IS:ボンド   作:田中ジョージア州

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ついに来たラウライベント!

その前に改変が入ります。


29話 大!大!大!大!大、大会!

混んでるなぁと更衣室にも届くアリーナの熱気を感じながらISスーツへ着替えたなのはは扉を開け既に着替え終わり外で待っていた巧に迎えられる。

 

「うるさい。」

「ん?あぁ、アリーナの方?よく聴こえるね。」

 

耳はいいんだと言う巧は天井を見上げて本当に五月蝿そうでなのはも自然と頭上を見上げた。

 

学年別トーナメント当日になってなのははまず不安だった。

 

2人ともあまりにレベルが低すぎる。

 

「ねえ、やっぱり作戦くらい立てようよ。」

 

「立てても碌に動かねえだろ、俺たち。」

 

動く事すら未だににままならないのは異世界人だからか、兎に角なのはを持ってしても良い案が浮かばないくらい2人は酷かった。

 

唯練度が劣ってる程度ならなのはも持ち前の力でどうとでも出来たのだがそもそも動けないものはどうしようもない。 なんとか

 

せめて一回戦の相手が良ければ…………

 

当日初めて掲示板にて発表されるトーナメント表を見て、

 

セシリアと名の出た瞬間になのはは終わったと思った。

 

 

ーーアリーナ

 

沸き起こる歓声。

 

声量も人の規模もクラス代表決定時や対抗戦とは比べものにならない。 観客席の上にある普段は関係者以外立ち入れないVIP席が各国からの要人で埋まっている。 大使や軍の高官などがこの大会で目ぼしい生徒に当たりを付けていく。

 

そして今大会で最も声援と興味を与えられているペアは例年とは異例の一学年。

 

現在の最新機であるブルー・ティアーズとシュヴァルツェア・レーゲンに声援と観察の目が注がれる。

 

その中をラウラは憮然としセシリアは笑みを湛えて進む。

 

既に観客や来賓の間でも彼女たちの事はもっぱら最強タッグの認識だ。

 

「私たちはさながら最弱タッグかな?」

 

「言っとくが俺はお前よりは強いからな。」

「分かった分かった。」

 

一応模擬戦の結果では巧の方が上だ。 しかし実際にはお互い戦略もテクニックも有ったもんではない滅茶苦茶なもので偶然巧のシールドエネルギーがなのはより指先二本程度多かっただけだ。 セシリアどころか数ヶ月前の新入生でも自分たちを倒すのはそう難易度は高くないだろうとなのはは思いため息を吐いた。

 

管理局ミッドではエースオブエースなんて柄じゃ無いと謙遜していたがここに来てからあのチヤホヤも少し良かったかもとちょっと思ったなのはは試合の合図を聞いた。

 

 

ーー更衣室

選手たちの為に貸し切られたアリーナ内にある更衣室で巧はISスーツから制服へと着替えていた。

肌に密着していた鬱陶しい感触から解放されたというのに巧の心境は優れない。

暑いのでワイシャツだけ着て上着を肩にかける。 早く夏服になって欲しい。

 

腕まくりをしても抜けていかない不快感にしたくなる舌打ちを一応残った気遣いが防いだ。

 

「あっというまだったねぇ。」

 

舌打ちが響く。

 

「そんなに怒らないでよ。今回は仕方なかったんだって。」

 

棚を数個挟んで向かいのなのはの見えない苦笑いが直接脳内に浮かんできて余計に苛立ちが募る。

 

「でも良かったよね。2人とも優しくて。」

 

試合開始とともにセシリアは巧、ラウラはなのはに襲いかかった。

 

本来なら未だ生徒には知らないものもいるだろう手の内である第三世代兵器を惜しみなく初心者同然の2人に使い瞬殺の文字通りの展開はその分身体に負担がかかったがそれのお陰で観客には2人の強さが際立ち、結果的に巧たちの恥は最低限になったと言えるだろう。

『色々考えましたが私が出来るのはここまでです。少し我慢してくださいまし。』

 

