IS:ボンド   作:田中ジョージア州

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微妙に改変、改変の日々。




17話 17話 17話 17話 ………タイトル思いつかなかった訳じゃ無いんだからね⁉︎

任された

 

 

 

 

 

「ねえ、織斑くん。」

 

爽やかスマイルのデュノア君の世話を俺が担当する事になった。それはまだ良い。転校してきて右も左も分からない時期だ。それが男なら尚更だろう。

 

「一夏でいいよ。」

 

「じゃあボクもシャルルで。」

 

同じ男としてアドバイスしないとな。

 

「次は移動教室だから早く行こうぜ。」

 

俺はシャルルの手を掴み引っ張った。早くしないと織斑先生から雷が落とされる。イキナリで驚いたのかシャルルも戸惑うが急いだ方が良いのは何も遅刻しないためじゃ無い。

 

「あ、居たわ。転校生よ。」

 

「織斑君と一緒よ。」

 

「ものども出合え出合え!」

 

これだ。

 

SHRと一時限目の間の自由な時間に各クラスから男性操縦者を一目見ようと1組に殺到する人混みに一時期は大変な目に遭ったものだったが今は大分落ち着いていた。人の噂も75日と言うが話題も同じこと。お陰で最近は快適に過ごせていたがここでもう1つ話題のタネが遠くフランスから3人目の男性操縦者という形で輸入されて来た。無論この学園の生徒たちがそれを見逃す筈が無くこうして俺は何ヶ月ぶりの人の壁に挟まれているのだ。

 

「え、なになになにか騒動でも起きたの?」

 

気づいていないのか頭にハテナを浮かべるシャルルに俺は以前の混乱していた自分を重ねた。ああ懐かしい新入生の初々しさや。まあシャルルは転校生だけど、そんな訂正を頭の中で入れていると1人の女生徒の声で一斉に壁がこっちへと押し寄せてくる。驚いて固まるシャルルの手をひっ掴み空いている通路へと逃げた。

 

「え、え、なになに。どうなってるの。」

 

まだ分からないのか。流石に鈍過ぎやしないか?

 

「なんでって今のところ俺たちだけだろ。男でISを動かせるのは、みんな珍しがってるんだよ。」

 

「あっそっか。そうだよね。」

 

やっと理解したらしいシャルルは俺と歩幅を合わせて走る。幸い校舎の構造上アリーナへと続く道には生徒の手もまだ回っていなかったためなんとか学友たちに出くわさずに逃げ果せた。

 

 

 

 

 

ーーアリーナ

 

走って来た甲斐あってか時間的にも余裕、とは言えず。そこそこ広いIS学園の実習は走って漸く間に合うようなものだ。急いでISスーツに着替え始める一夏は顔を赤らめて手で顔を覆うシャルルに不思議がる。

 

「どうした?早く着替えないと間に合わないぜ。」

 

「うん、向こう向いててくれないかな。」

 

「ん、ああ、いや俺も同性だからって好き好んで着替えを見る趣味は無いけどな。」

 

恥ずかしがるシャルルに一夏は人それぞれという事で納得し自分の作業に戻った。それでも気になったので再び後ろに向き直るといつの間にかISスーツに着替えたシャルルがまだ恥ずかしそうにこちらの終わりを待っていた。

 

「早いな。」

 

なにかコツがあるのかと聞き出そうとしたが差し迫った時間がそうはさせてくれなかった。ISスーツを急いで着込みシャルルとともに全力疾走でアリーナ内に入った一夏は怒りの雷をなんとか回避する事に成功する。

 

ーー

 

「スペースデブリの衝突跡は修繕が済んで間もない。また穴を開けた奴は自力で戻してもらう。」

 

久しぶりの実習にモチベーションが上がる生徒達に釘をさす形となったが千冬としては久しぶりだからこそ怪我を避けるため要らぬ緊張を解いたのだ。セレモニー的な掴みの後で千冬は早速彼女達にIS操縦の1つの目標である飛行を見せる事にした。未だぎこちない彼女達だがここでISの特徴である飛行を見せる事でこれから先の自分達の目標をしっかりと芯のあるもので構成して欲しいという気持ちからだ。しかし問題がある。

 

(山田先生……まだか。)

 

