セシリアとラウラのイベントは取られて戦闘ではすっかり足手まといポジションへと着地する不運。
「ここらでいっちょ見せ場を作らにゃならん!!」と思いまして今回は一夏視点での活躍を描きます。
一気に主人公感MAXになる一夏に必見。
ーー
太陽が水平線に登る前。暗い闇が段々と青みを帯びてくる空を見ると未だ顔を出さない太陽のその光量と巨大さが分かってくる。そんな光に反応したのかどうかは不明だがまだ一つ隔てた向こうで1人の少年が目を覚ました。パチリとお手本のように目を見開いた彼はガバリと寝起き特有のダルさを感じさせない勢いで上半身を上げる。そしてピタリと90度で停止。既に常人とは色んな意味で一線を画した動作と行動をした彼はそのまま見開いた目で部屋の壁を見ている。ただそれは他に向けるところが無いだけでその大きな瞳は何を写しているのか分からない。そして彼は必要最低限の筋肉を動かして口と声帯を始動させた。
「お目覚めだよワンサマー。」
そう、彼こそはこの世界にとっての元来からのイレギュラー。介入の影響後でも変わらずこの世界に数ヶ月前に現れる常識の破綻者。齢15にしてこの世に残すその功績の内容は偶然とはいえ過去の先人達が覆して来た常識に匹敵するだろう。人類史に残るその名は織斑一夏。ISを動かす初めての男という存在はしかしこの世界は正しくその存在を認識してはいなかった。介入に次ぐ介入で既に似て非なる世界となった現状についに修正力が働いた。
これは今まで目立ちはしたが大して活躍が出来なかったキャラが作者の救済で急に覚醒する物語である。
『新番組 超絶主人公ワンサマー!!』
第1話 さらばワンサマー!
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「え、なに?」
横目で同部屋の3人目の男子が一夏を見ている。思いっきり引いてる。
「…」
一夏。
「いやさ、シルバー仮面ってデッカくなってから視聴率上がったらしいんだよ。」
「うん。」
「だからさ、俺も思い切ってキャラ替えしたらリリなのやファイズに勝てるかなぁって。」
「うん。疲れてるんだね一夏。」
そう言ってシャルルは再び布団を被って二度寝した。
IS学園は今日も平和である。
ーー屋上 昼
日曜日。外出が許される今日だが全寮制で設備も整っているここでは昼間に学生が校舎に来ていても可笑しくはない。今それぞれ私服でいつもの場所でお弁当を広げているのは俺含めて4人。6年ぶりの再会を果たした小学校時代の幼馴染とイギリスから留学して来た名門貴族のお嬢様。そして世界で3人目の男性操縦者だ。因みに鈴のやつは今日は外で友達と食べるらしい。普段は教室まで押し入ってくるくらい懐いているのに居なくなる時はふっと居なくなる。見た目も相まって猫のようだ。いつもより小さい輪に寂しく想うがしかし今はここに居るメンバーと楽しもう。折角の昼飯なのだ。腹が空いては戦は出来ない。戦が無くとも腹が減るのは嫌であるということで俺は今日もいつものメンバーの手作り弁当にたかるのだ。
「ほーきー。」
「たく、お前は本当に食い意地が張っているな。」
凛とした目つきで軽く半睨みで済ませてから半分に切って弁当箱に収め易くした唐揚げを箸で掴み上げ俺の弁当箱に入れた。俺はサンキュと告げるとほぼ同時に口の中に放り込む。舌に衣の硬さが伝わる。朝早くに作ったのだろうについさっき揚げたばかりのようだ。頂きます。
サクっ
気持ち良いくらいの音を立てて衣が砕け溢れ出た肉汁が口内へと溢れ出る。鶏肉の美味しさが所狭しと広がって行く。
「上手い」
俺は箒に叫んだ。
「そうか。」
箒は必要最低限の感情しか示さない。長い付き合いで培ったモノだけが箒の無表情に隠れた嬉しいという感情を判断させる。多分。きっと。だと思う。しかし唐揚げ一つでは足りない。こんな事ならもっと弁当の献立作っておくべきだったぜ。ただし箒にこれ以上注文するのは流石に駄目だ。『男なら女に面倒を見てもらう事もあるだろう。しかし男の本懐は自給自足だ。』千冬姉に言われた金言がふと浮かんだ。そう言えば千冬姉って女なのによく男目線の発言。しかも納得いくものをよく言うけど、あれってなんでなんだろう。それだけ男前な人なんだろうけど一つくらいは誰かからの受け売りだったりするのかなぁ。
(親父とか。)
お隣さんをチラッと見ながら頭の隅に疑問を片付けた。取り敢えず男は自給自足だ。いつまでも嫁さんの世話になる訳にはいかない。お隣さんから譲ってもらおう。
