IS:ボンド   作:田中ジョージア州

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代表候補生のセシリアの実力はあの千冬が一目置くほど。
特訓を積んだとは言え今の一夏との戦力差は覆し難い。そこで楯無は一夏に自滅覚悟の作戦を提案する。
周りの評価を気にして中々踏み込めない一夏を楯無は焚き付けヤル気にさせた。
遂にセシリア・オルコットの実力があらわになる。果たして一夏の刃は届くのか⁉︎



3話 激突!クラス代表戦

パチリ

 

眠りの世界からの下車を果たした一夏はベットから降り窓を開け、未だ肌寒い空気と水平線から顔を出した太陽を浴び体内時間をリセットさせる。

 

「おい、着替えの途中だ。冷える」

 

不意に声がした方向を向くと、仕切りを隔てた向こうからルームメイトの声が聞こえる。イカン。対決の前に大事な幼馴染に風邪を引かせてしまう。慌てて窓をピシャリと閉めた一夏に幼馴染の箒は何時もの歳離れした凛々しい声で語りかける。

 

「今日はいつにも増して早いな。まだ鍛錬に行く前だ。一緒に行くか?」

 

言い終わると仕切りを隔てた向こうから道着に着替えた箒が現れる。久し振りに見るその姿は6年前に見た時よりも精錬さが醸されていた。この6年、1日も欠かさず鍛錬に勤しんでいたのだろう。あの時はまだ自分が上だったが、今はもう叶わないだろう。付いて行ったらきっと邪魔になる。不甲斐ない同門の姿に叱咤されるかもしれない。

 

「ああ、わかった。」

 

それでも今日は行く気が湧いた。

 

寝間着から簡素なジャージをタンスから引っ張り出し着直した一夏は、箒と共に春の香りが漂う寒空の下を歩いた。

 

 

 

 

 

ーー道場

 

静かな道場内に響く、しなる竹の打撃音。高く軽い音がその軽量さを物語っている。ドタドタと走り回り横薙ぎに突撃する一夏に対し、箒はすり足でその攻撃範囲から素早く身を引き、後の先で逆に一夏の手元を打ち据える。

 

「小手!」

 

凛と澄んだ声と共に一際高い竹刀の音が響く。勝負はたったの二手で終わりを告げた。互いに直り礼をした所で箒が一言。

 

「弱い。」

 

罵倒の言葉はただし暴言の類ではなかった。一夏自身最も理解していること、弱くなった。

 

「明らかに一年以上剣を握っていないな?」

 

厳しい口調の箒に一夏は面の中で目を伏せる。

 

「中学では何部に所属していた。」

 

「帰宅部!三年連続皆勤賞だ。」

 

パン!

 

床に打ち据えられた竹刀に肩を飛び上がらせる。そのまま竹刀を床に置き両手で慣れたように面の後ろの紐を解いていく箒。恐る恐る一夏が顔を上げた時にはもう箒は面を外しこちらを見据えていた。先ほどよりも強くはっきりとした眼差しに一夏は蛇に睨まれたカエルのように固まってしまう。箒は決して目を逸らさず質問を続ける。

 

「引っ越したのちは何故剣を取らなかった。」

 

「おじさんの道場がなくなったし近くに道場もなかったし、何より千冬姉がそのまま働きに出ちゃったし……」

 

「千冬さんがいなかったからやらなかったのか?」

 

「いや、…うん。俺にとって剣道を始めた理由は千冬姉がそうしてたからだし。」

 

「あの人がやらなくなれば自分も辞めたということか?」

 

「あぁ、そういう事だ。」

 

一息。呼吸を小さくした箒は最後にと付け足す。

 

「お前にとって剣とはその程度のものだったのか?」

 

答えを待つ箒に対して一夏は謝罪を述べるしか出来なかった。

 

 

 

そうか。お前にとってはその程度か。

 

謝罪を繰り返す一夏に対して箒は呟くように心で思う。

 

一夏はこの質問を自分の不甲斐なさに憤慨していると思っているが、実際は違う。確かに6年前より格段に弱体化したかつての同門に憤りを覚えたのは確かだ。しかしそれよりも箒は一夏にとっての剣の道が存外軽いものだということに悲しみを覚えていた。

 

 

 