猛スピードで接近して来るセシリアに鳴る警告アラームと迎撃しようと何とか巡らせるがそれらが全て空回り軋むリヴァイブのフレームの音に混じりプライベートチャネルで聞こえる透き通った声。

 

巧はなにも出来なかった。

 

巧より手間の掛かる着脱に苦労しながらなのはがブラウスを羽織ったまま棚先から聴こえなくなった音に瞳を上げた。

 

「強くなれるよ。一歩一歩。」

 

巧を気遣うなのは。

 

「そうじゃねえよ。」

 

「え?」

 

閉じようとしたボタンを止めるなのは。

 

巧は手も足も出なかった事が悔しかったのでは無い。

 

なにも出来なかった事が悔しかったのだ。

 

「あいつが優しい声で何もするなって言ってきて俺はそれに従っちまった。怖気付いたのが嫌なんだ。」

 

今思い返しても腹が立つ。

 

「俺は周りから嘲笑われようと無様に戦ってやろうと思ってたんだ。そのためにこの3週間練習した。」

 

「強くなったんだよ。ほんとに僅かだけだけど俺は強くなったんだ。」

 

見返してやろうという一心でなのは以外がアリーナへ居る時は練習をせず時間を選んで鍛えた腕は正直期待に届くものでは無かったがそれでも上達していたしそれを知る者はいなかった。

 

一回戦は笑われるものでも巧にとってはこれまでの成果を見せるべきところだったのである。

 

「特に鈴音とあいつには見せないといけなかったのに…俺はなにもしなかった。」

 

「巧君」

 

なのははそれ以外声をかけられなかった。

 

「ごめん…」

 

巧があの一戦にかける想いはなのはの考える事以上だった。 彼女は人目を忍んで練習をする巧に何度も他人からの助力を願い出ようと提案した。

それは今も間違っているとは思わない。

人が一人で成し遂げられる事は少ないのだ。

 

恥を忍んで手に入る強さは無い

 

頑なに首を横に振る巧に叱責のつもりでなのはは言った。

 

それでも巧は首を振った。

 

全ては一回戦で彼女たちに見せる。ただそれだけの為に。

 

今でも巧の気持ちが全て理解出来る訳じゃ無い。 それでも巧があの終わりに抱いた悔しさは自分の想像も出来ない物だったはずだ。

 

それを解った今、自分の励ましがとても低俗なものに感じた。

 

制服に着替え終わったなのはが棚を覗き声をかけ更衣室を出た後も沈黙は続いた。

 

 

ーー

セシリアが控え室に戻ろうと通路を歩いているとISスーツを纏った鈴音がシャルルを連れて向こうからやって来た。 手を挙げる鈴音に軽く会釈を返す。

 

鈴音はやって来るなりセシリアの腹を揶揄うように拳を作りポンと叩いた。

 

「容赦ないわね。レコード確定の速さよ。」

 

鈴音の揶揄いにセシリアは少し目を伏せる。 不思議に思った鈴音が理由を聞いたところ矢張りというか巧関連のことだった。

 

「終わった後一瞬見ただけですがとても悔しそうでした。」

 

「そう?モニターじゃいつも通りに見えたけど。」

 

控え室のモニターで様子を見ていた鈴音には巧の変化は気づかなかった。

セシリアはそれが心に引っかかっているようだった。

 

「仕方ないじゃん。実力差あり過ぎんだから。」

 

「アンタは間違ってないよ。」

 

鈴音は今度は肩を叩きながら笑う。

 

「行くわよシャルロ……ル。」

 

若干どもりながらシャルルと共に会場へ向かう。 次の試合は彼女たちらしいということはトーナメント表で知った。

 

「頑張って下さいまし。」

 

セシリアの激励を鈴音は手を振り上げシャルルは振り返って一礼で返した。

セシリアは二回戦まで控え室で待つことにした。

 

 

ーーアリーナ外

大会の取り決めでは一応選手たちは試合に負けても閉会セレモニーまでは控え室にて待機が望ましいという風にされているが流石にそれでは多くの生徒が手持ち無沙汰になる為そのことは有名無実化している。

