IS:ボンド   作:田中ジョージア州

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ほんまなんの話やねん。

今回からラウラ登場です。
冒頭にあるゲストキャラが出ますがあくまでも本編には関係のないキャラ。
しかし作者の謎の拘りが発揮されそれなりに文字数が使われています。




18話 クラリッサ「この娘ちっこいけど少佐なんやで。」千冬「ほんまウソみたいよね。」ラ「周りからちっこいちっこい言われとるといつの間にかコンプレックスみたいに感じてきてん。」一夏「なんの話やねん。」

日本に行くにあたって上官や政府の高官、果ては隊の部下達にまで言われた或いは言わずとも伝わってきた一言の願い。

 

『ドイツ軍人として立派に振舞ってこい』

 

一口に国民といっても色々いる。勉強の得意な人とそうで無い人、運動が出来る人とそうで無い人、生まれ持っての天才とそうで無い人、それの判別方法に人によっての誤差は出るだろうがそういう格差というものは確かにある。いろんなジャンルの国の水準だとか毎年測っているくらい大きな共同体なら当然にある。其々求められる事はその時々で違うが今回の場合は()()()()が相応しい。外国にその国の代表として行くのだから勉強だとか云々よりまず立派な人が良い。学者、教師、政治家、社長、地位が有って教養が有ってドイツの顔として出しても恥ずかしく無い方が良い。ラウラ・ボーデヴィッヒの場合は軍人だ。国と国民のためにあらゆる魔の手からそれらを守り戦う戦士。ドイツというモノの強さを表せる一つの目安。それはそれは立派な人がなるものだ。実態がどうとか関係なく周りから望ましく思われるのは軍人になるべきは立派な人だ。そんな軍人であるラウラがIS学園にドイツの代表として向かうのだ。それは立派に振る舞わなければならないのはラウラとて肝に銘じる程重要な事だ。日本の文化については独自に情報を仕入れた。相手によって敬語やタメ口の切り替えどころが少々難しかったがちゃんと勉強はしてきた。転校先のクラスに在籍する一生徒に対して個人的に思うところはあるがそれは抑えるべきだろう。なにせ自分の行為はドイツの心象悪化に繋がるのだから。VIP用の飛行機に揺らされ空港に着き日本政府の人間に護送される間ずっとラウラはそれを気にかけていた。

 

「さあ、着きましたよ。ボーデヴィッヒ候補生殿。」

 

リーダー格である二十代の男、確か警視庁の人間らしい北條透は同席したラウラに告げた。

 

「はい。」

 

無骨な普段顔をなるべく愛想よくしてラウラが答える。車のドアを護衛の地味目なスーツを職務上動きやすくするためジャケットのボタンを取った男の1人が開ける。ラウラはこちらにも愛想を振りまきながら車から降りた。外に出た途端車内の、北條が他愛ない話で緊張をほぐしてくれていたがそれでも感じた息苦しさが新鮮な空気でスッと消えた。北條が自分も男を付き従えて自分に近づいて来る。ピッチリとしたスーツを几帳面に正してラウラの目の前に立つ。

 

「我々はここまでしかお相手出来ません。ここから、モノレール駅から向こうはあちらの領分ですので。」

 

車内で自分のために私生活の悩みや愚痴で場を和ませてくれた北條の顔は完全に仕事人のものになっていた。ラウラもドイツ軍特殊部隊隊長として直る。

 

「分かりました。任務遂行ご苦労様です北條警部補。」

 

やり慣れた完熟した敬礼で返すラウラを見て北條がハアっと今までの仕事人としての皮を剥がした。もしかして自分の態度が悪かったのかと不安に思い聞き返す。

 

「あの、なにか私が粗相でも?」

 

ラウラの不安に気付いた北條はいえいえと余裕を持った口調でそのまま訳を話した。

 

「軍人としてピッタリな貴方のようにキチンと警察官として相応しい振る舞い方をしてくれればな。と思いましてね。」

 

なにかと感情を込めて話す北條にラウラはピンときた。

 

「車内で話されていた同僚の事ですか。」

 