自分にとって剣道は想い人との唯一の共通点であり、一夏は剣士としての目標でもあった。別れた6年、1日も休まず鍛錬を続けたのも剣士としてあの背中に追いつきたかったからであり。遠く離れた想い人との繋がりを切りたくなかったからだった。

 

しかしその想いを抱いていた相手にとってはそうではなく。実質一夏は剣道に対しての拘りも未練も全く抱いてはおらず、それは謝罪を繰り返し述べる今の姿から見ても明らかだ。

 

なにより。

 

これで新ためて、織村一夏が()()()()()()()()()()()()()()()ことが解ったことが更に箒には辛かった。好きな人との繋がりを切りたくなかった自分に対して、一夏は躊躇いもなくその事を行なった。また会える。その時はまた遊ぼうと友達に対しての想いと共に。

 

 

 

(分かってはいたが応えるな、これは。)

 

目の前で謝罪を続ける一夏を目にしてそうじゃないと思う。違うお前は悪くない。これは私の勝手な想いだ。実るかどうかわからないしお前が幸せになるかどうかも分からない。完全な自己満足だ。だがそれでも…

 

私は頭を下げたままの一夏に対して上げるように言った。恐る恐るという風に私の表情を伺う一夏はまだ申し訳なさそうにしている。

 

まったく…つくづく嫌いになれない奴だ。

 

「今日が対決の日だったな。」

 

突然の話題に目を丸くさせる一夏に構わず告げる。

 

「勝てよ。」

 

こう言えば良い。他は兎も角お前の事だ。こう言われればどんな状況に置いてもこう返す。大きく、威勢の良い猛る声で。

 

 

 

「ああ、任せとけ‼︎」

 

やはり、お前はあの時から変わってないんだな。

 

「ならサッサと部屋に戻って眠って来い、起こしてやる。」

 

「ほんとか!サンキュ箒。実はこの時間帯つらくて。」

 

そう言って意気揚々と道着を片付けるこいつを見ると不思議と抱いていた感情も霧散する。安心した。こいつは紛れもなく織村一夏だ。

 

走り出していく背中はあの時とまるで変わらない。

 

 

 

 

 

 

 

よーし、二度寝だ。二度寝だ〜

 

「一夏!」

 

びくっ

 

「はいぃ!」

 

なに⁉︎また怒られる⁉︎恐る恐る振り向くと箒は厳しい表情のまま、

 

「出る時は一礼だ。」

 

あっそうだった。いけね、6年振りだとこんな基本的な事も忘れんのか。道場に振り返り姿勢を正す。重要なのは見た目の良さより感謝の気持ち。武に対する真摯な気持ちが重要なんだと千冬姉から教わった。今はしなくなった武に対して感謝の気持ちと。

 

激励をしてくれた箒に対しての精一杯の感謝。

 

「よし。」

 

お許しを貰った、さて二度寝するか。俺は走って部屋に戻った。軽くシャワーを浴びて寝間着に戻ってベットに戻る。見てろよ箒。続きの感謝は勝ってするからな。

 

 

 

 

 

ーーアリーナ格納庫

 

 

 

 

 

「織斑くん!織斑くん!」

 

慌ただしく駆け込んでくる副担任の山田真耶。相変わらず壮観な眺めだなぁと大きく揺れ動く二つの母性に目を奪われる一夏だったが、直ぐに収めて何事かを問う。

 

「織斑くんの専用機ついに届きました。」

 

朗報到来。しかし感じるは静かな安堵。只でさえ実力の差が開いているのに、機体のスペック差まで加われば勝ち目はゼロに近い。実は朝からそのことが気がかりだった一夏はやっと届いた専用機に取り敢えずの安堵をした。

 

「織斑、早く入って見ろ時間が押している。」

 

既に対戦予定時間は過ぎている。地上でISを展開しているセシリアをこれ以上待たせるわけにはいかない。急かされるように格納庫へ入る。

 

白がいた。

 

「織斑くんの専用機『白式』です。」

 

かつて見た生まれて始めてのIS。やはり人が乗っていないと何処か寂しい印象があるが、この機体からはそれと同時に何処か確かな頼もしさを感じる。思わず惚ける一夏に千冬からの激が飛ぶ。

 

「サッサとしろ不戦敗になりたいか。」

 

