IS:ボンド   作:田中ジョージア州

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期間が十分だった割には3600字と少なめです。

今回はラウラ戦までの繋ぎとして少し駆け足で描いています。


27話 考えうる限りで最強の組み合わせ

一日の始まりは日付が変わった時?

それとも夜が明けた時?

目が覚めた時?

どれも正解だと思うけどここんとこの俺はSHRが一日の始まりだと思っている。

 

小学校、中学と俺の人生の半分以上は学生として構成されているから当然かもしれないけど教師は変われど続く習慣が最近になってちょっと凄いことなんじゃないかと思う。

学年別(ツーマンセル)トーナメントのペア決定まで後2週間だ。まだ決めてない者は速くしろ。」

 

織斑先生の端的でちょっと命令口調なSHRにクラスのみんなも慣れてきたのか背中越しにクラス全体の調和を感じる。

実はこの生徒全員の一体感が最近の楽しみになっているのは内緒だ。

俺もみんなと共に真剣に織斑先生と山田先生からのお知らせを聞いて朝の始まりは終わった。

 

ーー

「どうすっかなぁ。」

思わず誰にも聞かせずに呟いた一夏の困った言葉は思いの外大きかった。

 

「なにがですの?」

一夏の呟きに偶然聞こえたセシリアが彼の机の前に出て視界に入る。

聞こえてしまったかと衝動的に口を噤みしかし直ぐに理由を話す。

 

「相手がまだ居ないんだよ。」

 

普通はこうゆう大規模な試合形式の大会に該当する行事は自由参加だろうと一夏は思っている。

 

しかしIS学園はいわば世界に一つだけのISの専門校。 この行事も一種の課外授業の一環の役割を担っている。

 

当然と言うように今回の行事も基本的に全員参加。

 

特に一夏のような珍しいケースや代表候補生はデータの採取があるため各担任から事前に絶対参加が言い渡されている。

 

だというのに。

 

「まだ決まってませんの。」

 

セシリアの少し驚きの声が混じった反応に少しホッとする。

てっきり呆れられると思っていたので単純な驚きだけの反応は寧ろ助かった。 それでも人に知られた恥ずかしい気持ちで自己嫌悪の類は高まったが。

 

「なあ、セシリアってパートナーは。」

「ごめんなさい。」

 

どうやら決まっているらしい。

 

一抹の期待を込めて尋ねてみたがやはりダメだった事にいよいよ頭を悩ませる一夏。

 

改めて振り返ればこうなったのは自分のせいだ。

 

他の候補生達と同じく、なんならその特殊な存在を鑑みて学園側からは誰よりも早く通知を貰い姉であり担任である千冬からは再三勧告されていた事だった。

それでも遅れたのは単純にまだ早いと楽観視していた事と他の人間が知らない中で相手に頼み込むのも失礼かと気遣い後は純粋に忘れていた。

 

そして現在、千冬はああ言っていたが実のところこの学園の生徒は中々意識が高く既に候補生どころか一般生徒ですらもう1週間前くらいに殆ど登録を終わらせておりこの1組でも残っているのは一夏1人となってしまっている。

千冬の台詞は大体一夏に向けられていた事はSHRの終わりに見せた無言の睨みが証明していた。

登録期間はまだあるがそれも相手が居なければどうしようもない。

 

 

因みにシャルロットは鈴音が持って行った。

 

最初は彼女と組もうとしたところ正体を知る鈴音が「変態!」の一言と共に無理矢理シャルロットに書類を書かせたのだ。

箒や同じ男子の巧もすでに決まっていたため最後の砦のような感じだっただけに痛い事態だった。

頼りのシャルも取られ完全に八方塞がりを食らってしまった一夏。

しかしまだ世界は主人公を見放してはいなかったらしい。

 

うーんどないしょ…と思っていたところに社交性のある一夏の聴きなれない声がかかった。

セシリアの「あら珍しい」に気になりながらも自身も後ろを振り向きその理由を理解した。

 

「あ、久しぶりだな。俺に何か用?」

「貴方と組みに来た。」

「マジ?イイ、イイ。とゆうか助かるよ。」

 

更式簪の無表情に一夏は笑顔で返した。

 

 

ーー食堂

 

珍しい組み合わせだと一夏は思った。

いつも食事を共にしない簪が今日は目の前の席に座っている。 更に箒などの普段の相手も今回は例のパートナーと共に食べるらしく目立つことが好きではない簪が選んだ席もあって今日は簪以外周りにはいない。

 

場の空気が悪いなと思ったら直ぐに行動出来るのは一夏の利点だ。 簪が天ぷらそばの天ぷらをつゆに浸しているのをすかさず話のタネにする。

 

「お、天ぷらベチャ漬け派か。サクサク派に見つかったら騒ぎだぞ。」

 

初めてそばから顔を上げて一夏を見た簪の表情は一夏の利点が今回は悪手だった事を示していた。

 

「それで?」

「ん、それで?」

 

「私の食べ方に文句を言う人が今この場に現れる可能性はどれほど?それが確率的に低いのなら貴方のその発言はただ無意味。」

「う。」

 

どうやら今回のジョークは気分を害してしまっただけのようだ。

内心で軽率さを戒めつつ謝った一夏は自分の分のチキン南蛮定食に手をつけた。

沈黙が簪とそれの近くにいる自分に妙に似合っているように感じた。

やがて昼食を食べ終えたころに今度は意外にも簪の方から口を開いた。

簪は親しくない相手との食事中の会話は嫌いだった。

 

