IS:ボンド   作:田中ジョージア州

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今作品で恐らく最大のキャラ改変をされたであろう、セシリアさんとのバトルです。
オルコッ党の人はごめんね?


2話 特訓

「それでは今日の予定はここまで。各自、部活動に励むように。それ以外の者も部屋で寝るのは許すが、夕食はキチンと取れよ。」

解散の号令とともに速やかに下校していく生徒たち、本当に訓練学校だなこりゃ。

 

「それと織斑。」

 

流れに任せて俺も帰ろうかと思ったが、その前に織斑先生から声掛けがかかる。返事を上げ目の前まで行くと、途端表情を崩して肩に手を置いて来て。

 

「負けるのも経験だ。」

 

おいおい、もう負け確定してませんか?

すると俺の不満を感じたのか織斑先生はいつもの目付きに戻り真剣に告げて来た。

 

「正直に言うぞ。私の見た限りでは、お前の勝率は0.1……あるかないかだ。」

随分ぶっちゃけた勝率だ。地味に傷ついた。

「0.1有りゃ充分だ。」

 

思わず強気になって言い返してしまったが、事実として俺は諦める気はない。それに武術も嗜むアンタが常に言っていたことじゃないか。

 

「『勝負事に、絶対はない』だろ?」

 

それっきり織斑先生は何も言わなくなった。俺は礼を告げてみんなと遅ればせながら下校していった。部屋で寝るためでは無い。勝つために。

 

「………」

元気よく校舎から走り出して行った弟を窓から認めながら、千冬は誰も居なくなった教室の壁にもたれかかる。先程は弟の意趣返しに思わず返す言葉を無くしてしまったが、あの場でハッキリ伝えるべきだったか。

 

「その主義を含めても『0.1%』としか言えないんだよ、一夏。」

 

ブリュンヒルデとして世界の頂点に達した千冬だからこそ断言できる『セシリア•オルコットの異常性』教員しか知らない情報ではあるから仕方ないが、入試の際セシリアの相手を務めた教官は決して弱かった訳ではない。

むしろ相手が現役の代表候補生だということで、こちらは元国家代表になった経験のある。つまり学園屈指の実力者で迎え撃ったのだ。セシリアはその上で教官を叩きのめして見せた。教官側は量産機を使用するとはいえ、その結果に他の教員含め千冬でさえ戦慄した。

 

「使用するISこそ、実証機レベルだが……あいつでも無理か。」

 

ふと、故あって面倒を見てやった。海の向こうの直弟子を思い出す。本人の技量はまだ未熟だが、ISの方は強力。特に一対一の戦闘では無類のアドバンテージを得るが、さてどうか。

 

「…ふっ」

考えても仕方はない、戦うのはあいつなのだ。本人が諦めていないというのにそこを外野がごちゃごちゃ言える事ではない。千冬は口角を僅かに上げ、もう視線の先から消えてしまった弟を見つめながら。

「まあせいぜい一太刀くらい浴びせられるように、楽しみにしているぞ?」

 

 

 

「どうしよう。」

俺は呆れた顔で白飯を口に放り込む幼馴染に、情けなくも泣きついていた。

 

「知らん、お前の完全な自業自得だ。男なら潔く当たって砕けてこい。」

「そこをどうか!砕けないようになんとか!」

 

机に肘をつき顔の前で手を合わせ、必死に頭を下げる。しかし箒はそんな俺に対して相変わらず無言で食を進ませている。ううっ大見得切った手前千冬姉にはもう聞きにくいし、山田先生に聞いてみようか…

『解りました。折角だから織斑先生も参加してもらって一緒に教えましょう。』ダメだ多分こうなる。

 

他の生徒は相手が代表候補生だと知ってみんな断った。

そんなに代表候補生って凄いのかな?俺、正直代表候補生なんて知らなかったけど。ーと、そんな場合じゃない。

兎に角オルコットさんがメチャクチャ強いってことはわかっている。ISの強さは起動時間の長さに比例するらしいし、たった20分程度の俺が立ち向かうにはまず対策が必要だ。そのためにもまずはISに理解が高い熟練者から教えをこう必要がある。そのため片っ端に聞いて回ってるんだが1人も捕まらない。このままじゃ対決以前に訓練もマトモにできない。どうしたものかと頭を抱える俺を見かねたのか、味噌汁を啜った箒がやや乱暴に告げた。

 

