IS:ボンド   作:田中ジョージア州

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鈴の告白を一夏が履き違えたシーンです。
元のストーリーで間違えるのもまあ、無理ないかなと思ってしまったのでキャラに代弁させています。
「改悪すな」という方はどうぞお許し下さい。


7話 セカンド怒る

++食堂++

 

あっと声を上げたのはカロリー摂取により消耗したエネルギーを取り戻した鈴音だ。そこまで大きな声量では無かったが不意に飛び出たため巧とセシリアは何事かと目を向ける。一方の鈴音はよほど大事な事なのか二人の視線も気にせず、直ぐに頭を抑え落ち込む。

 

「忘れてたー。」

 

やっちゃったーとぼやく鈴音に二人は目を合わせて不思議がる。相変わらず落ち込んだままの姿がなにやら聞く気を失わせてきた。セシリアがどうしたものかと思案していると不意に巧が目を合わせて来た。

 

「?」

 

首を傾げて答えてみせると彼は次に鈴音へと目を振る。それを二度繰り返すと目を伏せ残った料理に手を付け始める。

 

「あぁ」

 

理解したように自分に聞こえる程度の声量で納得するセシリア。少々顰めたような笑顔を浮かべ意を決して鈴音へ声をかけた。

 

「どうなさいましたの?」

 

「一夏誘うの忘れた〜」

 

そう言えば彼女は一夏と恋仲になりたいのだったなと思い出し納得する。要するに織斑一夏と食事を同席することで親しみを増やし、如何にか発展するのを狙っていたのだろう。確かに鈴音は幼馴染とはいえ1年のブランクがある。他の生徒と比べ圧倒的なアドバンテージがあるだろうが、それでも恋する乙女からすれば周り全てが女子という環境を安心させるには足りないようだ。本当に落ち込んでいる鈴音はさっきよりも弱々しそうに見える。巧は大して感じないようだがセシリアは平穏な調和が望ましく思う。柔らかい声で俯く鈴音に語りかける。

 

「一夏さんの事が好きですものね。」

 

それに鈴音も反応を示す。机に突っ伏すのを止めセシリアに向かい身を乗り出し。

 

ガシッ!!

 

胸ぐらを掴んだ。

 

かなりの力で引き寄せられ困惑するセシリアに鈴音は食堂中に響き渡る程の怒号で

 

「なんでアンタ一夏の事『一夏』って呼んでんのよ⁉︎」

 

「えっ……あっ。」

 

やらかした

 

不安で精神が揺れ動いている今の鈴音にセシリアの名前呼びはその不安をモロにぶっ叩いた。今のセシリアは鈴音の中ではさながら『人の恋路を邪魔する不届き者』のレッテルを貼られている。なんとか言い繕おうとするが興奮した鈴音は聞き入れず胸ぐらを掴んだまま前後に揺らす。

 

「どうゆうことよ!どうゆうことよ!どうゆうことよ!どうゆうことよ!どうゆうことよ!どうゆうことよ!」

 

「落ち着いて下さいまし鈴にゃん。」

 

「鈴にゃん言うなぁぁ‼︎」

 

馬の耳に念仏。少し意味は違うがそんなことわざが浮かんでくるほど今の鈴音は聞く耳持たずだった。セシリアはなんとか腕力で押さえつけるが箍が外れたらしい鈴音の膂力は小柄とは思えないほどであり暴れる彼女の打撃を捌くだけで腕が痺れてくる。

 

「巧くん!」

 

堪らず助けを求めるセシリア。元はと言えば巧が面倒臭がって起こった事だ。

 

「たくっ…」

 

憎まれ口を叩きながらも平らげた料理を横にズラし、おもむろな仕草でテーブルに備え付けで置かれてある醤油差しを手に取る。そして…

 

 

 

ぷしゅっ

 

 

 

「ギャァァァ!!!!?目が‼︎目がァ⁉︎」

 

目元を抑えゴロゴロと食堂の床を転げ回って悶える鈴音。うわあ…という声が食堂中から上がった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「落ち着きましたか?」

 

尋ねるセシリアにすっかり意気消沈した鈴音が答える。

 

「うん…ごめんセシリア。

 

あと醤油スッゴイ染みた。」

 

「今度ああなったらまたしてやるからな。」

 

なんの悪びれる様子もない巧に、もはや恨めしさよりも尊敬の念が芽生えてくる。

 

