IS:ボンド   作:田中ジョージア州

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一夏が悩んでいた数十日を一息に纏めてみました。

思いつきと書きたい事が盛りだくさんで少し整合性を欠いていると思いますがどうぞお楽しみください。





28話 それぞれのパートナー

一夏がツーマンセルを悩みに悩んでいたこの数週間の間他の主要メンバーがどうしていたのか? 今日は特別に数十日またぎの内容を一日にダイジェスト形式に纏めてお送りしよう。

 

 

ーー箒編

れっきとしたメインヒロインの割には要所要所で出番を取られて目立たない彼女だが別に悔しくは無い。

いつも通り道場で素振りをする彼女は恐らくこの学園でも1番の早起きの1人であろう。

 

心頭滅却。

 

聞いたことはあるがそれを昔ながらの修行という形で本当に実践している女子高生はラノベ世界広しと言えども……

なんかいっぱい居そう。

 

とにかく世間一般でも珍しい箒の素振りは彼女が所属する廃刀令後に生まれた剣道のものとは違う。 手にしているのも竹刀ではなく木刀だ。

古流武術から派生した篠ノ之流剣術の門下生である箒が行う素振りは試合形式を想定したものではない。

 

無論彼女の人生の中でその剣技を使う機会は今のところ剣道という舞台でしか無いがそれでも彼女にとって剣術は既に身体に染み付いた習慣となっていた。

 

今日も彼女は剣を振る。

 

次々とヒロイン候補が現れて来ても、

 

最近一夏と2人きりになる描写が減ってきても、

 

新しい公式ゲームで更にヒロインが増えてきても、

 

「とゆうか西暦2022年だったんだな私の世界って。」

 

箒は煩悩を抑えて素振りをする。

因みに今の呟きは自然に出た箒の記憶に残らない言葉であり箒はあくまで無心だった。

 

やがて日課の回数を終える頃には爽やかな汗で髪をシットリと湿らしている。

そこからシャワーを浴びずに道場の隅で正座し瞑想までするのが箒の日課だ。

 

最初はベタつく衣服が嫌でシャワーを浴びてからの行動も今ではそんな事は頭の隅に消えてしまう。

最初は痺れる足が嫌で短時間しかしなかった正座も今ではすっかり日常の姿勢となっている。

 

「その気になれない」と瞳を閉じなければ外界が気になって集中出来なかった瞑想そのものも今では瞳を閉じる必要も無く例え道場の一メートル手前が突貫工事の最中だったとしても彼女の意識はもし極まれば、唯識で例えるならば現行を超え末那識にまで到達しているだろう。

 

限りなく煩悩を排除した箒の思考と呼ぶべきか心の内と呼ぶべきかの深層世界は思いのほか私的なものであった。

 

内容は大体想い人一夏について。

 

勿論恋路関係の事だとゆうのは書く必要もない。

 

しかしこれは断じて不純なものではないと箒は思っている。

 

箒の父からすれば瞑想は己の心の声を知ること。 故に彼女は今想っている不純も深層世界の物を聴いているとゆう事なのだから合法なのだと思っている。

 

箒は今日も一夏攻略を思ったのちにシャワー、着替え、そして食堂へ向かう。

 

 

ーー鈴編

鈴音は朝は弱い。

同部屋のティナ・ハミルトンにいつも叩き起こされてから彼女の朝は始まる。

たまに予定などがある時などは早起きをし逆にティナを必要も無いのに叩き起こす。

 

ティナからすればいい迷惑なので勿論その度に怒られるのだが彼女はそういう日に限って早起きし過ぎてしまい暇なので懲りずにティナを起こす。

 

ティナもそもそも早起きの頻度自体が少ないため仕方ないと我慢している。

 

今回はいつも通り鈴音が叩き起こされる番だった。

 

いつもより少し早めに目を覚ました鈴音は部屋の洗面所で顔を洗い…面倒くさいので手で擦って済ませ制服に着替えてから食堂へ行くかと思ったら再びベッドインフィニット・ストラトス アーキタイプ・ブレイカー。

 

これにはティナも呆れてしかし起こさずに食堂へ向かう。

 

しかしそこはお人好しティナお嬢ちゃん。

 

