IS:ボンド   作:田中ジョージア州

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前回の続きですがスムーズに進めるために少し前回との整合性が合わないかもしれません。

ラストは皆さん、頭の中で各々好きな処刑用BGMを流してください。


30話 決着?

結界内の戦闘は既に激化となっていた。

 

なのは、ファイズ、リニスといった強者3人が片方に加わっても未だ拮抗が崩れないのはそれ程スコールやオルフェノクといった戦力が大きかった故だろう。

更に純粋な戦力としては烏合の集とはいえガジェットドローンのAMFも凶悪だ。

 

こちらの戦力の半分は魔導師だ。

なのはとリニスは突入前に事前に対策を済ませているとはいえそれでも重複する足枷はリミッターといった制約を加味すれば最大の魔力量を誇るだろうプレシアですらその餌食としていた。

 

特に強いスコールやオルフェノクがAMFの影響を受けずに行動出来る今本当の意味でまともに動けるのは巧とゴーレムだけだった。

 

そのゴーレムも既に判停止状態で襲い来るガジェットドローンに束は素手で対応している。

それで本当に倒せている辺り凄いのだがそれも巣穴から湧き出るアリのような膨大さには焼け石に水だった。

リニスが自身の魔力色でもある黄色の誘導弾と断続的に放たれるプレシアの特色である雷がそれらを落とす。

 

それらも魔力消費を抑えるために本来よりもパワーダウンしている。

 

相手がⅠ型が殆どなガジェットドローンのため彼女たちは問題無いだろうがスコールを相手取るなのはは一見有利に事を運んでいる風に見えるが焦っているのは寧ろなのはの方であった。

スコールもAMFの効果は聞き及んでいる。 火力に勝るなのはとわざわざ正面切っての戦いはしない。

 

ファイズはAMFの効果を気にせずに攻撃が出来る。

 

しかしそれはマンティスシュリンプオルフェノクも同じ。

かつての幹部級オルフェノクと同等の実力に攻めあぐねていた。

 

 

かといってスコールたちも余裕がある訳ではない。

 

ガジェットドローンたちは膨大だがそれでもリニスとプレシアならばじきに全ての機体を落とすだろう。

そうでなくとも数が減るほどAMFの効力は弱まりそれはそのままこちらの戦力の低下に他ならない。

3人のエース、ストライカークラスの魔導師を相手にするのはスコールも御免だ。

 

なのはの魔力切れを狙っているスコールだが実のところ切羽詰まっているのは彼女たちでもあった。

 

そういう膠着状態の中少しづつだが拮抗が崩れ始めていた。

 

 

ーーアリーナ

歓声止まぬアリーナ。

その中心にいるセシリアとラウラは未だ優勝候補筆頭だった。

最新の第三世代の機体に優秀な操縦者。

一回戦から破竹の勢いで持って勝利を重ねる両名の余りの強さに場内はそれまでマンネリと化していた。

 

まるでネズミ対ライオン。

 

窮鼠猫を噛むもあり得ない常勝パターンに観客はイマイチ沸けずにいた。

それが今になってぶり返したように上がる歓声の理由は彼女らの対戦相手が同じく実力者タッグだからだ。

 

セシリアとラウラを除けば現在1年生ではトップであろうパートナー。

 

鳳鈴音、シャルル・デュノアペアに会場からの期待の声援が送られた。

 

果たして会場全体の熱気を一身に受ける4人は実に日常的であった。

 

 

「ねえセシリア、そっち巧クン知らない?」

 

「あら、同じことを聞こうとしていたところでしてよ。」

 

「ああ、というか高町さんに聞けばいいんじゃないか?」

 

「それがなのはさんも居なくって……」

 

 

プライベートチャネルで通じる彼女らだけの会話はギャップ激しく身内話である。

そして二、三ゆる〜い情報交換を終えた4人はようやくそれらしい顔つきになった。

 

「取り敢えず負けた方がダッシュで探しに行くってことでどう?」

 