副担任である真耶に披露してもらおうと訓練機を取りに行かせたのだが生憎まだ手こずっているようである。教師とはいえ兵器であるISの運用は充分な手続きが必要。勿論事前にその手の事は済ませてあるがそれでも10分かそこらで終わる事では無い。しょうがないとした千冬はふと自分の受け持つ1組の専用機持ち達が視界に入った。

 

(オルコットとデュノアなら問題は無いか。しかしデュノアは今日来たばかりでまだ緊張しているだろう。それに今のこの子達にオルコットの練度は現実味が足りんか…到達点をオルコットとしてその過程に実力の近しいだろう織斑を当てる。)

 

楯無に訓練を受けたのなら基本的な飛行訓練もしているだろう。彼女はああ見えてそういう所のケアはしっかりとしている。考えをまとめた千冬は並んだ列の最後尾まで充分聞こえるくらいの声で言った。

 

「織斑とオルコット。お前らにやって貰う。前に出ろ。」

 

教師がやるのだと予想していたセシリアとただ単に自分が当てられるとは思わなかった一夏は一瞬反応しながら返事を上げ前に出た。他の生徒も千冬の指示で移動する。

 

「ISを展開してみろ。」

 

千冬の指示に2人はほぼ同時に思考プロセスに入り展開。しかし、

 

「まだまだだな織斑。熟練したIS乗りなら展開に1秒とかからんぞ。」

 

やはり差が出る。別に一夏の展開スピードは遅い事はない。無論千冬からして見ればそうだがこの時期にしてはまずまずだ。それでも千冬はこれも目標を高く設定してもらいたいという思いから敢えてこう言った。叱咤といっても軽い口調だったため一夏もショックは受けなかった。1秒未満という単語の凄さに不思議な高揚感のようなものを受けていた。

 

「飛べ。」

 

言葉とともに先ずセシリア、では無く汚名挽回のように気合を入れ直した一夏が真っ先に飛び出していた。百式のスペックも相成りセシリアを置いて空へと飛び上がる。その速さに生徒達はおおっと声を上げ、千冬は眉を顰めた。通信機を使い百式に呼びかける。

 

「おい、オルコットを置いていくな。スペックでは百式の方が上だぞ。」

 

「あ、はい。」

 

スピードを緩めた百式に漸く追いついたブルー・ティアーズを纏うセシリアはやや苦笑気味に一夏に言う。

 

「一夏さん。張り切るのは良いのですがレディを置いていかれるのはスマートでは無くってよ?」

 

「わ、悪いセシリア。」

 

窘められた形となるが次いで入った急降下からの停止の指示で会話は終わる。

 

「これは少々難しいので私が先に行きますわ。よく見ていて下さいまし。」

 

「停止に失敗しても私が受け止めてさしあげますわ。」

 

言うが早いかセシリアは微笑を湛えたまま機体を下へ、一夏に見やすいように向け一気に降りた。ハラハラする同級生達の視線を他所にフワリとまるで羽のように静かに止まって見せる。機械であるのにまるで生きているかのような優しい停止。これには生徒の一部で拍手が湧く。

 

「受け止められるのはカッコ悪いぜ。」

 

一夏もセシリアと同じ軌道で急降下に入る。

 

 

 

ーー

 

「あっ」

 

漏らしたのは誰か。確信した実力者達は思った。

 

『これアカン』

 

ーー

 

「やべ……

 

 

 

ズドーン!!

 

 

 

上がる土煙に唖然とする一同の中でファーストが思わず呟いた。

 

「馬鹿者が…」

 

 

 

 

 

ーー

 

「あいててて…」

 

あまりの衝撃に絶対防御が発動。庇いきれなかった衝撃に頭がぼんやりする。どうやら生きてはいるようだ。痺れて感覚の薄れた体のダルさに耐えながらなんとか顔を上げてボヤける視線で辺りを確認する。

 

と、ここで自分が浮遊感にあるということを取り戻してきた感覚で不思議に思う。

 

はて、自分は地面に倒れているはずだ。なのになんだろうこれは。

 

どんどん戻ってくる感覚がこの浮遊感が浮くというよりも支えによって生じている現象だと分からせると。

 

 

 

「大丈夫でして?」

 

1つ気品のある声が聞こえてくる。通信機越しではない生の声が疑問として一夏の判断力を一気に戻させた。

 

「セシリア?」

 