 

客席にて続きを観戦する生徒もいれば律儀に控え室にて待機している生徒もいる。

巧はあんな負け方の後なので客席やほかの生徒もいる控え室にも行かず人が滅多に居ないアリーナの外でぼんやりと雲を眺めて居た。

 

「……」

 

草むらに寝転がり空を見上げる巧を近くのベンチで眺めるなのははあれから一度も会話をしていない。

 

男友達がいないわけでは無い。

 

ユーノやクロノは今や仕事での付き合いの方が多くなったが彼らが友人であることは違いないしこうして悩んでいたら躊躇わずに声をかけただろう。

 

しかし巧は猫だ。

 

気まぐれな時にしか慰めは通用しない。

 

多分今彼に慰めをかければ100パーセント怒る。 そもそも機嫌は直っているのかもしれない。

 

なのはは取り敢えずベンチに腰を下ろし同じように雲を見上げた。

 

「なのはさん。」

 

本物の猫が背後からやって来た。

 

「リニスさん……あれ?耳。」

 

なのはの驚く声に巧も雲から目線を外す。

 

リニスは使い魔時代の名残で猫の耳と尻尾を頭から生やすことができる。 ネコ科の能力をその身に宿すことが出来るが普段は勿論生やしていないし生やすとしても帽子を被り隠している。

そうすると若干の感度不足になるがリニスの耳はそれを苦にしない。

それが無いという事はそれだけ一切の油断も有ってはならない事だ。

 

しかし巧の目に入ったのは耳より左手。

 

巧もよく見慣れた。部屋に置いて来たアタッシュケースをリニスは持っていた。

 

異常性を奥の巧も気付き始めたところでリニスは有無も言わさず告げた。

 

「襲撃です。」

 

2人は即座に立ち上がり先行して走るリニスのあとを追った。 全速で走るが猫耳モードのリニスは速く途中何度も置いて行かれそうになる。

 

なのはは魔力強化で自身の運動能力を強化し魔法を使えない巧に声をかけた。 いざとなれば担ぐつもりだった。

しかし巧はそのスピードに苦労しながらもついて来ておりなのはは驚きながらも巧からの遠慮を受け前のリニスに専念した。

 

巧はバレないようにオルフェノクの力を使って脚力を上げ追い縋っていた。

 

やがてリニスは学園の敷地の端。 入口の門まで辿り着きそこを通った。

勿論生徒が無断で学園から出る事は許されない。

しかし続いて門を通った時に見た管理人室は無人でありそれではカメラはどうかと門に備え付けで内と外を見張る二つの監視カメラに目を向けると漸く止まったリニスが息を切らさず言う。

 

「大丈夫です。非公式ですがここと話は通しています。」

 

以前IS学園の秘密の部屋で楯無と会っていたリニスの言葉通り学園の監視カメラは起動中にはカメラの下のライトが緑の点滅で知らせる作りになっているのだがそれが二つとも切れていた。

 

「恩は売っておくものですね。」

 

リニスは小さく呟いた。

 

遅れて来た2人はリニスと違い肩を上下させていたがリニスはその程度の余裕すら惜しいらしくやや早口で2人を呼んだ。

 

「篠ノ之博士からプレシア経由で報せが届きました。日本国と学園を繋ぐモノレール駅近く数百メートル四方を敵の物と思われる結界が侵食。篠ノ之博士とプレシアが中の敵と交戦中です。」

 

色々と聞きなれないワードながら巧はそれが魔法だと分かった。

なのはが目を丸くして言う。

 

「え、なんで束さんが中にいるんですか?」

 

「つか急展開過ぎて訳わかんねえよ。最初から説明しろ。」

 

「さあ、私がプレシアから念話で聞かされた情報はそれだけです。敵の戦力はガジェットドローン数十機。内三機はⅢ型。オルフェノク一体。リーダー格はIS。専用機です。」

 

リニスは本当に何も知らないらしく移動手段であるモノレールが来るまで断片的な情報以外は出てこなかった。

 