「その口調だと勝つつもりか。面白い。」

 

「ボクらだってそれなりに強いつもりだからね。」

 

勝気な鈴音にラウラが笑いシャルルの温和な顔に隠れた確かな闘気にセシリアが無言で返した。

そして開始を知らせるブザーが歓声を掻き分け鳴り響く。

 

同時に飛び出した鈴音の龍砲がその射角の無さを活かしセシリアとラウラを同時に攻撃する。

見えない弾丸はラウラにはAICにより無意味に散りセシリアには見えない筈の弾をスターライトmkⅢの射撃に芯を抜かれ四散した。

初撃を完封されたことに少しの動揺も見せずに鈴音は飛び上がり空かさずブルー・ティアーズとワイヤーブレードがそれを追従する。

 

シャルルは鈴音とは正反対に陸上を滑るように移動し展開したマシンガンを2人に浴びせる。 鈴音追尾に集中するためかラウラはレーゲンの装甲を盾にセシリアを庇う。 シャルルはやはりとなった。

 

(オルコットさんがいるから意外だったけどこの2人連携に関してはそこまで強くない。)

 

一回戦からずっと観察していて気づいた事だった。

セシリアとラウラという1学年だけでなく学園全体を見てもトップに食い込むだろう強力タッグは少し行き当たりバッタリの戦法を取っていた。

示し合わせた訳ではなく事前に得ていた互いの機体の情報を元にその時その時の事態に各々が別々の考えで行動している。という風に見たシャルルはなんとかその隙を突けば各個撃破的に打倒する事も可能と考えた。

 

しかしそれは容易ではない。

 

今のように奥に隠れたシャルルでは無く鈴音を2人がかりで攻撃した感じから攻撃の仕方によってはある程度誘導出来ることへの希望も湧いてきたが強いのは変わりない。

 

それに今でこそ2人とも互いの自由行動を黙認してはいるがそれでもお互い周りの状況は確認している。

それこそ各個撃破など容易く許してはくれない。

 

それでも2人はそれにかける。

 

とにかく隙が産まれない今は鈴音が出来るだけ大きく動き2人の注意を引きその間にシャルルがネチネチと言いかたは悪いが少しずつでも削っていくしか無い。

 

間違ってもこちらが各個撃破されることなどないよう位置取りに気を払いながら鈴音は空を飛びシャルルは地を走る。

 

 

ーー結界内

決壊は一機の墜落で訪れた。

 

それまでの膠着が嘘のようにAMFの煩わしさを脱した事を魔導師としての共通認識で念話も無しに確信した3人はだからこそ誰よりも速く動き突破口を作ったのだろう。

先ずプレシアが束とついでにゴーレムも包む防壁を張りガジェットドローン達の砲撃からシャットアウト。

それに空かさず弟子に追随する速度でリニスが跳び出した。

 

前世の力を有意義に使いこなし弾丸の雨あられを潜り抜けた彼女は敵戦力で最も厄介であるスコールが反応する前にゴールデン・ドーンへバインドをかけた。

 

「っ」

 

もちろん出力を全開にさせもがくスコールを抑えつけながらリニスはなのはへ叫んだ。

 

「ここは任せて。」

 

それで全てを理解したなのははアクセルフィンを駆使し急転換。

地上へダッシュしたなのはは地上で格闘戦を展開するファイズへ声をかけた。

 

「とんで!」

 

思考しないファイズはマンティスシュリンプオルフェノクの数瞬速く大地を蹴った。

障害物の無くなりよりハッキリと相手を捉えたなのははマンティスシュリンプオルフェノクへバインドをかけた。

桃色と紫色の糸がマンティスシュリンプオルフェノクを縛る。

プレシアによる手助けに感謝しつつなのははレイジングハートを構える。

最速でしかし正確に詠唱工程を進めるレイジングハートの恩恵となのは自身の膨大な魔力量はその形をより殺傷力の高い形態へとなのはの意思で選ばせる。

 