「熟練者が必要なら同学年より上級生に頼んだ方が相応しいんじゃ無いのか?」

「あっ。」

「バカか なぜ気付かなんだ。呆れ果てた、先に帰る。」

 

そう言い残し、箒は食器を片付け部屋に帰っていった。部活後の汗を流しに行ったんだろう。

「上級生か…うし、サンキュー箒!」

お礼は無視されたが、良い助言を頂いた。早々に料理を片付け、早速上級生探しに食堂を飛び出した。

 

「えーっと1025号室……あった。」

漸く部屋を探し終えた俺は簡素ながら高級そうな造りのノブを回し、部屋に入る。

 

「あれ、箒?」

 

まず飛び込んできたのは寝間着姿の箒が奥のベットで寛いでいるところだった。箒も俺に気付き振り向く。まだ、不機嫌そうだ。

 

「放課後はともかく夕食後1時間以上経っても相部屋の者が来ないと思っていたからもしやと思ったが、お前か。」

 

なんだか、心底嫌そうな顔でそう言われる。俺って6年会わない内にだいぶ嫌われたんだな…

 

「なんだ、相部屋って箒の事だったのか。」

 

なんとかフレンドリーに話しかけようと口を開くが言葉がいけなかった。

 

「なんだ…だと?不満か。」

 

「いやいやいやいや滅相も!嬉しいよ。女子校で、しかも相部屋だっていうから緊張してて。見知った相手で安心した。」

「ん………そういうことにしといてやろう。」

 

ふいっと後ろを向かれてしまうがお陰で難は逃れた。これからずっとこの空気を味わうなら、知らなくても他の子の方がマシだったかな?

 

「そういえば、お前。指導者は見つけられたのか?」

 

すっかり元の声のトーンで言ってきた箒に安心しながら俺は自身満々で答える。

 

「おう!聞いて驚け。なんとこの学園の生徒会で、その会長に教えて貰える事になったんだ!」

 

「なに?会長直々にか。」

さすがの箒も驚いたようでベットから起き上がる。

俺も正直信じられないが、片っ端から上級生に頼んで回ってると偶々その会長さんにぶち当たり、そしてアッサリ承諾してくれたという事だ。経緯を話すと途端に怪訝そうな顔をして。

 

「大丈夫なのかその会長。会長といえば色々忙しいのではないか?信用出来るのか?」

 

なんと失礼な、そう思ったが実際俺もそう思っている。

了承した時もなんだか楽しそうにはしゃいであんまり威厳は見えなかった。

しかしそんな事今更言える訳がない。対決までもう一週間しか無いんだ。

 

おーっし‼︎

「寝る‼︎お休み箒、電気消しといて。」

 

色々と消耗した体を休ませるため俺は制服のまま空いているベットに倒れこむ。疲れ切った体はフカフカのマットに身を投じた瞬間、一気に脱力する。程なくして俺は夢の世界へ旅立った。

 

「あ、おい……着替えるくらいしろ。」

声に出した苦言はもう届いておらず隣のベットからは規則的な呼吸音が聞こえてくる。つくづく呆れた奴だとひとりごちる箒も、しかしその顔は和らいだ笑顔だった。

久し振りに再開した想い人は少し変わっていて幻滅したりしたが、こうして改めてふれ合うとやはり自分が惚れた男だと確信する。

口では色々と言うが決して諦めようとしない不屈の闘志と貫き通す信念は決して霞んではいない。

 

「まったく うつ伏せは体に負担をかけるぞ、明日に備えるんじゃなかったのか?」

しようのない奴だ。

 

箒は眠る一夏を起こさないように優しく、自分の体に預けさせるように一夏の体を返させる。仰向けに変わった一夏に部屋の備え付けの毛布を掛けてやり電気を消し、自分もベットに戻り、不意に一夏の方へ顔を向ける。

 

「お休み、一夏。」

暗闇で箒には見えなかったがそう告げられた時の想い人の顔は安らかなものに変わっていた。

 

 

 

ーー翌朝

「おはよう箒。」

 

「おはよう、よく眠れたか?」

 

もうバッチリだぜ!そう告げる俺に箒は変わらずキリリとした表情で、

 

「ならシャワーでも浴びて来い。昨日は臭ったぞ。」

 

え、マジ⁉︎

クンクンと制服の匂いを嗅ぐ俺を尻目に箒はサッサと朝食へと出かけた。…相変わらず冷たい。

 

「……いや、違うか。」

 

俺はベットに載せてある畳んだ毛布を見る。昨日そのまま寝た俺に対して箒がかけてくれたんだろう。なんだかんだ言ってキチンと気遣いを焼いてくれるいい奴だ。結婚したらさぞ良妻に成るだろうな…ま、鬼嫁かな?