見上げた先に映る端整な顔立ちに最後の「ん?」が思考の回復を妨げる。地面から離れた自分の四肢。仰向けで見上げるセシリアの顔。地面に衝突という分かっている事態からは有り得ない状況に中々正気に戻れない一夏に1つのワードが浮かぶのと駆け付けた千冬と箒、鈴音がその光景を見たのはほぼ同時だった。

 

 

 

煙が晴れた先にある光景に一同一瞬止まる。そこにはISを展開したまま()()()()()()()()()()()()()()()()姿()があった。

 

固まった3人に比べ一夏は慌てた。良い歳して女の子にお姫様抱っこをされるという痴態。しかも姉と幼馴染含めた級友達の目の前で晒される事態の直面に一夏の自尊心は全力でセシリアの腕の中でもがかせた。しかしセシリアは絶妙なバランス加減で一夏をコントロール。少し眉にくっと力を入れ一夏を見る。

 

「ダメですわよ暴れては。絶対防御が働いたとはいえ脳にダメージがあるやも知れません。」

 

「分かった分かった分かったって。せめて降ろして!お願い!」

 

最もな答えで後の先を取られた一夏は顔を赤らめて懇願する。脳を気遣いゆっくりと姿勢を下げるセシリアに一夏は縮こまって事の成り行きを思い描いた。浮かんだワードは直前の彼女との会話。

 

『停止に失敗しても私が受け止めてさしあげますわ』

 

つまりは公約通り落下する一夏を受け止めた訳だ。はあっとため息が自然と漏れた。情け無さで赤くなる一夏を降ろしたセシリアはISを解除する。体格差から生じた地面との空間を体全体のバネで上手く流したセシリアは両手をさする。目に止まったそれが気になり見ているとセシリアが笑った。

 

「本当は上手く流して止めてさしあげたかったのですけど、まだ未熟ですわね。なるべく衝撃を殺そうとクッションの役割を果たしたまでは良かったのですが少し痺れましたわ。」

 

「え…っ。」

 

そう言うセシリアはティアーズのエネルギーゲージを出してみせる。全開状態だっただろうティアーズのシールドエネルギーは3割ほど減っていた。受け止めた衝撃で絶対防御が発動したらしいことは明白だった。単純な出力では量産機と大して変わらないブルー・ティアーズ。恐らく緩和剤となった影響で脳はともかく骨に対してのダメージは一夏よりは上だろう。慌てて立ち上がる一夏よりも速く千冬が駆け付けた。

 

「大丈夫か2人とも。」

 

「俺は良いからセシリアが。」

 

「私も平気です。織斑くんも脳へのダメージは無いと思いますわ。」

 

顔を青くする一夏で何と無く察せた事の成り行きに千冬はセシリアにも安否を訪ねた。帰ってきた答えに取り敢えず安心するとともに次の言葉を出す。

 

「織斑。今の停止のプロセスだが。」

 

「す、すいません。俺のせいです。」

 

俯きげに悔いる一夏にいやと千冬は懺悔を中断させた。

 

「確かにお前の行動は褒められたものでは無かったしそのせいで他人に怪我もさせた。」

 

真っ直ぐに、恐る恐る上がった一夏の目を見ながら告げる。

 

「しかし無理を言ってやらせたのは私だ。監督者としての私の責任だ。2人とも、済まない。」

 

そう言って千冬は謝罪をした。気まずくなり目を外すと遠巻きに心配そうにこちらを見る幼馴染2人の姿が目に入ってきた。途端に気まずくなる雰囲気。しかし直ぐに担任として千冬が態度を切り替える。

 

「医務室は大丈夫か?」

 

「あ、はい!平気です。」

 

「痺れがあるだけですし、私も平気ですわ。」

 

2人の返しにふむと間を開け分かったと言う。

 

「そうか、だが大事を取って今日のところは2人とも見学していろ。そして授業が終わったら一応医務室へ行くこと。いいな?」

 

そこまで言うと千冬は向き直り授業に戻る。と困惑する生徒達に対して言うと戻って行った。一夏は少し立ち尽くしていたが直ぐにセシリアに向き直り。

 

「ごめん、セシリア。」

 

頭を下げた。セシリアは手を振って笑う。

 

「いいってこと、ですわ。」

 