「私は一夏さんには友人以上の感情は抱いておりません故ご安心を。」

 

にっこりと微笑んでみせるセシリアに再度謝り鈴音は本題を切り出す。

 

「実はこの昼食の時に二人きりになれたらさり気無く聞こうとしてた事があったの…」

 

聞きたい事?繰り返すセシリアにうんと頷き鈴音は恥ずかしがったみたいに顔を赤く染めずっと誰にも打ち明けなかった胸の内を語る。

 

 

 

あれは2年前の時。

 

時刻はもう暮れ。他に人のいない教室で鈴音は同じ制服の一夏に対し、一大決心をしようとしていた。そばに立つ一夏は窓の外の紅色に染まりつつある街並みをほうっと見流しており気付かないが今の彼女の顔は夕日にも劣らぬ程の真っ赤に染まっていた。

 

「い、一夏!」

 

「ん、なんだよ鈴」

 

遂にこちらへ向いた。

 

もう後戻りは出来ない。

 

すうっと深呼吸一つ。

 

さっきまで緊張で心臓が破裂しそうだったのが嘘みたいに落ち着いている。そして鈴音は口を開けた。

 

「アンタうちの店どう思う?」

 

 

ちがう

 

 

(私のヘタレ…)

 

完全に途切れた。もう脈なしだ。

 

「良いよな。安いし美味いし、毎日通えるぜ。」

 

質問の答えに屈託のない笑顔で一夏はそう言った。求めていたものとは大分違うが仕方ないと思い諦めよう。これはこれで嬉しい言葉だ。チェーン店と違い常連客が売り上げの中心である定食屋にはこれ以上ない賞賛だ。

 

「そう、毎日来ても……まいにち?」

 

脳裏にさながら電流が走ったかのような衝撃を覚えた。勝利のイマジネーションが見えた‼︎

 

「そ、そんなに毎日食べたいんだったら……」

 

バクバクと心臓が再び鳴り響く。自分のか細い声などかき消されてしまうかのような錯覚に陥る。もし一夏に届いていなかったら、そう思うと涙が溢れそうになる。

 

しかし

 

 

 

「なんだよ?毎日食べたいんだったら、なんだって?」

 

届いていた。その事実で鈴音は完全に吹っ切れた。

 

「だから!(うち)に来なくても、酢豚くらいなら私が毎日作ってあげるって言ってるのよ‼︎」

 

言えた!遂にやった!一夏に告白出来た‼︎

 

喜びに胸が高まる中すこし冷静になった事でおやっと思ってしまった。

 

(そういえば私料理下手だった。)

 

これはぬけている。折角毎日彼に酢豚を作ってやれても、恐らく彼なら文句は言わないだろうがそれでも美味い方が良い。そこまで至って鈴音は直ぐに告白を修正する事にした。してしまった。

 

 

「上手くなったらね。」

 

「本当か?それは助かる!」

 

先程と()()()()()()()()()喜ぶ一夏だったが鈴音は達成感からもう一夏に気を向けてはいなかった。

 

 

以上の出来事で鈴音は一夏に告白したと思い。一夏は鈴音から料理の成果を見せて貰えると思った。

 

 

ーーーーーーーー現在 食堂

 

 

「ーーて訳なの。えへへ」

 

自分と彼しか知らない秘密の約束を話してしまい鈴音は顔を真っ赤に染めてもじもじと身悶えている。そんな恋する乙女をすごく冷めた目で見る巧とセシリア。鈴音もそれに気づいたらしく頰をむっと膨らませて抗議を上げる。

 

「なによその顔!言いたい事があるならハッキリ言いなさいよ!」

 

「………」

 

それに無言のまま、セシリアは醤油差しを取り。

 

 

 

ぷしゅっ

 

 

 

「ギャァァァ!!!!?目が‼︎目がァ⁉︎」

 

 

 

のたうち回る鈴音を見下ろす。色を感じさせない冷たい瞳だった。

 

「このおばかさんが……」

 

 

 

 

 

 

 

一通り生徒もバラけ(逃げて)ガランとしてきた食堂で落ち着いた鈴音は驚愕に身を立たせる。

 

「勘違いですって⁉︎」

 

うんうんと二人してそれを肯定する姿に鈴音は返す刃を失ってしまう。

 

「そもそもなんで『毎日味噌汁を』的な告白の仕方するんだよ。昭和か。今時わかんねぇだろ。」

 