「セシリア、サンドウィッチちょうだい。」
「え、私のですの?」
言っててなんだか自分が子供っぽく感じる。なんだか最近セシリアに対して甘えみたいなもんが出てきたような気がしてならない。セシリアの雰囲気が齢離れし過ぎているからだと思うがやっぱり高校生にもなって今のはマズかったか、反省。
困ったように考え込むセシリアは矢張り大人びた感じを抱く。しかし直ぐに結論を纏めて返してくれた。
「いいですわ。ただし人に向けての物ではありませんのでそこは悪しからず。」
と言ってセシリアはバスケットを差し出してくれた。箒やシャルルと同じく手作りらしいそれは見るからに外国って感じがする。同じ食パンでも国が違えば変わるとゆうものを初めてこの目で確認した。俺は複数の多彩な種類の中から目に付いた物を適当に掴んだ。
「いただきます。」
異国との遭遇。多国籍学校の醍醐味だよな。しかも美人の手料理ときたもんだからこれはもう無条件で上手いと日本国憲法で決まっている。あ〜ん。
ーー
「……」
もっさもっさ
大口でかぶりついた途端口ん中のもん全部奪われた。原因は異常なほどパッサパッサな食パンだ。具材のトマトの方は新鮮ですごく良いのだがそれを吸ってなお俺の唾液を全部持っていく程イギリスのパンはパッサパッサだった。どうしよう全部食べれる自信無い。
「おい、人から貰っておいてその顔はなんだ。」
無表情で食べる、というより飲み込めなくてただすり潰しているだけな俺の余りに失礼な態度に箒が睨みを利かせてくる。俺は何とかアイテムボックスから『自販機で買ったペットボトルのお茶』を使用し流し込むと弁解しようとするがこういう時の箒は実に厳しい。
「食パンのことは関係ない。それはお前の自己責任だ。それに何より礼儀が一番の問題ではないのか。」
なんとかこのパッサパッサ感を知らせようとしたのだが生憎とそれで温情を与えてはくれない。無論悪いのは俺なのは間違いはない。俺を一喝した箒は溜息一つした後セシリアに向かって頭を下げた。
「すまんセシリア。こいつバカなんだ。気を悪くしたなら私からも謝る。」
「悪い、セシリア。」
赤くなって謝る俺にセシリアは笑って受け流す。人の評価を求めたものでは無いと言って俺に気にしないようにと気遣ってくれた。はあ、最近俺って空回りばっかだな。このまま主役の座奪われちゃうのかな。落ち込む俺に突如清廉な呼びかけが聞こえたかと思うと目の前に今度は見慣れた白くてきめ細かい日本の食パンが目に入ってきた。セシリアはバスケットから取り出した2枚目のサンドウィッチを差し出し代わりに俺のトマトサンドを掴んだ。
「口に合わないものを食べ続ける必要は有りませんわ。」
と言って取り上げたトマトサンドを口へと運んだ。
「あっ…」
思わず声が上がる。間接キスだ。しかしセシリアは構わず俺にもう一つのサンドウィッチを俺に手渡した。
「デザートがわりに作っておきましたの。良ければどうぞ。」
見れば食べやすくカットされた断面から淡い緑色の野菜が見える。きゅうりか?1、2ミリかそこらにカットされたきゅうりを幾層かに重ねてその上下にバターが塗られている。さっきはトマトを輪切りにして塩をまぶして挟んだだけに対してこれは少し手がかかってそうだ。しかも美人の手料理ときたもんだからこれはもう無条件で上手いと日本国憲法で決まっている。あ〜ん。
ーー
「うまい。」
これは本当に美味しい。シンプルにきゅうりだけってのに内心不安を覚えていたが食べてみるとそんな心配なんのその。清涼感すら感じるほどサッパリとした味ごたえはセシリアの言うようにデザートがわりにもなるかもしれないが充分ランチメニューに組み込めるクオリティだった。振りかけられた塩胡椒も良い塩梅でどうやらバターの他に調味料が加えられているようだがそれが分からない。
「これなんの隠し味使ってるんだ?」
料理好きとしては是非聞いておきたかった。既にトマトサンドを食べ終えたセシリアは惜しまずに教えたくれた。
「薄切りにした後ワインビネガーに30分程浸しました。」
「ワインビネガー?」
西洋風の酢であり文字通りワインから作ったものだ。普通は煮込みだったりに使うのだがイギリス流はサンドウィッチの具材に使うらしい。もう一口食べながら改めてその食べやすさに感心する。ふと見ると箒やシャルルも興味深げに視線を向けている。2人とも料理を嗜む人間だ。興味を持ったのだろう。