放つのは魔法ダメージだけの対人設定。 しかしなのはの砲撃威力は甘くない。 いかにオルフェノクといえどもまともに食らえばタダでは済まない。 そしてなのはは更なる上乗せを重ねた。

 

カートリッジが二本排出され更なる強化が初見の人間にも一目で分かった。

 

「近藤さん!」

 

スコールがバインドを突破しようと更にもがくがリニスがそれを抑える。

遠隔操作か自力のAIの判断かガジェットドローン達がなのはの射線上へ重なる。

 

そして高まり切った充填をレイジングハートが伝える。

 

 

「ディバインバスター!!」

 

放たれた非殺傷設定の桃色の砲撃は機械であるガジェットドローン達を押しのけマンティスシュリンプオルフェノクへと降り注いだ。

 

一際大きな光が結界内を巡る。

 

その中で人離れした五感を持つリニスと巧はその音を聴いた。

同じくハイパーセンサーでそれを拾ったスコールがニヤリと笑った。

砲撃地から聞こえる音はどんどん大きくなりそれがなんなのかをなのはに確信させた。

 

唸り声だ。

 

この状況でそれを上げる人間は他に居ない。

なのはは強張らせた顔で未だ視界を覆う桃色の光の先を見た。

 

 

ーー

四肢を固定されながら。

 

押し返されてきたガジェットドローンに体を打ち付けながら。

 

意識を刈り取る魔法をその身に受けながらマンティスシュリンプオルフェノクは唸り声を上げながらそれに抗っていた。

 

やがて人外の筋力はそれでも尚外れる余地がある箍により人外のバンプアップを果たしプレシアは一気に千切られるバインドの存在からこの事態を正しく認識し顔を焦らせた。

 

「なのはちゃん!」

 

「高町!」

 

同時に発せられた巧の声はしかし心配から来るものでは無かった。

振り向かずとも感じる。

 

お前が出来なければ『やる』と。

 

それは嫌だ。

効率的だとかそんな場合では無いとか巧の方が専門家だとかそういうのを無しにして嫌だ。

 

なのはは暫しの悲痛の後握り締める相棒へ叫んだ。

 

「レイジングハート、設定解除!」

 

マスターの指示を正しく認識したレイジングハートは事務的にそれをこなす。

 

『非殺傷設定を物理破壊設定へと移行。』

 

桃色の砲撃はそれまでは曲がりなりにも魔法使い達の先祖代々からの良心の形を成していた今までからガラリとその凶暴性を晒した。

 

なのはとプレシアのかけたバインドが破られたのは同時だった。

 

あくまでも押し返すだけで済んでいたガジェットドローン達は触れ合うところから抉り取られるように破砕され爆発する。

そしてその変化を感じ取ったマンティスシュリンプオルフェノクがそのグラブを砲撃へと叩きつけると同時に新たな拮抗が産まれた。

 

異様な光景だった。

 

全てを呑み込む力の濁流はその途中から割られている。

中程で断たれても強大なディバインバスターは一つは地面へもう一つは結界へと突き立つ。

 

元よりスコール達ですら気遣って戦闘を行っていたのだ。

 

リミッターがあるとはいえなのはの対物理設定の砲撃の片割れでも結界が軋みを上げるのには充分だった。

 

「マズイっ…」

 

リニスがそれでも集中するバインドに発音を取り止め歯を噛み締める。 オルフェノクにも匹敵するISの膂力はリニスの領外であった。

 

方向的にビルや人に当たる向きでは無いがそれでも未だガジェットドローンは少ないながらも残っている。

未だ拘束を受けていないガジェットドローン達を外へ出すことは外部への危険を伴うことになる。

 

なのはもその考えに至り顔を歪ませる。

それでも決断を遅らせるのはこの世界に来て新たに出会った青年へ問題を流す事への躊躇。

 

「高町。」

 

それを断ち切るように声が響いた。 巧は一言だけ言った。

 

「任せろ。」

 

なのははレイジングハートへの魔力の注入を止めた。 代わりに開けた目線の下を紅い戦士が疾駆するのを見た。

 