そして一夏とセシリアは千冬の横で体育座りで見学することになった。真耶が漸く現れたのはその直ぐ後であった。

 

 

 

 

 

ーー

 

「大丈夫ですか。ゴメンなさい先生が遅れたせいで…」

 

事情を聞かされた真耶は真っ先に2人に頭を下げた。大事な生徒に怪我をさせる要因を作ってしまったことにショックを覚えたのだ。千冬以上に罪悪感を覚える相手に一夏もセシリアも必要ないと頭を上げさせた。千冬の声掛けもあり真耶は授業に戻り千冬は新たに生徒達に指示を出す。

 

「凰、デュノア。山田先生と模擬戦をしてくれ。」

 

鈴音とシャルルの専用機持ちとIS学園教員とのバトルとあって生徒達にも緊張が走る。既にISを纏っている真耶は当然準備万全なので後は鈴音とシャルルがISを展開すれば良いのだが2人とも渋る。

 

「本当に良いんですか。2対1で、」

 

シャルルが失礼ながらという感じで真耶に問いかける。鈴音も疑わしげに見て自分も同意見だと知らせている。と、

 

「安心しろ。今のお前達なら負ける。」

 

シャルルの問いに横から入り込む形で千冬に告げられた敗北決定にまず鈴音が反応した。

 

「そこまで言われちゃ引き下がれないわね。デュノア君だっけ、遠慮する必要無いわよ。」

 

甲龍を展開し双天牙月をブォンと回す鈴音にシャルルも押される形でラファールリヴァイブカスタムⅡを展開して武装であるアサルトライフルを構える。シャルルとて沸点が低い訳ではないが代表候補生としてのプライドは持っているつもりだ。2人が臨戦態勢に入ったところで真耶も下の安全を考えてゆっくりと浮上する。

 

「下方向への飛び道具はこちら側でコントロールして使えないようにしてある。攻撃するときは気をつけろ。」

 

武装の制限を伝えるとそのまま千冬は模擬戦開始を告げた。

 

 

 

 

 

ーー

 

先手必勝。

 

意外にも先に手を出したのは真耶の方だった。弾幕をばら撒き2人の距離を開けると左右で武装を変えてそれぞれ攻撃をする。鈴音は縦横無尽に躱しながら砲身に角度がない龍砲を乱射しシャルルは盾を構えながら真耶の周りを旋回し様子を伺う。彼の専用機であるリヴァイブは拡張性を広げたマルチロール機だ。元より凡庸性の高いリヴァイブを改良しパススロットを二倍にまで増やしたこの機は距離を選ばない戦闘を得意としている。選択肢の多さという武器でどんな相手とも戦える事がリヴァイブの得意とする領分でそれ故に1つの特化するものが無い。今こうして様子を伺っているのもそれを理解しているからだ。

 

目に見えず大火力でしかも限界角度のない龍砲。無論威力だけならリヴァイブの装備にも比肩する、または上回る物も有るがそれは現行する一般的な物。真耶のように代表候補生を経験している者となれば必ず使っているだろうそれは勿論見える弾を使用している。軌道も直線的で限界角度だって有るなによりクセのない兵装だ。それが龍砲より劣る理由にはならないが龍砲よりは相手取って戦いやすいだろう。その開発コンセプトからリヴァイブにはクセの無い扱いやすい武装しかない。『初めて』という状況ならば時として甲龍の方が優れているのだ。故にシャルルは直線的な鈴音に攻撃を担当させ自分は補助に回る事としそれが結果的に真耶の動きを制限させる。

 

真耶からすればスペックの差がある専用機2機を相手取って先ず狙いたいのは同士討ちだ。各個撃破よりも数の利を殺せる手段であるがそれには弾幕などを駆使して相手を誘導する必要があり勿論気付かれない方が望ましい。シャルルがこちらの様子を伺っていることで迂闊に鈴音を誘導できなくなった。

 

(思いの外見てますね。これならオルコットさんの方が良かったかしら。)

 

個々のレベルなら間違いなくセシリアの方が上だろうがチーム戦ならシャルルの方が手強いというのが真耶の直感だった。セシリアもシャルルも状況判断に優れた人間であるがセシリアが積極的に動いてその場その場で対応するならシャルルは一歩引いて状況を見極めるタイプだった。もしセシリアが相手なら気付かせないまま同士討ちに持ち込めたかも知れないがシャルルのように戦況が見える位置に居続けられるとそれは困難だ。

