IS:ボンド   作:田中ジョージア州

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原作キャラ通しの出会いその二


原作開始前 3 篠ノ之束の人生観

何処かの地域。

地図には載っていない、衛星からも見えないように大気を誤魔化している。

地形も弄ってどう動いても絶対に中心にはたどり着けないつくりになっており、ジャングルの何処かにある数メートル程の何も無い広場。

そこから数十メートル地下には巨大な空間がありそこに存在する建造物、命名『我輩は猫である』恐らく原作者が知ったら冬のアラスカ以上に冷えた目で睨まれるだろう、そこに篠ノ之束はいる。

紫の長髪に機械式のうさ耳カチューシャ、本人は不思議の国のアリスをモチーフにしたらしいドレスは同じく紫づくしで目に悪い。

辺りにはジャンクフードが四散し食べカスが散らばって、古い落語家がみれば「ぞろっぺえや」と口にしそう。

「London Bridge is broken down♪Broken down♪broken

down♪London Bridge is broken down…えと、ふんーふんふん……」

間延びする声で何1つ恥ずかしむそぶりなく、何故か『ロンドン橋落ちた』を原語で熱唱する。がうろ覚えらしく途中であやふやとなる。

歌えないことが解ると今度は途端に黙り込み真剣な眼差しでコンソールに向かう。

「足長おじさん…」

足長おじさん。

束にとっては親友と妹と親友の弟と同じくらい印象深い人物だ。

中学時代に初めて出会い、束の人生を一変させた人間。

「これでもう思い通りにはさせないっ」

歯ぎしりをさせながら束は足長おじさんに対して嫌悪を露わにした。

 

こう見えても科学者であり発明家の束は兼ねてから物作りに没頭していた。

そんな彼女が10年前に開発した、彼女自身の中でも最高傑作であるマルチフォーム•スーツ「IS」自分で言うのもアレだが画期的な代物だった。

本来の目的は勿論、あらゆる分野での活躍が見込める。

しかし束は当初これの発表を戸惑っていた。

なにせ基本コンセプトからして現在の粒子物理学では説明のつかないオーバースペックなISだ。

まだ中学生でしかない自分が世間に公表したところでまともに取り合ってくれるとは思わなかった。

 

まだ試作段階の代物だし、いっそ家族にも内緒で自己完結で終わらそうかとも思った。

そんな中現れたのが足長おじさんだ。

「もったいないことをするもんじゃ無い。

はなから理解されない事を恐れてどうする?」

彼は優しい口調で束を説教した。

「大丈夫、きみの発明は素晴らしい。」

自然とそう思ってしまう魔性の声だった。

束は一念発起し学会に発表する事を誓った。

学会の手配は足長おじさんがしてくれ、束はオーバースペックなISをなんとか理解して貰えるよう必死に慣れない論文を制作した。

 

結果は束の発表は殆どマトモに取り合われてはくれなかった。

原因はやはり規格外さと若過ぎる発表者。

一部の学者は真剣な束の様子に真面目に応えようとしてくれたが、既存の常識を覆すISを理解するには束の説明は拙すぎた。

結局ISの理論を完全には理解出来ず、机上の空論が言い渡された。

「ーだが、その熱意は立派だ。これからも頑張りなさい。」

最後 落ち込む束に学者の1人がそう言った。

わからなかったくせに…そんな想いがなかった訳ではないが、一礼し学会を後にした。

 

「机上の空論かぁ、でもまだ実用段階にないしなぁ。」

乾いた笑みを浮かべ悔しさを誤魔化すようにISの欠点を並べ、

「うっさい!!無能!!」

 

理解はしていた。

いつだって彼女の周りは彼女のことを理解出来なかった。

彼女の才能を疎み、妬みから嫌がらせをされた事や暗黙の了解として誰も自分と会話しようとしなかった。

「だから嫌だって言ったのに……」

「それは悪かったね。でも決めたのは君だよ束。」

背後からの声に恨ましげに振り向き睨む。

足長おじさんはあの時と同じ優しい笑顔を浮かべていたが今の表情からは安らぎなど覚えはしない。

束は憎々しげに足長おじさんを凶弾した。

「お前のせいで恥をかいた‼︎

あの爺さん達が束さんになんて言ったか解る⁉︎

『新しいことに挑戦するのは若者の特権だ。だが、基礎的に君はまだまだ科学者として未熟過ぎる』五月蝿い‼︎束さんの何百分の1だって理解出来なかった癖に、あんな奴らに……」