鈴音経由で知った彼女と隣の席の友人の部屋の戸を叩く。

明らかに質素な造りの鉄づくりのドアは塗装が所々禿げている。 元は仮眠室のようなものだったと贔屓の教師から教えられたその部屋には今は彼だけの部屋となっている。

 

彼は数度のノックの後扉を開いた。

 

制服姿の巧が眉を寄せて出てきた。

首元は苦しいのか少し開けられ中に見えるワイシャツがこれまただらし無く開かれそれが彼には相応しく感じた。

 

「乾くん、悪いんだけど今日もお願いね。」

 

ティナが両手を合わせると巧はガシガシと頭を掻いて頷いた。 ティナは食堂へと出かけた。

 

 

ーー巧編

ここ最近は毎日だ。

 

巧はすっかり慣れた部屋への順序を歩きながら思った。

 

最初は二度寝した鈴音を起こすたびに体力を消耗しているのが何も知らずとも読み取れるくらいグッタリとしているティナを不憫に思い巧から相談に乗ってやった。

それを機に巧は事あるごとにティナがどうしても鈴音に付き合っていられない時などに代わりに彼女を起こしている。

 

確か最近は部活動関連だったと記憶している。

 

「ったく。」

 

他に毒づく言葉が浮かばなかったためそう毒づく。

なんなら見捨てて食堂へ行こうかと思ったがそれではティナの好意に背くことになるため鈴音を起こすため巧はノックもなしにティナと鈴音の部屋を開けた。

別に遠慮する必要もない。

 

制服のままベッドで涎を垂らしている幼児体型を慣れた目つきで流し巧は部屋の隅にある余った毛布を広げた。

 

鈴音は起きる様子は無い。

 

巧は毛布を自分が上に乗るようにセットしてから

 

バサっ

 

ハイフライフロー宜しく鈴音にのしかかった。

 

毛布の下からのされたカエルのような声がし毛布が揺れる。

巧は毛布から落ちないようにバランスを取りながらベッドへと割と本域の拳を振り下ろす。 その度にカエルが苦しそうな声を漏らすが巧は一切辞めるそぶりを見せない。 やがてカエルが毛布ごと巧の体をはねのける事で巧はベッドから避難するように転げ落ちた。

 

ブワッと毛布が飛び中から鈴音が現れた。

 

圧迫と温度と酸素と怒りのせいで赤くした顔を巧は一言。

 

「きったね。」

 

巧の顔に蹴りが飛んだ。

 

 

ーーセシリア編

彼女の朝は一定だ。

 

同部屋の人間も彼女に触発されほぼ彼女と同じ時間に起きるようになった。 馴染みの挨拶を交わし洗面所にて身なりを整えクローゼットから取り出した制服へと着替える。 人は夜ペットボトル一本分程の寝汗をかくため寝巻きは毎日洗濯する。 そうして全ての準備を終えた後彼女は食堂へ向かった。

 

 

ーーシャルロット編

同部屋の一夏は意外と早起きだ。

 

毎朝動き易い服は着替えてランニングへ出かける。 起床前に勝手に寮の外へ出る事は本来ならマズイので周りの人間にはバレぬようまだ日も昇らぬ内に静かに出かける。 シャルロットがそれを知ったのはまだシャルルだったころだ。

 

初日の次の日まだ日が昇らぬ内に目を覚まし百式のデータを奪おうとねらった。

 

「本当ならやりたくなかった」とは今となっても同じだがそれと同時にあの時の彼女はそれを行動に移すことが自分の当然の役割のように罪悪感を薄め一夏に冷たい目線を向けた。

一夏の気配を感じたのは直後だ。

 

訓練された動きで音も立てずに素早く闇の中で自分のベッドへ潜り込む。

一瞬後に起き上がった一夏は偶然目が覚めた、訳ではなく彼にとっては日常的な時間なのだとその淀みない慣れの動作がシャルロットに確信させた。

 

起きた一夏は横のシャルロットに気を配りラフな服装に着替えるとそのまま外へ出て行った。 百式を持って。

 

実は本人が知らない間に未然に情報漏洩の危機を防いでいた一夏は今日もシャルロットが起きた頃には走りに出かけている。

 

