。

 

「ちょっとアンタ…」

「あ?生きてたのか。」

 

このやろぉうぅ……

 

「少しは申し訳無さそうにできないの?」

 

ギリギリと歯ぎしりをさせながら恨めしげに体中の痛みを訴える、が。

 

「わざとじゃねえよ、それに勝手にお前が当たりに来たんだろ。お前の不注意だ。」

「うぐっ」

 

事の大きさから考えれば白状にも程がある態度だが正論である。

 

「まあ鈴さんも、大事にならずに良かったではありませんの。」

素敵な笑顔で言いくさりおったこの女。

 

「まあセシリアがそう言うんなら良いけど。」

 

この英国淑女を前にはどうもその手の感情はなりを潜める。

 

「水をたっぷりと飲んで休めば治りますわ。」

 

「アンタの国の医療機関ってそんなに大雑把なの?」

 

「大丈夫ですわ。Everything will be fine!(全て上手くいく!)」

『keep calm and carry on』平静を保ち,継続せよ.第二次世界大戦前に作られたスローガンだ。これのせいかは知らぬが少なくとも目の前のイギリス人は偉いポジティブ思考らしい。

 

「………ま、いっか。」

 

他人に厳しく知人にはベラボーに甘いのが中国人だ。この程度の文化の違いは笑って流そう。

 

「まっ、このままじゃ冷めちゃうし食べるか。」

 

とラーメンを啜る。うむ、次第点

 

 

 

「な、なのはさん。」

不意に名前が呼ばれる。

先程から幾度となくこうして名前を呼ばれている。しかしその割には呼ぶ相手はいつまで経ってもどこか緊張したようで落ち着きがない。先ほどの言葉が詰まりかけた呼びもまだ良い方だ。噛んだり間違えたりはもう数えきれない。

 

(ヴィータちゃんの方がマシかな?)

 

彼女には名前を覚えて貰う事が苦労だったが此方は平静を保って貰うのが苦労しそうだ。

 

「なに、簪ちゃん。」

 

少しも不満など抱かずなのはは簪に返す。対する水色の髪が内巻きになっている、眼鏡型のディスプレイをかけた女子。4組のクラス代表『更識簪』は肩を跳ね上がらせ少し照れたように「あの、あの!」と口ごもる。

 

「いっしょに……食事、食べ、あ、。」

「うんいいよ。一緒に食べよう。」

 

屈託のない笑顔に先ほどの緊張で真っ赤になった顔がすっかり明るくなる。

「はい!」

元気良く返す簪がまるで小動物のようで微笑ましくなのはも笑みが深まる。

 

なのはのクラス入りは特に波乱を出さずに実に優等生的に終わった。受け答えも愛想良く既にクラスの大多数がなのはに好意的な気持ちを抱いている。簪はそんななのはの目に自然と入ってきた。クラスの大半がなのはの周りに集まり、その他の生徒も其々のグループに分かれるか昼寝をしたり本を読んだりで時間を潰す中、彼女だけなにやら内職に勤しんでいるようで目立った。近くの生徒に聞いてみると彼女はこのクラスの代表で専用機持ちの日本の候補生だというのだ。しかし彼女の開発される予定だった専用機は一夏の白式にスタッフを回され未完成状態のまま頓挫。残りを彼女が独力で作業を進めているのだがどうにも上手くいかないらしい。束ですら長い年月をかけても未だに未完成だというのだから一高校生に成し遂げられるとは、彼女には悪いがなのはも思えなかった。

 

どうにも放って置けなかった。

 

「こんにちは。」

 

ビクッと肩を跳ねさせる。

意外そうに顔を上げるとおっとりとした雰囲気を醸し出す可愛らしい造形が映る。少女、更識簪はどこか怯えたような気弱な表情でなのはを伺う。その様子に少しいきなり過ぎたかと反省しながらなのはは持ち前の優しい笑顔を向ける。

 

「ごめんね。びっくりした?私の事分かる?」

 

まずは謝罪。それから自分の名を聞く。簪が固まったままあうあうと口を開くのを見ると再度微笑みながら。

 

「なのは。高町なのはです。宜しくね。」

 