「駅側にも話は通ってます。ただしあくまで学園から学外活動として外出許可を出されているとしか伝わっていませんのでそうゆう風に。」

リニスは懐からキャップ型の帽子を取り出し耳を隠した。

 

リニスの話通りすれ違うモノレール駅の従業員たちは普段とまるで変わらず3人はそういう風に繕いながら車両に乗り込んだ。

揺られる車内でリニスは周りを気遣って説明をした。

 

「結界が張られた事から魔導師の存在が居るはずですがどうやら結界の外らしくプレシアでは確認出来ません。 そして私たちも今回は2人の救出が目的ですからそのまま結界内に突入します。」

 

3人は対面式の座席に固まって話している。

巧はこの事には門外漢なのでリニスの作戦確認に参加しているのは専らなのはだ。

 

「結界の種類は。」

 

「ミッドチルダ式の封時結界です。強度は然程では無さそうですが都市部での発動なので壊すのは殲滅後にします。」

 

「今更ですけど入れますか?」

 

「恐らく。巧君は微妙ですがいけるでしょう。」

 

簡潔に質問と返答が続き1分もしない内になのはは情報をあらかた聴き終わった。 続けて巧もリニスに声をかける。

 

「オルフェノクはどんな奴だ。」

 

「博士の話では『シャコ』と同一のものだと。」

 

10年前の白騎士事件の発端となったスカリエッティとの邂逅。

篠ノ之束が人生初めて目撃したシャコ型のオルフェノクがそこに居るという。

 

巧はリニスとなのはとは違う観点からシャコを思った。

 

「長生きなんだな」

 

車両は後5分程で日本の駅に到着するだろう。 巧は最後にリーダー格らしい専用機を訪ねた。

 

「ISの奴は。」

 

「黄金の機体で顔はバイザーで覆われています。攻撃手段は尾。開閉式で三つに分かれます。射撃武装は火球。

既にゴーレムを二機落としています。」

 

丁度モノレールも減速をし始めリニスは手に持つアタッシュケースを巧に手渡し自身も腰を浮かせ臨戦態勢に入る。

 

「リニスさん。」

 

なのはの呼びかけを帽子の下の耳で拾うリニスは言葉だけで反応する。

なのはは横目も向かないリニスの瞳をじっと見ながら言った。

 

「アリシアちゃんは?」

 

リニスが目だけを向ける。

 

責めずにしかしもしそういう返答を返せば直ぐさまソレに変わりそうな瞳だった。

リニスは再び結界の方向を見ながら

 

「プレシアからの念話で直ぐ飛んで来ました。生憎ペアでは無かったのでアリシアはこの事は知りません。一応サーチャーを一つ飛ばしています。」

 

車両が駅に到着した。

 

 

ーー日本 モノレール駅

急いでしかし不審がられないように駅内を歩き、出たなのはとリニスは思わず立ち止まった。

 

「まん前ですね…」

「ええ。」

 

なのはは率直な意見を出しつつも即座に自分でも結界の分析を行った。 リニスの言う通りユーノも使う結界だ。

 

ただしそういう仕様なのか中の様子は一切伺えない。

 

それと同時に周りのビルを見回すがこちらはまるで引っかからない。

道行く人はなのは達にはどんどん結界の中へ消えて行くように見えるが実際には予め登録されていない彼らは結界を知覚することは出来ない。

ただ日常を歩き回るだけだ。

 

そして今彼女たちの不安要素は自分たちの隣の者が通行人達と同じく日常を生きる者かどうかだが。

 

「……」

 

黙ったままの巧。

 

視線は結界の方なのだがなのはは不安を覚える。

リニスが巧へと確認する。

 

「巧君、見えますか。」

 

「ああ。」

 

どうやら巧は術者により無事登録されているらしい。

 

安心しましたとリニスが言い、帽子に手をかけた。

 

「入った瞬間何が飛び出すか分かりません。一応私が防壁を作動させますが2人とも展開の準備をして下さい。」

 