シャルロットは基本的に朝に余裕を持てる。

 

洗顔と歯磨きを終え下ろした髪をヘアバンドで纏め誂えた男子用の制服に袖を通す。

 

シャルル・デュノアとしての日々はまだまだ続く。

 

 

ーーラウラ編

この学園には何人か規定の点呼時間前に寮を発つ生徒が居る。

 

箒のように自主練という形でキチンと学園側の許可を得ている生徒。

 

その一方で一夏のように黙って出て行く生徒は勿論バレたらエライ事になるためキチンと起床前に戻ってくる。

 

ラウラは前者だ。

 

代表候補生達はその特異な立ち位置からある程度学園内での自由も一般生徒より解放されている。

 

セシリアならば会社とのミーティング。 シャルロットや鈴音ですらも事前の届け出の元ある程度の特別措置を認められている。

 

軍人であるラウラもその一人で主に自主練の為に時間を貰っている。

 

点呼の前に軍で使っている運動服へと着替え正門から堂々と出て行ったラウラはバッタリと一夏と出会った。

 

「あ、やべ。」

 

瞬時に記憶していた情報から彼を不法行為者だと判断したラウラは同門として、一部私的な憾みも込めて目の前で固まる一夏へ突っ込んだ。

『タックル』

 

レスリングに連想される一般的な技術で血気盛んな中高生男子が休みの時間に友人に仕掛けているところを見たことは無いだろうか。

 

上体を屈めて下半身のバネを使って相手に突撃、 そのまま相手の両足を捉えて上体を背後に倒すこの技はそのリアクションの大きさからおふざけの範囲で戯れあいとして使用されたりも珍しく無い。

 

しかしその実、後頭部を地面に叩きつける事に適したこの技は一歩間違えば殺人技として機能する。

 

脳を守る頭蓋骨の中で2番目の硬度を誇ると言われる後頭部も自重とそれに加味される勢いからの衝撃は4〜5ミリの防護域を突き抜け脳震盪を引き起こす。

最悪 頭蓋内出血を引き起こさせるこの技は軍隊格闘術に取り入れられるなど投げ技に匹敵する危険度を持つ。

 

無論ラウラは慌てて逃げようと足をもつれさせそうになる一夏の脳髄を損傷させる気はなく、 そのまま成人男性と変わらぬ体格の一夏を担ぎ上げる。

 

「わ、わっ、」

 

暴れる一夏を冷静に抑えつけそのまま()()()地面に降ろす。

 

降ろすといっても立たせるよりは寝かせる勢いでの着地は一夏のバランス感覚の許容を大きく超え、 更にのしかかるラウラにより彼は仰向けに転がされてしまった。

 

混乱しつつもマウントポジションで腕を抑え拳を握るラウラになのはの特訓で鍛えられた危機察知が強く反応していた。

 

ラウラは冬のモスクワ並みに冷たい目で一夏を見る。

 

「さて…背中をつけたがこれはシュヴィンゲンでは無いからな。抵抗してもいいが反則もレフェリーストップも無いぞ?」

 

「投降します。」

 

即決だった。

 

 

玄関先で横並びに体育座りをする2人。

ラウラは一夏からの説明を全て聴き終わり眼帯に覆われた左目から一夏を除いた。

 

「生憎と軍人以外の常識には疎くてな。向上心と行動力はルールを破って良い理由にはならないと思うが……この国では違うのか?」

 

そういえば治外法権だったなと思い出しながらも一夏はバツの悪そうに顔を俯かせる。

 

「いえ、その通りです。」

 

うんと喉を鳴らす。 どうやら自覚は有ったようだがさてどうするか。

こうして捕まえ尋問をしているわけだがラウラは別段一夏を教師に突き出し処罰を受けさせるつもりは行動の過激さよりは大分小さかった。

 

むしろ良い機会に一夏と話すキッカケづくりとしての方が相応しいとラウラは自己分析をしていた。

 

こんな事言ったら冗談じゃないと怒られるかもしれないため言わないが。

 

ラウラは自分の殻を剥がさないように気をつけながら一夏に尋ねる。

 

「その強くなりたいとは何を目指してのことだ。」

 