 

弱まった。

 

それだけで十分。

 

既に唸り声から咆哮へと変わった力の行き先をそのまま拳へと握り締めもう片方のグラブを叩きつけた。

 

過剰な抵抗を受け直撃地点から分離させられた魔力はそのままマンティスシュリンプオルフェノクの前部へと跳ね返され地面やビルに突き刺さり火柱を上げた。

人間なら1秒と生きていられない業火の中を佇むマンティスシュリンプオルフェノクはその外骨格と細胞レベルで強靭な肉体を持って熱を耐える。

 

だからだろう。

 

 

 

《EXCEED CHARGE》

 

 

普段なら聞き逃すことの無い音声を逃した。

 

 

似たような色合いの中だからだろう。

 

 

 

 

炎の中を突っ切って走る紅の戦士に気づかなかったのは。

 

 

ーー

デジカメ型パンチングユニット『SB-555 C ファイズショット』へフォトンストリームを通じてフォトンブラッドが貯まる。

 

フォトンブラッドを運用し放つファイズの技の中でもバインドに代表される拘束機能を持たないこの技は最も使い勝手が良く、同時に命中率が高くは無い。 事実巧も繋ぎ技としては使えるが決め技としては微妙といった評価である。

 

しかしこういう場合にはこちらの方が良い。

 

炎を突き抜けマンティスシュリンプオルフェノクへと飛びかかった時には既に2メートルも無かった。

マンティスシュリンプオルフェノクが反応するよりも速く。

 

5.2tを誇る必殺パンチ。

 

グランインパクトがマンティスシュリンプオルフェノクを吹き飛ばした。

 

 

一時的な爆発だったらしい炎が晴れた頃には既に高く上がったマンティスシュリンプオルフェノクが頭から地面へと叩きつけられた。 倒れ臥すその体から青い炎が上がりφのマークが紅く浮かび上がる。

 

「くっ。」

 

形勢不利を悟ったスコールは最後の行動可能を阻むバインドを引き千切ろうとする。

既に何本かが魔力の塵として霧散している中これ以上リニスの力では止められない。

 

新たに桃色の輪と紫色の鎖が機体を縛る。

 

「ぬっ、」

 

ガジェットドローンを片付けたなのはとプレシアによるバインドが加味されゴールデン・ドーンは完全に止まった。

我が身のごとく動く筈のISの異常にスコールは歯を食いしばった

 

「ふうっ…」

 

負担が軽減された事でようやく生じた休憩をリニスは貪る。

次いでかけられたなのはからの労いの言葉に応えながらリニスはこの後の安息を期待した。

 

 

ーーアリーナ内

鈴音とシャルロットのタッグは今大会で唯一彼女たちに正攻法で太刀打ち出来るタッグだった。

シャルロットが立案した作戦は確かに理にかなっていたしそれの重要な囮役を買って出た鈴音の働きも良かった。

 

実際セシリアもラウラも攻めあぐねシールドエネルギーを減らしていた。

それでも機会が来るまで実力差を埋めるものでは無かった。

ただそれだけだった。

 

追って来るワイヤーとBTを何個か落とした鈴音もその隙を突いたセシリアのライフル狙撃により両肩の龍砲を破壊され近接武器しか持たなくなった。

 

すぐ様シャルルがプライベートチャネルで鈴音を自分の近くへ呼び寄せようとするが自分たちが相手にしている実力者は好機の到来を逃すような相手では無い事をその身で味わった。

 

打ち合わせの無い瞬時加速でセシリアはシャルルへラウラは鈴音へと飛びかかった。

それは偶然一方が距離的に近かっただけという理由から一方へ向かい、もう一方も選択肢的に選ばざるを得なかったという計画性も何も無い行き当たりバッタリの行動だった。

しかしそれは確かにシャルルと鈴音の綿密な打ち合わせによる対応速度より迅速であった。

 

こうなった以上各自で迎撃するしかない。

 