慌てて装着を始める一夏。千冬の指示を頼りにしながら白式に身を任す途端。体感的にあの時以上の密度の情報が流れ込んでくる。しかし不快感はない。何処か安らぎにも似た感覚に自然と高揚感が沸いてくる。格納庫の先から見える青空に、今直ぐ飛び出して行きたくなってくる。

 

「時間がない。フォーマルとフィッティングはやりながら済ませ。」

 

千冬の言葉を頷きで返し、応援に来てくれた箒に目を向ける。不安そうな顔で自分を見上げる箒に不思議と心の高揚が丁度よくおさまる。

 

「箒。」

 

「な、なんだ。」

 

上手くは言い表せ無いが、いや続きは行動で示す。今言うことは。

 

「行ってくる。」

 

簡素で良い。

 

「ああ、勝って来い。」

 

簡素には簡素で。こういう時の箒とは最高に話が合う。

 

晴れやかな気分のまま一夏は白式のスラスターを吹かせて空へと飛び立つ。あっという間に差を詰めてあわや激突という距離でふわりと柔らかすぎる急制動を掛けて危なげなく着地する。両者の距離は1メートルを切っていた。

 

「中々良い機体を選んで参ったのね。良い加速と制動力ですわ。」

 

「それはどうも。………」

 

話を切り上げたのでは無く急なだんまりを決め込む一夏にセシリアは不審がる。

 

「どうなさったの?」

 

「悪かったなって…俺の我儘でこんな大袈裟な事態になっちゃって。」

 

こうしてここに立っているが、セシリアは決して自ら選んで立っている訳では無い。自分の勝手な申し立てでここに付き合わされている事に一夏は負い目を感じていた。しかしセシリアは穏やかに笑って。

 

「構いません。それより準備は良くって?」

 

「ありがとう。俺は良いぜ、オルコットさんは?」

 

「誰かさんのお陰でたっぷりと準備時間を頂きましたので。」

 

皮肉とともにセシリアを中心にブルー・ティアーズから四つの飛行体が飛び出す。ビットだ。

 

「号令はこれで宜しいかしら?」

 

にこやかな笑顔とともに白式からアラートが鳴る。ビットに溜まるエネルギーを探知したのだ。後数秒で襲いくるレーザーに対し冷や汗を流しながら一夏は不敵に答える。

 

「ああ、来い‼︎」

 

 

 

()()

 

 

 

四つのビットの内一つから発射されたレーザーに対し一夏は事前に白式のセンサーから予測し前へと飛び出す事で対応した。コンマ数秒後、まさに来光。襲い来る青い光線は先に飛び出していた功が奏し右肩の装甲を掠めるだけに済んだ。

 

「おおおおお!」

 

雄叫びをあげながら白式唯一の装備である近接ブレードを振り被る。しかし相手は代表候補生。レーザーを交わしての突進など軽く反応し、上空へと飛び立ち一夏の初撃は空を切る。

 

再び来光。

 

コンマ数秒で上空から残りのビット全てによる集中狙撃が一夏を襲う。完全に出鼻を挫かれた一夏は、しかしそれでもシールドエネルギーを削りながら突進を繰り返す。身をよじることすらせず、近接ブレードを盾にただ突貫を続ける一夏にセシリアの表情が強張る。直ぐにビットによる射撃を止め、新たに展開したライフル。スターライトmkⅢを手に、後方へと移動しながらの引き撃ちに戦法が変わる。突進を続ける一夏はビットよりも高威力のレーザーを何とかブレードで捌きながら一つの単語が頭をよぎる。

 

 

 

 

 

ーー校舎内 生徒会室

 

(バレた)

 

アリーナから離れた校舎、その中の部屋の一つである生徒会室。そこで戦闘の様子をモニターで観戦していた現生徒会長、更識楯無はそう判断する。防御を捨てただ愚直な直線攻撃を仕掛ける一夏の姿は作戦を提案した自分から見ても、悪いが無様だ。しかし対戦相手のセシリアはその真意が自暴に寄るところでは無いと気づいたようだ。接近戦を不得手とする自分に対し格闘戦で勝負する。単純だが、確かな根拠がある戦法だということは今必死に一夏の突進からスラスター全開で逃げているブルー・ティアーズの姿からも明らかだ。

 

「まずい展開になりましたね。」

 