「君は最終的にはナニになるつもりだ。」

 

ラウラの注意には幸い気づかず一夏は正直に答えた。

 

「大切な人を守りたい。」

 

今度は目を見ての返答にラウラは少し面を食らう。 当初はしどろもどろを隠せなかった返事から打って変わった物怖じしない姿が最初は疑ったその決意の内容に真実味を持たせた。

 

「本気か?」

 

思わず訪ねてしまっていた。

 

「ああ。」

 

一夏は力強く頷いた。

 

その姿に密かな羨望を抱いたことをラウラは優秀な自己分析で読み取り驚いた。 驚いて少し笑った。

 

普段ではまずしない質問をする。

 

「もし私が助けを求めたらお前は私を助けるのか。」

 

一夏は少しも迷わず頷いた。

 

ラウラの心は一つの小さな結論を出した。

 

「私はそこまでこいつが嫌いでは無いかもしれない」

 

 

ーー虚編

簪の心は一つの小さな結論を出した。

 

「お姉ちゃんウザい。」

 

「ひどい⁉︎」

 

涙ながらに叫ぶ楯無を冷ややかに見つめるのは生徒会会計係の布仏虚だ。

 

今度のツーマンセルに備えここ最近は休みを返上してまで各種準備を生徒会室でこなしていた。

そこへ突然、同じく会長として今回の企画を進行する以上欠かせない楯無が何故か妹を連れて入ってきたのだ。

睨みつける虚を無視して楯無は自分が普段座る生徒会長の椅子に簪を座らせる。

 

ふと睨む視線に簪が入った。

 

ぺこりと一礼されたのでこちらも返す。

 

どうやらというか予想通り簪にとっては無理やりらしいこの状況は全てこのぱっと見暇人の仕組んだことのようだ。

簪の鬱陶しげな視線が気づかないのかそれとも気にしてないのか楯無は自分の世界に入っている。

 

「いい簪ちゃん?今度のツーマンセルの相手なんだけど、もう一度お姉ちゃんに誰と組むのか教えてちょうだい。」

 

簪は息を一つ吐き恐らく何度も言ったのだろう事が感じられるくらい鬱陶しげに口を開いた。

 

「本音。」

「本音ね、うん良いわ。あなたたち仲良いものね。」

 

頷く楯無を見ながら虚も妥当だと納得する。

 

本音と簪の仲は姉の虚も知るところだ。

 

性格的には不思議な組み合わせだが多分自分では想像も付かない領域で噛み合うのだろう。 虚も簪とは親しいつもりだが本当の意味での仲の良さと言えば本音は当然入ってくるだろう。

 

続いて簪が口を開く。

 

「なのはさん。」

「なのはちゃんね、うん良いわ。あの子優しいし。」

 

なのはについては虚は一度程度しか会っていないがそれでも違和感無く首を縦に触れるほどなのはは好印象だった。

 

どこか一年生離れした達観さはそのまま相手への思い遣りに繋がっている。

本音の話では食事を共にする事も多いらしく納得の人選だ。

 

続いて簪がk…

 

 

「許しません‼︎」

 

思わず肩を跳ねさせた。

 

何が何だかわからないが付き合いの長い虚は今のやり取りから簪の相手が楯無のお眼鏡に叶わない事。

 

そして最早名前どころか動作の初手で叫ぶほどこのやり取りを何十回と続けている事を知った。

 

正直そんな無駄な事をしている暇があるならこっちを手伝って欲しい。

 

うんざりする虚ともっとうんざりしている簪のもはや殺意すら帯び始めた目に怯まず楯無はイヤイヤと首を振る。 両手をグーにして肩のところで一緒に振るわす動作は幼児のものであった。

 

「だめ!だめ!だめ!だめ!だーめぇ!」

 

「年考えろよ」をすんでのところで思い留まった虚は再び中断していた書類に目を通し始めた。

 

「だめよ、だめに決まってるじゃ無い。」

 

「何で。」

 

無表情で言う簪に楯無は心底びっくりしたようにオーバーリアクションを取る。

 

「何でって、あなた忘れたの!アイツに泣かされた事を。」

 

会話の内容に動かす手が止まった。

 