「これもどうぞ。」
美味しくいただいているとセシリアが取り出した魔法瓶の水筒を開ける。結構庶民的なアイテムも持っているらしい。カップがわりの蓋に注がれた紅茶は一気に香りを広げた。
「ダージリンです。ソレによく合いますわ。」
ご厚意に甘えてダージリンを飲む。確かに言われた通りこれはベストマッチだ。強い風味が清涼感によく合って実に美味しい。すっかり食べ終えた俺はセシリアにお礼を言う。セシリアはそれに綺麗な笑顔で答えた。その後はシャルルのポトフも貰いお返しに皆んなにも俺のおにぎりを分けてあげたりした。持ってきたペットボトルのお茶で一服して居るとシャルルから次の予定の提案が出された。俺はひとまずお茶を床に置いて話を聞いた。
ーーIS学園 廊下
あれから昼食を食べ終えた後セシリアは本国の会社の仕事があるらしく寮へ戻った。半年経ったわけだが改めてセシリアって学生らしからぬ稀有なスケジュールで動いていると思う。それでも学業を疎かにしないところは流石だと思いながら俺はシャルルと箒の3人で校舎内を練り歩いていた。休みの日にそれに私服で校舎に入ること自体殆ど珍しかったため、その場のノリで決定した学園散歩。最初は特に期待していなかったが3人も集まれば大抵の所は楽しくなる。談笑を交えて現在は4組の前に差し掛かっていた。取り敢えず道なりに進んで降りて行って後はそのまま校内を散策しようと何となく先頭に立って歩く俺が思っていると屋上からここまで誰1人として生徒も教員すら現れなかったこの田舎道で初めて地元の人が現れた。
「あ、」
楯無さんとおんなじ水色の髪を内跳ねにさせた眼鏡の村人。なぜか呆気に取られた顔から少しだけ嫌そうなものを感じた。確か何時ぞやの談笑の場でなのはさんから俺が楯無さんの指導を受けたと知って教えられた人物像に似ている。
「簪……更識さん?」
思わず呼び捨ての形になってしまったので慌てて苗字で聞き直す。更識さんは無表情で答える。
「名前を呼ばないで。」
告げられた言葉の内容はショック物の筈だが感情の起伏が殆どないためそこまで強い感じは受けない。多分不快感を出すのすらめんどくさがられているんだろう。それはそれでショックだが。更識さんはそれだけ言うと後ろを振り向く。あっやっぱり俺嫌われてるんだ…
「ボーデヴィッヒさん。まだ?」
聞き慣れた人名を今度はキチンと抑揚を付けて発する更識さんの声にすぐ様俺たちが今しがた通りかかろうとしていた4組から見慣れた銀髪が現れた。
「済まない更識候補生……むっ。」
つい昨日転校して来たドイツからの留学生ボーデヴィッヒさんは俺たちを発見すると少しだけ、あれ、またもや嫌な感じがした。だけど直ぐに収まったので勘違いかな。と言うのもボーデヴッヒさんはまるでスイッチが切り替わったように次の瞬間にはそんな感情の入り込む余地の無いくらい爽やかな笑みを向けて会釈をしてきた。
「やあ織斑クン。篠ノ之さんにデュノアクンも、こんにちは。」
え、誰この人。
昨日の自己紹介の時との誤差は一時の思考停止に陥るほどデカイ。ワンサマーびっくり。とりあえず挨拶されたら返さなきゃ…
「此方こそこんにちは。ボーデヴッヒさん。」
混乱している間に後ろから箒が俺の横に出て頭を下げる。下げる角度は知人に対してなので決して深くはないが武道を嗜んでいる証拠は何万回と反復して繰り返したことで洗練された美しい礼の型が示している。
「こ、こんにちは。」
「こんにちは。」
出遅れる形となって早く答えようとしたため冒頭を手こずった俺と俺とは違い丁寧に徹したシャルルが箒に続く。ボーデヴッヒさんは尚も爽やかなイケメンスマイルを振りまきながら休日に学園に来ている理由を聞いて来た。因みにボーデヴッヒさん達は学園の案内だそうだ。
「ここの更識簪代表候補生にIS学園の地理情報の教習を受けていたんだ。君たちはどうしてここに?」
「え、えーっと。」
返答に詰まったのは理由の内容が言いづらい類のものだったからでも俺の頭の回転が悪いわけでもない。はず。
ただボーデヴッヒさんの口調に違和感を感じたため。まるで無理に別々のモノ二つを合体させたように彼女の口調は自分の説明と俺たちへ向けての言葉とで全く違う。更識さんの時は仕事。俺たちに対してはプライベート。それを無理くり合わせたような違和感が俺の返答を遅らせた。
「ちょっと散歩に……」