「そそ、そんなことないもん!」

 

巧からのそもそもの前提全否定に必死に反論する。

 

「私は生憎その言葉遊びは知りませんが、「言葉遊び…っ」少なくとも妙に洒落た言い回しは墓穴だと思いますわ。」

 

良いですこと?と続けてセシリアのターン。

 

「人というのは持って生まれた身の丈が必ずあるもの。下手にそれを超えるとかえって不自然になってしまいます。鈴さんの告白の仕方も正にそれ。

 

いくら洒落た体を装っても貧乏人は貧乏人ですわ。」

 

「び、貧乏人……」

 

辛辣過ぎる言葉に完全に意気消沈して座り込んでしまう。しかしそう言われてみればだが、確かに少し不自然だったかも。

 

「多分あいつ酢豚を奢って貰えるとしか思ってないぞ。」

 

「そもそも恋愛対象とすら見ていませんもの。違い有りませんわね。」

 

「そ…んなぁ。」

 

くったり

 

それがトドメとなり完全に沈黙してしまう鈴音。そんな様子にお互い顔を見合わせてやれやれと両手を上げる。

 

虚し過ぎる空気の中チャイムだけが響き渡る。

 

 

 

 

 

 

 

「……どうすれば良い?」

 

弱々しく、目に涙を満たしながら見上げる鈴音にセシリアは溜息一つし優しく鈴音の頭に手を置く。

 

「取り敢えず教室に戻りましょう。大丈夫、まだチャンスはありますわ。」

 

美笑を湛えながら幼子をあやすように優しく撫でる。鈴音は少し撫でられた後突然立ち上がる。目元はまだ赤く腫れているがいつもの勝気な強い瞳でいつもの周りの目を気にしない大きな声で決意する。

 

「よし!寮で覚えてなさい一夏!早く教室戻るわよアンタら!」

 

現金な奴だと巧がぼやけば、可愛らしいとセシリアが微笑む。先導する鈴音の後に二人も続く。

 

結局鈴音と巧は3時間目には間に合わず先生のお叱りを受け、何故かセシリアは間に合っていた。

 

 

ーー学生寮 1025号室

 

「という訳で部屋変わって?」

 

「断る。」

 

急に押しかけて来た鈴音の頼みを箒はにべもなく断る。箒が一夏と同部屋だと聞きつけた鈴音は早速部屋を変えて貰うよう直談判しに来て、現在即行却下されていた。見事なまでの玉砕っぷりだが鈴音はめげずにあくまでもフレンドリーに話しかける。

 

「いやぁ、篠ノ之さんも男と一つ屋根の下なんて困るでしょ。だから私が変わって上げるよ。」

 

「心遣いどうも、だが結構だ。織斑君とは旧知の仲なのでな。」

 

しかし箒はまったく譲らない。さりげに一夏との関係を持ち出し諦めさせようとする。無論鈴音とて引かない旧知の仲は自分もそうだ。睨み合う両者、一夏には二人の間に火花が走っているのを見た。なにやら恐ろしくなった一夏は自分に飛び火して来ないように部屋の奥へ逃げる。

 

「じゃあ一夏決めなさい!」

 

捕まった

 

「ウェェェ‼︎俺⁉︎」

 

「そうだなお前が決めるのが筋だろう。」

 

「ルラギッタンディスカ⁉︎」

 

一夏の必死の抗議も聞き入れて貰えず板挟みにされる一夏。なぜこうも厄介ごとに巻き込まれるのだろうかと嘆きながらなんとか二人を言いくるめようとする。

 

「………ジャンケンとか?」

 

おもむろに竹刀を取り出す箒とISを部分展開させて構える鈴音に顔を真っ青にさせる。

 

「わわ分かった!真面目にするって!」

 

なんとか抑える事が出来たが、おそらく次間違えれば容赦無く攻撃されるだろう。冷や汗が顎までつたう。呼吸を整え精神を落ち着かせる。暫しの時間。突然キッと目を開く一夏に二人も緊張する。

 

そして、

 

「やっぱ先生に言わないと駄目だろ。」

 

真面目過ぎる答えだった。

 

肩を滑らせる二人。だが一夏の言う通りここで彼が首を縦に振っても鈴音が正式に1025号室に入ることは出来ないのだからしょうがない。はあっと溜息一つ吐き、鈴音はISを解除させて持って来たボストンバックを肩に担ぎ踵を返す。そしてドア近くで振り返り。