 

(しかたない、怪我はさせたく無いけど。)

 

眼鏡の奥の眼光が強まった。

 

 

 

ーーピット

 

停滞気味だった。お互い手を出しあぐねて動けない。唯一鈴音は強気に攻めていたが全体として膠着状態だったが真耶のリヴァイブが少し離れたシャルルに対して急加速していった事でやや退屈気味だった一夏はおおっと声を漏らす。

 

「瞬時加速か。」

 

「ええ、一気に近づいて近距離射撃か格闘戦か、どのみちデュノアさんもこれで面を食らった筈ですわ。」

 

そう言うセシリアだが真耶の行動を賞賛する気は無かった。候補生でも使える人間が限られる瞬時加速を出来るのは流石だが訓練機の出力ではシャルルをずっと混乱させておくには2人の距離は少し遠い。既にシャルルは平静を取り戻しより近距離用の銃を取り出し構えている。更に後ろには同じく鈴音が双天牙月を構えて追随している。結果として挟み撃ちとなった。完全にミス。勇み足。セシリアは次に訪れるだろう決着を脳内のシミュレーションと照らし合わせる。

 

近距離射撃武装ーー展開無し

 

近距離射撃位置ーー止まらない。

 

シャルル、格闘武器に切り替える。

 

減速ーーしない。

 

真耶、近接ナイフを展開。

 

減速ーーしない。

 

 

 

停止しない。

 

 

 

「あら?」

 

セシリアの声をそのままに真耶はシャルルに対し文字通り()()()()()()()()

 

 

 

ーー

 

「え。」

 

イキナリの瞬時加速に驚いたシャルルだが直ぐに態勢を立て直し互いの距離で武装を適切に変えながら備えていた。単純な技量ならば真耶の方が上だろうがシャルルとて代表候補生。受けに徹していれば横目で確認した鈴音とで挟み撃ちにするまで持ちこたえられる。ナイフを展開した真耶を見てこちらも同じリヴァイブの量産機時代からの標準装備のナイフを展開。攻勢になったと確信したところで真耶が更に加速した。

 

動揺するシャルル。そこで勝負は決まった。

 

ナイフの更に懐に入り込んだ真耶はナイフを持つ手を制してそのまま背後から迫る鈴音に向かって放り投げた。

 

今度は鈴音が固まる。

 

既に近くまで追いかけて来た鈴音に避ける暇は無い。回避から受け止めるまでの判断に少々の時間を費やす。そして悲運はそれだけでは無い。誤爆を防ぐため龍砲ではなく双天牙月を分離させ両手に携えていたことがさらに判断を遅らせる。まさか刃物を持った手で受け止める訳にもいかず結果として鈴音は突っ込んでくるリヴァイブに真正面からぶつかってしまった。判断ミスのツケはガッツリ減るシールドエネルギーと真耶の追撃によって払われる。

 

展開した2門の砲は現在装備できる最大威力のミサイルだ。弾丸と比べて回避しやすい為使い所が難しい武装だが、今なら外す方が難しい。

 

「お疲れ様です。」

 

労いの言葉と同時にトドメのミサイルが2人を直撃した。

 

 

 

 

 

ーー

 

「このようにIS学園の教員はみな実力者だ。今後は敬意を払って接するように。特に1組、分かったな。」

 

普段から真耶の事をアダ名で呼ぶ1組を知っている千冬は睨みを効かせる。横ではISを解除し照れ笑いをしている真耶と若干機嫌の悪い鈴音とそれを気にするシャルル。

 

「お前達もご苦労だった。列に戻って良いぞ。」

 

「はい。」

 

返事を返し戻っていく2人。幸い2人は慕われておりクラスメイトから労いの言葉がかけられる。シャルルはそれに礼を言い悔しい鈴音は答えず列に戻る。2組の面々も鈴音の扱いは心得ており感情のまま行動する鈴音に誰も気を悪くする者は居ない。そして元の位置に戻って来た鈴音に隣の人間がまた労いの言葉をかける。しかし鈴音は嬉しそうにはしない。

 

「惜しかったな。」

 

「何処が惜しいのよ。馬鹿みたいになるからそうゆう事言わないで。いっそ罵倒でもしてみなさいよ。」

 

…………

 