最初はキチンとした仕事人かと思った北條だったが空港から車に乗るなりフレンドリーに身の上話を切り出してきた。最初は自分の緊張をほぐしてくれているのだと思ったが話の内容がその同僚の愚痴になって来た辺りから単に文句を言える相手に会えて箍が外れたのもあると感じた。話を戻してその北條が終始ボロカスに言った同僚は女性刑事で北條にとっては宿敵のような女性なのだという。ラウラは女尊男卑関連なのかと思ったが女性はそういう思想の持ち主ではなく北條が気に食わないのは単に性質的なものらしい。曰く挨拶をした際に職務中にも関わらず酒の匂いがしたとか、曰くガサツで公私混合がデフォルトで生きているとか、曰く焼き肉の臭いを香水がわりに使うような女として欠陥者だとか兎に角車内に揺られるラウラにずっとその女性の悪口を聞かされていたのだ。故に思い至ったラウラが口にした言葉にまた北條が反応した。

 

「ええ、その同僚です。あのガサツで粗野で全く持って国家に尽くす公務員として相応しくないあの同僚です。」

 

「そもそもあの女のなにが気に食わないって職務中に飲酒をすることが信じられない!私のことを腰抜けだと言う前に我が事を問題とするべきだ!それに……」

 

「あ、あの、そろそろ時間的に学園に向かわなければならないのですが…」

 

またもや語り出した北條の女性に対しての苦言にラウラは内心しまったと思いながらも緊張をほぐしてくれた彼について感謝の念を抱いた。結局北條の愚痴は護衛の男が中断を入れるまで続いた。

 

 

ーー1組

 

「今日も転校生の紹介をします!」

 

明るく元気いっぱいといった表現が似合う真耶が教卓前で生徒たちにビッグニュースを伝える。昨日今日のダブル転校生に流石にざわつく1組たちをすかさず注意するがどうしても先生というよりはクラス委員長的に感じて上手く作用しない。

 

「静かにしろ。入れ。」

 

助け舟を出す形で叱責を入れてからドアの向こうの人物に指示を出す千冬。ガラリと扉を開けたラウラは無駄のない動作で扉を閉め教卓前まで進み生徒たちに向いて止まった。一連の動作に何人かがほおっと声を漏らす。空間ディスプレイがラウラの名前を映し出した所で真耶が紹介する。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒさんです。」

 

真耶が自己紹介を諭すとラウラは返事を返して一夏達に向けて言う。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ。」

 

「……あの、それだけ…ですか?」

 

思わず呟くように尋ねた真耶にラウラはバッと直ぐに直立不動で姿勢を正して言った。

 

「そうです山田副担任。なにか問題がありましたか。」

 

「え、あ、あの。……無いです。あ、あと私のことは山田先生って呼んでくれればいいな、なんて…

 

その迫力に押されつい小さくなってしまう真耶。しかしラウラはキチンと要望を聞いていたようでビシッと背筋を伸ばして

 

「了解しました山田先生。」

 

そんなラウラに彼女と一年間の仲である千冬は苦笑しながら敢えてここで言及せず席に着くよう諭す。またそれに要望を付け加えるのも忘れない。

 

「ボーデヴィッヒ、指定した席につけ。それとここでの私は織斑先生だ。」

 

「了解しました。」

 

言われた通りラウラはその過程である人物の前に立つ。

 

「えと、宜しく…お願いします。ボーデヴィッヒさん?」

 

千冬の弟である織斑一夏を生で見たラウラは抑えてきた感情が再び心の中に出てきて改めて自身にとっての織斑一夏の評価が壊滅的だということを理解する。

 

「ああ宜しく。織斑クン。」

 

この会話で生徒達の大体はラウラの事を無表情ながら割とフレンドリーな人種と判断したがそれは異なる。人懐っこい笑みを見せる一夏になんの好印象も感じなかったがドイツの軍人代表として挨拶に無言は不味いと思っただけでなんならラウラ個人としてはこの場で一夏をひっぱたいても平気だった。そんな勘違いが生まれた所でラウラは自分の席へと着き隣の生徒の呼びかけに応えながらSHRを終えた。

 

 

 

ーー2組

 

ザワザワ

 

「なんか向こうがまた騒がしいわね。」

 

「昨日よりはマシだけどな。」

 

1組から聞こえてくるザワつきに鈴音が率直に思った事を言いそれに対し巧が鈴音に対して聞こえるトーンで指摘を入れる。因みに2人はもう昨日の喧嘩は収まっている。空気を察した教員が転校生によるものだと説明した。

 

「え、転校生って女なの?」

 

2組からその日一番の悲鳴が別に沸かなかった。

 

 

 

「女かぁ、まあ一夏に色目使うんなら早々に格の違いを見せつけなくちゃね。」

 

「それで良いのか。」

 

 

 

ーー4組

 