泣かされたとは穏やかでは無い。 虚にとっても簪は大切な存在である。 簪へ目線をやりどうゆう事なのかと事の成り行きを見守る。

 

「それはもう済んだよ。 謝ってもらったし。 お姉ちゃんだって一緒に居たでしょ。」

 

ああとようやく虚も納得を得られた。

 

簪の3番目のパートナー候補とは巧のことだ。

 

楯無と簪の同時経由で乾巧との馴れ初めは一通り知っている。 同時に楯無の拒絶反応も分かり呆れた。

まだ許していなかったのか。

 

「私は絶対嫌よ。第一あんな誠意の感じない謝罪があるものですか。簪ちゃんを泣かせた罪はたとえ橋本の袈裟斬りチョップを受けたとて許されないわ!」

 

罰については少し可笑しなところがあるが楯無の気持ちが分からない訳では無い。

 

楯無の妹愛は虚も知っている。 楯無では無く刀奈としての数少ない彼女のプライベートの一つだ。

 

しかし矢張り少々しつこいというのが虚も感じる楯無の執着だ。

そしてついに

 

「お姉ちゃんウザい。」

 

簪から言われたくない台詞Best3を言われた楯無はついに泣き出してしまう。

脇目も振らず本気で泣く学園最強は正直ドン引きだった。

 

白ける簪に楯無はぐちゃぐちゃの顔で簪に迫った。

 

「ぞべだばぜべで(それならせめて)」

 

引きながらも告げられた名前を聞いた簪は眉を顰めた。

 

 

ーー一年一組

「もう一回言ってくれるか。」

 

懇願された言葉の意味が解らずついそう続けたラウラにセシリアは淑女的な笑みを絶やさず述べた。

 

「私とタッグを組んで頂きたいのです。」

 

放課後まだ人が居る教室で呼び止められたため既に耳聡く聞きつけた数人の生徒が騒ぎ始めている。

それを眼帯の方の目で見ながらラウラは2度目の懇願を頭で復唱した。

 

正直に言えば嬉しい。

 

各国から要人を招く今大会はラウラにとっては祖国からの関係者も来るそうそう負けられない闘いだ。

 

ラウラから見ても実力者であるセシリアと組む事は勝率的にも外交的にも有利に運ぶだろう。

 

それに強者であるセシリアが自分を選んでくれたということ自体が嬉しかった。

 

ラウラは暫し仏頂面を悩ませた後セシリアに向いた。

 

「分かった共に闘おう。」

 

 

ーー

差し伸べられた手を握ったセシリアは光栄に笑う。

 

今回ラウラをタッグパートナーに選んだのは単にラウラの強さに惹かれたからだ。

 

先の戦闘では自分に軍配が上がったがそれでもラウラの冷静な機転とレーゲンの性能にセシリアは惚れた。

既に自分1人での訓練では行き着くところまで来たと感じていたセシリアはホークオルフェノク打倒のための実力向上への起爆剤とするためラウラという刺激を求めたのだ。

 

「嬉しいですわ。」

 

こうして最強タッグが誕生した。

 

 

ーー食堂

何時ものメンバーと呼べるくらいの頻度にはなったかと巧は思いながら昼食の冷やし中華を啜る。 正直冷やし中華の効きすぎる酸味は嫌いではあったが今の時期他に食べるものがないため我慢して啜る。

 

「えーヤバイじゃんそれ。」

 

目を丸くして驚く鈴音へ不思議そうに反応を示す。

 

「そんなにヤバイ事でしょうか。」

 

そういえばぐらいの感覚でセシリアが切り出したラウラとのタッグの報告は鈴音にとっては2人の予想以上にヤバイ事らしい。

 

「だってチートじゃないソレ。大体候補生同士が組むのもアレなのにアンタとボーディッヒのタッグなんてチートよ、チーターよ。」

 

そこまで言われると流石に気になるため巧も話に参加する。

 

「そんなに強いのかセシリアとそいつ。」

 

巧はセシリアについても実技の時間にたまに一組合同の時しかセシリアのIS姿を見ていないため、更に周りからその手の話題を振られた事が無いためイマイチピンとこない。

そんな巧に鈴音は珍しく頼んだスパゲティをフォークで弄りながら教えてくれた。

 