原因を作ったという後悔を持つ鈴音は双天牙月を構えラウラを迎え撃つ。

純粋に近接戦での強さを比べれば機体の出力を加味しても2人の実力は拮抗。

なんなら鈴音が僅かに上回る程度だが更なる機体差がそれを潰す。

 

AICがここに来て初めて効果を発揮する。

 

猛る思いと裏腹に止まる身体を上から叩きつけるように殴打する。

衝撃とともにアリーナへ落とされた鈴音が立ち上がるより早くラウラが組み伏せる。

甲龍とレーゲンの出力は一桁二桁の数字の形の違いでレーゲンの方が勝る。

上からの圧力に甲龍が再びアリーナに叩きつけられる。

 

それでも強い抵抗を見せる鈴音に跳ね除けられそうになるのを抑えながらラウラは残った三本のワイヤーブレードを全て鈴音の首に巻きつかせた。

 

「かはぁっ⁉︎うぐっ、」

 

「すまん。これが一番速い方法なんだ。」

 

喘ぐ鈴音に一言謝ったラウラは更に鈴音の首を絞った。

 

操縦者の生命の危機を防ぐためISには絶対防御が存在している。

外部からのあらゆる危害から操縦者を守るシールドエネルギーを犠牲にして生じるIS共通の機能でありシールドエネルギーが尽きればISも強制的に解除される。

 

シュヴァルツェア・レーゲンのワイヤーブレードは細く先端の突起物を媒介にラウラがコントロールしている。

 

ブルー・ティアーズに比べればシステムの簡略化や機体の補助もあるため負担も少ないがAICへの武装過多のため精密度は少々劣る。

故に本来なら頸動脈の圧迫を狙ったものも首全体に巻きつき気道を細める形となってしまった。

 

それにより酸素欠乏症の危険性を感知した甲龍により絶対防御が発動したがそれにより余計に苦しみもがく鈴音への罪悪感を胸にラウラは出来るだけ早く甲龍のシールドエネルギーが尽きるのを待った。

 

 

シャルロットは以前に一度あった真耶との模擬戦。

その時の真耶による決まり手を思い出していた。

 

ナイフよりも更に懐に潜り込んだ真耶に投げ飛ばされ出来た隙にシャルロットと鈴音は敗北した。

専用機であり真耶以上の速度で突っ込んで来たセシリアは今度は抵抗してみせたシャルロットのナイフを容易く受け流し懐に侵入。

今度の投げは味方では無く地面だった。

 

背中から叩きつけられる。

こちらも絶対防御越しでも背骨に響く衝撃に横隔膜が痙攣し一時的な呼吸困難に陥ったシャルロットは続くスターライトとBTとの全射撃を無防備にその身に受けた。

ラウラと同じく絶対防御発動での早期決着を狙うセシリアはシッカリとマウントでシャルロットを固定し止めどなくレーザーを放つ姿はラウラ以上に残忍だった。

 

観客席からもそれを示す声が出始める。

 

もう彼女たちの脳裏にシャルル・デュノアの反撃など無い。

彼女本人を除いて。

 

シャルロットは途切れそうに無いレーザーの雨の中を碌な防御も出来ない中でその機会を待っていた。

 

一連のレーザー射出はセシリアの練度の高さもあり全く淀みなくほぼ同タイミングで行われている。

 

シャルロットはそれを徹底した完璧主義から来る反撃を予防したものだと看破し改めてセシリア・オルコットという同級生の凄さに舌を巻く。

 

しかしシャルロットはクレバーにその時を待った。 そうしないととてもでは無いが掴みきれなかったのだ。 彼女が動いたのはとても隙とは呼べない正中線状の偏り。

 

駅を通過する特急。

その車両と車両の連結部分の丁度真ん中へ打ち込むように。

シャルロットは無理やりレーザーの中を掻い潜りブルー・ティアーズへ釘を突き立てた。

 

 