「織斑くんは自分の専用機の出どころって知ってる。」

 

一夏の知る同年代の女子では珍しいタイプの感情の出さない言い方にも一夏は正直に答えた。

 

「倉持技研だよ。」

 

特に考えずに発した言葉に簪もまた特に感慨を持たないように次の話題に移した。

 

「じゃあ私の専用機が同じ倉持技研が開発元だって知ってる。」

 

知らない。

素直に首を振る一夏に簪はそうと一息ついた。

身に覚えのない緊張が一夏に降りかかる。 それなのに何故か罪悪感が浮かんでくる。

簪は再度口を開いた。

 

「元々倉持技研は私の打鉄二式の製作を受け持っていた。そこに貴方の百式が入ってきて打鉄二式の製作は半分凍結扱いになったの。」

 

相槌を打つことすら躊躇われた。

 

簪の語った内容が本当なら彼女にとって自分は専用機を奪った人間と見られても無理な事ではないと思った。

相変わらず無表情の簪はだからこそ目立つ僅かな変化でこう続けた。

 

「今から言う質問は個人的な事で貴方とのタッグに変動はない。」

 

つまり正直に答えろということだと一夏は解釈した。

 

「今の話を聞いて貴方は私に対してどんな気持ちを抱いているの。」

 

暫く間は開かざるを得なかった。

 

かつての経験が無い返答に一夏は困った。 保証はされどもやはり気になるタッグ戦の不安と簪への気遣いから来る躊躇いが下手な事を言う訳にはいかないという心境にさせる。

それと同時に最近心に残っている箒からの言葉がここに来て再び浮かんできた。

 

今回も理不尽だ。

それは自分にとってもそうだし彼女にとってもそうだ。 間接的も間接的な関係ながら今の話に無関心でいられる一夏では無い。 簪が自分を恨んでいても仕方のない事だと思ってもいる。

 

その上で一夏は口を開いた。

 

 

「ひどい話だと思うよ。今まで何も知らなかったところにこうして事実を知った後だと申し訳ない気持ちも湧いてくる。」

簪の姉譲りの紅い瞳が一夏を覗く。

まだ終わりではないということを感じた。

 

 

「それでも俺は悪くないと思います。」

 

グラスの向こうの紅い瞳が一夏を覗いていた。

 

 

 

思ったよりあっさりしてると思った。

 

簪は今まで鳴りを潜ませていた不調和音の原因を前に本来なら不機嫌ものの返事に変動しない心に自前の性格以外の要因を感じていた。

 

質問する。

 

「どうして?」

 

見ようによっては責めてるようにも見える簪の質問を一夏は動じずに答えた。

 

「俺が関与した事じゃないし姉から思ったことはハッキリ伝えられる人間になれって言われているからな。」

 

返答の中に心を惹かれるワードが出たが今は気にしている時でも無い。

 

「それに簪さんは俺が謝ってたところで満足しなさそうだなぁって思ったんだ。」

 

 

「なんで?」

間を開けたのは虚をつかれ思わず思考が停止したからだ。

一夏の黒い瞳が簪を覗いていた

 

「転校生にわざわざ休みの日に校内を案内する人ならそうかなぁって勝手な思い込みだけど。」

 

思い当たる節がある。 先週の休みの時のことだ。

 

「簪さんは俺の謝罪を要求するタイプの人じゃないと思う。」

 

それで一夏から感じる意見の感覚は無くなった。

それを示すように一夏は真摯に答えるため前のめりになった姿勢を戻した。

 

黙ったまま黒い瞳が簪を覗いていた。

 

 

ーー

心底から決めた事を伝えた。

 

そこに嘘偽りはない。 こうして告げた事に今も後悔はしていないがその後の反応にはやはり人並みに気になる。

殴られる覚悟くらいしようと思っていたが幸いそうゆう激昂のような類が苦手なようだ。

 

(それはそれで気まずいけど。)

 

冷や汗を垂らしながら一夏は簪の反応を待った。 なんだか場の雰囲気的に自分から席を立つのは逃げたみたいで後ろめたかった。

 

そして一夏にとってはやっと。

簪が口を開いた。

 

「そう。」

 

予想通りと言えばそうだがもう少し抑揚をつけて欲しかったと思わなくも無い。

 

「登録しに行こ。」

 

簪は一度紅い瞳を閉じてから一夏に言った。

 

 

ーーオマケーー

 

「セッシーは誰と組んだの。」

すっかりクラスのマスコット的ポジションに収まった本音が同じくクラスの委員長ポジションとなったセシリアにのほほんと声をかけた。

セシリアは品のある微笑みでそれに答えた。

 

 

 

「ボーデヴィッヒさんと組ませていただきますわ。」

 

 

 

 




前書きでも書きましたが少し文字数落ち込みました。

言い訳苦しいですがここ最近少し文が浮かばなくなってきて…
セシリア対ラウラ戦とか束とアルベールの描写とか少し日常から離れると筆(とゆうか画面を叩く指)が進むんですが。

とゆうわけで今回はこれ以上ダラダラ間延びする前に一回切り上げました。
次回から心機一転していきます。

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