オリ主「綺凛。お前、明日から序列一位な」 綺凛「………………ほぇ?」   作:帆金 焔

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原作との相違点を一つ。この世界では刀藤 鋼一郎氏、顔つきはそのままですが普通に良い人です。どのくらい良い人かというと、ビール片手にバラエティー番組を観て爆笑出来るくらいに良い人です。ちゃんと、姪の心配をしたりサポートも出来たりします。綺凛との関係は良好です。


昴の罪と綺凛の決意

 

「──自分が犯した過ちを償うためだ」

 

 

 

 重く開かれた口からは、相応に重い言葉が出てきた。

 自分が犯した過ちを償うため、その言葉を聞いて綺凛は不安になった。それは昴に少々、物事を一人で抱え込んで解決しようとする嫌いがあるからだ。

 頼ってほしい。自分に出来ることは微々たることだろうとしても、それでも昴が一人で何かを抱え込んで苦しむのは嫌だ。だったら、その微々たることでも昴の力になりたかった。

 

「………お兄ちゃん……、何があったの……?」

 

 だから綺凛は問う、昴に何があったのかを。力になりたい、その意志を込めて問おた言葉は昴に届き、昴は優しい笑みを浮かべて綺凛の頭に手を置いた。

 

「……ありがとうな、綺凛」

 

 昴はニィッと笑い、綺凛に言う。

 

「お前さん、将来は良い女になるぞぉ♪」

「ふぇっ!?////」

「そうだなぁ~………。俺に彼女が出来なかったら将来、綺凛を嫁に貰うってのも有りか」

「ふ、ふぇぇぇええ~~~!?!?!/////」

 

 

 ボヒュンッ。まさにそんな音が聞こえそうなぐらい、綺凛の顔が赤く染まる。勿論、綺凛自身はそれが昴の冗談だと理解しているが如何せん、昴に対して全く好意が無いわけでもないので落ち着くのに多少の時間を要してしまうのだ。故に少々お待ちいただく必要「……だ、大丈夫です////」そうか?なら続けよう。

 

 

「くくくくっ……!相変わらず、からかい甲斐があって良いなぁ♪……気持ちだけ、ありがたく貰っとくよ、綺凛。でも悪い、これは俺の問題だから……。……お前を巻き込むわけにはいかないねぇよ」

 

 やっぱり頼ってくれなかった。その事に一抹の寂しさを覚えながらも、綺凛は改めて問う。

 

「……じゃ、じゃあ。せめて、何があったのかだけ教えて……!」

 

 綺凛の懇願に昴は応えてくれるだろうか?

 

「……そこまで言われたら、妹を心配させるわけにはいかんわな」

 

 応えてくれた。

 

「綺凛はさ──」

 

 虚空を見つめながらも、昴の口は開かれようとしていた。

 

 果たして、その口から語られる『過ち』とは如何なるものか。そして、綺凛はそれを受け止められるだろうか。

 

 

 

 では、語ろう。最強が犯した『過ち』を。その座を手離してても成したいと思う『償い』を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──俺が去年、京都に日帰り旅行行ったの覚えてるよな……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……恐らくだが今、これを読んでくれている読者方々の思いが一つになるという奇跡が起きてはいないだろうか?そうでなくても、大多数の人が同じことを思う、或いは近しいことを考えてはいまいか?大丈夫、今この時点では貴殿方の認識に間違いはない。

 

 ……だがここは、敢えて先に進ませていただこう。

 

「………う、うん……覚えてる……よ……?」

 

 予想もしていなかった昴の言葉に困惑する綺凛。

 京都への日帰り旅行。それは昨年、昴がアスタリスクから帰省した折、

 

 

『俺、明日、京都に遊びに行ってくるから』

 

 

 ──などと、実に軽いノリで実行したことだ。

 因みに、昴が京都旅行に思い至った切っ掛けも実に単純で。テレビで京都の特集が組まれているのを観たとき、「…あっ。京都行きてぇ」と思ったかららしい。

 

 だが、綺凛が知りたいのは序列一位を辞める理由であって京都旅行の話じゃない。

 しかし、そんな綺凛を余所に昴は語り出す。

 

「あの旅行は本当に楽しかった……。多少の苦労はしたが最後は、本当に行って良かったと充実感もあった……」

 

「だが……」と話を一旦区切る昴。

 

「俺はあの旅行で……()()を犯した……!」

 

 ──ん?過ち?