烈火の如く怒り、冷水をかけられたように哀しむ束を、暫し顎に手を当て興味深げに観察した足長おじさんは、

「事実じゃないかい?」

「⁉︎」

極当たり前のように言ってのけた。

驚愕する束に苦笑しつつ手を広げ、だってそうじゃないかと続ける。

「工学では君には遠く及ばないが、それでも科学者として君は実に不安定だ。」

「科学とは今の君の手には負えない事など星の数ほどある。」

芝居掛かった言葉で束の張った心の防御線に入りいってくる。

「君は間違いなく歴史に名を残すだろう才能だ。

しかし、それでもかつての人が定めた人の疆域外をいくことは出来ない。」

「君は既存の技術を超越したと感じているようだが私に言わせれば、やはり結局は既存のモノに則っているに過ぎない。

その老人達の言う通り……」

 

 

 

まだまだだ

 

 

遂に息がかかるまでの距離にまで近づいた足長おじさんは束の耳元でそう呟いた。

思わず退きバランスを崩して尻餅をついてしまった束は暫し呆気に取られていたが、直ぐに立ち上がり足長おじさんを押し離す。

「とにかく、これから貴方に関わることは無いから。さよなら」

そう言い放ち足早に自宅へと歩を進める。

理由は分からないが何か途轍もなく得体の知れないものを目の前の男から感じたからだ。

足長おじさんはその様子を咎めようとせず、おもむろに右手を掲げる。

そしてパチンと指を鳴らした。

 

どごぉっ!!

 

突如束の真横の壁が爆ぜる。

「きゃっ⁉︎」

再び勢いで尻餅をついてしまう。

それでも今度はキチンと跳ね起き、ついで飛来した破片から身を躱しポッカリと空いた穴を睨む。

「なっ、怪物…⁉︎」

 

破砕された鉄筋コンクリートの壁から、甲殻類の如き巨大なグラブを両腕に備えた襲撃者、マンティスシュリンプオルフェノクが飛び出てくる。

急な人外の生物の出現という事態に、ついで渡来した豪腕に対しての反応が遅れてしまい肩口を殴られる。

「あぐぅ⁉︎」

咄嗟のバックステップでコンマ数ミリの直撃で防ぐ、それだけでも束の未成熟の肉体は吹き飛んでしまう。

反対の壁に叩きつけられ肺から空気が吐き出される。

「おいおいシャコ君、彼女はこれから我々と世界を席巻する同士の親友だぞ。怪我はさせないでくれたまえ。」

マンティスシュリンプオルフェノクを諌めながら足長おじさんが束に手を差し伸べる。

混乱した意識の中で束はあるフレーズだけが鮮明に流れる。

「し…ん、友?」

酸素が欠乏している中でも篠ノ之束の思考力は些かの衰えも見せない、直ぐさま最有力な結論を導き出す。

「ちーちゃん…っ⁉︎」

その同士が誰かは知らないが少なくとも自分と親友関係にある人間など彼女の思いつく限り1人しか居ない。

「ああ、織斑千冬君だ。きみにとっては家族以外で親しい数少ない他人だそうだね。」

狼藉する束に口角を釣り上げ答える。

織村千冬、束にとっては妹と両親以外で唯一親しい間柄とも言える存在 親友、その千冬が危機に瀕しているかもしれないというのだ。

血液が沸騰するかのような激情を覚える。

烈火の如き怒りの矛先を向けられても足長おじさんは涼しげな顔で、絶望を告げる。

「千冬君の近辺にはここにいる怪物君と同種の仲間がいる。

なあに安心したまえ。」

再び束は凍りつく。

今しがた自分を殴り飛ばしたこの灰色の怪人と同じ力を持った奴が親友にも差し金られているという事実に顔面蒼白する。

そんな束に相変わらずの笑みを絶やさず足長おじさんが続ける。

「手出しは一切してはならないと厳重に言って聞かせている。そもそも我々と織斑千冬との間に関係性が出来ることを我々は望んで居ない。」

「その方が彼女のようなタイプには丁度良いだろうからね。」

そこでだ。拒む束の肩を掴み、起こしあげ言った。

「これからきみには世界一の有名人になって貰う。

最強の兵器ISの生みの親としてね。」

「IS……?」

「そう、これから我々は世界の主要な先進国、途上国に対して同時クラッキングを行い弾道ミサイルを日本目掛けて撃たせる。」

「なっ…‼︎」

「それを全てきみが開発したISを装着した織斑千冬に撃墜して欲しいんだよ。」

あまりに突拍子もなく飛び出したトンデモスケールの計画にさしもの束も思考が停止する。

「無論ミサイル発射に我々が関与した事は織斑千冬には内緒だぞ?

上手くごまかしてくれたまえ。」

 

「飲めない場合は、いま彼女を監視させている怪物に彼女を殺させる。」

選択肢などはなから無かった。

こうして束は俗に言う『白騎士事件』を千冬と共謀で引き起こし、ISは瞬く間に世界に広がった。

束も一躍時の人となり、世界中から羨望を向けられる事となった。

しかし数年で束は突如表舞台から姿を消した。

 

理由はやはり足長おじさん達の捜索。

 

白騎士事件を境にぱったりと自分の前から姿を消した足長おじさんの動向を、束はこの10年の月日に渡り掴もうと奔走して居た。

アレだけの事をしておいて何故?