それを当然最初に確認したセシリアはそれを盾だと思った。 当然だ。 初見でバレないために変形機構の無い炸裂式を選んだのだから。

継ぎ目のないその装備はセシリアにシャルルが攻撃ではなく苦し紛れの防御に走ったのだと一瞬だが誤認させた。

 

「っ、盾ごろ…」

 

セシリアが気づいた頃には既に盾に見せかけていた鉄板がパージし69口径の特大のパイルドライバー。

灰色の鱗殻(グレー・スケール)がその姿を現わすとともに唯一の役目を果たすため群青の装甲を穿った。

 

金属通しがぶつかり擦れ合う嫌な音が鈴音を締め上げるラウラに届いた。

 

「オルコット候補生っ!」

 

「うぐ…シャルロット」

 

弱りながらも余力を感じる鈴音の声にラウラは一気に焦りが巡った。

遠目からでも巨大な杭は紛れもなく第二世代最大威力を誇る灰色の鱗殻だと分かった。

レーゲンですら何発も受けていられないその威力はブルー・ティアーズならば下手をすれば一撃で終わってしまっても可笑しくは無い。

 

「チィっ……」

 

甲龍のシールドエネルギーは残り少ないがそれでもシャルルがセシリアを打倒した後救出を間に合わせるだけの量は十分だった。

事前のドイツ軍時代の調べでは瞬時加速のデータは無いがただ使っていないだけかも知れない。

 

どちらにせよそうなればいつまでもこうして1人に構ってはいられない。 シュヴァルツェア・レーゲンのシールドエネルギー残量とて潤沢とは言えない。

未だ余力を見せる鈴音との二体一の状況になればラウラといえども逆転の余地は全然可能圏内だ。

 

しかしラウラの緊張の思考は未だに聞こえた耳障りな音によりほぐされた。

 

 

「ははは、」

 

乾いた笑いはシャルロット。

もうここまでくれば笑うしかない。

 

「お見事でしたわ。デュノアさん。」

 

淑女的な笑みながらもセシリアは強者の雰囲気を醸し出していた。

その僅かな身じろぎの所為か。

耳障りな軋むような金属音がシャルロットに再びその目を降ろさせた。

 

ナイフが突き立ててあった。

 

 

 

「まさか、近接ナイフで突き刺して受け止めるなんてね。」

 

 

 

乾いた笑いが起こる。

 

金属製の杭の中心が大きくヒビ割れそこを切っ先から3分の2を埋めたインターセプターが覗いていた。

ティアーズの装甲まで後数センチといったところだった。

 

程なくして試合終了の合図が鳴った。

 

 

ーー

試合終了の後選手は互いに向かい合って礼をする決まりとなっている。

鈴音は喉をさすりながら絶対防御のお陰で無いはずのダメージを労った。

 

「すまないな。」

 

「すまないな、じゃないわよ!死ぬかと思ったじゃない!」

 

ラウラの謝罪の淡白さが癇に障り今にも噛みつきそうになる鈴音をシャルルが抑える。

困りながらも本当に申し訳なく思っていることをラウラが必死に伝えるのを笑みを湛えて見ていたセシリアはそろそろこの楽しい会話を締めくくることにした。

 

「では鈴さん?約束通りに2人を探しに行ってくださるわね。」

 

それに鈴音はうっとなりながらも快活な表情を見せた。

 

「しょうがないわね、シャルろっ…ル君。行くわよ。」

 

鳳さん、また…うん分かった。」

 

ラウラに不審に思われなかった事をまだ反省していないらしい鈴音にシャルルが言った。

セシリアとラウラはそんな2人にお互い顔を見合わせ自然と微笑んだ。

 

これから4人が探し人の現状を知るのはもう少し後のこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見てくれセシリア!父さん遂に鷹になったんだ!