 

「ロクな計画も立てず、殆どノリだけで行っちまったことだ……!」

 

 

 

 曰く。昴はその旅行で幾つかの失敗をしてしまったらしい。

 

 京都での移動は全て、レンタサイクルと徒歩のみだった昴。最初の目的地を渡月橋と定め、いざ出発。と、ここで一つ目の失敗。

 

 距離と時間を甘く見ていた。

 

 夏の日差しのもと、自転車を漕ぐこと一時間半。

 予想外の距離と時間に、甘く見ていたこと自分を悔やみつつ、それでも着いてからは渡月橋の景色を堪能した。

 

 それからしばらくして、昴は次なる目的地を伏見稲荷に決め、動き出そうとした。が、道が分からなかったために、近くに居た人力車の引き手の男性に道を尋ねる。

 

 ここで、二つ目の失敗が発覚。

 

 尋ねたところ、伏見稲荷は京都駅を挟む形で渡月橋とは逆方向であることが判明。その事実に衝撃を受けた昴は仕方なく伏見稲荷を諦め、行き先を清水寺に変更した。京都駅から渡月橋まで以上の時間と距離があったのは言うまでもないが。

 

 清水寺の前に、昴には立ち寄りたい場所があった。日帰り旅行の事前に書店で購入した京都のガイドブックで見つけた店で昼食を摂りたいと考えていた。……が、その先でまた新たにトラブルが発生する。

 

 見つからない。目的地としていた店が見つからないのだ。

 

 清水寺の前、沢山の土産物屋が連なる、その中にあるらしいのだが、見つからない。やたら見つからない。ウザいくらいに見つからない。

 その後、漸く見つけたものの更なる不幸が昴を襲う。

 店内は満席。その事から連なり、当然ながら店の外には順番待ちの列が出来上がっている。更に更に、店先には順番待ちの予約表が用意されており、その予約が既に締め切られていたのだ。因みにその衝撃的事実を目の当たりにした時点で、時間は午後三時を過ぎている。

 

 伏見稲荷を諦め、昼食も諦めた。

 

 最後の清水寺──も、帰りの時間を考えると諦めざるを得なかった。

 

 何が駄目だったのか?事前の計画性の足らなさもそうだが、根本的な所で『時間』だ。目的をこなすのに、日帰りでは時間が足らなさすぎたのだ。

 

 

 

「──俺は誓った…。…リベンジだ、絶対にリベンジをしてやると……!日帰りじゃない…、一泊二日、いや……二泊三日は余裕で出来るくらいの金を貯めてリベンジをしてやる!つまり、リベンジ・ザ・京都‼」

 

 力強く、空に向かって拳を掲げる昴。

 

 

 さて……、読者方々はお気づきだろう。当然、綺凛も気づいている。綺凛はそれを口にした。

 

「お、お兄ちゃん………」

「──ん?」

 

 

 

 

 

 

「そ…それ……………序列一位辞めることと全然、関係……無いよね……?」

 

 

 

 

 

 

 そう、関係無いのだ。真夏のビーチに雪山登山の格好で行くぐらい関係無いのだ。

 

「はっ?関係なら大有りだ」

 

 あっ、有るんだ──。

 

「俺も何とかなるだろうと思ってたさ。でも──」

 

 昴の戦闘スタイルは武器を使用しない、拳を主とした素手での肉弾戦。

 それ故、誰も昴が煌式武装を使って戦っている姿を見たことがない。誰も、昴がどんな純星煌式武装(オーガルクス)を持っているのかを知らない。昴にとってはその事が災いし、いつの頃からか、道ノ瀬 昴についてこんな噂が流れるようになった。

 

 

 道ノ瀬 昴が持つ純星煌式武装は星導館最強を誇り、道ノ瀬 昴に純星煌式武装を使わせた者が新たな序列一位になれる。

 