そう楯無に告げるのは共に生徒会のメンバーである会計担当 布仏虚である。

 

「織斑君の唯一の勝機は接近してからの格闘戦ですが、こうなってはその前にシールドエネルギーが底を尽きます。素早い判断力は流石候補生レベルですね。」

 

虚の言葉通り、素晴らしいのはセシリアの状況判断。一夏の狙いを短いやり取りで見抜き対抗策を講じて来る。やはり機体性能以前の能力差は大きい。しかし楯無は不敵に笑って『甘い』と描かれた扇子を開く。

 

「でも情報が渡ったのは一夏くんだけじゃないわ。逆にこの素早い判断で一夏くんに弱みを流してしまった。」

 

 

 

 

 

ーーアリーナ

 

「やっぱり、ビットのながら運転は出来ないんだな!」

 

短い攻防でこちらの意図を見抜き、直ぐに潰して来たその判断力には舌を巻いたが、これではっきりした。

 

 

 

セシリアはビットを使用している時は他の行動が出来ない。

 

 

 

ーー生徒会室

 

楯無から聞かされた話に虚は成る程と相槌を打つ。

 

「人間の脳では複数の物事を同時並列で行うことは困難を極める。ISが元来『思考力』というものに重点的に補助を回しているからこそ出来るとはいえ、矢張りビット兵器には人間の処理能力に限界が生じる。」

 

その通りと描かれた扇子を広げ、楯無は代わりに説明する。

 

「だから一夏くんの狙いが解ってもビットではなくライフルを使った。ビット四機の並列操作にはスラスターを動かすだけの余力も残らないのよ。」

 

そして、と笑みを湛えて続ける。

 

「多方向からのビットと違い、威力は高いながらも一方向からしか撃てないライフルでは被弾率も変わって来る。」

 

モニターの中では一夏が飛来するレーザーを紙一重で交わし、ブレードで弾きながら突っ込む姿が映っていた。

 

 

 

 

 

 

 

ーーアリーナ

 

先ほどよりも高威力に成った光速の攻撃にも一夏は寧ろ余裕を抱いていた。

 

(避けやすい、今までのと比べたら格段に!)

 

四方八方を飛び交いながら射撃が出来るビットと比べれば、ライフルのレーザーなど角度も数も敵ではない。そして、好機はまだあった。

 

(白式の方が速い。)

 

ここまで来て漸く一夏にもセシリアを上回るものが生まれた。白式の性能は一夏の想像以上だった。このまま行けば間も無く射程距離に捉える。そして遂にブレードを届かせうる距離へと近づく。

 

 

 

ーーアリーナ格納庫

 

「凄いですね織斑くん。代表候補生相手に善戦してます。」

 

モニターを見ながら感心する真耶。こちらも一連の攻防を理解した上での感想だ。それに対し千冬はある一点を見つめ。

 

「…浮かれてはおらん様だな。彼奴にしては珍しい。」

 

「浮かれてる?」

 

聞き返す真耶に千冬は説明する。

 

「彼奴の癖でな。浮かれている時は左の両の手を開いたり握ったりを繰り返す。その時は大抵ミスをする。」

 

「さすが、ご姉弟ですね。」

 

真耶の感嘆の声を受けながらも千冬は厳しい表情でモニターを凝視する。何か嫌な予感がしていた。

 

 

 

ーーアリーナ

 

あと2メートル

 

 

 

あと1メートル

 

 

 

あと30センチ

 

 

 

来た‼︎射程距離‼︎

 

 

 

「うおおりゃぁぁぁ!!!」

 

腹から声を飛び出させ勢いそのままブレードを振るう。

 

「つっー!」

 

箇所は脚部。火花を散らしながら高速域で大きくふらつくブルー・ティアーズに観戦していたクラスメート達が湧き立つ。

 

「うわ、やった!」

 

「ほんとに当てちゃったよブレード。」

 

「もしかするとイケるんじゃない⁉︎」

 

「うん!ビットは動きながらだと使えな………」

 

不意に静まる歓声。そこに広がったのは『蒼』

 

展開したビットを四機フル活用しながら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()姿()だった。

 

 

 

ーー生徒会室

 

「まさか⁉︎」

 