「セシリアと言えばBTの申し子ってのが有名ね。」

 

「はい?」

 

「なんでお前まで驚いてんだよ。」

 

首を傾げるセシリアに巧が突っ込む。

 

「本人は知らない系か。まいっか。

 

これまでISは独自の武器ってのをあまり持たなかったのよ。荷電粒子砲以降のISはたしかに強かったけど、それは既存の兵装をIS用に作っただけ。」

 

「長くなりそうか?」

 

冷やし中華がぬるくなりそうなのは勘弁してほしい。

本当に不味い。

 

「聞けっつの。火力では出力だとかパススロットの容量上どうしても勝てないからIS専用装備ってのは長らく課題だったんだ。」

 

「私の龍砲も言わば発展途上みたいなものでティアーズのブルー・ティアーズとレーゲンのAICは現時点での最新装備ね。」

 

冷たい内に何とか食べ終えた巧がようやく鈴音に相槌を打つようになった頃に鈴音の話は終わった。

 

「そのIS専用装備を使う操縦者は並みの候補生より上って言われてんのよ。」

 

「誰からだよ。」

 

「アンタの知らない人よ。」

 

巧の一々のツッコミに反応しつつ鈴音は改めてセシリアの報告を噛み締めた。

 

「そっかー。セシリア先客居たんだ。」

 

「なにか不都合でもありましたの。」

 

セシリアが返すのをすかさず大したことないと言っておいたがその表情は暗く しかしどこか他人事的だった。

鈴音は何故か巧を見る。

 

「セシリアに巧クンの面倒見させようと思ってたんだけどなー。」

 

最後のパスタを口に運びながらそう言った。

 

セシリアがあっとなり巧がむっとなった。

 

「おい待てよ何だよそれ。聞いてねぇぞ。」

 

「こんな感じになるのが容易に想像出来たから言わなかったのよ。」

 

仕方ないでしょと綺麗になった皿にフォークを置いた鈴音が言う。 カチャリという金属音が巧のペースを寸断した。

 

「だってアンタ弱いんだもノ。」

 

反論のしようが無かった。

 

実は巧、IS学園の初実技にて鈴音を殴り飛ばしてからのレベルとは流石に成長したがそれでも一般生徒から比べても目立つ亀走行の成長スピードだったのである。

主に鈴音やたまにセシリアが時間を作って教えてくれているため目も当てられない事態には至っていないもののそれでもとてもでは無いが試合なんぞ出来るものでは無かった。

そこで鈴音は恐らく1年の中でも最優の1人だろうセシリアにそれをフォローしてもらおうと思っていたのだが勿論セシリアはそんな期待など知るよしも無くラウラ・ボーデヴィッヒという最優の1人との最強タッグが誕生してしまったわけだ。

 

セシリアも巧の練度をよく知っているため鈴音からの提案をすぐ理解し頭を痛めた。

 

「どうしよう、セシリアくらいじゃ無いとこの子のマイナス補いきれないわヨ。」

 

「そう、ですわね…出来る限りこのタッグで行きたいんですけれども……」

 

「そっか。しゃーない。私がフォローするしかないか。」

 

何とか今ある選択肢の中から巧を助けようとする2人の姿はさながら親のようだった。

無論年頃の思春期息子がそのやり取りに寛容でいられる筈もなく。

 

「ということよ分かった?」

 

「分かるか!」

 

爆発した。

 

テーブルを叩いて立ち上がった巧に食堂の目が集まる。

それに構わず巧はまくし立てた。

 

「ふざけんな!だれがお前らの助けなんか借りるかよ。男なら1人でやるさ!」

 

「その考え今古いわよ。」

 

「巧くん、今からでもわたくしボーデヴィッヒさんに断って来ましょうか?」

 

本人たちは真っ当に優しさで言っているためそれが実に保護者的で巧を更に苛立たせた。

 

「うっせえよバカ。キンピカバカ。」

 

「金?」

「それ悪口?小学生?」

 

セシリアは首を傾げ鈴音がその暴言の低レベルさに失笑した。 巧は遂に席を立った。

 

「うっせえよツインテバカ。グドンに食われろ。」

 