「また転校生ですね。」

 

「2日連続なんて珍しいね。」

 

4組からその日一番の悲鳴が別に沸かなかった。

 

 

 

ーー3年1組

 

「ねえねえリニス。一夏くんのクラスまた転校生来たんでしょ。どんな感じなの。」

 

ボソボソと教員にバレないように喋りかけるアリシアに耳を隠したリニスが素っ気なく返す。

 

「先生の話はちゃんと聞きなさいアリシア。」

 

もう耳を酷使したくないリニスはアレから猫耳を出してはいない。

 

IS学園は今日も平和である。

 

 

 

ーー五反田食堂

 

平日の昼間。学生が常連の中心な五反田食堂にとってはあまり良い時間帯とは言えないが客足は途切れない。看板娘目当ての客と都心に近い事もあって営業で腹を空かせた営業マン達でそれなりに賑わう中その2人は前者二つとは別の目的で相席になっていた。女性2人。片方は紫がかった髪に日本人離れした顔立ちの女と美人だが地味目な服装と髪型であまり目立たない眼鏡の女。客層的には珍しい2人だがそれでも目立たないのはこの地味さだろう。特に地味な眼鏡の女がもう1人の女に声をかける。

 

「何の用、ですか。テスタロッサさん。」

 

趣味に合わない格好と勝手に呼び出されたことに苛立ちながら慣れない敬語で話しかけるのは天災。篠ノ之束だ。一方ウキウキと定食屋の雰囲気を楽しんでいるプレシアは見かけた赤毛の少年。学校がたまたま休みで店の手伝いをしていた弾を呼び止める。

 

「ねえ君、注文したいんだけれど。」

 

「はーい、今行きます。」

 

コメカミをひくつかせる束を尻目にプレシアはやって来た弾に興味津々に話し込んでいた。

 

「君学生よね。平日の昼間からサボり?」

 

「いや、丁度休みなんスよ。そんで俺ここの息子なんですけど店主から暇だろうから手伝えって言われちまって。」

 

「へえ、災難ね。」

 

最初は面食らったもののフレンドリーなプレシアに感化され元々の陽気さもあってか話し込む弾。しかしいつまでも捕まっていられないので手っ取り早く注文を聞く。

 

「んー迷うわね。君のおすすめでお願い。」

 

「かしこまりました。美味いの持って来ますぜ。」

 

すっかり心を許した弾は祖父であり店長である厳が聞けばお玉が飛んでくるような言葉遣いで厨房に戻ろうとして

 

「弾くん。」

 

束が呼び止める。急に名前を呼ばれた事についての驚きで素早く振り返ったはいいが少し混乱した弾に束はプレシアによりは優しげな口調で話す。

 

「向かい席には聞いて私には注文取らないの?」

 

それで慌てた弾が束に注文を聞くと束は素っ気なくプレシアと同じものという答えを出して弾を厨房に引っ込ませた。そして自分のお冷を乱暴に飲み机に音が出るように置いた。そして改めて苛立ちの睨みをプレシアに効かせる。流石に今度は効いたのか少し視線を逸らし気まずそうに話題をズラした。

 

「弾っていうのあの子。よく知ってたわね束ちゃん。」

 

なんとなしに選んだ話題。それが功を奏したのか束の冷たい表情が少し、本当に少しだけ和らいだ。

 

「いっくんの中学時代からの友達らしくてね。束さんは面識ないから向こうは知らないだろうね。」

 

まあどうでもいいけどとさっさと話題を終わらせた束は再度、今度は逃げられないくらい強くプレッシャーをかけてプレシアを睨んだ。今度こそ観念してプレシアは束にキチンと向き合う。

 

「大した話でもないわ。前に会った時にいつかまた話し合おうって言ったじゃない?その日程を確認しましょうと思って呼んだの。」

 

プレシアの話に束は無言でお冷を口に含んだ。

 

「随分一方的なんだね。正直私は貴方とお話しする必要、ないんだけど?」

 

以前の巧との会談。その終わりに現れたプレシア・テスタロッサ一同。あの時は碌に話もせずにただ帰っていったがここに来ての向こうからの呼び出し。急遽こうして呼び出しに応じた束だったが決して好意的な思いがある訳ではない。新たな情報源の可能性が僅かに有るからこそプレシアに付き合っているのだ。もし彼女達に自分が今掴んでいる情報以上のものや例えあったとしてもそれが予想の範囲を超えないような場合はこの関係は容易く壊れる。今束がプレシアに対して場の支配権を譲っているこの状況は極めて異例であり脆いものであった。改めてプレシアにその意図を睨みで伝えるとプレシアも爆発寸前の予感を感じたのか今までのどことなく窘めに該当するような余裕を隠し初めて真面目な表情を出した。確かに、とプレシアは束の目を見て切り出した。なのはによって装着されたカラコンの奥にあるワイン色の瞳がピクリと色を変えた。