はっきりとした語句で改めて名乗る。簪はしばし呆然としていたが何故か顔を赤らめる。不審がるなのはがどうしたのかと聞こうとした時。

「更識簪です!宜しくお願いします。」

 

今度はなのはが驚く番だった。簪は先ほどの挙動不審が嘘のようにハキハキしながら答える。その姿になのはだけでなく簪を知るクラスメートまでも驚く。しかし簪はそんな周りの目など気にせず。

 

「あの、さ、さ、更ら、識じゃなく、…そ、その。簪ってよよよ。」

 

「簪ちゃんだね?私はなのはで良いよ。」

 

「は、はい!」

 

これがなのはと簪の出会いだ。

 

「ここの食堂のお料理美味しいね。お店みたいだよ。」

 

「予算は全て日本一国持ちとはいえ先進国の国家プロジェクトですからね。設備も他の学校とは段違いなのも無理ありません。」

 

漸く饒舌に話せるようになった簪の説明に成る程と相槌を打つ。

 

(話すとこんな感じの子なんだ。)

 

胸中で思いながら食事を進める。ふと、目に入れる目的。IS学園(ここへ)来た理由である頼み事。世界初の男性のIS適合者 織斑一夏。幼馴染と食事を楽しむ彼を横目で確認しながら再び料理を口に運ぶ。

 

 

 

 

「なのはちゃん………IS学園に行ってくれない?」

 

か細く、伺うような束に付き合いの短いなのはは違和感に感じる。だとすれば横でなのはのティーカップを片している銀髪の少女。クロエ・クロニクルの驚きはもっともだった。

 

「どうなさったのですか束様。」

 

クロエの問いを受けなのはに向かって、やはり暗いトーンで束が答える。

 

「スカリエッティの狙いが解ったかもしれない。」

 

ジェイル・スカリエッティ

事件後の調査で浮き彫りになった管理局の闇。スカリエッティもその一つであった。無限の欲望(アンリミテッドデザイア)の名称を冠した管理局の最重要計画。古代ベルカの発達した文明ですら持て余した史上最強の質量兵器『聖王のゆりかご』の発掘と運用を目的とした人造生命体。それが足長おじさんの正体だった。ここにきて明らかとなった敵の名称に束にも変化が出来たらしい。

 

「束さんね。最近ちょっとまいってたみたいなんだ。それで今まで気づかなかったんだけど。」

 

家族と縁を切り世界から孤立しただスカリエッティの所在だけを10年も調べてきた。精神が異常をきたしても不思議ではない。なのはにより10年来の怨敵の名を聞かされて束の精神にも一区切りついたようである。

 

「スカリエッティが白騎士事件の発端なのは間違いないんだけど、何処までほんとのことなのかなぁって。」

「?どういう事ですか。」

 

なのはの疑問に束は、彼女には珍しいほど丁寧に人に教える。

 

「まず2341発のミサイルをハッキングして発射させるって時点でおかしいんだ。」

 

束によるとミサイルだけでなく全ての軍事システムは原則としてネットへの繋がりを途絶している。即ち外部との関わりをシャットアウトしているためそもそもハッキング、クラッキングは不可能なのだ。

 

「それにミサイルの発射とかは最終的にはボタンだとか鍵だとかで物理的なものだからますます難解になるし、内部協力者がいたとして2000発分の軍事施設に潜りこませておくのは少し現実的じゃない。」

 

説明されればされる程実現見のない夢物語に思える。

しかしとなのはは顎に手を当てる。事実として10年前に日本は巡行、弾道ミサイルの危機に襲われているのだ。スカリエッティは確かにミサイル発射が可能だった。うんうんと唸ってみるが結果は芳しくならない。そもそも敵として相対した際もスカリエッティとは直接に会った事がないのだ。モニター越しの狂気だけではスカリエッティの思考を読むには限界がある。

 

「正直今でもあまり納得出来ないんだけど。」

 

自信なさげに頰を掻く束に再度注目する。

 

「スカリエッティはハッキングとかなしでもミサイル発射が可能だった。」

 

続けて束は言う。

 

「正確にはそれが出来る地位にいたって考えなんだけど、どうかな?」

 

地位にいた。

 

ミサイル発射を命じられる程の高い地位にあの狂人は席を置いていたというのが束の考えだ。

光明が差し込む。これまでの流れの中で初めて核心に近づいた気がした。

 