「海老の味しないわよ。」

 

因みに海老の味がするのは幼年期だけ。

 

冷やし中華の皿を持ち去っていった巧の方向を暫し見た後父兄の2人は互いに手のかかる息子に息を吐いた。

 

 

ーー

肩を怒らせながら昼休みの廊下を進む。

 

ふざけてると思う。

 

大体なんだこの世界は。 とゆうかなんだこの学校は。

 

百歩譲って別世界に居るのは良いとして何故もう一度高校をやり直さなければならない。 第一なぜあのISとやらはろくすっぽ動かないのだ。

起動するならするでもう少し言うことくらい聞いたらどうだ。

これなら動かせない方が恥をかかずに済んだし歳下の少女達に家庭教師紛いの仕打ちを受けることも無かった。

 

巧の脚は職員室へと向かっていた。

 

こうなった原因である千冬をとっちめに行くのだ。

 

歩みを進める度に高まる不機嫌は通りかかった世界中から集められた実力者である教員ですら廊下の端に避難して行く。

 

その中で唯一端へ寄らない人間が居た。

 

巧の眉が寄せられる。

 

「おい、話がある。」

 

 

ーー

明らかに私不機嫌ですという感じの簪が寮内をズンズンと歩いている。

 

普段から人と関わらない簪の近寄りがたさは更にアップしすれ違う生徒たちが見えた方から顔を強張らせ逃げて行く。

 

彼女が怒っている理由は昼に生徒会室で楯無に提案されたタッグパートナー。

 

「なんで織斑一夏となんて…」

 

話にならないと部屋を飛び出そうとするのを抑えつける楯無に「お姉ちゃん嫌い。」というBest1を放って脱出した簪はそのお陰でその日は打ち明ける機会を逃したパートナー候補の1人。 なのはの部屋へと向かっていた。

早足と共に高まるオーラ。 逃げる人。

 

簪は漸く訪れた高級そうなドアをなるべくこの心境を押さえて開いた。

 

「あ、いらっしゃい……なんか怒ってる?」

 

流石に顔を見れば分かったなのはに構わず簪は持って来た申請の書類を取り出し打ち明けた。

 

「なのはさん。タッグを組んでください!」

 

下げた頭を上げるとそこにはどこか困った顔のなのはが居た。

なのはは困った顔で言った。

 

「ごめん簪ちゃん。実はお昼に巧君とタッグ申請しちゃって、」

 

話によればこうだ。

 

偶然担任教師の呼び出しを受け授業終わりに直ぐに職員室へと向かったなのははその帰りに巧と出会った。

見るからに怒っていることを感じたなのはは果たしてタイミングの所為でバッタリとなし崩しに巧の目に付いた。

 

「おい、話がある。」

 

明らかに機嫌のすこぶる悪い表情になのはも緊張しながらも何時もの優しい表情で迎える。

 

「どうしたの?」

 

なのはの笑顔に毒気を抜かれたのか巧は少しだけ大人しくなったかと思うと又すぐになのはに詰め寄った。

身じろぎひとつし強張るなのはへ巧は制服の内ポケットから畳んだ紙切れを取り出す。

 

「あんた、タッグ居るか?」

 

「ん、まだ居ないけど……」

 

「ならコレ。」

 

目の前に折れ線の付いた申告書が入る。

丁寧にペン付きで既に巧の名前は書いてある。

 

「タッグになるの?」

 

巧は無言でなのはを見る。

 

「でも私、正直そんなIS上手く…」

 

巧は無言でなのはを見る。

 

「鈴ちゃんとかセシリアちゃ…」

 

巧は無言でなのはを見る。

 

「分かった分かった書くから!」

 

こうして巧となのはの異世界コンビが誕生した。

 

話を聞いた簪は愕然というほどではないがそれに近い落胆を覚えた。

これで候補のうち2人も居なくなってしまった。

残る本音は兼ねてから自分とのタッグを望んでいたため恐らく隣は開けておいてくれているだろうから大丈夫だとは思うがもしダメなら人付き合いの悪い簪は本当に一夏くらいにしか頼めない。

 

「大丈夫?」

 

心配の目を向けるなのはに気を抜かれたか簪は今日の出来事を話していた。

 

