IS:ボンド   作:田中ジョージア州

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たっくん目線での千冬さんとの邂逅
タイトルはアレです。



あの〜アレです、ほらアレのこと。
アソコのような感じでありつつ、でもソレコレに染まらないココみたいな強固で確かなモノを持ったもの…………


原作開始前 2 ねぇこーじぃ〜たっ、たぁくうん♪(美声)

持てない。

成りたいものが

手に入れたいものが

したい事も

やってやりたい事も

目的、意義、高揚、夢。

 

乾巧にとって一切が他人事であり遠い存在である。

幼き巧が最初にその事に気付いたのは些細な事、クリスマスの事だ。

4歳頃のこと、大人しく手のかからない子供であった乾巧に両親は大きなプレゼントを用意して上げた。

人気マスコットの巨大なヌイグルミ。

自分の身の丈程の人気キャラクターを見たとき巧は大変驚いた。

両親はそれを見て目を合わせて微笑んだが巧が驚きを感じたのは、両親の粋なサプライズに心打たれた訳でも、大好きなキャラクターに興奮したからでもない。

疑問。

 

『なぜ自分はプレゼントなど貰うのだろう』

 

プレゼントの意味は知っている。

クリスマスプレゼントという習わしも幼心に認知していた。

しかし、結びつかない。

それと自分がプレゼントを貰うことの関連を巧は付けることができなかった。

それが親の愛情だということも本能的に感じいっていた。

 

 

喜べない。

 

欲しくない。

嬉しくない。

必要ない。

乾巧は産まれながら、なにも求めなかった。

 

月日は流れ巧はついに求めることを見つけた。

夢を見つけた。

その夢は彼の歳で語るには少々照れ臭い内容だったが、巧はその夢を誇りに思っていた。

夢の達成は険しい。

しかし巧には長い旅生活の中で出会った大切とも言える間柄達がいた。

巧は夢への邁進を続けた。

 

邁進の中、巧は身体を酷使した。

残りの人生の全てをその夢につぎ込んだ。

身体は日々重くなり倦怠感と怠惰感が自身を取り巻くようになっても、巧は構わなかった。

長生きしようとは思わなかったし出来るとも思わなかった。

巧は夢の実現に只々勤めた。

 

 

 

 

 

気づけば別世界

 

「んだよここ。」

 

そう毒づく巧は取り敢えず辺りを見渡す。

どうやらそれなりに都会のようだ。

 

「下町ってところか…」

 

所々に点在する看板や広告からして日本で間違いないらしい。

しかし、そのどれもが巧には違和感に感じた。

合わない

目に入る情景の全てに言いようのない嫌悪感を感じる。

どれだけ高画質な映像でも本物ではないように、この光景のなに1つ現実味を感じられない。

もしかしたら合っていないのは自分かもしれない。

そう思わせるほど、巧は驚くほどここに合っていなかった。

解らない。

解らないのだが、「変な場所だな。」

それだけは解った。

巧は一旦嫌悪感を心の奥にしまって附近を探索し始める。

ちょうど近くにコンビニを発見した。

巧はズボンのポケットを弄り財布を取り出す。

残金を確認しコンビニへと歩み寄る。

割とガランとしていた。

見ると日は丁度真上に差し掛かろうという時、繁盛してないんだな。

そう判断し中へと入ろうと駐車場を堂々真っ直ぐ突っ切って。

目に入る。

丁度コンビニの角の辺りに止められていて見えなかったが、此処まで来てその全貌が確認できた。

 

「おっ?」

 

思わず間の抜けた声を出してしまう。

銀を基調としたオフロード式の中型自動二輪車。

市販のものでは中々お目にかかれない控えめながら特徴的なデザイン。

その上で、荷台に取り付けられた此方は明らかに市販のバイク用品の種類。

どれも見覚えがある。

 

というか、アレは俺のバイクだ。

正式名称SV-555 V オートバジン 旅の途中紆余曲折あり巧の愛車となった車両だ。

巧はその場で固まりオートバジンに目を向ける。

間違い無い、巧は目の前のバイクが自分のものだと確信する。

なぜなら他の景色と違いこいつからは違和感を感じない、寧ろ懐かしさすら感じる。

何故こんな所にあるのかは知らないが地獄に仏、早速貰って行こう。

早速近づこうとしたところで、

 