 

 

何故あの時のことを急に思い出すのだろう。

 

「セシリア?」

 

友人達が急に表情を固めたセシリアに覗き込んで尋ねてくる。

しかしセシリアはそんな友人達など目に映らない。

瞬間セシリアは空を見上げあの時の翼を探した。

 

セシリアは空一杯の灰色の羽がアリーナへ降り注ぐのを確かに見た。 そして一枚の羽が自分の頰に触れた途端灰となって崩れた。 母親のように。

 

弾かれたようにピットへと駆け出すセシリアに3人だけでなく生徒やVIP。

運営側である教師陣が其々十人十色にどよめいた。

慌てたように一番の仲である鈴音が追いかけラウラが混乱しつつもレーゲンの通信機能で教師の指示を仰いでいる中シャルルは何となく空を見上げてみた。

 

蒼天の名が相応しい天気であった。

 

 

ーー結界内

こちらでも終局へと舞台が進んでいた。

 

バインドを三重に、更に駄目押しに束から煙を上げるゴーレムに羽交い締めをさせられながらISを解除させられ捕らわれたスコールはふと空を見上げた。

 

既に結界内の残存戦力は自分以外に居ない。

 

自分も未だ力尽きた訳ではないがそれでもこの面々を相手にするよりは模範囚になった方が良いと判断したらしい。

大人しいスコールへなのはが代表して話しかける。

 

「教えて下さい。貴方はスカリエッティとどうゆう関係ですか?」

 

「プロはクライアントの情報は教えないのよ?知らないのお嬢ちゃん。」

 

「なら死んでくれても良いんだけど?ここには誰も居ないし。」

 

無表情のままなんの躊躇いも無くいうのは勿論束だ。

恐らく彼女にとっては本当にスコールの命などその程度なのだろう。

当然だがそれはほかのメンバーが容認しない。

 

「私たちが居るでしょう束ちゃん、ダメだからね。」

 

プレシアの言葉に束はそっぽを向く。

拗ねた訳ではない。

スコールに対して割きたい時間などその程度なのだ。

とにかく関わらないのであればそれでもいい。

 

なのはは改めてスコールが口を割りそうに無い事を確認するとレイジングハートを構える。

 

「すみませんが少し気を失って貰います。」

 

誘導弾を一発コツンと当てるだけだと言うリニスにジョークが強いとスコールが笑った。

なのはは油断なく警戒しながらも魔力を収束させ始め。

 

唸り声が鳴った。

 

静かな今度はリニスだけではなく全員に聞こえた。 力を振り絞るような低い声は上げられる人間は1人しか居ない。 一同が振り向く中で青の炎をあげながらφを背負ったシャコ怪人は尚も力強く立ち上がった。

 

唯一変身を解除していた巧が再びファイズフォンにコードを入力する。

命中率は低かったとはいえ当たればほぼ間違いなく必殺のグランインパクトを耐えた事に小さく驚く。

マンティスシュリンプオルフェノクは体勢を力強くするにつれ唸り声は次第に咆哮に近いものとなった。

そして一際大きく叫んだ瞬間。

 

φが砕けた。

 

驚く一同の前で巧も驚く。

かつて自分の知る限り紛れも無く最強の存在が一度だけ見せた異例の紋様砕きに巧は改めて目の前のオルフェノクに戦慄した。

 

マンティスシュリンプオルフェノクは更に上がる炎を消し飛ばして何事も無かったかのように佇む。

なのは達が再び構える。

しかし復活したシャコ怪人は1人景色の見えない空を見上げて一言口にした。

 

「来る」

 

 

バリンと。

 

結界に蒼天が映った。

 

 

ーー

謎の攻撃により砕けた結界はそこから現世に帰っていく。

 

戻った駅周辺には突入前が嘘のように人が居なかった。

それが楯無経由で連絡を受けた日本政府からの偽造の事故に対しての封鎖だとはリニスも知らなかったが外部からの攻撃という事実になのは達は其々の非戦闘員の前に立つ。

 

なのはが束をリニスが変身前の巧を庇いながらプレシアもスコールから目を離さずに爆心地であるマンティスシュリンプオルフェノクの横に注目した。

スコールの笑みが釣り上がるのが見えた。

 

「遅かったですわね。オルコットさん。」

 