リニスが瞬時に発動できるように詠唱を重ねる。

なのはも頷きレイジングハートと念話でやり取りを取り巧は地面にアタッシュケースを置いてから開きベルトを取り出す。

そしてベルトを腰につけケースを閉じ持った。

 

「プレシアと連絡が取れました。5秒後に突入します。歩いて下さい。」

 

リニスが先導し2人も歩を進める。

 

「5、4…」

 

なのはが懐からレイジングハートを取り出す。

 

「3、2…」

 

巧がファイズフォンにコードを入力する。

 

「……1、プロテクション!」

 

結界を抜けると同時にリニスが張った防御魔法が早速効果を発揮する。

 

事前に察知していたのか抜けると同時に複数のドローン達の放つ爆撃が彼女たちを襲った。

 

しかしそれらは全てリニスの優秀な防壁により防がれる。

 

「今のうちに!」

 

リニスの指示を待たずになのはと巧は双方の腕を天に掲げていた。

 

 

 

「セットアップ‼︎」

「変身‼︎」

 

桃色と深紅の光が結界内を巡った。

 

 

ーー結界内

 

突如訪れた謎の光量に事前に報せを受けていた筈のスコールはそれでも目を覆った。

襲いかかってくる無人機ゴーレムを相手取りながらもそのまばゆい光に気をとられる。

ニヤリと笑った。

 

「お嬢ちゃんと坊やの相手は頼みましたわ、博士。社長。」

 

ここには居ない異世界からの来訪者へ笑みをこぼしたスコールは続くゴーレムの大出力のビームを肩の二本の鞭で打ち消した。

 

そしてスコールの言葉に従うかのように其々の勢力に属する構成員達が光へと殺到した。

 

ガジェットドローンⅢ型が金属の節が連なる軟体動物のようなベルト状の脚を叩きつける。

軋む防壁にリニスの顔が歪む。

それでも強固を魅せる防壁越しにリニスの強化された視力が大型のⅢ型の間を縫って拳を振り上げる灰色の体色を捉えた。

 

歯をくいしばり更なる強化を与えられたリニスの防壁へマンティスシュリンプオルフェノクはグラブ状の拳を叩きつけた。

 

防壁は一瞬の拮抗を成しその後は粉々に砕けた。

 

「っ…」

 

フィードバックで怯むリニスに勢いそのままに突っ込んで来たマンティスシュリンプオルフェノクはそのまま殴り抜く。

 

コンマ数秒でⅢ型が脚とガジェットドローン特有のケーブル状の刺突武器を向かわせる。

 

ネコ科特有の反射神経を持ってしても避けきれない。

瞬時の判断で体の前で合わせた両手に魔力を集中させ即席の防御魔法を完成させる。

 

グラブがリニスの細腕に触れ、

 

鮮紅をなびかせファイズの拳がマンティスシュリンプオルフェノクの土手っ腹を撃ち抜いた。

 

呆気に取られるリニスへⅢ型の触腕が叩きつけられ、

 

詠唱も魔力チャージも無しに放たれた魔力の濁流がⅢ型の硬い装甲を蒸発させた。

 

「大丈夫ですか?」

 

真っ直ぐリニスの目を見て安否を確認するなのは。 その目は同時にこの一帯の情報を感じ取っていた。

 

「ええ、平気です。」

 

カシャリと音がする。

 

ふと前を見れば転がったマンティスシュリンプオルフェノクを手首をだらけさせながら巧が見ている。

 

こちらはリニスなど気にしていない。

巧は一度だけこちらを向いた。

複眼の向こうのしかめっ面が拝めそうだった。

 

「いつまでもたついてんだよ。数多いんだからサッサと玉でもビームでも出せ。」

 

「巧君、そんな言い方ないよ。」

 

なのはの非難にも背を向け気にしない。 なのははもうっと口にしリニスの手を握り引っ張り上げる。

 

「援護射撃をお願いします!」

 

そしてなのはも空に浮かぶ残りのガジェットドローンを撃ち落としに飛び上がった。

スッカリペースを流されたリニスは後ろからポンと肩を叩かれるほど接近していたプレシアに気づかなかった。

驚き振り向いてもまだ見える困惑にプレシアは笑う。

 

「言葉使いは違うけど言ってることは一緒ね。」

 

苦笑いをするバリアジャケット姿のプレシアにリニスも釣られて笑う。

 

「案外似てるところがあるんですかね?