 

 昴にとっては迷惑この上ない噂だった。何せ、噂のせいもあって挑んでくる者が後を絶たない。

 

「あいつら、こっちの都合(主にバイト方面)も考えずに挑んでくるんだよ……」

 

 決闘のせいでバイトに遅刻したのは一度や二度じゃなく。それに、昴は思い出していた。以前、星導館のとある生徒(《魔女(ストレガ)》)を相手にして、それが元でバイト先に迷惑をかけてしまったことを。

 

「だから俺は思った……!あっ、だったら序列一位辞めれば良いんじゃね?それなら、空いた時間はバイトに専念出来るじゃん。……と言うわけで、序列一位を辞めることにした」

 

 ゴ~~~ン。綺凛の頭の中では、何処ぞのお寺の鐘が鳴り響き、カラスが『アホー、アホー』と鳴く、そんな夕暮れ時の光景が一瞬で浮かんだという。

 

(………………)

 

 開いた口が塞がらない、とは正にこういうことを言うのだと綺凛は身をもって実感した。

 こんなの、誰にも予想できない。どれだけ重い話かと思えば軽かった。ボーリングの玉だと言われて投げ渡された物が実は似せただけの発泡スチロールの玉だった、くらい軽かった。

 綺凛は問う。既に答えは出ているが、その答えが信じられなくて、綺凛は昴に問おた。

 

「お、お兄ちゃん………。つまり……お兄ちゃんが序列一位辞める本当の理由って……きょ……京都旅行のため……?」

 

 昴の冗談であることを願った。それならまだ、綺凛には許容できる範囲だったから。

 それに、だ。何処の世界に、旅行一つのために最強の座をアッサリと手放す人間が居るというのだろうか。

 綺凛の問いに昴は答える。そりゃあもう、正直、若干イラッとするぐらい、晴れやかな笑顔で答えた。

 

 

 

「おうっ‼♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 思わずにはいられなかった。

 喩え、越えるべき壁であろうと、想いを寄せる人物であろうと、綺凛は思わずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バカだ……!ここにバカが居る…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〇〇〇

 

 

 

「……はぁ~~~…………」

 

 

 ──以上が、刀藤 綺凛、序列一位昇格の経緯である。綺凛が自身の序列一位昇格を素直に喜べない理由、ご理解頂けただろうか?

 因みに。もし、シリアスな展開を期待していた方が居たなら、ご期待に添えなかったことを謝罪しておこう。

 

「……お兄ちゃんのバカ…………」

 

 綺凛が『バカ』と呟くのも無理はない。

 幾ら当人が真剣だろうが、他人が聞くには実にバカらしい理由なのだから。

 綺凛は今回の件を叔父・鋼一郎に相談した。相談したところ──

 

 

 

〇〇〇

 

 

「ぷっ…………くくくっ…………エ、エンフィールド嬢から昴君の事については連絡が来たが……く……くくくっ………そ、そうか………まさか、そんな理由だったとは…………くくくっ…………ははははっ!いやぁ~。実に、彼らしい理由じゃないか…!」

 

 

 

 ──爆笑された。

 

 

「もうっ!叔父さま、笑い事じゃありません!」

「はははっ……すまんすまん」

「……………」

「……やはり、納得できんか?」

 

 当然だ。理由が理由なだけに、簡単に納得なんてできない。序列一位に限らず、どんなことでも努力して勝ち取ってこそ、意味と価値があるのに、間をすっ飛ばしてゴールに立たされて、自分はどんな感情を抱けばいいというのだろうか。

 

「ふむ……………だったら、こんなのはどうだ?」パチィンッ

 

 名案が浮かんだ、ばかりに指を鳴らす鋼一郎。

 

「後悔させてやれば良い」

「後悔、ですか…?」

「そうだ。お前が昴君を越える序列一位になって彼に、最強の座を手放したこと、それを後悔させるんだ」

 

 言うは単純なれど、することは単純にあらず。確かに鋼一郎が言うことも手段の一つと取れる。……だが、綺凛は理解している。それが無駄であるということを。

 