 

 

 

 

「むちゃくちゃダサかったな。」

 

カチン

 

コンマ数秒で巧のこめかみに足刀が入る。

 

 

 

「はあ⁉︎なにその言い草!人が落ち込んでる時に最低!」

 

「おい待て、お前が言えっつったんだろ!この貧乳!」

 

「ーーっ!言ったわね!殺す、もう殺す、直ぐ殺す!」

 

こうして巧と喧嘩を始めるのももうお馴染みとなっている2組の面々は遠い目で空を見上げる。

 

 

 

 

 

「ええい、2人とも黙れ!次の課題に入るぞ!」

 

織斑先生の怒号と共に次の課題が始まった。

 

 

 

ーー

 

訓練機を使用しての歩行訓練。生徒達はシャルルと鈴音の専用機持ちと教員である真耶がそれぞれ3人で指導する。本来は一夏とセシリアも入っていたのだが見学で出来なくなったため急遽真耶が入る事となった。千冬は全体の確認のためもう一つの穴は埋められない。これ以上怪我人を出す訳にはいかないからだ。この数を3人で処理するのは難しい。受け持つメンバーはそれぞれ円滑に進めようとするがここで問題発生。

 

『デュノア君!よろしくお願いします!』

 

ほとんど向こう(シャルル)に行っちまったよ母さん。

 

 

 

「馬鹿かお前ら。なんのために分けたと思っている。ここから後ろは凰か山田先生に見てもらえ。」

 

つかつかとやって来て目安で区分けする千冬のお陰で滞りは回避された。織斑千冬にそう言われては従うしか無いので範囲内にいた少女達はバラける。そこからは正に三者三様。

 

感覚第一で教える鈴音。かつて一夏が苦言を漏らしたほど教というものに向いていない鈴音のやり方だが今回は百式のような他人の専用機ではなくある程度勝手知ったる訓練機。生徒が失敗しても持ち前の豪快さで問題にせず空気も軽い。

 

真耶は言うまでもなく教師。他の2人よりも的確で余裕を持って教えているため生徒も程よく緊張せず3人の中で一番進みが良い。

 

シャルルは今日来たばかりで指導する者が初対面ばかりの中持ち前の要領の良さで乗り切っていた。ただ、

 

「出席番号1番相川清香、ハンドボール部。趣味はスポーツ観戦とジョギングだよ。」

 

変な自己紹介(タイムロス)があった。

 

綺麗なお辞儀とともに差し出される右手だがここで取ると後に続くと相川さんの背後から感じるイヤなオーラで感じ取り敢えて流して進めた。世界で唯一の専門学校、IS学園といえども一年のこの時期で操作を巧みにできる者は多くない。よたよたしながらシャルルの指示通りISを前に進ませる相川。

 

「よし、そこまで。他の人に代わろうか。」

 

「ほい。」

 

打鉄をその場で脱ぎ捨て着地する。それなりの高さだったがアピールする程の運動神経は持っているようで軽やかに着地してみせる。打鉄は粒子化せずにそのままの立ったまま(体勢)で鎮座してしまう。困ったのは次の装着者。このままでは高さの関係で装着出来ない。どうしようと困るシャルルに手の空いている千冬が真っ先に歩み寄る。

 

「デュノア、運んでやれ。」

 

「ISを展開して持ち上げるんだ。ただし掴むなよ。」

 

ISの握力は人間の比では無い。鋭敏な感覚投影でコントロール出来るとはいえ万が一があればシャレにもならない。千冬は鈴音にも聞こえるように言う。

 

「候補生のお前が間違えるとは思わんが念のためだ。手のひらは広げたまま支えるように…そうだな。お姫様抱っこが望ましいか。」

 

どよめきが起こる。

 

シャルルのチームは勿論他のチームまで一時固まる。シャルルのチームは期待に満ちた嬉々とした表情で、他のチームは恨めしげな目線でシャルルのチームを見ている。

 

「さあやれ。」

 

「あ、はい。」

 

諭されるように展開をしようとして、

 

「冗談よせよ。」

 

乾巧(次の人)が文句を上げた。巧からしたらお姫様抱っこをされること自体嫌なのにそれが同姓とくれば断る理由しかない。しかし千冬はその程度の理由では認めない。

 

「ではどうする乾。これより速い方法があるのか?」

 