モニターに広がる光景に思わず叫んでしまう虚に、冷や汗をながしながら楯無が答える。手に持つ扇子には大きく『⁉︎』と描かれていた。

 

「あの子の頭ん中どうなってんのよ。実は悪の秘密結社に改造されて知能指数600の天才になってるとか?」

 

「あの人は改造される前から知能指数600です。お嬢様。」

 

軽口を叩く楯無を諌める虚。しかし呼び名がお嬢様となってしまう辺り、未だ混乱が冷めやらないようだ。そして、

 

「一夏くん!」

 

楯無が悲鳴を上げる。モニターには遂に白式を中心に上がる大爆発が映っていた。

 

 

 

 

 

ーー格納庫

 

「一夏!!」

 

モニター越しに声を張り上げる箒に他の2人も目を向ける。悲痛な面持ちの箒は爆炎を上げる白式に思わず飛び出そうとし、

 

「待て‼︎」

 

彼女の担任が止める。思わず立場も忘れて睨みつける箒に、静かに落ち着けと告げる。

 

「機体に救われたな。」

 

どういう意味だ?

 

釣られるようにモニターを見返す箒は一つの変化に気付く。

 

「白式が……変わった?」

 

 

 

ーーアリーナ

 

体が軽い。力がどこまでも湧いて来る。こいつとなら宇宙空間(どこまでも)飛んで行ける。

 

 

 

「まさか一次移行(ファーストシフト)?あなた、今まで初期設定の機体で戦ってましたの?」

 

さすがに驚きの声を漏らすセシリア。一夏は新たに変更された武器欄を見るとそこには思いもよらぬ名前が入っていた。

 

 

 

雪片弐型(ゆきひらにがた)

 

 

 

織斑千冬がかつてブリュンヒルデに輝いた際に使っていた彼女の愛刀。成る程通りで近接ブレード一本しかないわけだ。

 

「俺は世界一すばらしい姉を持ったよ。」

 

「なんのことですの?」

 

急に語り掛ける一夏に訳が分からないという風に返すセシリア。

 

「千冬姉の名誉の為絶対負けられないって話さ!!」

 

一気に飛び出す一夏にセシリアの顔つきが変わる。

 

「さきほどよりも速い……!」

 

ビットを操作して迎撃するも、更に加速した白式は逆にビットを破壊しながらセシリアに突っ込む。頼みのビットが破壊されても少しも気に留めず。瞬間、ブルー・ティアーズの腰部が迫り出し二門の方が一夏を狙う。

 

「お生憎様。ブルー・ティアーズは四機ではなくってよ?」

 

今度のビットはレーザーではなく実弾。速度は劣るが誘導性能を持った追尾弾が白式を攻め立てる。しかし、

 

「しゃらくさぁい!!」

 

通じない。全て切り落とした一夏は最後の切り札瞬時加速(イグニッションブースト)を使用してセシリアに突っ込む。構えようとしたライフルを切り裂き、遂に達した格闘戦。

 

「終わりだぁぁぁぁ!!!!」

 

絶頂の高揚感。

 

絶対の時間。

 

あらゆる感覚が鋭敏になり、景色がゆっくりと流れるのを一夏は極限の精神状態の中感じた。雪片弐型がセシリアに吸い込まれていくのを認め、彼の意識は袈裟斬りに切り裂かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

周知の状況、しかしそれを認められたものは限られた者しかいなかった。

 

 

 

箒はそれを辛うじて捉えていた。剣道全国大会優勝者の動体視力と反射神経がその全容を認めさせた。ただ体は大分後に反応した。

 

 

 

教員2人は暫しの間、声も出せなかった。目の前で起こったことに思考が追いつかなかった。唯一千冬だけがそれに正しく感想を抱いた。あり得ないと。

 

 

 

虚は状況の説明を求めようと自分の主人を見て、驚愕する。新しい扇子を取り出す間も無く目を見開いて硬直する学園最強の姿に。

 

 

 

 

 

事は単純。一夏は切られたのだ。

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

『勝者セシリア・オルコット』

 

誰も上げない歓声の代わりに静かにアナウンスが勝敗を告げていた。




セシリアvs一夏これにて終了です。
場面切り替えでのバトル描写如何でしたか?読み辛かった方はいないでしょうか。
ては次回。

※人気投票の開催。詳細は活動報告にて
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