羽が舞った。

 

 

身の丈は2メートルを超えるがこれまでのそして横のマンティスシュリンプオルフェノクと比べれば小柄な部類。

鷹の特徴を受け継いだホークオルフェノクが灰色の羽毛を撒き散らした。

それらは地面に当たった途端全て崩れて灰になった。

 

ホークオルフェノクは一瞬だけ海を挟んだIS学園を向いたかと思うと隣のシャコ怪人とともにスコールへと疾駆した。

 

其々の反応はしかし迎撃ではなく自分の近くの非戦闘員の保護が殆どだった。

 

なのはは束の前で防壁を張り。

よりオルフェノク達の近くに居た巧は抱きつきながら横っ飛びをしたリニスによって生身を弾丸もかくやの彼らから反らされた。

 

そしてプレシアは即座にそれを攻撃ではなくスコールの奪回だという事。

その速度から来る威力は疲弊した自分では抑えられない事を察知しダメージからか横を走るホークオルフェノクから少し遅れたマンティスシュリンプオルフェノクの間を利用して跳びのき回避した。

 

そして障害物を失った2人は容易くスコールへとたどり着いた。

 

ホークオルフェノクが鉤爪をバインドにかける。

猛禽類を思わせるホークオルフェノクの脚は引っ掻いただけで容易くSランク級のバインドを断ち切って見せた。

 

そして解放したスコールは再びゴールデン・ドーンを展開し瞬時加速で空へと消えていった。

 

「のけ!」

 

抱きしめるリニスを退かせ巧が立ち上がる。 ファイズフォンは既に待機状態を鳴らしている。

 

「ショート…」

 

なのは最速の砲撃よりも鷹は速かった。

 

マンティスシュリンプオルフェノクをその強靭な鉤爪で掴んだホークオルフェノクは先の瞬時加速が比肩にならない加速で蒼天を突き抜けて行った。

フェイトにも匹敵するやも知れない速度でリニスの目すらからも消えたホークオルフェノク達を一同は見ているしか無かった。

 

緊張がほぐれようも無かった。

 

「っ、誰です!」

 

猫耳を研ぎ澄ませたリニスが振り返る。

なのはがあっと声を上げた。

 

「おまえら」

 

走って来たのか息を切らすセシリアとその少し後ろで膝に手をつきこちらを見る鈴音に巧が声を漏らした。

セシリアの表情に巧は何時ぞやのモノレールで鈴音が話した怖い顔を連想した。

 

「話してもらいますわよ。巧くん。」

 

 

 

 




書き終わってから思っても仕方ないんだけど急展開過ぎだね。

皆さん気分とか悪くなりませんでした?文章酔いとかしませんでした?

今回の構成について先ずオリジナルオルフェノクであるシャコさんがやけに株を上げていますがあくまでも巧がそう思っただけで本物のラッキークローバーと同等という訳ではありません。

また鈴にゃんの絶対防御描写について「絶対防御が働いてるならダメージとか無いんじゃね?」と思われた方とセカンド党の方には申し訳ない。
ぶっちゃけダメージ受けた方が緊迫感あるから、て理由で窒息しそうになってもらいましたww

何故日本政府と学園は結界のことを知っていたのかというのはぶっちゃけ特に考えていません。(笑
楯無さんと千冬姉が上手いことやったということにして下さい。

最後になんでセシリアと鈴が間に合ったのかと言うとたっくんとなのはさんが通り過ぎた後も管理人室と監視カメラは機能していなかったんです。

そして学園側が駅員さん達に伝えた情報はなにぶん急な出来事なので非常に適当で人数や時間帯とか指定せずに「来た生徒は通せ」と言っていたので2人はふつうに電車に揺られてやって来ました。

それ以前に何故2人が鷹さんが駅に居るのだと分かったかというとセッシーがニュータイプ並みの予知能力級の勘で探し当てて鈴にゃんは後をつけてったら出会った感じです。

※人気投票の開催。詳細は活動報告にて
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