 

 

 

 

どうでも良いんですがその格好どうにかなりません?」

 

かなり扇情的な布地の切り取り方をしているプレシアの服に冷たい目を向けるリニス。

 

勿論そんな隙を敵が逃すわけも無くⅡ型が高速低空飛行でリニスを背後から狙い。

 

紫の雷撃が一撃でⅡ型の回路を焼き捨てた。

 

「あ、そうだわ。貴方は見てなかったわよね?この服どう?あの頃より若くなったから似合うかしら。」

 

キャッと両手で赤い顔を覆うプレシア。

 

勿論そんな隙を敵が逃すわけも無くⅠ型が10機がかりで全ミサイルを発射する。 広がるその数は軽く先の数十倍にも及ぼう。 無数のミサイルがプレシアの身体を塵も残さず焼き尽くそうとし。

 

5個の誘導弾がⅠ型纏めて貫いた。

 

「ちょっと待ってください。え、なんですか、それじゃ前の世界で?私が消えた後?それ着てたんですか?40過ぎが?」

 

プレシアが照れたように首を縦に振り、それにリニスが悶えた。

 

「いや、でもあの時だってフェイトも管理局も誰も突っ込まなかったしぃ〜。」

 

「語尾を伸ばさないでくださいおばさん。」

 

おばさん呼びにプレシアがショックを受けるがリニスは構わず頭を抱えた。

 

「かーっ…マジかー。大丈夫かしらフェイト。傷にならなかったかしら。」

 

「酷いわリニス⁉︎そんな、そんな言わなくてもいいじゃない!ヨヨヨ……」

 

「本当にゆう人初めて見ましたよ。」

 

勿論そんな隙を敵が逃すわけも無く最後のⅢ型が武装の全てを解放し。

 

 

「「邪魔。」」

 

 

雷に回路の全てを焼かれ無数の魔力弾が装甲に風穴を開けた。

 

 

ーー

既に4機用意していたゴーレムは残り1機になった。

 

スコールの操る第三世代機ゴールデン・ドーンは操縦者の実力も相成り先んじてゴーレム2機を片付けた通り。 強力な力を持っていた。

既にマンティスシュリンプオルフェノクにより1機を失った束を守るように最期のゴーレムが襲い来るガジェットドローン達の攻撃をその身で防いでおりその機体からは所々火花が走る。

 

我が子と呼ぶべきゴーレムが無残に壊されていく中束の視線は戦闘が始まってからずっとマンティスシュリンプオルフェノクへと向けられていた。

 

今の状況など気にする価値すらないというような束を面白くないのはスコールだ。

スカリエッティほど自己顕示欲は激しくないが彼女にも捨てられれば気に触るほどのプライドはある。

無視を決め込む束にわざわざ聞こえるように地上へ降りて笑った。

 

「いかがですか篠ノ之博士。今の我々の戦力は?あの時我が組織への技術提供に首を振らなかった悔いはありますか?」

 

かつての姿を思い起こしてスコールは笑った。

 

「うるさい。」

 

感情を宿さない束の台詞がスコールに向けられた。

 

「誰だお前。私はお前なんか記憶に無い。私の記憶に無いお前が私に話しかけるな。」

 

束はゴーレムにすら関心は無いようだった。

手を伸ばせば容易く命を奪える距離のスコールを、彼女に確かに感じる殺意の気配を感じ取っても尚束はスコールなど眼中に無い。

 

束のその態度にスコールは暫しだけ無言に見つめそして肩に備わる光の鞭『プロミネンス』の片割れを束に襲わせる。

 