「………叔父さま?」

「ん?」

「あの人が、()()()()()で後悔すると思います…?」

 

 二人は知っている。道ノ瀬 昴が如何なる人間かを。故に、容易に想像できてしまうのだ──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おぉ~~っ!?!凄ぇじゃん、綺凛‼』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──自分のことのように喜んでくれるであろう昴の姿が。

 

「「………………」」

 

 二人の間に何とも微妙な空気が流れる。

 鋼一郎としては名案だと思った手前、このままでは立つ瀬がない。姪にアッサリと覆され、しかも、覆される理由を自分でも理解していて、さてこの空気をどうすれば良いか。

 

「………………ま、まあ。序列一位になった以上、今後はより一層、精進せねばならんな」

 

 綺凛は思う。あっ、逃げやがったなと。

 

 

 

〇〇〇

 

 

「…………………はぁぁ~~~~……」

 

 一層の深い溜め息。……刀藤 綺凛。君の心中、お察しする。

 

「………………………」

 

 これから自分はどう在るべきか、綺凛はそれを考える。

 望んでいた物を望まざる形で手に入れてしまった。そんな自分が序列一位に座してて良いのだろうか?正直なところ、今からでも辞退するべきかどうか悩んだ。

 

 綺凛は悩んだ。

 

 

 悩んで──

 

 

 考えて──

 

 

 悩んで──

 

 

 考えて──

 

 

 

 

 

「…………………………………よしっ、決めた」

 

 心は決まった。

 

「序列一位はこのまま、続けよう…!」

 

 座することを辞めない、それが綺凛の出した答えだ。そして、その答えには続きがある。

 

 いつか必ず、かつての最強に挑む。

 

 もしも昴に勝つことができたならその時はきっと、自身が序列一位であることに胸を張れるはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん……!私、絶対、お兄ちゃんに勝ってやるんだから……‼」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて。これにて、一応の幕引きとさせて頂こう。

 む?肝心の道ノ瀬 昴はどうしたのかって?

 では最後に、彼が何をしているのか見てから終わりとしようか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      《おまけ》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《親の心子知らず》、意味は『子を思う親の心をよそに、子供は勝手に振る舞う』。

 これを刀藤 綺凛・道ノ瀬 昴で当てはめるなら《妹の心兄知らず》と言ったところだろうか。『兄を思う妹の心をよそに、兄は勝手に振る舞う』。ただ単に、親→妹・子→兄と置き換えただけだが、妥当ではあるだろう。

 

 

 で。

 

 (綺凛)の心を知らない()はというと──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………」

 

 商業区にある大型書店。そこに道ノ瀬 昴の姿はあった。

 様々なジャンルの書籍がそろう中、その一角にて昴が立ち読みを始めて一時間が経つ。

 

「……………………ニヒッ♪」

 

 昴は自身で気づいているだろうか?ニヤニヤしたり、ニヒッなどと声に出してしまっていることを。

 はたから見れば怪しいことこの上ないが、昴は決して漫画コーナーでニヤついてるわけでも18禁コーナーでニヤついてるわけでもない。

 

 昴が立ち読みしているコーナー、それは──

 

 

 

 

 

「……はぁ~~…………やっぱ良いよなぁ……京都」

 

 

 

 

 

 ──旅行雑誌のコーナーである。

 

 その後、書店から出た昴は非常に満ち足りた顔をしていた。

 購入した京都のガイドブックを手に昴は思う。

 旅行を想像し、思いを馳せるのも良い。しかし、それだけに留まってはいけない。やはり実際に行かなくては、真に満足などできない。今一度思い出せ、自分が何のために序列一位を辞めたのか。そう、京都旅行のためだ…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待ってろよ、京都!この俺、星導館学園元序列一位、道ノ瀬 昴が必ずリベンジしてやるからな……‼」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




道ノ瀬 昴の京都事ですがこれ、作者が実際に体験したことです。

ネタに困った。
  ↓
だったら、自分が体験したことをネタに使えば良いんじゃね?
  ↓
よし、そうしよう。
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