 

「あなたが求めているのは情報。自分が知らない新しいデータでしょうけど。」

 

プレシアはにべもなくキッパリと次のセリフを言ってのけた。

 

「無いわね。多分あなたの方がよく彼らの事は知っているでしょう。」

 

特に感慨なくプレシアは束本人に対して自らの価値を無いものとしたのだ。これには束も予想外だったがだからといって篠ノ之束がプレシアに関心を払ってやることは無い。それを分かってかプレシアは束に席を立たせる暇を与えず口を開く。

 

「高町なのは。」

 

思いもよらない持ちかけに束は再度プレシアを見る。

 

「アリーナでのオルフェノクとの戦闘はなのはちゃんから映像を貰ったわ。」

 

初耳だ。相変わらず自分の思い通りにならないなのはに心の中でツッコムが済んだ話に一々関心を奪われてはいけない。プレシアの話を中断する事なく聞く。

 

「あの子、全力で戦ってないわよね?」

 

敢えて尋ねる言い回しはこちらを試すものか、束は黙って頷いた。

 

「そうみたい。」

 

機動六課。大規模な犯罪や災害が起こった時に独立した指揮系統で直ぐさま現場へ駆けつけられる部隊というコンセプトの元作られたこの部隊は設立のためにかなり無茶な裏ルールが適用されている。その一つがなのはにも適用されている『リミッター』だ。通常ミッドでは一部隊に戦力の集中する事を避けるため保有できる魔力の限界値というものが設定されている。機動六課ではそれをパスするためになのはのような高レベル魔導師にリミッターを掛けていた。そのせいで日常的に制限をかけた状態となったが結果的に機動六課は時空管理局史上稀に見る最強の魔導師部隊として誕生出来た。そしてそれは機動六課が契約期間を終える直前となってなのはのリミッターも解除される前にこの世界にやって来た今でも変わらない。魔法が行使出来ることは幸いだと言えるがそれでもなのはは本当の意味で全力で戦うことはできないのだ。それでも高い彼女の戦闘能力でなんとか先のアリゲーターオルフェノクとの戦いを優位に運ぶことが出来たのだがこれからの激化の予感の前に自分やなのは自身も限界を感じていたところだった。そこにプレシアは提案する。

 

「私は戦闘のプロでは無いけどそれでも前の世界では大魔導師とも言われた人間。リニスも高レベルの魔導師よ。」

 

既になのはの口から彼女との一連の因縁を聞かされた束はそれだけでプレシアの言わんとしている事が分かった。

 

「協力してくれるって事?」

 

情報面ではなく戦闘面での協力を持ちかけてきたのである。

 

束の問いにプレシアはただ微笑むだけだった。

 

「お待たせしましたー。鯖の塩焼き定食にしてみたんスけど。」

 

弾が選んできた料理は結構美味しかった。

 

 

 

 

 

 




ラウラの掘り下げに軍人というワードを使いました。
やはり少佐クラスの人間なら実力もそうですが国の顔としても機能しなければいけないと思います。一夏に対しては原作とさほど変わらず悪感情を抱いていますがドイツ代表としての顔があるので公にしないだけです。
「北條について」
そして冒頭に出てきたゲストキャラですが、仮面ライダーアギトから琢磨くん兼アマゾン兼警部補である北條透さんです。当初はオリジナルの刑事を登場させる予定だったのですがふと「下手に何でもないところにオリジナルキャラだして読者にこいつ敵なんじゃねみたいに勘違いさせるとどうしよう」と思ってしまい急遽北條さんに出てもらいました。
「なのはのリミッター」
今作品のなのはは機動六課につけられたリミッターがまだ残っている設定です。一応伏線でなのはと戦ったアリゲーターオルフェノクが攻撃力に関して大したことがない発言をしたのはリミッターで力がセーブされていたからです。全力全開状態なら少なくともたっくんが来る前に決着がついていました。

次回は同じ日程で午後のIS学園を描きます。

※人気投票の開催。詳細は活動報告にて
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