ゴーレムの装甲を削り取る鞭が生身の束に振るわれる。

 

「ショートバスター!!」

 

なのは最速の砲撃魔法がそれを弾いた。

間一髪束を救ったなのはが次はスコールに向け同じくショートバスターを放つ。

 

「ハイパーセンサーが反応しない攻撃ってのも中々厄介だわ。」

 

それに対しスコールはプロミネンスを高速回転させた即席のシールドで防ぐ。

質量を持ったエネルギー鞭がショートバスターを削るように凌ぐ。

そして空へと離脱したスコールをなのはの誘導弾が追いなのは自身も群がるガジェットドローンを撃ち落としながら束の横へと着地した。

 

「束さん!無事ですか。」

 

なのはの心配に初めて束が煩わしさ以外で横を向いた。

 

「遅いよ〜なのはちゃん。ねえ聞いて!聞いて!ここ凄いんだよ!魔法ってほんと凄いんだね。ねえ、なのはちゃんはこうゆうの出来ないの?」

 

緊張感なくまくし立てる束に流石に圧倒されながらも五体満足の姿に安心して再びレイジングハートを掲げた。

 

「ここは私がなんとかします。束さんはプレシアさんたちの所へ。」

 

「え〜、束さんも戦えるよ〜?あの豆粒みたいなのなら素手でも、よっ、はっ。」

 

そう言いやけに堂に入ったシャドーをする束になのはは強く首を振り言った。

 

「駄目です。もし束さんが怪我をしたら箒ちゃんが悲しみます。」

 

「むっ……」

 

そう言われればどうしようもない。

束は渋々ゴーレムを引き連れプレシアたちの元へ走った。

それを確認したなのははアクセルフィンを展開させスコールの高度まで上昇した。

 

妖艶に笑うスコールになのはが言う。

 

「あなたがジェイル・スカリエッティの手の者かは知りません。ですからそれはここでは聞きません。」

 

「あらそうなの?」

 

艶っぽい声色でバイザーの奥のスコールが首を傾ける。

 

「武装を解除し投降して下さい。悪いようにはしません。」

 

 

「ああ言ってるぜ。どうすんだよ。」

 

ファイズとして強化された聴力で聞き取った巧が同じくオルフェノクの聴力で聞き取っただろう未だ倒れ臥すマンティスシュリンプオルフェノクに尋ねる。

 

「そうさなあ。」

 

10年生きた割には軽い、若い声だった。

 

マンティスシュリンプオルフェノクは殴られたダメージなど感じていないかのように立ち上がった。

首を2、3回し音を出す。

巧とは違った形で気怠げなシャコ怪人は一度なのはを見てからグラブ状の腕を腰に当てた。

 

「俺としては見逃してもいいんだけどな?」

 

オルフェノクは言葉を話す時は影が人間だった頃の姿に変わる。

しかしこのオルフェノクの影は異形の形のままだ。

巧は違和感を感じた。

 

「ウチが〜……まあ俺にも分かりにくいくらいややこしくなってるから上手いこと説明は出来ないんだけどな?」

 

「とにかく無理だな。」

 

マンティスシュリンプオルフェノクの飄々とした言葉に巧はそうかと返した。

 

カシャリと手首を鳴らした巧。

 

それが戦闘の意思だとマンティスシュリンプオルフェノクは感じ取った。

 

次の瞬間コンクリートで舗装された道路が陥没するほどの踏み込みで前へと加速したファイズはすぐ様トップスピードとなり胸元へ拳を叩きつけた。

野球の投球フォームのような振り回した拳はなぜか洗練された達人のような見事さで防ごうと前に出された腕をすり抜け分厚い胸板に、凡そ肉を叩いたものとは思えない音を結界中に響かせた。

 

 

ーー

「あ、ちょっと巧く…」

 

急に戦いを始めた巧になのはが慌てて声をかけようとして、

 

「あらあら。時空管理局の魔導師さんは投降を勧めておいて自分達は攻撃するのかしら。怖いわねぇ。」

 

スコールの色気のある喋りになのはは言い返せなかった。

 

