オリ主「綺凛。お前、明日から序列一位な」 綺凛「………………ほぇ?」 作:帆金 焔
では、どうぞ( *・ω・)ノ
北関東多重クレーター湖上に浮かぶ水上学園都市“六花”、またの名を学戦都市“アスタリスク”。
その一角である“星導館学園”に一人の少女が居る。
「………はぁ~~…………」
星導館学園中等部一年、名を刀藤 綺凛。
彼女は最近、序列戦において冒頭の十二人のトップである序列一位になった。
当初はアスタリスクにきて数日で序列一位になった驚異的な早さ・小動物のような見た目からは想像もつかない圧倒的な強さなどにより、綺凛の存在は人々の話題をさらっていた。しかし今は叔父・鋼一郎と星導館学園の生徒会長のフォローもあって沈静化に至っている。
「……はぁ~~………」
さて。序列一位と言えば序列戦に参加する者なら誰もが目指す頂であり、当然ながら綺凛もまた、序列一位を目指す人間の一人であった。
………だがしかし。
綺凛には、自身の序列一位昇格をどうしても素直に喜べない理由があった。
「………お兄ちゃん……………」
綺凛の口から零れる『お兄ちゃん』の一言。
綺凛に兄は居ない。弟も居ないし、姉・妹も居ない一人っ子。ただ、昔から『兄』と呼び慕う人物が居るというだけ。
綺凛が『兄』と呼び慕うその人物、名を
ではこれより、刀藤 綺凛、序列一位昇格の経緯について話をしよう。
始まりはまさに突然。兄・昴のとんでもない一言からだった──。
〇〇〇
「──っと。そうだ、綺凛」
それはとある日、星導館の食堂で昴と昼食を摂っていた時のことだ。
「お前、明日から序列一位な」
昴の口からそんな一言が飛び出す。
綺凛は最初、目の前の人物が何を言っているのか分からなかった。口に含むところだった野菜サラダを改めて口に含み直し、一口三十回、よく噛んでから飲み込む。コップに入っていた水を一口飲み、それから昴に尋ねた。
「──……ほぇ?お兄ちゃん、今、何て言ったの?」
気のせいか、うん、気のせいだろう。何やらとんでもないことを言われたような気がするが、きっと自分の気のせいだ。綺凛はそう思っていた。
「だから。俺、序列一位辞めてその座をお前に譲るから、お前が明日から星導館の序列一位な」
気のせいじゃなかった。軽いノリで、全く軽くないことを言う昴。
うん、落ち着こう。よし、落ち着こう。落ち着こう、落ち着こう、落ち……落ち……──
「───ええええぇぇぇぇーーーーーーー!?!?!」
──落ち着けるはずもなかった。食堂に綺凛の絶叫が響き渡る。
「ちょっ……お、お兄ちゃん?!わ、私が序列一位?!ちょっ、まっ、えっ、ええぇぇー?!?」
「あっ、そうそう。もう、くろ助には話通してあるから」
昴が言う『くろ助』とは。星導館学園生徒会長、クローディア・エンフィールド嬢のことである。…相手が年下とはいえ、自分が通う学校の生徒会長をアダ名で呼ぶのは彼だけではなかろうか。
「お、お兄ちゃん!序列一位辞めるってどういうこと!?っていうか私が序列一位って!?私、お兄ちゃんに勝ってないよ!?」
綺凛は過去、昴に何度も挑み、その度に敗北を味わい、勝利を掴んだことはない。それでもめげずに挑み続けたのは、いつも見ていた背中をいつか追い越す、その一心でだった。それはアスタリスクへ来た理由の一つでもある。……しかし、その願いが今、思いもよらない形で叶おうとしている。綺凛にとってはおいそれと受け入れられることではなかった。
「そう言えばそうだな…………よしっ」
昴は右手で握り拳を作り、
「ほれ、綺凛。最初はグー、じゃんけんポン」
昴からの突然のじゃんけん勝負。咄嗟のことだったがつい反応してしまった綺凛が出したのはチョキ、それに対して昴が出していたのはパー。……
「よしっ、俺に勝てたな。ほい、序列一位おめでとぉ~」
コケた。綺凛の絶叫から二人の状況を見ていた生徒達はコケた。それはもう、某新喜劇よろしく見事なコケっぷりで。
ただ一人、綺凛だけは──
「──お兄ちゃんっ‼」
テーブルを叩き、昴との距離を縮める。
「真面目に答えて!」
「お、おう…。ってか綺凛「何っ!?」顔、近いんだが」
お互いの鼻先数㎝。ぶっちゃけ、あとほんのちょっと前に出ればキスしてしまう距離である。
「──っ!?/////」
バッと離れる綺凛。
「くくくくっ……………あ~、要は俺が序列一位を辞める理由を知りたいんだな?」
「そ、そうだよ……///」
まだ恥ずかしいのか、昴とは目を合わせないものの、綺凛は頷く。
「…………なぁ、綺凛」
急に、昴の声のトーンが変わる。その声で、昴の顔を見た綺凛は軽く驚いた。
自分に向ける昴の眼差しが凄く真剣だったからだ。
綺凛は思う。昴にはきっと、序列一位を辞めなきゃいけないほどの並々ならぬ事情があるのだと。
「…………ちょい、場所変えよっか?ぶっちゃけ、お前のせいで周りから見られまくってるんだよ」
昴の言葉に周りを見回す。聞き耳を立てていたことを誤魔化すかのように、周りから目を逸らされた。
「ほら、行くぞ」
〇〇〇
所変わって星導館学園の中庭。そこにあるベンチに二人は移動していた。
「……さっきは悪かったな、綺凛。確かに、お前に断りもなく勝手に話進めていきなり言うってのは軽率だったかもしれん」
「ふぇ…!?い、いいよ!もう気にしてないから…!そ、それよりも──」
「俺が序列一位を辞める理由、だったな……」
座っていたベンチから立ち上がり、大きく伸びをする昴。ベンチに座ったままの綺凛には昴の顔を見ることこそできないものの、昴の背中から感じる重い空気は、昴が語るであろう『理由』に直結しているように感じた。
「…俺には、序列一位を辞めてでもやらなきゃいけないことがあるんだ。それは──」
綺凛は固唾を飲み、昴の言葉を待つ。
「──自分が犯した過ちを償うためだ」
序列一位を辞めなきゃいけないほど。果たして、道ノ瀬 昴の過去の過ちとは──!?