 

ーー

簪から語られた楯無には苦笑物だったがたしかに簪の性格を考えれば一夏とは組みたくないだろう。

 

専用機は完成したことで以前よりはマシになってはいるものの逆恨みとはいえ彼女にとっては存在意義と言っても増長では無い代表候補生の座を長く危うくさせた原因なのだから。

 

しかし、となのはは考え込む。

 

なのはは別段理想主義者では無い。

本当は暴力は嫌だし怒鳴る事もしたくない。 しかしある程度の罰が無ければ人は秩序立てないとは彼女の経験だ。

 

「今回だけは我慢出来ない?」

 

「なのはさん。」

 

思ってもみなかった反応に若干混乱する簪。

 

「ごめんね。でも一夏君とのわだかまりが解けるの今回ぐらいなんじゃないかな?」

 

痛い所を突かれたという感じで黙り込む簪を見てなのはは安心する。

 

(まだ本人も拒絶までは行ってないんだ。)

 

今は嫌いの方が強いが仲良くなれるなら吝かではない程度の事だと判断したなのはは少し強引な手を使うことにした。

 

「お願い。」

 

パンと両手を合わせるなのはに簪が目に見えて困惑する。

 

「一夏君とタッグを組んで下さい。」

 

「う……」

 

…………

 

しばらくしてから

 

「…分かりました」

 

笑顔になるなのはに簪はすかさず釘をさす。

 

「でも彼が既にタッグを組んでいたらそれまでですからね!」

 

 

ーーIS学園 通学路

「タッグ組めないのか⁉︎」

 

一夏が叫ぶ。

相手の一夏より頭一つ分低い男子生徒、シャルルは申し訳なさそうにしている。

 

「ごめん。昨日飲み物を買いに行ったら鳳さんと会って…

 

『アンタ女なんだから一夏と組むの禁止!』って。」

 

「サインしたのか?」

 

「本当にごめん。僕も正直男の子と女の子のペアはどうかなって思っちゃって。」

 

小さく両手でゴメンをするシャルルを見ると一夏もそれ以上は言えない。 結局IS学園までの登校を遅すぎる後悔で脳内を埋め尽くす事になった。

 

一夏の後悔はこの後簪に声をかけられるまで続くこととなる。

 

 

 

ーーおまけーー

 

初めまして皆さん。

 

こうしてお話しするのは初めてですね。 もう一度初めまして。

 

普段はmasterのお側での登場ですから。

 

レイジングハートです。

 

実はクロスオーバー先のキャラでの一人称視点は私が2番目なのです。 主役の乾様に先駆けての物は少し後ろ髪を引かれますが…

 

あっ私髪無いんでした。

 

デバイスジョークです。

 

軽いジョークも済ませたところで何故急に私が本編に登場しているかと言いますとこの度は近況報告へ参った次第です。

 

実は私、このIS学園での生活の中である変化が訪れたのです。

 

masterが以前に乾様の誘いで見せて頂いた乾様の専用の自律行動可能のデバイス。

 

今私は通信機能の無い彼と交信するために私自身の masterへの補助用の余剰魔力を駆使しなんとか互いの音声を拾う程度の空間を作っています。

 

ピロロロ

 

電子音は彼のモノ。

 

言語変換を持たない彼からの返事は全てこの機械的な電子音ですが同じ機械だからか、これも異世界というイレギュラーによって生じたものなのか、マスターの乾様にも解らないソレも私には理解出来ました。

 

『お久しぶりです。』

 

『今日は確認のため通信を寄こしました。』

 

非常に重要な事です。

これからの私たちの指針を決める重要事項です。

 

『私たち………

 

 

 

付き合っているという事でよろしいんですね。』

 

 

ーーピロロローー

 

変わらぬ電子音はたしかに肯定でした。

 

『ありがとうございます。これから宜しくお願いしますバジン君。』

 

バジン君はこちらこそよろしくと言いました。

 

 

 

 

この世界に置いての変化。

 

デバイス史上初の恋です。




それぞれのパートナー!(後悔はしていない)


次回からは一気にツーマンセルです。

※人気投票の開催。詳細は活動報告にて
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