仕方ないとなのはは頭を切り替えてスコールへとレイジングハートを向けた。

 

「すいません!約束破ります。実力行使します!」

 

「どうぞ。」

 

なのはの言葉を合図にスコールは近接武器のプロミネンスを二本なのはに払う。

なのはは間髪入れずにショートバスターを放ち真っ向からプロミネンスを押し返した。 蓄積されたエネルギーが暴発の形で外へ逃げる。

爆発の煙が間に広がり視界を塞ぐ。

 

「魔法使いさんはこういう時どうするのかしら。」

 

ハイパーセンサーのサーモ機能の恩恵を受けるスコールはその割には大雑把な範囲攻撃でなのはを迎え撃った。

 

ゴールデン・ドーンを中心に熱気が立ち上る。

上昇した熱はそのままエネルギー粒子となり『ソリッド・フレア』という火の粉として爆発。

煙を吹き飛ばし新たな粉塵を生みだす。

 

 

ーー

かつて数多のオルフェノク達の外骨格を砕き内臓に衝撃を与えてきた2.5tの威力を誇るファイズの先制パンチはマンティスシュリンプオルフェノクの巨体を数メートル吹き飛ばした。

開幕宜しく大きく吹っ飛んだシャコ怪人はしかし今度は空中で一回転翻し着地。

今度こそダメージを感じさせないもうダッシュでファイズへ突っ込んだ。

 

ボクシングを連想する形状の拳をイメージそのままファイズへ振るう。

 

予想通りだろう威力のソレをファイズは嫌う。

 

痛そうなモノをわざわざ食らう程巧は優しくない。

腕ではたき落とし、時には足癖の悪さで突撃を止め迎撃する。

それでも怯まず寧ろファイズを押していく勢いで拳を振るうマンティスシュリンプオルフェノクに巧はかつての上級オルフェノク達を連想した。

 

そして度重なる連撃の一つがフルメタルラングに触れ、ファイズの上体が大きく揺らぐ。

舌打ち一つしファイズはベルトからファイズフォンを取り外しコードを入力する。

 

《Burst mode》

 

バーストモードとなったファイズフォンから弾丸状にされたフォトンブラッドがマンティスシュリンプオルフェノクにたたらを踏ませる。

離れた距離を後ろ跳びで更に開けたファイズは被弾した装甲を見やる。

 

ダイヤモンドに匹敵する硬度を誇るフルメタルラングが大きく凹んでいた。

 

舌打ちをもう一度した巧にマンティスシュリンプオルフェノクが再び突進して来た。

 

 

ーー

ハイパーセンサーにかからない魔法という謎のエネルギー攻撃をスコールが回避出来たのは永きをかけて身につけたひとえのカンだ。

 

プロミネンスと引き分けたショートバスターを遥かに超える太い砲撃は鞭のシールドではとても相殺仕切れない。

ジェットを吹かせて回避したスコールを黒煙を飛び出したアクセルシューターが追う。

しかし砲撃魔法ならともかく誘導弾ならなのはの余剰魔力より炎の質量の方が上回る。

プロミネンスをしならせシューター群を打ち消したスコールは漸く晴れた黒煙の先の無傷のなのはにスカリエッティ経由で聞いた与太話風の情報に頷いた。

 

曰くその歳若い女はまるで要塞のようなタフさを持ち、その砲撃は並び立つ者は居ないのだという。

 

 

 

異世界の舞台。

 

1人はかつての強者達を思い起こしながら新顔を相手取り、もう1人はこの世界の最強を前に佇む。




たっくんも言ってましたが急展開に混乱なさった方はすいません。

どこかで絡ませようかとタイミングを探っててこんな形となりました。
急ぎ足で書いたせいで設定とか変になってたらすいません。

何気に着替えを共にするというワンサマーなら無意識にラッキースケベに発展させる内容をナチュラルにシリアスで締めたたっくん。

流石は平成ライダーを代表する敏樹ライダーww

※人気投票の開催。詳細は活動報告にて
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