「きみ、」

 

心臓が跳ね上がった。

咄嗟に後ろを振り向くと黒いスーツを着た切れ長の目の女性がこちらを睨んでいた。

バイクの事もあり少したじろぐ巧、しかし女は眼前の男が盗みを働こうとしたと勘違いした訳では無いらしい。

どうやら昼間からこんな場所にウロついている自分を不審がっているらしく、非行少年と見なされたらしい。

 

「きみ年は?学校はどうしたんだ?」

 

矢継ぎ早に駆り出される質問に巧はさてどう返したものかと思案する。

まさか別世界から来ましたなどと言う訳にもいくまい。

 

(つーか本当に別世界なのか?)

 

だんまりのままの巧に女性は明らかに不満を明らかににさせる。

 

「あ?…あぁ……ん?」

 

慌ててなにか口から出そうとするが、説明どころか単語にもならない。

巧が抱く違和感が音を成したようなものだった。

すると見かねた女性が取り敢えず状況の説明は諦め名前を尋ねて来た。

普段なら初対面でなにを馴れ馴れしいと思うところだが、周り全てが不確かで軽く不安を覚えていた巧に取ってハッキリと分かる情報は返って安心する。

 

「乾巧」

 

よって乾巧は普段ならまずしないくらい素直に質問に答えた。

女性は織斑といい、どうやら教師をしているらしい。

初めての人間ということもあり、巧は若干心を許していた。

普段なら知り合いにもしないであろう身の上話を切り出していた、無論前の世界での話だ。

 

「ーー色々旅してて。」

 

さりげなく後ろのバイクは自分のものだと主張する事も忘れない。

 

「偉いな」

 

「………」

 

思わず口を噤む。

こうまで真正面から褒められたことなど珍しかった為照れてしまった。

ついで手渡された現金もメモ書きも照れ隠しとして受け取った。

 

「頑張れよ」

 

ばんばんと肩をかなり力強く叩きながら織斑はそう告げる。

少々名残惜しい気もするが、早く国道かどこかへ出て辺りの事を調べなければならない。

心の中で礼を言い別れようとした時。

 

突如悪寒がほとばしった。

懐かしい。

吐き気がするほど慣れ親しんだ嫌悪感。

目眩がするほど知っている

自分の人生の半分近くの年月で、慣れている。

肌に染み付いた感覚がコンビニから漂って来る。

自動ドアを隔てた向こう側から死の雰囲気が香って来る。

居る。

次の瞬間、恐らく半歩ほど足を進めるだけでドアが開く程の至近距離。

 

「なあ……!」

 

未だ異変に気づかない織斑に対し、危険を伝えようとした時には遅かった。

 

開いたドアから現れた男を見て巧は確信した。

開く前の状態では未だ定かに無かった考えだったが、今ここでハッキリと解った。

 

こいつはオルフェノクだ

 

常人でも一目で判別できる異様性は確かに巧も自覚している。

されども彼がこの結論に達っせた要因はそんな一般人的なものではない。

先のオートバジンに感じたものよりもさらに強く。

この男から感じる身近さ、それが巧に確信させた。

惚けている場合ではない直ぐさま織斑を避難させねばならない。

 

「巧くん、少し下がっていろ。」

 

「⁉︎ 馬鹿……」

 

肩を掴まれ後ろへと無理やり押し出される。

思わず飛び出た罵倒の言葉も聞き入れず、完全に背後に下げられてしまった。

本人にしてみれば見るからに不審者である男から未成年である巧を守ろうとした教師としての行動なのだろうが、相手が悪い。

スーツの男は痩せ型でそれ程威圧感は感じないが、オルフェノクに見ための容姿など意味を成さない。

男が遂にこちらに近づこうと脚を動かそうとする、巧も咄嗟に前にでようとするが。

 

「退がれ‼︎」

 

再び押さえつけられる。

そうこうしている内、男に変化が見えた。

無表情な顔に影のような紋様が浮かび上がったのだ。

 

「‼︎ おい、本当に……」

 

言い切る前に男が変わる。

170㎝そこそこだった体は2メートルを超える巨体に。

腕は成人男性の腰ほどの太さになり、特徴的なものは頭から真っ直ぐと伸びる角。

驚く織斑の後ろで巧は既に分析を始めていた。

角があるということは牛か鹿の特徴を持つオルフェノクか?