思わず笑いを零す俺はふと時計を見上げる。少し余裕がない。サッサとシャワーを浴びて合流するか。

 

「ん〜この鮭うまいな、焼き加減なんか絶妙だ。」

 

「……この程度で良ければ、私が毎日ーー。」

 

「ん、なんて?」

 

「いや、なんでもない。」

 

?変な奴。

 

それにしてもうまい。料理を嗜む者としてここの料理人たちには個人的にお話がしたい。昨日の洋食も中々だったし、学食なんて低コストが望まれるものなのに、よくここまでクオリティを上げられるもんだ。食に対する信念が感じられる。

 

「…………」

 

「この程度で良ければ、私が毎日お前の為に作ってやろうか?」

 

思わずキッカケがあった為途中まで出かかったが辞めた箒は、自分の軽率さを諌める。軽はずみにも程がある。この朴念仁相手にこの程度のムードとセリフではそのまま軽く受け止められて終いだ。どうせ食事を単に作ってくれるだけにされる。一夏に理解させるためにはまず恋愛感情が存在する所から意識させねば何十回告白しようが意味はない。そこまで至って落ち込む。やはり、一夏に自分に対しての恋愛感情はない。単なる友達としか見なされていない。

だが、それでも良い。

元より好きになったのはこちらだ。振り向かせるのも惚れた自分の義務。篠ノ之箒は新たに決意を決める。

 

ーー放課後

「よっしゃ来た放課後!」

「特訓か?」

 

尋ねる箒に肯定し俺はアリーナへと走る。対決までもう6日を切っている。今更過ぎるとも思わなくないが何もせずやられるだけなんて男が廃る。更衣室でISスーツへ着替え、アリーナへと飛び出した俺を待っていたのは。

 

「はーい、早いわね一夏くん。時間に拘る所はお姉さんポイント高いぞ。」

 

何かの金属で出来ているらしい扇子に感心という単語を二つづつ書いたものを見せびらかす、更識楯無さんが日本の量産機『打鉄』を纏って待っていた。この人が俺のコーチ。他の上級生の話じゃ学園最強との事。

 

「じゃあ一夏くんの打鉄はそこにあるから装着して。」

 

「はい!」

 

こうして俺の特訓が始まった。

俺が始めたのは基本の積み重ね。更識さんの話では基本が出来ていなければそもそも勝負にもならないとの事。小学生の頃毎日100回の素振りを箒としていたからそれは俺も理解できる。しかしいかんせん時間が足りない。その100回の素振りをしようにもそれだけで6日なんて直ぐ終わってしまう。相手は基本なんてとっくに叩き込んで、更に高度な操縦だってできるんだ。そもそもスパルタな千冬姉だって半月のメニューで俺たち生徒に教えてるのに、やはり技術以上に時間が足りな過ぎる。

 

「でも、泣き言言ってる暇なんてない。」

 

通常メニューでは間に合わないとの事で、俺は更識さんに頼み込んでかなり無茶なハードスケジュールを組んでもらった。ISスーツを通して得た俺のデータから割り出した、取り敢えず授業に支障が出ない程度の無茶。本当はこれでもまだ足りないのだが、これ以上は更識さんが協力してくれないので仕方ない。俺は毎日の放課後を就寝時間まで特訓に費やした。更識さんが用事で抜ける分は彼女が事前に作ってくれた訓練メニューを渡された。

 

「この6日はナノマシンを通してずっときみの体はチェックしてるから、メニューにない無茶な特訓したらその時点で私は協力しないからね?」

 

去り際にそう釘を刺されて。

そのお陰で授業の最中に居眠りをする事もなく、少し体はだるかったがそれもキチンと睡眠を取れば翌朝には消えていた。そして最終日に俺は更識さんに呼び出されて、そこで空間ディスプレイにあるものを見せられた。

 

「これがセシリアちゃんのIS『ブルー・ティアーズ』よ。」

 

目の前に映し出される明日戦う敵の纏う武器。主武装はビットと呼ばれるセシリアの思考をトレースして動くイギリスで試験中の、所謂無人の護衛機だ。他にも後付け装備のライフルと小型のナイフ。後者は取り敢えず付けてるだけだろうって俺は思った。更識さんも同じようで。

 

「スナイパーライフルの『スターライトmkⅢ』はビット以上の威力のレーザー砲。そしてこの『インターセプター』だけど……これは警戒する必要は少ないわ。」

 

更識さんは扇子を開く。「思惑」と書かれていた。どういう事だ?