「そうか。」
本当にアッサリと受け止めたボーデヴッヒさんは更識さんの呼びかけでまた学園案内ツアーに戻って行った。
ーー
「では私は部活練習へ行く。じゃあな。」
箒と別れた一夏たちは今お互い自室で談笑をしている。男であるシャルルが入ったことで一夏はこれまでの箒との相部屋から箒が移動し、学生寮でただ一つの男組部屋が完成したということだ。
一夏は例え相手が誰であろうと大抵の場合は話せる。生来の人の良さで図々しくならない程度の積極性でする会話は相手からすればやり易いタイプだ。シャルルも一夏の自分が主役になる事のない距離感は気に入っていた。自然と話題の内容は踏み込んだものとなる。既に一夏の身の上話はその社交性から聞かされたシャルルはお返しの意も込めてフランスでの生活を話していた。
「僕が住んでいたのはフランスの片田舎でそこに建てた一軒家に家族と一緒だったんだ。」
「ふーん。」
シャルルの身の上話を聞くのは初めてだった。まだ転校して日も浅く一夏自身これまで積極的に聞いた訳ではないのも原因だがなによりシャルルの方からその手の話を嫌っていた節があったため今まで聞けなかったのだ。嫌なことでもあったのかもしれない。自然と避けていた話題がアッサリと本人の口から語られたことに一夏は驚きながら興味深く聞く。
「それでね。お母さんがね。」
嬉しそうに話すシャルルの言葉使いに違和感を覚えるがそれを我慢して話は盛り上がった。身分を偽りそのせいで窮屈な思いをして来たシャルルからすれば漸くとも言える息抜きの機会に、注意は払いながらも思い出話を中断することは無かった。ただ楽しかった思い出を友人に打ち明けていた。
「ん、ああ。もうこんな時間か。シャルル食堂に上がろうぜ。」
時計を見ると夜が更け始めて赤焼けに染まった空のことを窓越しに確認した一夏はシャルルに言う。食券性の食堂は基本的に必ず通う必要は無いが点呼の意味合いもあり寮に居る者は教師から食事はそこで取ることが好ましいと言われている。一夏もそれに従いシャルルを誘う。シャルルは話が中断され少し名残惜しいが素直に従い2人は寮から出た。思えばこの身の上話が彼女の警戒が緩んだ原因かもしれない。
ーー数時間後。
時刻は七時。現在俺は学園の中を全速で走っている。理由は昼食の時に屋上に忘れっぱなしのペットボトル。床に置いておいたのをそのままにして寮まで帰ってしまったのだ。それで今夜住み込みの先生に事情を話して学園の鍵を貰い今取りに行っているのだ。
「あ、あった。」
忘れ物を取り急いで寮へ戻り先生に鍵を返した頃にはもう汗だくになっていた。肌に張り付く服が不快で俺は歩みを早めて自室のシャワー室へ向かう。すれ違う寮生たちは皆風呂上がりらしくそのサッパリとした風体が更にこの気持ち悪さを助長させる。早く風呂に入りたい。シャルルには先に入ってくれと言ったが流石にもう出ているだろう。漸く自室の前に着いた俺は高まる清涼感を求める声に迷わず扉を開けた。
ーーside
一夏の予想通りシャルルは入浴を終えていた。彼はやっと来た1人の時間を満喫していた所だった。ハプニングで同部屋の人間が学園へ忘れ物を取りに行っている。学園の屋上と寮との距離は一昨日と今日までで把握済みだ。彼が帰ってくるまでは余裕があった。そしてシャルルがその情報を鵜呑みにして入浴後火照った体を冷ますために暫く着替えを待って空気が澄んだ部屋で涼んでいた時だった。下は下着だけで上は入浴の発汗作用を拭うため肩にかけられたタオルのみ。普段。特に今の状況ならたとえ一夏の外出中であろうとも絶対にしない格好だが昼間つい時間を忘れて語ってしまった昔話。話せたという事実に感じる心地よさだけが先行し普段の警戒心を解かせた。更に運の悪い事に一夏の脚を速める不快感を勘定に入れる事が出来なかった事が重なり
ガチャッ
「え、」
「え?」
シャルルは急に体の熱が引いていくのを感じた。
違和感とか感じたとか、最近よく使うようになったけど別にネタが浮かばなくなったわけじゃ無いよ?
原作と同じシャルロットのラッキースケベでの正体看破です。
今回風呂場ではなく部屋で涼んで居た所を発見されるという風にしたのは、伏線を仕掛けることと回収の練習がわりです。
序盤でペットボトルを床に置く。
中盤ペットボトルを忘れたまま散歩に出かける。
後半忘れ物に気づきそして最後に正体看破。
という流れです。
※人気投票の開催。詳細は活動報告にて