いや、巧は首を振る。

腕から伸びる三角の流線型の突起物、アレは四足獣を基調としたには不自然だ。

アレはヒレ。

どうやら相手は海洋生物を基調としたオルフェノクらしい。

そこまで至ってから鯨の一種である一角の力を受け継いだオルフェノク、ナーホアルオルフェノクが突進してきた。

200近いであろう重量も、オルフェノクの筋肉密度は易々とその鈍重な巨体を加速せしめる。

動体視力には人並み以上のものを持つ巧ですら、オルフェノクである事を知って身構えていなければとても追えない。

織斑を抱いて…いや間に合わない、サイドステップと同時に思いっきり引っ叩いて避けさせる。

然し又してもトラブル発生。

 

「逃げろ‼︎」

 

なんと巧ですら反射ギリギリのスピードに目の前の女教師は対応し、巧を力いっぱいに突き飛ばしたのだ。

サイドステップの体勢に入り重心が少なくなっていたのと、織斑の力が思いの外強過ぎた為思いっきりすっ転んでしまう。

そして巧を避難させる引き換えに織斑はナーホアルオルフェノクに捕まってしまう。

脚をバタつかせ必死にもがき苦しむも容赦なく締め上げられる織斑を前に選択の余地は無かった。

腰の痛みも構わずオートバジンの方へと駆け寄り、備え付けられたケースを慣れた手際で開錠する。

非常事態にも無駄な力みやミスは一切なく平常時のようにスムーズ。

取り出されたのはベルト。

装飾品としては無骨すぎる見た目に、実用品とするには些か巨大過ぎる品物を巧はこれも慣れた手つきで装着する。

同時にベルトと共に取り出された二つ折り式の携帯電話を開き、右手に持ちコードを入力する。

 

 

ー5-5-5-

 

Enter

 

Standing by(準備完了)

 

音声ガイダンスと独特の待機音が鳴り響く。

もちろん戸惑わず一度ベルトに目を落とし正しく形態移行しているか確認すると、携帯を閉じ腕を天へと掲げる。

 

「変身」

 

決して大きくはないが、確かな強さを感じさせる声で一言、そして勢いよく、正確にベルトの挿入口に携帯を指し90°横に倒した。

 

Complete(完了)

 

最後の音声ガイダンスを告げ、ベルトを中心にエネルギーが集中し巧の全身へと光の管として流動する。

眩いばかりのフォトンの輝き、巧の体を粒子レベルで輝きが覆い尽くす。

自らの身体の異変を確認すると巧はナーホアルオルフェノクへと駆け出す。

既に織斑の首の骨はあと数瞬、刹那の内に折られてしまう。

巧はそれより速かった。

ナーホアルオルフェノクが見せた急加速よりももっと、紅い残像を出しナーホアルオルフェノクの腹に蹴りを叩き込んだ。

 

ドゴン!!

 

爆薬でも使用したかのような轟音を響かせ、巧の蹴りはナーホアルオルフェノクの厚い筋肉層を易々と貫通したのち内臓まで破壊した。

無理やり解放され抵抗も出来ずアスファルトに落下した織斑も気にせず、ナーホアルオルフェノクを油断なく見つめる。

不意に

ナーホアルオルフェノクが傷を始めとして燃え始めた。死の瞬間だ。

巧は少し睨みつけナーホアルオルフェノクの身体が灰となり崩れるのを見届けるとベルトから携帯を外し変身を解除する。

光と共にさっきまでの超人的な力も霧散する。

 

「巧くん⁉︎」

 

驚愕という風に声を荒げる織斑に目を向け別状はないと確認すると、巧は空を見上げこれから来るであろう面倒ごとに眉を顰めた。




間を開けての投稿となってしまいました。

特に新しい描写はなくあくまで別視点という事で纏めました。
千冬さんとたっくんの邂逅はここで一区切りし、次は別のキャラを描こうと思います。

※人気投票の開催。詳細は活動報告にて
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