 

「さっきも言ったようにブルー・ティアーズは実験機。

イギリス政府が欲しいのはあくまでも自立型のビットのデータよ。当然プログラムされた特訓もビット操作が主でしょうね。近接訓練なんて触りくらいしかしてないでしょう。」

 

成る程。だから政府の「思惑」なのか。

 

俺が顎に手を当てふむふむしてると、更識さんはいつものおちゃらけたトーンの声で扇子をとじながら。

 

「というわけで作戦!名付けて「当たって砕けちまえよYou」作戦よ‼︎」

………

 

何だろう…つい最近おんなじ台詞を幼馴染から言われたような。そんな俺の冷たい目線もしらこく受け流し、更識さんが腰に手を当てる。

 

「ちょっと、ちゃんとした作戦よ?勝機もあるわ。」

 

ほんとーかなー

 

「まず、明日の試合では近接ブレードだけを使いなさい。」

 

爆弾発言

 

「ちょちょちょ!それじゃあ、蜂の巣じゃあ無いですか⁉︎相手は遠距離型で!それに近接が苦手だから絶対近づいて来ないだろうし…「そこが味噌よ」

 

いい、一夏くん?とずいっと顔を近づけられる。なぜか千冬姉が浮かんだ。

 

「きみ、セシリアちゃんと射撃対決して勝てると思う?」

 

にべもなく首をよこに振る。打鉄の装備では火力も飛距離も叶わないし、何より俺の腕がオルコットさんには到底及ばない。

 

「そう、確かにブレード一本で特攻したら。十中八九蜂の巣ね。」

 

かっこわる〜い。と耳元で囁かれ、そうなった訳では無いのにグッと心に刺さる。頭に俺の不甲斐ない結果を笑うクラスメートの姿が浮かぶ

 

「打鉄のサブマシンガンではブルー・ティアーズには叶わない。でもそれでも一発か二発くらいなら被弾させる事も出来るでしょうね。堅実な作戦よ。

観戦に来るだろう女の子達も「それなら仕方ない」って納得するだろうし。」

 

でも、更識さんは続ける。

 

「遠距離じゃ絶対勝てないわ。勝ち目が有るのは唯一…」

 

近距離だけだ。

 

解っている。俺とオルコットさんの間にはそれだけ差があるんだ。この作戦だって逆に言えばそれぐらいしか勝ち目がないという証。99.9%負け。そして負ければどれだけ必死に戦っても誰も俺の健闘を讃えてはくれない。

破れかぶれな戦法で順当に負けた馬鹿な男として笑われる。

そう思うと途端に身震いに襲われる。全寮制の生活でこれから3年間そんな扱いをされるかもしれないと思うと怖くなって来る。

 

「怖くなった?」

 

更識さんが聞いて来る。優しく笑うとだけどね?と続けて言った。

 

「一夏くんはどんなものが欲しいの?

「良い戦い」?

それとも「勝利」?」

 

ハッとする。

 

そうだ。俺が特訓を続けて来たのは何も負けるのを見越して、恥のかからない戦いぶりをするためじゃない。原因はしょうもない俺の自業自得だったが、

 

男が

 

一度決めたことを

 

投げ出してたまるか

 

「更識さん」

 

「もう、6日間の中でしょ?楯無って呼んで〜」

 

最後まで飄々とした人だ

 

「楯無さん。解りました、それで行きます。

俺、勝ちます‼︎」

 

それを聞いて楯無はバッと勢いよく扇子を開く「待ってました‼︎」と書いてある。

 

「よし!よく言った。さすが男の子。私の役目はもう終わったけど、当日はモニターで観戦してるから。頑張ってね。」

 

満面の笑みでウィンクを返して来る楯無さんに勢い良くお礼を言って、俺は踵を返して明日の準備を始めた。

 

おっしゃー!代表候補生かなんか知らないけど、一泡吹かせてやるぜ。




原作より早めの登場の楯無さん。
まさかの鈴にゃん越え!次回はセシリアとの対決を描きます。
IS組だけで話が進んでいますが、リリなのと555はもう少しお待ち下さい

※人気投票の開催。詳細は活動報告にて
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