 

「ところでさ一夏。約束覚えてる?」

 

なに?と箒が一夏に睨みを効かせる。一方の一夏は少し思案した後ポンと手を打つ。

 

「あれか?鈴の料理の腕が上がったら、毎日酢豚をーー」

 

覚えていてくれた。それだけで気持ちが昂ぶる。

 

しかし、

 

「奢ってくれる?って奴か。」

 

「……」

 

言われたこととはいえ矢張り心に来る。思わず込み上げて来るものを抑える。

 

「どうした?もしかして違ったか?」

 

心配した一夏が声をかける。箒は鈴音の様子を見て何かを察したように目を細める。

 

「ううん、平気。……」

 

答える言葉に力は感じられない。

 

 

ーー

 

平気じゃないわよ……馬鹿。

 

あり得ないわよ。女の子との約束ちゃんと覚えないなんて、犬に噛まれて死んじゃえ!

 

……セシリアと巧くんの呆れた顔が浮かんで来る。本当は私がいざって時に曖昧なのが悪いんだ。二人には洒落だって言ったけど本当は直接言うのが怖くてわざとあんな風に言った。断られるのが怖くて。

 

ふと篠ノ之さんを見上げる。篠ノ之さんはただ私を無表情で見つめるだけだけど私にはこう聞こえた。

 

「やめておけ」

 

情けないが従ってしまいそうになる。多分あの子はとっくに覚悟が出来てるんだ。告白する覚悟も振られるかもしれない覚悟も。

 

私はない。

 

もし一夏が告白を正しく認識して、その上で()()()()。多分私は耐えられない。このままドアを開いて逃げちゃった方が良いかもしれない。

 

『チャンスはありますわ』

 

古された言葉だけど凄く心に響いたセシリアの応援。

 

…………

 

そうよ

 

なんのために日本まで来たと思ってんのよ

 

なに今更ビビってんのよ

 

こちとら中国人、気迫の強さが美徳よ!

 

 

 

「一夏!」

 

「はい⁉︎ゴメンなさい!」

 

 

もう逃げない

 

 

 

「クラス対抗戦。覚悟しときなさいよ。ボコボコにしてやるんだから!」

 

キョトンとなる一夏と箒。しかし直ぐにあいつは明るい笑顔を浮かべて。

 

「おう、正々堂々と戦おうぜ。」

 

 

ーー

 

ドアを蹴り開け飛び出していく鈴を見送る。

 

急に落ち込んだと思えば今度は急に元気になりやがって、久し振りの幼馴染に距離感掴みかねてるのかな?箒はどう思う?

 

「なあ、やっぱ約束なんだと思うんだけど……俺、もしかして間違って覚えてたか?」

 

箒は直ぐに応えてくれた。

 

「私が考えるべき事ではない。お前の問題だ。」

 

うーん相変わらず堅物だ。まあその通りなんだけど、やっぱ自分で考えるしかないか。

 

「取り敢えず特訓だ!もう負けたりしたくないしな。」

 

オルコットさんと同じ代表候補生である鈴。弱いハズがないしな。

 

「また生徒会長に教わるのか?」

 

「いや、流石にそう何度も世話はかけられないからな。」

 

なんだかんだ言ってちゃんと忙しかった楯無さんにこれ以上迷惑はかけられないしな。でも俺の今の知識と経験では一人で特訓しても大した成果はないだろうから………あっそうだ。

 

「箒。お願いして良いか?」

 

「む、私か。」

 

箒はIS学園に入るくらいだから勿論きちんと勉強している。剣道も強いから体もしっかりしてるし適任だ。その主旨を伝えると

 

「体がしっかり……なにを言う。」

 

少し顔を赤くしながら言われた。あっ女の子にはまずかったか。どうしようかと思ってたら箒から声がかけられ。

 

「仕方ない。だが期待はするな。」

 

どうやら受けてくれるみたいだ。

 

「よっしゃ、ありがと箒。」

 

特訓コーチもできたしあとは俺の努力次第だ。俺は来たる対抗戦に向けて闘志を燃やした。

 

 




少しづつ改変しながらのストーリー展開。
もう直ぐIS学園でのビッグイベントが始まります。
そこで最大の改変をしようと思っておりますので僭越ながら楽しみにして頂ければ幸いです。

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