「それなら調べても浮かび上がらない理由も分かる。束さんでもある一定ライン超えた施設は調べられないし。世界中の軍事施設に命令が出来るなら自然とそういう場所にいるからね。」

 

途端息を吐き出し束が呆れたように笑う。

 

「それにしても比喩なしの世界征服だね。ただの変態だと思ったら割とステレオタイプな悪役なんだね。スカリエッティって。」

 

なんか気が削がれちゃったよ、と笑う束。そのまま話が終わってしまいそうなのでなのはが思わず切り出す。

 

「であの、スカリエッティの狙いって何なんですか?」

 

「んあ?……あそうだ、それそれ。」

 

あれだけ深刻な表情をして置きながらアッサリと忘れてみせる束の胆力に改めて苦笑する。束は今度こそ真剣な表情に戻りたどり着いた結論を語る。

 

「まあステレオタイプとか言ってみたけど…本来なら凄いことなんだよね。世界征服って。もう求めるもの全部手に入ったも同然。一生好きな事して生きていけるってくらい。」

 

確かにと相打つなのはに頷きながらじゃあ、と

 

「それでなんで隠れるんだと思う?」

 

地位も名声も、と言葉が昔からあるがその最たる位置であろうスカリエッティが今いる地位。しかしその効力は表舞台に立たなければ発揮されない。ミッドチルダでの事件からして自己顕示欲の強いスカリエッティがなぜ10年前から一度も姿を出さないのか。

 

「多分あいつにとって重要な要素がまだ残ってるんだと思う。」

 

そう語る束はそれを確かめるように邂逅する。

 

「あいつが表に出て来たのは後にも先にもちーちゃんが関わったあの時だけ。ちーちゃんっていうこの世界の改変の要素が現れた瞬間だけ。」

 

歯ぎしりをしながら束は改めてなのはに尋ねる。

 

「なのはちゃん、IS学園に行ってくれない。」

 

怒りも伴い今度こそハッキリとした口調。

 

「あいつの狙いは多分『人』この世界の常識を覆すような存在。多分あいつはそれが現れて初めて出てくる。」

 

沈黙が少し

 

「ちーちゃんの弟 織斑一夏君。その子がもう直ぐIS学園に入るらしいの。世界で初めてISを動かせる男性として。」

 

「ISは女性にしか動かせない。」その常識を覆せる人物。世界に改変を引き起こせる人物。確かにスカリエッティがもう一度現れるとしたらそこしかない。

すると今まで口を出さなかったクロエが一言。

 

「そして一夏様の身をなのは様に守って頂く訳で御座いますね?」

 

なのはの戦力は束も理解しているつもりだ。彼女が最大の脅威としている灰色の怪人もなのはなら単騎での戦闘。引いては撃破も可能だろう。親友の弟を守って貰うのにこれ以上の逸材はいない。

 

「お願いなのはちゃん。いっくんを守って。」

懇願する束に。

 

 

しかしなのはは未だに能面で。

 

 

「全部ですか?」

 

キョトンとするクロエと言葉を詰まらせる束。

 

 

 

 

 

「本当にそれだけなんですか?束さんが怒っている理由。」

………………

フッと聞こえる音。観念したように束が改めて頭を下げる。

 

 

 

 

ーー食堂

一夏は余程空腹で悩まされていたのか大盛りのカレーを口へ放り込んでいく。それを行儀が悪いと諌める一人の少女。なのはが目を細める。

 

 

『束さんね、妹がいるんだ。箒ちゃんっていうの。』

 

この手で掴める手を何としても掴むため。

 

『今年からIS学園に入学するらしいんだけどさ……』

 

その手が届かぬ所にも、飛んでいけるため。

 

『お願い。なのはちゃん。』

 

懐に仕舞う相棒が微かに光る。

 

『箒ちゃんを守ってあげて』

 

 

 

頭に心に響く声。

《必ず成し遂げましょうマスター》

頷く代わりに決意を新たにする。届かぬ手を取るために

 

この力(魔法)を手にしたのだから




会話が長くなると途端に文がチープになっていく。
なにかの呪いか……⁉︎(単なる力不足です)

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