操縦席までの高さは絶対に登れない程ではないが重要なのは速さだ。巧は直ぐにシャルルに目を向けると。

 

「背中を丸めて膝に手を当てろ。踏ん張りが効く姿勢でな。」

 

言われた通りに力が入る形を取ると巧は遠慮なくシャルルの背中に乗った。

 

「痛い痛い痛い!重い、重いよ乾くん⁉︎」

 

訴えるシャルルに構わず巧は急いで操縦席に登りきった。巧は千冬にどうだと言わんばかりの顔を向ける。千冬はかかった時間を頭の中で確認すると続けろとだけ言って離れて行った。シャルルは背中を摩りながら若干不満を表すが丁寧に巧に教える。相川以上によたよたした歩行だがなんとか所定の位置に着き後列から伝わってくるメッセージを肌で感じた巧は()()()()()()()

 

 

 

 

 

『ああああぁぁぁ!!!』

 

『よっしゃ。』

 

絶叫する後列と小さくガッツポーズを取る他の面々。巧は悪びれる様子なく相川の後ろで待機する。その後はお通夜のようにそれぞれ進んでいき、しかし自分の後ろを良い気にさせるのは気に食わないのか誰1人ISを立たせたまま解除する者はいなかった。

 

 

 

 

 

ーー食堂

 

「今日は鈴ちゃんとは食べないの?」

 

「暫くはな。」

 

「喧嘩、でもしたの。」

 

貧乳発言でかなり御立腹な鈴音と蹴りを入れられた事を根に持っている巧は現在喧嘩中ということになっている。しかし簪の問いかけに対しての巧の返答は淡白なもの。実際は少なくとも巧はもう鈴音に対して怒りの感情は沸いていない。2人と珍しく食事を共にしているのはただ単に周りの目線が鬱陶しかったからだ。シャルルのお姫様抱っこを潰したことで1組2組の三分の一から恨みがましげな目を向けられている巧。もっとも他の生徒達からは抜け駆け阻止の功労者として尊敬されているし巧は一々人の目を気にする人間では無いのだが、やはり鬱陶しいものは鬱陶しい。アポなしで簪となのはの元にやって来て特に場を盛り上げることなくただもくもくと食事を取り続ける図々しさは流石という所か。幸い2人とも巧に理解があるため寛容に付き合っている。

 

「あ、」

 

思い出したというように簪が巧に尋ねる。

 

「そういえば乾君のバイクってどういう仕組みなの。」

 

バイク?となのはが繰り返す。

 

「なんていうか、変形するんです。乾君のバイク。」

 

「ロボットになんだよ。」

 

「へえ。」

 

珍しいねと返すなのはに巧が少し自慢げに珍しいだろと答えた。

 

「今度見せてよ。」

 

「人気のないところでな。」

 

巧は目立つのが嫌いだ。なのはも頼む立場なので異論は挟まない。3人は盆の上のものを全て食べ終えた後も談笑を続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




一夏とセシリアの飛行訓練は本来ならセシリア戦後の筈でしたが歩行訓練と重ねました。
理由はただ単純に忘れてたから無理やり合体させた感じ。
そしてセシリアが怪我でまややんとの模擬戦が出来なくなった件は当初の予定とは違う展開です。
本来は原作通り鈴と一緒に挑んで、なんだかんだで負けてしまう予定でしたが書いてるうちにこんな展開になってしまったんだす。
一番の原因は「私が受け止める」発言を思いついて描いた後、ちょっと、ん?と思ったんですわ。
この作品でのセシリアさんはかなりの完璧超人なんで基本的に有言実行キャラだと作者の中で位置付けてるんですけど。そんなセシリアが受け止めるって言ったら必ず受け止めてくれるだろうってなって、そいで受け止めるんならティアーズの出力では無理かなってなってこういう展開になりました。
絶対防御にも疑問を投げかける作品ですので、結果的にセシリアは怪我をしちゃいましたがうちのセシリアさんは鍛えているので少しの痺れで済みました。これが一夏なら骨にヒビが入ります。

それと細かい所ですが千冬に謝らせたのはちょっとした拘りです。自分の非はキチンと認める大人キャラにしたいので今回そうした次第です。
次回は噂のドイツからのロリっ子少佐が出るぜ。

※人気投票の開催。詳細は活動報告にて
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