あの日あの男から感じた途轍もなく良くないモノ。このまま放って置くわけにはいかなかった。

 

先進国をはじめ世界中の国と地域で彼等についての所在を調べた。

紛争地帯から人の住めない危険地帯など、時には宇宙にも手を伸ばした。ISは元々宇宙での活動を前提に作ったもの、そこから予想したのだが、どれも空振りだった。

しかし掴めたものもある。

ここ10年の内に世界各地で規模は小さいが異常な磁場の乱れを確認した。

いずれの場所も束が訪れた際には既に何も無かったが、微量のエネルギー粒子と近くの人里で『灰色の怪物』についての噂が広まっていた。

怪物については間違いなく奴らだが、新しく見つけたエネルギー粒子は全く未知のものだった。

力学的エネルギーとも科学的エネルギーとも説明がつかない。科学者としては興味深いものだったが、優先はあくまでも足長おじさん。

調べていく内にその未知のエネルギーが磁場の乱れとともに量を増していく事を確認した束は、そのエネルギーに解明の可能性を感じ、重点的に調べた。

そして遂に数週間前、世界各地で起こる磁場の乱れを人工的に引き起こす理論を構築。つい昨日その装置のテスト含めての完成にこぎつけたのだ。

 

「座標の指定は出来た〜っと、あとはスイッチ押すだけだけど………あの怪物が出たらさしもの束さんでもきつくない?きつくない?

ダイジョーブです‼︎ ちゃんと無人機ゴーレム量産してます‼︎逆にぶっ飛ばしてやります‼︎」

1人で盛り上がりながらコンソールをたたく束。

テンションがやや可笑しいが、彼女はこれで平常運転。

「これで遂に憎っくき足長おじさんに一泡吹かせられまーす♪」

「それでは……あ、ポチッとな。」

陽気なテンションのまま、掲げた指先でコンソールを叩く。

装置が独特過ぎる起動音を上げて煙を上げ、何故か勢いよく縮んだり伸びたりする。

制作者が微動打にしない以上そういう仕様なのだろう。

そして指定した座標、ラボの頭上にある空き地の磁場が乱れ始める。

それを確認した束は勢いよく握りこぶしを突き上げながら、自身もまた外へ行く。勿論護衛のゴーレム達も連れ立って。

 

束が着いた時には既に磁場の乱れは肉眼で確認できるほどになっていた。束がその中心地を凝視すると段々と人型が形成されていく。

「ゴーレム‼︎」

束の号令で即座に武装を展開する量産ゴーレム達。

見つめる束の額に冷や汗が滲む。やはり何時もより緊張をしているらしい。

しかし漸く磁場の乱れが収まりシルエットの全容が見えた時にはその強張りは霧散した。

 

現れたのは身の丈2メートルを超える人外の化け物ではなく、白を基調にしたスーツに身を包み、栗色の髪をサイドテールにした少女だった。

「それは大変だね…あれ?フェイトちゃん? え、何ここ。あれ、六課は?もう取り壊されちゃったのかな、すっかりジャングルに…………エェ⁉︎ なんで⁉︎ どういう事⁉︎ why‼︎」

 

カオス。

少女は束やゴーレムには目もくれず状況を理解できずに喚いている。

これがもし彼女の普段見ている部下達に見られたらさぞかし驚愕を受けるだろう狼狽えっぷりだが、生憎束は少女の事など知らない。

取り敢えず、ゴーレムに武装を解除させ少女に近づく。

「ねえ、」

まずは意思の疎通、最初予想していた怪物とくらべれば容易だろう。

「はい?あっ、人……」

漸くこちらに気づく少女。まだ混乱は止まないが、少しは落ち着いたらしい。

束は瞬間満面の笑みを浮かべる。

対人関係、協調性に難ありと小学生頃、通知簿に再三書かれ親を困らせた束だが、24歳にもなると其れなりのコミニュケーション法も取れる。

「こんにちは〜」

「あっ、どうもこんにちは…」

返答できる事は確認できた。後は相手の正体。

「初めまして、私は篠ノ之束で〜す。あなたのお名前なんて〜の?」

「えっ、名前ですか?」

 

遂に第2の邂逅。

これが、この世界の根幹を大きく変質させた瞬間だという事に束も他の人間達も誰も気づいていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「高町なのはです」




束さんと我らがなのはさんとの邂逅。

いきなり過去編に突入して間延びしてしまいました、すいません。
足長おじさんについてはまた触れます。多分次回には名前も出します。

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